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保育ICTシステムとは?業務支援ツールの導入を成功させるポイントを解説

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目次

ICT(情報通信技術)の活用は、業界・業種を問わず業務の効率化のために進んでおり、その流れは保育園や幼稚園にも及んでいます。保育ICTシステムは、園・職員・保護者にとって多くのメリットをもたらすものですが、導入の際にはいくつか注意すべき点も存在します。

この記事では、保育ICTシステムの概要から導入のメリット、導入を成功させるためのポイントとあわせて、導入の際に利用できる補助金について解説します。

保育ICTシステムとは?

「保育ICTシステム」とは、保育園と幼稚園の運営を効率化し、職員間や保護者とのコミュニケーションを向上させるためのシステムのことです。保育園ICTシステムと幼稚園ICTシステムを含み、これらの施設の日々の業務をサポートする多様なツール群を指します。

保育園ICTシステムと幼稚園ICTシステムの違いは、それぞれの施設の主要な役割と業務内容に基づいています。しかし、実際には、これらのシステムの求められる機能には多くの共通点があります。

保育園ICTシステムとは?

保育園は、子どもを長時間預かる施設であるため、子どもの健康状態や食事、昼寝の時間などの細かな情報をリアルタイムで記録・共有する必要があります。また、多くの保育園では給食を提供しているので、アレルギー情報の管理や献立の共有、栄養計算も重要となります。さらに、子どもの安全を確保するための入退園時間の記録や、緊急連絡先の管理なども必須の機能となっています。

幼稚園ICTシステムとは?

一方、幼稚園は教育的要素が強い施設としての性格を持ちます。そのため、教育カリキュラムや活動の計画、実施内容の記録や共有が中心となる機能が求められます。さらに、さまざまな行事やイベントが頻繁に行われるため、そのスケジュールや内容を保護者と共有する機能も不可欠です。

保育園ICTシステムと幼稚園ICTシステム。両者の機能に多少の違いはありますが、施設として保護者とのコミュニケーションが極めて重要なことは変わりません。メッセージの送受信、連絡帳の電子化、写真や動画の共有など、保護者との情報共有をスムーズにする機能は共通して求められます。また、施設の運営に関する予算やスケジュール管理、職員の勤務スケジュールや研修内容の管理など、運営面での要求も共通しています。

保育園ICTシステムと幼稚園ICTシステムの間には、特定のニーズに応える独自の機能がいくつか存在するものの、多くの基本的な機能は共通していると言えます。導入を検討する際は、それぞれの施設の特有のニーズを十分に理解しつつ、共通の要求も満たすシステムを選ぶことが求められます。

保育ICTシステムが提供する機能

 園児情報管理園児の基本情報や日々の健康状態、成長記録などを簡単に取り扱うことができます。これにより、職員間で園児の情報をリアルタイムで共有することができ、諸々の対応をスピーディになります。また、紙ベースの記録と比べ、データの検索や取り扱いが容易になるため、日々の業務効率が向上します。

  • 健康管理機能
    検温や排便、昼寝の時間などの管理ができます。紙ベースの記録・転記の手間を省くことができ、園児の健康状態の変化を速やかキャッチアップし、適切な対応をとることができます
  • 保育日誌・指導計画の作成
    指導計画や保育日誌を効率的に作成します。テンプレートや自動反映の機能が備わっている製品・サービスも多く、毎回の手入力を削減し、手間を軽減します。
  • 連絡帳の管理
    アンケートの配信・回収・集計が行える。これにより、園と保護者間のコミュニケーションが円滑になり、良好な関係構築に繋がります。
  • 園と保護者のコミュニケーション機能
    欠席や遅刻、早退などの連絡が簡単になります。忙しい朝の時間帯に電話する必要がなくなります。おたよりやお知らせの一斉配信機能を活用すれば、情報の伝達がスムーズになります。
  • 写真管理・販売機能
    園で撮影した写真を保護者と共有・販売できます。写真のアップロードから決済、発送までサービス内で完結するものも多く、保護者は手間なく写真を購入できます。
  • 園バス位置情報サービス
    バスの到着予定や走行位置をリアルタイムで知ることができます。保護者も子どもの送迎時に安心感を得られます。
  • 報告書類の作成
    自治体への提出が必要な書類を効率的に作成します。データの手集計・手入力が大幅に軽減され、時間の節約とミスの削減が期待できます。
  • 請求管理機能
    毎月の保育料の計算から請求書の発行までをサポートします。正確かつスピーディに行え、事務員の作業負担が大きく軽減されます。
  • 勤怠管理・シフト作成
    職員の出退勤や休暇申請、シフトの管理が容易になります。働き方改革やオーバーワークの防止に寄与し、職員の働きやすい環境を整える助けにもなります。

ICTシステムは、パソコン、タブレット、スマートフォンなどを介して利用され、その機能と利便性は保育園・幼稚園の業務を大いに軽減してくれるものです。

保育ICTシステムが導入されていないと・・・

保育ICTシステムが導入されない場合、日々の業務において非効率な状況が生じているかもしれません。

保護者との連絡、子供の健康状態や成長記録の管理、出席状況の把握、食事やアレルギー情報の共有など、多岐にわたる情報を手作業で管理している可能性があります。これは非常に時間がかかり、ヒューマンエラーを引き起こしやすいだけでなく、緊急時の迅速な対応の妨げになる可能性もあります。

例えば、子どもの健康状態や発育状況を紙ベースで記録し、保護者に対しても手書きのメモや口頭での伝達が主となっている場合です。これらの方法は時間がかかるだけでなく、記録の保存や検索、誤解や“うっかり忘れ”のリスクもあります。また、保護者への情報提供も十分には出来ず、重要な情報が適切に伝わらない可能性もあります。

さらに、職員間でのコミュニケーションもまた、面会や電話、紙ベースのメモで行われることになり、情報の整理や共有が難しい状況にあるかもしれません。職員が交代するタイミングでは、子どもたちの最新情報が完全に伝わらない可能性があり、安全な保育の実現に悪影響を及ぼすこともあります。

これらの状況は、保育ICTシステムの導入によって大きく改善できます。システムが提供する電子的な記録管理は、情報の整理、検索、共有を劇的に効率化し、誤解や“うっかり忘れ”のリスクを大幅に軽減します。システムを通じて保護者に情報を提供すれば、即時性と正確性が確保され、保護者とのコミュニケーションも円滑になります。もちろん、職員間の情報共有も一元化され、引き継ぎ漏れなどのリスクが大幅に低減します。

もしまだ保育ICTシステムを導入していない園があるなら、業務の効率化、コミュニケーションの向上、エラーの軽減、そして何より子どもたちの安全性と健康管理の確保に大いに寄与するこのシステムの導入は、とても効果の高い対策といえるでしょう。

保育ICTシステムは職員の業務効率化につながる?

現代の保育園・幼稚園では、ICTを活用することがますます重要になっています。
ICTシステムを導入することで、職員の業務効率が大幅に向上し、より質の高いサービスが提供できるからです。

一元的な情報管理と事務業務

保育ICTシステムには、従来紙や複数のシステムで行っていた情報管理を一元化し、業務効率を上げる機能があります。園児情報管理では、基本情報のみならず保護者との連絡履歴や納付金情報、指導要録などを一括管理できます。これらの情報をPCやスマホからいつでも取り出せるため、場所を選ばず必要な情報を確認でき、作業効率が上がります。

また、健康管理もアプリ内で完結し、検温や排便、お昼寝の管理をその場で入力し共有できます。従来の紙ベースでの記録から転記する手間が省け、誤記のリスクも低減します。勤怠管理やシフト作成も可能で、職員の勤務状況をリアルタイムに把握できます。これにより、人手不足やダブルブッキングなどの人的ミスを防げます。さらに、指導計画や保育日誌などの報告書類の作成も効率的に行え、残業時間を抑制できるかもしれません。

