インタビュー

高い精度とスピードを誇る指静脈認証技術で、企業・団体のDX推進をサポート|日立製作所 × SmartOn ID

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デジタル化・DX化が推し進められる昨今、その波は民間企業だけでなく、自治体や病院といった公共機関にまでおよんでいます。あらゆる業種でクラウド活用やテレワークが一般的なものとなり、業務で利用するデバイスやロケーションが多様化するにつれ、同時に、認証やアクセス制御をはじめとしたセキュリティの見直しが求められるようになりました。

そんな中「指静脈」を用いた認証ソリューションで、企業や公共機関のセキュリティ対策をサポートしているのが、総合電機メーカーとして有名な株式会社 日立製作所(以下、日立)です。

今回は、同社のデジタルシステム&サービスセクター クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット フロントエンゲージメント推進本部の森川 至氏、マネージドサービス事業部 セキュリティサービス本部の堀松 晃氏にお話を伺い、企業としての取り組みや指静脈認証のソリューションで期待できる効果、また、株式会社ソリトンシステムズ(以下、ソリトン)が提供するPCログオン認証ソフト「SmartOn ID」との関わりについてご紹介します。

DXの推進を通してサステナブル社会の実現に貢献する日立製作所

1910年の創業以来、世界有数の総合電機メーカーとして社会経済の発展に貢献してきた日立は、近年物理的な装置や工程を制御するOT(運用技術)と情報処理や通信に関わるIT(情報技術)を組み合わせたソリューションを強みとし、長年の取り組みから積み重ねてきたノウハウを活かし、お客様のニーズに適した製品を開発し続けています。

現在は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現することを目指し、お客様のDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い分野の自社プロダクトをデジタルでつなぎ、日立ならではのソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」という3事業を展開しています。

また近年は自社での開発のみならず、お客様との価値協創にも力を入れています。その取り組みについて、森川氏は以下のように語ります。

“長年蓄積してきた技術やソリューションのアセット「Lumada(ルマーダ)」による顧客協創フレームワークを土台に、お客様のビジネス創出をサポートしています。国内のみならず、海外の企業ともパートナーシップを結ぶなど、数多くのステークホルダーとの協業を通じ、ビジネス領域を拡大してきました。”

なかでも森川氏の所属する「クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット」では、社会インフラを支えるITサービスの提供やAIによるデータ活用などはもちろん、DX推進にあたっておろそかにできないセキュリティに関するソリューションも数多く提供しています。

高い精度と安定した本人確認を実現する「指静脈認証」

日立のセキュリティに関わる技術のうち、独自性が際立っているものの1つが「指静脈」を用いた生体認証技術です。

近年、業務におけるクラウド活用が増えたことで利便性が増す反面、ネットワーク経路の増加やデータの置き場所が分散したことで攻撃者に侵入されるリスクが増加しました。また、現在のサイバー攻撃では漏えい済みのアカウント情報を悪用するケースも多く見られるなど、ID・パスワードのセキュリティでは明らかに不正侵入を防ぎきれなくなっています。そこでニーズが高まっているのが、本人の身体的な特徴を用いた“生体認証”です。生体認証はなりすましが難しいとされていることから、ユーザーを識別する認証要素の中でも特に注目が集まっています。

日立が提供している「指静脈認証」も、生体認証の1つです。近赤外線により指の静脈を写し出した画像から抽出した静脈パターンによって、個人を識別します。静脈パターンは個人ごとに異なる一意の情報である上、18歳以上の成人であれば経年変化がほとんどないということもあって、個人を特定する情報として最適です。

生体認証といえば、顔や指紋、虹彩を用いた方式もよく知られていますが、静脈認証はそれらと比較しても「偽造や改ざんが困難」、「認証精度が高い」、「利用者の心理的な抵抗感が少ない」という点において優れていると、堀松氏は語ります。

“まず、安全性について考えてみると、顔認証の場合は顔写真、指紋認証の場合はさまざまなものに残留した指紋による不正利用の可能性がありますが、静脈認証は体内の特徴を利用して個人を識別するため、偽造や改ざんが困難です。

また、認証精度においても、顔認証はマスクや眼鏡、照明などの影響を受けやすい上に、双子や写真でも誤って認証に成功してしまうことがあります。指紋認証も、乾燥や手荒れ、汗によって認証できないケースも出てきます。一方、静脈認証は外的な影響を受けにくく、高い認証精度を維持できるという特長があります。

さらに、顔は自分自身の外見がデータとして登録されるという点で、指紋は犯罪捜査でも使用される情報であるという点で、利用者が抵抗を感じる場合があります。虹彩認証も、繊細な目を機器に近づけるという点が、心理的なハードルとなり得ます。

対して、静脈認証は体の内部にある情報を登録するため、利用者にとっても心理的なハードルが低い認証方法だといえます。”

世界初の独自の指静脈認証技術で、各業界の課題解決を図る

指静脈認証は、もともと日立が世界で初めて実用化(製品化)した技術※1です。1997年に指の静脈パターンの撮影に成功し、その後、指静脈を個人認証に活用する基本技術を確立。入退管理やATM、PC向けの指静脈認証装置を製品化し、指静脈認証の市場をリードしてきました。現在は、指静脈認証装置 「H-1」として幅広い業界に展開しています。

※1 2021年5月当時。日立調べ。



近年は、他社でも指静脈認証技術の開発・製品化が進んでいますが、日立の「H-1」の強みは認証精度の高さだと、堀松氏は話します。

“「H-1」は、上部から近赤外線を照射し、透過した画像を下部のカメラで撮影しています。側面や下部から光を当てる方法よりも、静脈パターンを鮮明に撮影できるため、認証精度を高められるのです。”

実際、「H-1」の精度の高さは数値的な結果にも表れており、本人を拒否してしまう割合(FRR)は0.01%、他人を本人として受け入れてしまう割合(FAR)は0.0001%、指の形状や大きさなどで登録に対応できない割合(FTE)は0.03%未満となっています※2

※2 1:1認証での測定値。バイオメトリクスの精度評価に関する国際規格 ISO/IEC 19795-1:2021に基づいた測定方法で算出した精度。FRR : False Reject Rate、FAR : False Accept Rate、FTE:Failure to Enroll Rate

また、撮影画像から静脈パターンを抽出し、本人認証をするまでのスピードが速いという点も「H-1」の大きな長所です。森川氏によると、コロナ禍における遠隔の本人確認や、サイバーセキュリティ対策のニーズが高まる中、速くて正確な「H-1」の引き合いは増えていると言います。

“例えば、運送業界では、コロナ禍でリモートワークを行う従業員が増えたことにより、コロナ禍前は対面で行うことが義務付けられていたタクシー・トラック運転手の点呼が、生体認証の導入を条件にオンラインで実施することが認められるようになりました。

また、自治体では、総務省が発表した「自治体情報システム強靭性向上モデル」のもと、以前から二要素認証の導入が進んでいましたが、今は医療機関でも、二要素認証が求められるようになってきています。ランサムウェアによるサイバー攻撃により被害を受ける病院が相次ぐ中、厚生労働省が策定している「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が改訂され、2027年までに電子カルテ等のシステムを二要素認証に対応させるよう指示されたのです。

このような外部環境の変化を受け、生体認証の導入を検討する企業や組織は増加しています。生体認証検討プロセスの中で、精度やスピードが優れたプロダクトとして「H-1」を評価し、導入してくださるお客様も増えてきています。”

指静脈認証の認知拡大へ。ソリトンシステムズとの連携で目指す未来とは

社会全体でデジタル化やDXが進む中、企業や組織の足元を守るための自発的な取り組みだけでなく、国の基準やガイドライン改訂といった外部環境の変化もあり、セキュリティ対策が進んでいます。対策の中でも特に重要視されているのが、複数の要素を組み合わせて本人確認を行う「多要素認証」の導入です。多くのガイドラインで、ID・パスワードといった知識情報だけに頼らず、ICカードのような所持情報や、指静脈をはじめとした生体情報などを組み合わせて、複数の要素を用いて認証を行うことが求められています。

ソリトンの「SmartOn ID」は、PCログオン時の多要素認証を可能にするソフトウェア製品です。長年に渡り国内実績No.1※3を取り続けているこの製品は、生体情報やICカードなど幅広い認証要素を自由に選択でき、お客様ごとの多様な環境や要件に合わせた多要素認証を実現できる点が特長です。この「SmartOn ID」に、日立の指静脈認証技術が採用されており、PCログオン時の高いセキュリティ確保に貢献しています。

※3  株式会社富士キメラ総研「2004~2021 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」調査結果より

堀松氏は、日立の「H-1」が「SmartOn ID」に搭載されたことについて、指静脈認証の認知度拡大につながればと期待を寄せています。

“これまで、当社と関わりのあるお客様には、指静脈認証の特長やメリットをお伝えしてきましたが、当社単独での情報発信には限界があり、リーチできないお客様もたくさんいらっしゃいました。

今回、幅広いお客様に向けてセキュリティソリューションを提供し続けているソリトンシステムズさんと、業界・業種問わず多くの実績を持つ「SmartOn ID」で連携する機会をいただいたことで、より多くのお客様に指静脈認証の魅力を伝えることができるのではと考えています。”

両製品には、国産のオリジナルプロダクトであるという共通点があります。「H-1」は徹底した国内生産にこだわることで、品質と価格を安定させ、昨今の半導体不足やロックダウンといった海外の状況にも影響されることなく供給を続けてきました。森川氏は、今後の展望を次のように語ります。

“国内生産にこだわり、長く続けてきたことで、「H-1」という質の高い製品をリーズナブルな価格で提供できているという自負があります。業界のガイドラインなどで追い風が吹いているこの機会に、PCログオン認証No.1のソリトンシステムズさんとタッグを組むことで、新たな市場での実績を伸ばしたいと考えています。まだまだ足りない指静脈認証の認知を、その素晴らしさとともに広めていきたいです。いつか『生体認証といえば指静脈』と言われるようになるのが、私たちの目標です。”

謝辞

株式会社 日立製作所様、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。

世界トップレベルの指静脈認証技術と連携することで、SmartOnはより多くのお客様の希望を叶えることができるソリューションとなりました。ソリトンシステムズは、引き続きITセキュリティメーカーとして、企業の安全な経済活動に貢献してまいります。

取材日:2023年8月23日
株式会社ソリトンシステムズ

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高い精度とスピードを誇る指静脈認証技術で、企業・団体のDX推進をサポート|日立製作所 × SmartOn ID(PDF)

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム