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ウェブサイトやアプリケーションが、障がいを持つ人を含むすべてのユーザーにとって利用しやすくなっていないと感じたことはありませんか?この記事では、アクセシビリティの基本概念から具体的な改善方法、企業にとってのメリットまでを10分で分かりやすく解説します。アクセシビリティへの理解を深めることで、多様なユーザーが快適にデジタルサービスを利用できるようになり、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
アクセシビリティ とは、すべての人が等しくデジタル製品やサービスを利用できるようにすることを目指す概念です。年齢、障がいの有無、使用する機器などに関わらず、誰もが情報にアクセスし、コンテンツを理解し、機能を活用できるようにすることが重要とされています。
アクセシビリティは、ウェブサイトやアプリケーションなどのデジタルコンテンツが、障がいを持つ人を含むすべてのユーザーに対して利用可能であり、操作可能であることを意味します。具体的には、視覚障がい者がスクリーンリーダーを使ってコンテンツを読み上げられるようにしたり、聴覚障がい者に文字起こしを提供したりすることなどが含まれます。
アクセシビリティへの取り組みは、以下のような理由から重要視されています。
アクセシビリティは、以下のようなさまざまなユーザーを対象としています。
ユーザー種別 | 具体例 |
---|---|
視覚障がい者 | 全盲、弱視、色覚異常など |
聴覚障がい者 | ろう、難聴など |
肢体不自由者 | 上肢障がい、筋力低下など |
認知・知的障がい者 | 発達障がい、認知症など |
一時的な制約を受けている人 | 怪我、病気、妊娠中など |
高齢者 | 加齢に伴う視力や聴力の低下など |
これらのユーザーがデジタルコンテンツを快適に利用できるよう、適切な対応を行うことが求められます。
アクセシビリティとユーザビリティは、どちらもユーザー中心設計の概念ですが、次のような違いがあります。
ただし、両者は密接に関連しており、アクセシビリティの向上はユーザビリティの向上にもつながります。すべてのユーザーにとって使いやすいデザインを目指すことが大切です。
以上のように、アクセシビリティは多様なユーザーを包括し、デジタル製品やサービスの利用機会を平等に提供するための重要な概念です。企業がアクセシビリティに積極的に取り組むことは、社会的責任を果たし、ビジネスの可能性を広げることにつながるでしょう。
アクセシビリティを確保するためには、国際的なガイドラインや各国の法規制に準拠することが求められます。ここでは、代表的なアクセシビリティ基準と法規制について解説します。
WCAG は、ウェブコンテンツのアクセシビリティに関する国際的なガイドラインです。World Wide Web Consortium(W3C)が策定・維持しており、 現在の最新版は WCAG 2.1 です。WCAG は、以下の4つの原則に基づいています。
WCAG に準拠することで、ウェブサイトやアプリケーションのアクセシビリティを向上させることが可能になります。
日本では、以下のような法律や指針がアクセシビリティに関連しています。
これらの法律や指針に準拠することは、日本国内でビジネスを展開する上で重要な要素となります。
米国では、ADA法(Americans with Disabilities Act)がアクセシビリティに大きな影響を与えています。ADA法は、障がいを理由とする差別を禁止する包括的な市民権法です。ウェブアクセシビリティに関しては、ADA法の適用範囲についての議論が続いていますが、多くの企業がWCAGに準拠することで対応しています。
ISO(国際標準化機構)では、アクセシビリティに関連する以下のような規格を定めています。
グローバルに事業を展開する企業は、これらの国際規格を参考にしてアクセシビリティ対応を進めることが推奨されます。
以上のように、アクセシビリティの基準と法規制は国や地域によって異なりますが、共通しているのはすべてのユーザーに等しくデジタルサービスを提供するという理念です。各社の状況に合わせて、適切な基準に準拠し、アクセシビリティの向上に努めることが求められます。
アクセシビリティを向上させるためには、以下のような具体的な方法を実践することが推奨されます。