事務作業の効率化も、保育ICTシステムの重要な機能です。毎月の保育料を自動計算し、請求書を発行する請求管理機能は、事務の時間を大幅に削減します。

園では園児の日々の様子を写真に撮ることがあります。例えば、この写真の公開、決済、印刷、発送を代行する写真管理・販売機能のある保育ICTシステムを採用しておけば、その業務を外部に委託し保育士の業務負担を軽減できるかもしれません。

保護者とのコミュニケーション

保育ICTシステムの多くには、保護者とのコミュニケーションを助ける機能も含まれています。欠席や遅刻、早退、預かり時間の変更などの連絡受付は、Webサイトや専用アプリを通じて行えます。こ従来電話によって時間を取られていた作業がスムーズになり、保護者とのやりとりも効率的に行えます。“おたより”やお知らせの配信、アンケートの実施などはインターネット配信できるようになり、印刷や手渡しといった手間が省かれ、欠席者にも最新の情報を届けられます。

保育ICTシステムは、情報の一元管理、保護者とのコミュニケーション強化、事務作業の効率化といった魅力的な機能を持っています。これらは、保育士の業務を効率化し、質の高い保育サービスを提供するための強力にサポートしてくれます。

日々の情報のやりとりが効率化されれば、職員は本来の仕事に集中でき、保護者とのコミュニケーションも、より良好なものになります。事務作業の負担が減ることで、保育士の負担を軽減し、業務ストレスを減らすことが期待できるでしょう。

保育ICTシステムを導入するメリット

ICTシステムの導入は、施設運営の効率化やサービスの質の向上、ヒューマンエラーの減少、そして何よりも園児の安全性の向上に大いに寄与します。

施設運営のメリット

ICTシステム導入のメリットとしては、全体の業務効率化とランニングコストの削減が挙げられます。在籍園児の情報を一括で管理できれば、経費や保育料の自動計算が可能となり、事務作業が大幅に効率化されます。紙に頼った情報管理が不要になるため、紙代や印刷コストが削減されます。残業時間が低減できれば人件費を含む運用コスト全体が抑えられ、施設の経理面でもメリットとなります。

園の職員のメリット

ICTシステム導入により業務が効率化されると、園の職員は一人一人の園児に更に時間を割くことが可能になります。これにより、各園児の状態・状況を詳細に把握し記録することができ、それぞれの園児に対するきめ細かな対応を可能にします。また、業務の効率化により生まれた時間を活用し、最新の保育・幼児教育のトレンドを学んだり、職員間の交流を深めたりする時間を確保することもできます。これにも、質の高い保育の実現に繋がります。

保護者のメリット

保護者にとってICTシステム導入のメリットは多くあります。施設や園の職員とのスムーズなコミュニケーションが可能となることで、子どもの情報をリアルタイムで把握でき、安心して子どもを預けられるようになります。また、業務の効率化によるヒューマンエラーの減少は、施設内事故の防止に寄与します。

このように、保育施設向けICTシステムの導入は、施設・園の職員・保護者にとって多くのメリットをもたらしてくれます。業務の効率化とサービスの質向上、ヒューマンエラーの減少といった改善により、園児一人一人の安全と質の高い保育・教育を実現する支援ツールとなることでしょう。

保育ICTシステムの導入を成功させるポイント

ICTシステムの導入は保育施設における運営効率化、サービス品質の向上、ヒューマンエラーの軽減、そして園児の安全性向上に大いに寄与します。しかし、その効果を最大化するためには、いくつかのポイントがあります。

リーダーシップ

ICTシステム導入の成功は、園長や主任などのリーダーが変革の意思を明確にし、率先してシステムを活用することが大切です。リーダー自らが模範となることで、他のスタッフも新システムに対する抵抗感を減らします。もし、リーダーが消極的だった場合、職員はシステム操作の習得を億劫に感じ、システムは利用されず、期待された効果が全く得られないという結果につながりかねません。

導入コストとセキュリティ

ICTシステム導入のための予算計画は、初期投資だけでなく、メンテナンスの費用も考慮に入れる必要があります。十分な予算がなければ、システムの性能や品質が低いものとなり、業務効率が逆に落ち、園児の安全にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、不具合が頻発するようなシステムを導入してしまった場合、職員の業務負荷を増やすだけでなく、緊急時の情報伝達に支障をきたし、最悪の場合、園児の安全を守れない事態につながる恐れもあります。

さらに、保育施設では園児の個人情報など、センシティブな情報が扱われます。そのため、プライバシー保護の観点から、導入するシステムは高いセキュリティを備えている必要があります。アプリケーションへの不正ログインや、施設内ネットワークへの不正アクセス対策も万全であるべきです。万が一、セキュリティが不十分で情報漏洩が発生した場合、保護者からの信頼を失うだけでなく、法的な責任を問われる可能性もあります。

ユーザーの理解と活用

ICTシステムを操作する園の職員と、その情報を利用する保護者の理解と活用も、導入成功の大きな要素です。例えば、操作方法が煩雑であったり、システムの存在意義が理解できなかったりすれば、システムは十分に活用されません。逆に、使い方が明確であり、その利便性や有用性を理解してもらえれば、職員は業務の効率化、保護者は園との円滑なコミュニケーションという形で、システムの導入効果が最大化されます。

これらのポイントに配慮することで、ICTシステム導入は、園児、職員、保護者全員にとって大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。

保育ICTシステムの導入に関する補助金

保育士の業務負担軽減、保護者との連絡などに係るICT活用におけるシステムの導入は、国や地方自治体によって補助金が支給される場合があります。

過去には厚生労働省の「保育所等におけるCIT化推進補助金」や、経済産業省の「IT導入補助金」などがありました。

保育所等におけるCIT化推進補助金

厚生労働省が主管としており、保育所等の業務のICT化を推進することを目的としています。この補助金を活用することで、保育士の業務負担を軽減し、保育士が働きやすい環境を整備する支援が行われるようになっており、1施設あたり20万円~100万円の補助が受けられるものでした。
(導入システムの機能や端末購入の有無により異なる)

IT導入補助金

経済産業省が主管とし、中小企業や小規模事業者が業務の効率化や生産性向上を図るためのITツール導入を支援する目的で設けられています。具体的には、1法人あたり30万円~150万円の補助が受けられるものでした。
(導入システムの機能や導入総額により異なる)

補助金制度の詳細や対象は、年度ごとに内容が変更されることがあるため、最新の情報を確認し、期日や対象をしっかりとチェックすることが非常に重要です。都道府県・市区町村によっても補助金制度の内容や対象が異なることがあるため、それぞれの条件を確認し、最適な補助金制度を活用してICTシステムの導入を進めると良いでしょう。

この記事のまとめ

本記事では、保育施設向けICTシステムの導入について、そのメリットと成功のためのポイントを施設、園の職員、保護者の視点から解説しました。

ICTシステム導入は、業務効率化、サービスの質向上、ヒューマンエラーの減少、そして何よりも園児の安全性向上に大いに寄与します。施設は業務全体の効率化とランニングコストの削減を実現し、円の職員は園児一人一人により深く関わる時間を増やすことができます。また、保護者にとっては、円滑なコミュニケーションと子供の情報管理が容易になり、安心感を得られます。

しかし、その導入と運用を成功させるためには、導入コストの課題、職員の操作理解、そして保護者への説明と理解を含む多くの関係者に配慮する必要があります。

業界・業種を問わずICT化が進む昨今、保育園・幼稚園においてもICT化は必須といえるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム