ERPとは? わかりやすく10分で解説
ERPとは?
ERPシステムは、企業の資源を総合的かつ効率的に管理し、ビジネスプロセスを最適化するためのシステムです。ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略で、直訳すると「企業資源計画」を意味します。ERPシステムを特徴づけるのは、その統合性です。企業が抱える様々な情報が、一元化されたデータベースに保存・管理され、必要な部門でその情報が共有・利用されます。
ERPシステムの定義
ERPシステムの定義を具体的に示すと、以下のようになります。
企業全体の業務を横断し、一元的に管理できるシステム
情報の共有が可能で、データの重複を避けることができるシステム
様々な管理業務(財務・会計、製造・生産、営業・マーケティング、人事・給与、在庫・物流など)を統合できるシステム
つまり、ERPシステムは企業全体の「資源」を「計画」に基づいて「企業全体で」管理するためのシステムであり、「全社連携」、「情報共有」、「業務の一元管理」を実現します。
ERPの歴史
ERPは、1960年代に生産管理のための「MRP(Material Requirements Planning:資材需給計画)システム」として生まれました。その後、資材管理だけでなく、製造プロセス全体の管理が必要となり、「MRP 2(Manufacturing Resource Planning:製造資源計画)システム」が1980年代に開発されました。
1990年代初頭、企業が全体最適を追求するようになったことで、「ERPシステム」が誕生したといわれています。 ERPシステムは、MRP 2システムを基にしながらも、製造業務だけでなく、財務・経理、営業・マーケティング、人事・労務など、企業全体の業務を統合管理することを可能にしました。
ERPと他のシステムとの違い
ERPシステムは、企業全体の業務を統合的に管理するためのものです。それに対して、CRM(Customer Relationship Management)システムは、「顧客管理」に特化し、「SCM(Supply Chain Management)」システムは、「供給連鎖管理」に特化したシステムです。
ERPシステムは、CRMやSCMなどの各システムを包括する役割を持ち、企業全体の業務プロセスを最適化することを目指しています。
ERPシステムはその統合性が最大の特長であり、それによって企業全体の業務プロセスを一元管理できる利点を有しています。
ERPシステムの機能
ERPシステムは、企業の多岐に渡る業務を統合的に管理するツールです。従って、その主な機能は非常に多岐にわたります。ここでは、代表的な機能について具体的にご紹介します。
会計管理と財務管理
ERPシステムの一つ目の重要な機能は、会計管理と財務管理です。これらは企業の財務状況を正確に把握し、効果的な経営判断を下すために必要不可欠な業務です。ERPシステムによって、売上入金、購入支払い、費用計上などの基本的な会計業務から、資金繰りや予算管理、財務分析などの高度な財務管理までが一元化され、リアルタイムに見える化されます。
人事・給与管理
次に、人事・給与管理です。従業員の採用から退職までの一連の流れを管理し、給与計算や社会保険手続きなどの業務を効率化します。更に、評価管理や能力開発などの人材マネジメントを支援し、組織の人材戦略を実現することが可能になります。
製造・生産管理
製造業においては、製造・生産管理が重要な機能になります。ERPシステムは、生産計画の策定、作業指示の作成、進捗管理、在庫管理など、製造業特有の業務を一元管理します。これにより、製造現場の効率的な運営と、製品供給のスムーズな実現を支援します。
サプライチェーン管理
サプライチェーン管理は、製品の生産から販売までの一連の流れを管理する機能です。原材料の調達から製造、在庫、配送、販売予測まで、さまざまな業務を統合的に判断し、極力無駄なくスムーズに行えるようにします。これにより、企業全体の効率向上と顧客満足度の向上に寄与します。
顧客との関係管理
最後に、顧客との関係管理です。これは、顧客とのコミュニケーションを一元管理し、顧客満足度の向上と長期的な関係構築を目指す機能です。営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの顧客接点を一元化し、顧客情報を共有化します。これにより、個々の顧客への適切なアプローチと、顧客の満足度向上を実現します。
ERPシステムのメリット
ERPシステムの導入には多少の困難も伴いますが、その重要性と長期的なメリットを理解すると、その価値は明確になります。では、具体的にどのような効果があるのでしょうか。
情報共有の強化
ERPシステムの一つの大きな強みは、一元化されたデータベースにより情報共有が強化されることです。これは全ての部門が同じ情報にアクセスできることを意味し、データの一貫性と正確性が保たれます。情報の透明性が向上し、組織内協力の効果を最大限に活用できます。
ビジネスプロセスの効率化
ERPシステムは、企業全体の全てのビジネスプロセスを統合します。在庫管理から財務、生産計画から人事まで、全てのデータがリアルタイムに更新され、全社員が新しい情報にアクセス可能になります。その結果、業績が向上し、業務プロセスが効率化されます。
経営指標の向上
ERPシステムの全社的な情報へのアクセスは、経営者にとっても有益です。一つの統合されたシステムにより、経営者は生産性や売上、キャッシュフローなどの主要な経営指標を把握することが容易になります。これにより、迅速な意思決定を可能にし、ビジネスのパフォーマンスを向上させます。
リアルタイムの事業分析
ERPシステムによる情報の統合とリアルタイムへのアクセスは、リアルタイムの事業分析を可能にします。これにより、事業の問題点を即時に識別し、対策を講じることができます。また、市場の変化に迅速に対応するための戦略変更も容易になります。
ERPシステムのデメリット
ERPシステムは効率の向上や統合管理など数多くのメリットがありますが、その一方で注意すべきデメリットも存在します。ここでは、主要なデメリットとそれに対する克服策を紹介します。
高額な導入コスト
ERPシステムの導入は、大掛かりなプロジェクトとなり、それが高額なコストとなることがあります。ハードウェア、ソフトウェア、コンサルテーション、トレーニングなど、導入に伴う様々なコストが含まれます。また、組織全体をカバーするための複雑な設定とテストが必要となり、導入が完遂するまでに時間がかかることもあります。 しかし、これらの問題はクラウドベースのERPソリューションや、必要な機能を段階的に導入するといった選択肢を通じて対処することが可能です。これにより、初期投資を抑えながらも、企業の要求に合ったERPシステムを動かすことができます。
カスタマイズの難しさ
企業ごとに異なるビジネスプロセスや要求に応じてERPシステムをカスタマイズするのは困難である場合があります。一部のシステムは柔軟さに欠けていたり、カスタマイズが困難であることがあります。
対処法としてはその企業のビジネスプロセスに最も適合するシステム選択や、必要なカスタマイズを調査し、その範囲内で最大限利用できる機能を活かすなどがあります。また、ERPソフトウェアを開発したベンダーからサポートやアップデート情報を得ることも重要です。
業務変更に対する抵抗
ERPシステムの導入は、既存のビジネスプロセスの大幅な変更を必要とする場合があります。この変更に対する従業員からの抵抗は、導入の成功を阻む可能性があります。
この問題に対処するためには、導入計画の初期段階から関係者全員が同じ理解とビジョンを共有することが重要です。人的な側面に焦点を当て、難解な専門用語を避けた明確で簡潔なコミュニケーションを通じて変更の理由と利点を語ることは、導入の成功に大きく寄与するでしょう。
デメリットへの対処法
以上3つのデメリットと対処法をまとめますと、一つ目の高額な導入コストと時間はクラウドベースの解決策や段階的な導入による対応が効果的です。
二つ目のカスタマイズの難しさに対しては、企業のビジネスプロセスに適合するシステム選択や、ベンダーからのサポートを確保することが有効です。
そして、三つ目のデメリットである導入に伴う業務変更への抵抗に対しては、初期段階から全員が一体となって理解を深め、明確なコミュニケーションを取ることが最適な解決策となります。
これらの取り組みを通じて、ERPシステムの導入におけるデメリットを最小化し成功へと導くための構造化されたアプローチを導き出すことができます。
ERPシステムの導入方法
ERPシステムの導入は単なるソフトウェアのインストールよりもはるかに複雑な作業です。誤った導入は、事業の機能を損なうリスクを伴います。以下では、導入する上での要点とステップを明らかにします。
必要性と目的の明確化
まずはなぜERPシステムが必要なのか、その目的を明確にすることから始めてください。具体的な業務改善の目標や、経営の課題解決のための狙いなど、何を達成したいのかを明示することで、システムの選定や導入計画がスムーズに進行します。
システム選定
次に、自社のビジネスに最も適したERPシステムを選定します。ベンダーによって提供される機能やサービスの質は様々です。業種や規模、予算等、自社の具体的な要件に合ったシステムを選ぶことが成功のカギとなります。
導入計画
ERPシステム導入計画は、企業のビジネスプロセス、人材、そして時間的制約を詳細に考察する必要があります。慎重に進められるよう、期間やスケジュール、費用、リソース管理、リスク管理などを包括的に含む計画を作成しましょう。
構築〜テスト
システムの構築では、具体的な業務フローに合わせたカスタマイズや利用者向けの設定などが行われます。その後、テスト段階では実際の運用を想定したシナリオでシステムを動作させ、不具合や改善点を洗い出します。このフェーズでは確認と修正が繰り返されることで、システムの良質性が確保されます。
順次展開と運用
最終的に、テスト結果をベースにした最終バージョンのシステムが展開されます。初めてERPシステムを導入する場合はフェーズごと、または部門ごとなど、段階的に導入することでリスクを軽減します。運用開始後も、継続的なアップデートや改修が必要となるため、システムのメンテナンスにも気を配る必要があります。
主要なERPソフトウェアベンダー
企業がERPシステムを導入する際、選択肢の一つがソフトウェアベンダーとなります。世界中に複数のベンダーが存在しますが、ここでは主要な4つのベンダーについて詳しく解説しましょう。
SAP
ERPソフトウェアベンダーとして最も知られているのがドイツのSAPです。SAPのERPソフトウェアは、特に大企業向けの製品として知られています。その業界カバレッジの広さと深さ、そして統合性が評価されています。SAPの製品はモジュール化されていて、企業は自分たちのニーズに合わせて必要な部分を選んで導入することができます。
Oracle
アメリカの大手ソフトウェア企業であるOracleもERPソフトウェアの主要ベンダーの一つです。OracleのERP製品は、特に財務管理機能が強力で知られています。また、クラウドベースのERP製品「Oracle Fusion Cloud ERP」も提供しており、導入や運用が容易になるとともに、企業のデータを安全に管理することができます。
Microsoft Dynamics
中小企業向けのソリューションを提供しているMicrosoft Dynamicsも見逃せません。その製品はユーザフレンドリーで、Microsoftの他の製品(Windows、 Office等)との高い互換性が特徴です。
Infor
最後に紹介するのはInforです。InforのERPソフトウェアは、特定の業界向けにカスタマイズされたソリューションを提供することで独自性を打ち出しています。これにより、各業界特有のニーズに対応したソフトウェアを利用することが可能になります。
以上がERPソフトウェアの代表的なベンダーとなります。それぞれ異なる強みを持っているため、自社のニーズに合わせて適切なベンダーを選択することが重要になります。
まとめ
今回の記事を通して、私たちはERPシステムの基本的な概念、主な機能、効果、デメリット、そして導入方法について詳細に解説しました。この情報を頭に入れて、ERPシステムが将来的にも企業やビジネスへ多大な影響を与え続ける理由を探求してみましょう。
まず、ERPシステムの機能は、企業の中核的な業務プロセスを包括的にサポートします。これには、財務管理、人事管理、生産管理など、企業活動のほぼすべての側面が含まれています。それにより、組織の各部門が互いに連絡を取り合い、データを共有するのが容易になり、効率的な意思決定が可能になります。
次に、ERPシステムの導入は、業務プロセスの大幅な合理化と効率化を達成することができます。これは、非効率的な手作業の削減、データの入力や処理の自動化、ワークフローの最適化によって実現されます。この結果、企業はコスト削減と生産性向上の両方を享受することが可能となります。
また、現在のデジタル化とグローバル化の時代において、企業はそのビジネス環境を迅速かつ適切に把握し反応できるためのリアルタイムの情報が不可欠です。ERPシステムはこの課題を解決してくれます。ERPは、企業全体からのデータを一元管理し、そのデータを即時に分析することで、ビジネス環境の変化に素早く対応し確認するための洞察を提供します。
最後に、ERPシステムは、その高い拡張性と柔軟性により、企業が拡大したり、新しいビジネスを追加したりしても適応しやすいという利点があります。したがって、成長と変化を続ける企業にとっては、ERPシステムはその発展とともに進化し続ける信頼性のあるパートナーと言えます。
以上の理由から、ERPシステムは、これからも企業やビジネスが直面する様々な課題を解決し、その発展を支え続けるための強力なツールとなるでしょう。
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