コンテンツの文字と背景のコントラスト比を十分に確保することで、視覚障がいを持つユーザーや低照度環境で閲覧するユーザーにとって読みやすくなります。WCAG 2.1では、通常のテキストに対して4.5:1以上、大きなテキストに対して3:1以上のコントラスト比を満たすことが求められています。また、色だけでなく形状や位置などでも情報を伝えるようにすることで、色覚異常のあるユーザーにも配慮することができるでしょう。
マウスやタッチデバイスを使用できないユーザーのために、キーボードのみでウェブサイトやアプリケーションのすべての機能を利用できるようにすることが重要です。適切なタブ順序を設定し、フォーカスを視覚的に表示することで、キーボード操作をサポートできます。また、十分な時間をかけてフォームを入力できるようにするなど、ユーザーの多様なニーズに対応することが求められます。
画像や動画などの非テキストコンテンツには、代替テキストを提供することが不可欠です。スクリーンリーダーを使用する視覚障がい者にとって、代替テキストは画像の内容を理解するための重要な手がかりとなります。単に画像の表面的な説明だけでなく、コンテンツの文脈に沿った的確な代替テキストを記述するようにしましょう。装飾的な画像には空の代替テキストを設定するなど、適切に使い分けることも大切です。
ウェブサイトやアプリケーションのナビゲーションは、シンプルで一貫性があり、直感的に理解できるものでなければなりません。ユーザーが目的のコンテンツにたどり着きやすいよう、明確なラベル付けやカテゴリー分けを行い、階層構造を浅くするように心がけましょう。また、現在位置を示すパンくずリストや検索機能の提供など、ナビゲーションを補助する要素を取り入れることも有効です。
これらの方法を実践することで、多様なユーザーがストレスなくデジタルサービスを利用できるようになります。ただし、アクセシビリティの向上は一朝一夕で実現できるものではありません。継続的な取り組みとユーザーフィードバックに基づく改善が必要不可欠です。自社のシステムをより良くしていくために、アクセシビリティを重要な評価軸の1つとして位置付け、積極的に対応していくことが求められます。
アクセシビリティ対応に積極的に取り組むことで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、主要なメリットについて解説いたします。
アクセシビリティに配慮したシステムやサービスを提供することで、障がいを持つユーザーを含む幅広い層のユーザーが快適に利用できるようになります。これにより、ユーザー満足度の向上が期待できます。満足度の高いユーザーは、リピーターとなりやすく、ポジティブな口コミを生み出す可能性も高まります。
アクセシビリティへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たす上で重要な要素の1つです。多様なユーザーに配慮したサービスを提供することで、企業イメージの向上につながります。また、アクセシビリティに優れたブランドとして認知されることで、ブランド価値の向上も期待できます。
国内外の法規制において、アクセシビリティに関する要件が定められている場合があります。これらの法規制に準拠することで、法的なリスクを回避し、安定的なビジネス運営が可能となります。また、訴訟のリスクを減らすことにもつながります。
アクセシビリティに配慮したウェブサイトは、検索エンジン最適化(SEO)の観点からもメリットがあります。適切な見出しの使用、代替テキストの提供、シンプルなナビゲーションなどのアクセシビリティ対策は、検索エンジンのクローラーにとってもコンテンツを理解しやすくなります。その結果、検索結果での上位表示につながる可能性があります。
以上のように、アクセシビリティ対応には多くのメリットがあります。自社のシステムやサービスをより良いものにしていくためには、アクセシビリティを重要な評価軸の1つとして位置付け、継続的な改善に取り組むことが推奨されます。
アクセシビリティとは、多様なユーザーが、デジタルサービスを快適に利用できるようにする試みです。国際的なガイドラインや各国の法規制に準拠し、コントラストの確保、キーボード操作への対応、適切な代替テキストの提供、シンプルなナビゲーションなどを実践することで、アクセシビリティの向上が図れます。企業にとってアクセシビリティ対応は、ユーザー満足度や企業イメージの向上、法的リスクの回避、SEO対策の改善など、多くのメリットをもたらします。自社のシステムをより良くするために、アクセシビリティを重要な評価軸として継続的に取り組むことが推奨されます。