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シャドークラウドとは? 脅威や対策をわかりやすく解説

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目次

はじめに

「シャドークラウド」とは、企業の情報システム部門が認識をしていないクラウドサービスの利用を指します。従業員が業務の効率化や便利性を求めて(悪意なく)利用する場合が多いのが特徴です。しかし、情報セキュリティの観点から見ると、シャドークラウドは企業にとって脅威です。

シャドークラウドは、利用者、情報システム部門、そして経営者すべてが理解し、対策を講じるべき重要な課題です。情報セキュリティを強化し、企業全体としてのリスクマネジメントを進めるためにも、シャドークラウドの理解は不可欠です。この記事を通じて、シャドークラウドの認識を深め、対策の一助となれば幸いです。

わかりやすく解説

まずは「シャドークラウド」の定義からです。

「Shadow Cloud」は直訳すると「影のクラウド」となりますが、ここで言う「影」とは「隠れた、見えにくい」というニュアンスで使われています。シャドークラウドとは、非公式な形で利用されているクラウドサービスのことです。

シャドークラウドは「シャドーIT」の一部といえます。

「Shadow IT」とは、情報システム部門の知らないところで行われるITリソースの利用を指す言葉で、ソフトウェア・ハードウェア・サービスを問いません。以前から、私物のPCやUSBメモリ、スマートデバイスの持込対策に力をいれる企業は多くありましたが、最近では、クラウドサービスの急速な普及に伴い、従業員による非公式なサービス利用の脅威が高まっています。その結果、これを「シャドークラウド」名付け対策を急ぐ企業が増えてきているのです。

注目されている背景

シャドークラウドが急速に注目を集めるようになった背景には、社会的、技術的要因、そしてそれらの間で起こるギャップが存在します。

私たちは、ファイル共有サービス、メール、コラボレーションツール、CRM、プロジェクト管理ツールなど、様々なクラウドサービスが手軽に利用でき環境にいます。これらのサービスは非常に便利であり、多くは無料プランも存在します。これにより、従業員たちはプライベートでは自ら選択し、導入し、これらの快適さを実感しています。

その一方で、企業が新たなITシステムを全社導入する際には、多くの考慮点と手順が求められます。新たなツールを導入する前に、その互換性、セキュリティ、コスト等、様々な要素を評価するプロセスは欠かせません。これには時間がかかるため、従業員が「使いたい」と要望してから実際に利用できるようになるまでのスピード感にギャップが生じます。

企業のIT資産の増加やITへの依存度の上昇、そしてサイバー攻撃の高度化は、シャドークラウドの問題を一層深刻化させる要因となっています。企業は情報セキュリティの強化と、従業員の利便性との間で難しいバランスをとることを求められているのです。

インシデント事例

シャドークラウドのリスクは、企業の業界や規模、従業員の役職に関係なく存在します。以下に、具体的な事例を詳しく描き出すことで、シャドークラウドがもたらす脅威を明確にします。

想定事例1:情報漏洩 - 製造業のA社

製造業のA社では、新商品の開発に全力を注ぎ、秘密を厳に守っていました。しかし、技術者の一部が新商品開発に関するデータの共有のために、セキュリティ機能に劣る無料クラウドストレージを勝手に利用していました。情報がすぐに共有できる反面、セキュリティが十分でないため、サイバー攻撃の被害に遭い、新商品の設計図が外部に漏れ出しました。

新商品の情報が競合他社に渡ったことで、A社は市場投入のタイミングを逃し、大幅な機会損失を被りました。

想定事例2:被害拡大 - サービス業のB社

サービス業のB社では、営業部門がクライアントとのコミュニケーションを円滑に進めるため、IT部門により管理されていないツールを利用していました。ある日、そのツールがサイバー攻撃を受け、大量の顧客情報が盗まれる事態となりました。この情報漏洩が発生したとき、IT部門はそのツールの存在すら認識しておらず、被害が発生したことを知ったのは大幅に遅れてからでした。その結果、顧客への対応が遅れ、多くのクライアントから信頼を失う事態に陥りました。

想定事例3:法規違反 - 金融業のC社

金融業のC社では、一部の営業担当者が、クラウドCRMツールを利用していました。CRMツールは顧客情報管理や営業活動の効率化に役立つツールで、営業担当者にとっては非常に便利なツールでした。しかし、そのツールは金融情報の取り扱いに対する適切なセキュリティ基準を満たしておらず、C社の取引情報が漏洩する可能性があるという事実を営業担当者は認識していませんでした。

シャドークラウドが潜在的に持つリスクとは、情報漏洩、被害の拡大、法規違反と多岐にわたることが分かります。シャドークラウドのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、これらの問題は未然に防ぐことが可能です。

脅威への対策

シャドークラウドが企業に及ぼす脅威は様々ですが、適切な対策を講じることで、これらのリスクは最小限に抑えることが可能です。具体的な対策方法について3つ紹介します。

アクセス制限ソリューションの導入

URLフィルタリングは、社内ネットワークから特定のWebサイトへのアクセスをブロックする技術です。これにより、従業員が業務外のクラウドサービスを使用することを防ぐことができます。

CASB(Cloud Access Security Broker)は、企業が使用するクラウドサービスへのアクセスを仲介し、セキュリティポリシーに基づいて制御を行う役割を果たします。具体的には、機密データの漏洩防止(DLP)、アクセス制御、暗号化などの機能を提供します。これにより、未承認のクラウドサービスへのアクセスを防止し、シャドークラウドのリスクを軽減することが可能になります。

監視・モニタリングの自動化

監視・モニタリングも有効です。システムやネットワークの利用状況を定期的に監視し、異常が検出された場合にはすぐに対応を行うことが必要です。これには、SIEM(Security Information and Event Management)などのツールが使用されます。SIEMは、さまざまなソースからログ情報を収集し、分析・可視化することで、セキュリティインシデントの早期発見や対応を助けます。自動化された監視・モニタリングにより、シャドークラウドの存在を認知し、対応することが可能になります。

社内教育・啓発の実施

社内教育と継続した啓発も必要です。技術的な対策だけではなく、従業員一人ひとりがセキュリティリスクを理解し、適切な行動をとることが求められます。そのためには、定期的なセキュリティ研修や啓発活動を行うことが重要です。シャドークラウドのリスクについて理解を深め、個々の行動が企業全体のセキュリティに影響を及ぼすことを意識させることが、根本的なリスク軽減に繋がります。

これらの対策を適切に行うことで、シャドークラウドのリスクは大きく減らすことができます。新たなクラウドサービスの出現、攻撃手法の進化、法令の変更などに対応するため、絶えずリスクと向き合い続け、対策を見直す必要もあります。シャドークラウド対策は、一度の行動ではなく、常にリスクを見つめ直し続けることが求められるのです。

対策する利点と注意点(メリット・デメリット)

シャドークラウドの脅威への対策は、企業全体の業績や運用に影響を与えます。その影響を、利用者、情報システム部門、経営者の立場から見てみます。

利用者の視点

利用者にとっての一番のメリットは、自身が利用しているクラウドサービスの安全性が、よりITに詳しい社内の専門家によって確認され、担保されることです。企業が認めたクラウドサービスのみが使用できるようになるため、個人情報の流出や不正利用の危険性が大幅に低減されます。これにより、自分のデータが保護されているという安心感が得られます。

一方、サービスの選択肢が限定されることで、自由度はある程度制約されることになります。その時々に最適なサービスを利用できなくなると、作業の効率や便利さが損なわれる場合もあります。

情報システム部門の視点

情報システム部門にとって、対策を行うメリットは、セキュリティ管理の一元化と、それによる安全性の確保です。社内で使用されるクラウドサービスが一定の基準を満たしたものだけに限定され、管理が一元化されます。これにより、セキュリティリスクを一覧化し、効率的に対策を施すことが可能となります。

しかし、情報システム部門の負担は増大します。クラウドサービスの承認・監視・管理には時間と労力が必要です。これを解消するためには、自動化ツールを導入し、監視や管理の効率化を図ることが重要です。

経営者の視点

経営者にとって、シャドークラウドの脅威に対する対策の最大のメリットは、企業の信頼性と存続性の向上です。情報漏洩などの事故が起こるリスクを軽減することで、企業の信用を守り、ビジネスの持続性を高めることができます。

ただ、対策を行うには、初期投資と維持管理に関する費用が必要となります。コストとリスクのバランスを評価し、効率的な投資を行うことが求められます。

シャドークラウドの脅威への対策は必要で、多くの企業にメリットをもたらしてくれますが、一部にデメリットも存在します。それぞれの立場によって見えてくる問題や期待は異なり、それらをバランスよく考えながら、組織全体として対策を進めることが求められます。経営者、情報システム部門、利用者、全てが一体となって対策を進めることで、シャドークラウドの脅威から企業全体を守ることができます。

まとめ

今回の記事では、シャドークラウドという現代のビジネス環境における重要な課題について詳しく掘り下げました。ITが急速に発展し、クラウドサービスの利用が一般化する中で、その使い方や管理の仕方には十分な注意が必要です。

シャドークラウドは、認可されていないクラウドサービスの利用という形で発生し、その存在が様々なセキュリティリスクをもたらす可能性があります。機密情報の漏洩やデータの不正利用、さらには法規制違反となる可能性もあるため、無視できない課題となっています。

対策方法としては、アクセス制限ソリューションの導入、厳格な監視・モニタリング、社内教育と啓発などが挙げられます。それぞれにはメリットとデメリットがあり、実施に際しては、利用者、情報システム部門、経営者の視点からそれぞれ考慮することが求められます。

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記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム