サーバー上に存在する“仮想的なデスクトップ画面”を、手元の端末に転送し操作するソリューション、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)。エンドポイント環境を統合的に管理しつつ、業務データの漏えい・持ち出しといったリスクを最小化できるため、今も業界を問わず高いニーズがあります。
特にコロナ禍で普及し、テレワーク・ハイブリッドワークに広く使われているというイメージが一般的です。しかし近年では、自治体や金融機関などにおいて、分離されたネットワーク環境上の業務をひとつの端末内で実現したり、サプライチェーンセキュリティ対策として、他組織の職員がデータを持ち出さずに必要な作業を行う基盤になったりと、活用の幅はさらに増しています。
一方で、VDIの従来からの課題は、その構築・運用の難しさと高額なコストです。ハードウェア、ソフトウェアともにさまざまな要素によって構成されており、導入と維持・メンテナンスには、相応の知識や技術を備えた人員が必要になります。また昨今の物価高や、海外メーカーのポートフォリオ刷新の影響により、既存のユーザーが利用継続を諦めるほど、VDIに係る費用は高額化しています。
多様なニーズがありながら、技術リソースやコストの問題から、手の届かないソリューションになりつつあるVDI。この状況を打開する解決策となり得るのが、アセンテック株式会社の「リモートPCアレイ」です。市場から注目されるソリューションとして、実際にどのような優位性があるのか。同社の販売推進部 部長 潤田 雅也氏、第二営業部 部長 菊地 芳明氏に話を聞きました。
2009年に設立したアセンテック株式会社は、ITインフラソリューションの販売・提供を行う日本企業です。同社の独自性について、菊地氏は次のように紹介します。
アセンテック株式会社 創業以来、日本の企業・団体向けに仮想化ソリューションを広く提供してきました。
CitrixをはじめとしたVDI環境の設計、構築、サポートに加え、今回ご紹介するリモートPCアレイは、中小規模の環境に最適なアセンテック独自のリモートアクセス基盤です。
続いて、潤田氏に製品の成り立ちと特長を伺ったところ、次のような答えが返ってきました。
アセンテック株式会社 リモートPCアレイは、台湾のハードウェア・ソフトウェアメーカーであるAtrustと、アセンテックが共同開発した製品です。構造を分かりやすく説明すると、筐体の中にカートリッジと呼ばれる小型の物理PCが並んでおり、ユーザーは自分の端末から筐体内の物理PCにリモートデスクトップ接続して、業務を行う形となります。
IT業界での経験が長い方には、昔のブレードPCサーバー(複数の薄型コンピューターを筐体に差し込んで運用する製品)と似たようなものだといえば、ご理解いただけるかもしれません。PCが並んでいるだけなので導入に専門知識は不要ですし、多くのユーザーでサーバーリソースを分け合う通常のVDIと比べ、1人1つの物理リソースを占有して作業できるため、快適性が高いという特長があります。

ラッキング可能な1Uの筐体内に、モデルごとに5~30台の物理PCを搭載しているといいます。単純にラックに並べる筐体数を増やすことで、利用可能なユーザー数を増やすことができるわけです。
一般的なVDIと比較して、リモートPCアレイがコストメリットを出しやすいユーザーレンジは、おおよそ800ユーザーあたりまでと考えています。しかし昨今のVDI高騰もあり、リモートPCアレイを高く評価してくださるお客様の中には、それ以上の規模で利用されているケースもあります。
従来型VDIの課題であった「コスト」「運用負荷」「パフォーマンス」を、バランス良く解決できる点が、市場から高く評価されているといえます。
さらに、リモートPCアレイは、シンプルなリモートアクセス環境を提供するだけではありません。ラインナップの1つである「RPA120」は、NVIDIA製のGPUを搭載した、エンジニアリング業務向けのハイエンドモデルです。潤田氏は次のように説明します。
RPA120は、本来VDIでは実現が難しいとされるCAD(Computer Aided Design)の作業環境などにもご利用いただいています。さすがにシミュレーションとなると専用機が必要ですが、設計や製図には対応が可能と考えています。リモートでも、エンジニアリング業務を安全に行いたいユーザーに支持されている状況です。
最近では、特に自治体での提案・導入が増えているというトピックがあります。なぜ、自治体でリモートPCアレイが求められているのでしょうか。菊地氏はこう語ります。
2025年3月に「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(自治体情報セキュリティガイドライン)」が改定され、従来は物理的に独立させることを求められていたマイナンバー利用事務系のネットワークに、他のネットワーク(LG-WAN接続系・インターネット接続系など)から条件付きでアクセスできるようになりました。
もちろん高い安全基準を満たすことが前提ですが、これにより複数端末の使い分けや運用の課題が解消され、職員はPC1台で業務が完結できるようになります。
この“他のネットワークからアクセスし、マイナンバー利用事務業務を安全に行う”ための接続先として、リモートPCアレイはうってつけです。低コスト・省スペースに、マイナンバー利用事務を行うためのデスクトップ環境を用意することができます。
マイナンバー利用事務端末へのリモートアクセスという新たなニーズが出てきたことで、自治体におけるリモートPCアレイの引き合いが急増しているということです。
こういった自治体市場の動きや、セキュリティガイドライン改定の背景には、生産性の向上、という世の中の流れがあります。民間企業と同様に、自治体をはじめとした公共領域でも、DXは本格化しています。リモートPCアレイは、安全性を担保しながらDXを推進する現実的な選択肢として、官民問わず貢献が可能なソリューションといえるでしょう。
リーズナブルなリモートアクセス環境を提供するリモートPCアレイを、より安心して利用できるようにしているのが、ソリトンのセキュリティソリューションです。
例えば自治体情報セキュリティガイドラインには、「マイナンバー利用事務系の端末を使用する際には、多要素認証が必須」であることが示されています。そこで、マイナンバー利用事務端末としてリモートPCアレイを利用する際に、国内シェアNo.1の多要素認証製品"SmartOn ID"を組み合わせることができます。
筐体内のカートリッジ(物理PC)それぞれに、SmartOn IDのクライアントをインストールすることで、ID・パスワードのみのWindowsサインインに対し、生体認証やICカードを用いた多要素認証を付加することができ、ガイドライン要件が求める認証強化への対応を支援できます。
リモートPCアレイとSmartOn IDの組み合わせによって、機微な情報を取り扱うマイナンバー利用事務端末の不正操作を防ぐことが可能となるわけです。
また、他のネットワークからリモートPCアレイに接続する経路も、安全性を考慮する必要があります。これについて、潤田氏は次のように続けます。
ソリトンとのソリューション連携は、SmartOn IDだけではありません。リモートPCアレイへの安全なリモートデスクトップ接続ツールとして、Soliton SecureWorkspaceが利用可能です。
さまざまなプロダクトを組み合わせるとコストが上がりがちですが、リモートPCアレイとソリトンのソリューションは親和性が高く、コスト面でもセキュリティ面でも最適な環境を提供できます。
Soliton SecureWorkspaceは、PCの中に仮想的な隔離領域を生成し、普段使っているアプリケーション(Microsoft Officeや、Windowsリモートデスクトップなど)を安全に利用できるようにするソフトウェア製品です。リモートPCアレイへのリモートデスクトップ接続を隔離領域の中から行うことで、手元端末とのデータのやり取りや持ち出しを制御し、また万が一のマルウェア感染時の相互影響を防ぐなど、多くのメリットがあります。
上述の自治体の例でいえば、Soliton SecureWorkspaceをマイナンバー利用事務系のリモートPCアレイへのアクセスツールとすることで、ネットワーク経路のセキュア化とデータ保護につながります。マイナンバー利用事務系へは専用のゲートウェイ経由でアクセスするため、住民情報などの機微データへの不正アクセスを防ぎ、またデータが外に出ていく心配もありません。生産性は上げつつも、日々の業務を安心して行うことができます。
“Soliton SecureWorkspaceはマイナンバーアクセスだけでなく、インターネット接続系の安全利用にも最適なソリューションです。当社とソリトン製品の組み合わせで、マイナンバー・LG-WAN・インターネット系の業務をPC1台で実現することが可能であり、実績も既にでき始めています。
リモートPCアレイとSoliton SecureWorkspaceの連携により、自治体情報セキュリティガイドラインに準拠しながら、職員端末を1台に集約できるのは大きなポイントです。
例えばLG-WAN接続系の端末にSoliton SecureWorkspaceをインストールすれば、マイナンバー利用事務作業はリモートPCアレイへのリモートデスクトップで、インターネット業務は内蔵されたセキュアブラウザで、それぞれ隔離領域から専用ゲートウェイを通じてアクセス制御し、端末1台での業務完結を実現します。

このように、リモートPCアレイが提供するリモートアクセス環境をより安全にするため、ソリトンのソリューションが広く活用されているのです。
アセンテックは、これまで蓄積した技術や知見を生かして、AIに関する取り組みにも注力しています。潤田氏はこう話します。
2026年の3月に、「Edge AI Array」という製品をリリースしました。
現状の生成AIは、クラウドで利用するケースがほとんどです。ビジネスの場面ではセキュリティに不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。
そこで、NVIDIAのAI向けGPUを2Uの筐体内に最大5基搭載し、オンプレミスでAI活用が可能なワークステーションを提供するのが「Edge AI Array」です。AIの頭脳にあたるLLM/RAG用システムと、AIの身体にあたる複数のフロントエンド処理システムを、1つの筐体で統合的に構成できます。
想定される活用としては、たとえば受付や窓口にバーチャルヒューマン(ディスプレイ上に映る仮想的なスタッフ)を置き、来客対応させるなどが考えられます。
「Edge AI Array」を組織のセンターに置いて、そこから各拠点の複数のバーチャルヒューマンを運用する、といったことも可能ですよ。
最後に、今後の展望とソリトンとの協業について、菊地氏は次のように結びました。
低コスト・省スペースなリモートアクセス基盤として、リモートPCアレイをより幅広いお客様に届けていきたいです。Soliton SecureWorkspace や SmartOn IDとの協業では、金融機関や医療機関などのネットワーク分離環境においても価値提供が可能と考えています。自治体だけでなく、まだまだ盛り上げていきたいですね。
アセンテックとソリトンは、引き続きセキュアで快適な業務環境を提供していくことで、日本の企業・団体のビジネス発展に貢献していきます。
取材日:2026年4月15日
株式会社ソリトンシステムズ
簡単・迅速・安全」にリモートアクセス環境を構築。最注目の「リモートPCアレイ」と、連携するソリトンのセキュリティソリューション(PDF)