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生体認証とは? わかりやすく10分で解説

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目次

生体認証は、指紋、顔、虹彩、静脈、声、歩行の特徴など、本人に結びつく特徴を使って本人確認を行う技術です。パスワードを記憶・入力する負担を減らしやすい一方で、生体情報は漏えい時に簡単に差し替えられない場合があります。導入時は、認証精度、なりすまし対策、データ保護、プライバシー、代替手段まで含めて設計する必要があります。

生体認証とは

生体認証の定義

生体認証とは、人の身体的特徴または行動的特徴を取得し、登録済みの情報と照合して本人確認を行う技術です。身体的特徴には指紋、顔、虹彩、静脈などがあり、行動的特徴にはタイピングのリズム、マウス操作、タッチ操作、歩行の特徴などがあります。

生体認証は、利用者が覚えている情報ではなく、本人に由来する特徴を使います。そのため、パスワードの盗み見や使い回しを減らしやすい反面、生体情報そのものや照合用テンプレートの管理を誤ると、長期的なリスクになります。

生体認証で確認すべき性質

  • 固有性:個人ごとに特徴の差があること
  • 取得可能性:センサーや端末で安定して取得できること
  • 照合安定性:登録時と利用時の差を許容しながら本人を判定できること
  • 耐なりすまし性:写真、動画、偽指などによる提示攻撃を受けにくいこと
  • 保護可能性:保存・送信・削除・アクセス権限を管理できること

ただし、生体認証は本人かどうかを確率的に判定します。誤って本人を拒否する場合も、誤って他人を受け入れる場合もあります。用途に応じて、閾値、再試行回数、代替手段、追加認証を設計します。

生体認証の種類

生体認証は、身体的特徴を使う方式と、行動的特徴を使う方式に分けられます。どの方式が適しているかは、利用環境、必要な保証水準、利用者負担、機器の制約で変わります。

  • 指紋認証:スマートフォンやPCで普及している方式です。濡れた指、傷、乾燥、センサーの状態で失敗する場合があります。
  • 顔認証:カメラで顔の特徴を取得する方式です。照明、マスク、角度、写真・動画による提示攻撃への対策を確認します。
  • 虹彩認証:虹彩の模様を使う方式です。高い精度を期待しやすい一方、専用機器や利用時の姿勢に制約が出る場合があります。
  • 静脈認証:手指や手のひらの静脈パターンを使う方式です。専用センサーが必要になりやすく、設置場所と運用手順を確認します。
  • 行動生体認証:タイピング、マウス操作、タッチ操作、歩行などの傾向を使います。体調や環境で変動しやすいため、単独認証よりもリスク判定の補助に使われることが多い方式です。

生体認証は万能ではない

生体認証は、利便性を高めやすい認証方式ですが、単独であらゆるリスクを解消するものではありません。写真、動画、マスク、偽指などによる提示攻撃、センサーの品質差、登録時の不備、利用者の身体状態や環境による認証失敗が起こり得ます。

また、生体情報は秘密情報ではありません。顔は写真に写り、指紋は触れた物に残る場合があります。漏えい時にパスワードのように簡単に変更できないこともあるため、認証精度だけでなく、保管方式、利用目的、代替手段、削除手順を含めて判断します。

情報セキュリティにおける生体認証の位置づけ

認証を構成する要素の一つ

情報セキュリティでは、本人確認はアクセス制御の前提になります。本人確認が弱いと、正規ユーザーを装った不正ログイン、情報漏えい、設定変更、内部システムへの侵入につながります。

認証要素は一般に、知識要素、所持要素、生体要素に分けられます。知識要素はパスワードやPIN、所持要素はICカードやスマートフォン、セキュリティキー、生体要素は指紋や顔などです。生体認証は、生体要素を使って本人性を確認する方式です。

多要素認証との関係

ネットワーク越しの本人認証で一定の保証水準を求める場合、生体認証は単独で使うより、所持要素や知識要素と組み合わせます。たとえば、端末やセキュリティキーを所持要素とし、生体認証をその認証器の活性化要素として使う構成があります。

多要素認証では、異なる種類の要素を組み合わせます。指紋と顔のように生体要素を二つ並べても、要素の種類としては同じです。二要素認証として扱うには、生体要素に加えて、端末、ICカード、セキュリティキー、PINなど別種の要素を要求する設計にします。


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パスワード認証との違い

パスワード認証は、利用者が文字列を記憶し、入力して本人確認を行います。問題は、漏えい、使い回し、推測されやすい文字列、フィッシング、入力負担です。長く複雑なパスワードを求めるほど、メモや使い回しを誘発する場合もあります。

生体認証は、入力の負担を減らしやすく、端末のロック解除や重要操作時の再認証に使いやすい方式です。一方で、認証失敗時の代替手段、なりすまし対策、テンプレート保護、利用者への説明が欠けると、導入後のリスクが増えます。

生体認証と情報セキュリティのイメージ

生体認証の利用シーン

スマートフォンやPCのロック解除

スマートフォンやPCでは、指紋認証や顔認証が端末のロック解除、アプリ起動時の本人確認、決済時の確認に使われます。利用者の入力負担を抑えながら、端末を所持していることと本人の特徴を組み合わせられる点が利点です。

ただし、端末を紛失した場合や、生体認証が失敗した場合に備え、PINやパスコード、遠隔ロック、端末管理の手順を準備します。企業利用では、MDM、端末証明書、アプリ制御と組み合わせて管理します。

オンラインサービスのログインと重要操作

オンラインサービスでは、生体認証をログイン時の追加確認や、送金、設定変更、個人情報閲覧などの重要操作の再認証に使う場合があります。特に、FIDO認証のように、端末側で生体情報を使って認証器を活性化し、サービス側には公開鍵暗号で応答する方式では、生体情報をサービス側へ送らない設計を取りやすくなります。

オンライン認証では、サービス側に生体画像やテンプレートを集約する構成と、端末内で照合する構成でリスクが変わります。中央サーバーに照合情報を置く場合は、大規模漏えい時の影響が大きくなるため、暗号化、アクセス制御、監査ログ、保存期間、削除手順を厳格に決めます。

企業の入退室管理と業務端末利用

企業では、入退室管理、重要区画への入室、共有端末へのログイン、管理者操作の確認などに生体認証を使う場合があります。ICカードや社員証だけでは貸し借りが起こり得るため、生体要素を追加することで本人性を補強できます。

一方で、従業員が生体認証を使えない場合や、センサーが故障した場合に業務が止まらないよう、代替認証と承認手順を用意します。労務管理や監視に転用される懸念もあるため、利用目的、取得範囲、保存期間、アクセス権限を事前に明示します。

生体認証データの管理

画像ではなくテンプレートとして扱う

生体認証では、指紋画像や顔画像そのものをそのまま使い続けるのではなく、照合に必要な特徴を抽出したテンプレートとして扱う設計が一般的です。テンプレートは、元の画像より扱いやすい一方、本人認証に使える水準であれば保護対象になります。

テンプレートを保存する場合は、暗号化、アクセス制御、保存場所、バックアップ、削除手順を決めます。端末内のセキュア領域で照合する設計か、サーバー側で照合する設計かによって、漏えい時の影響と運用負荷が変わります。

個人情報保護法上の扱いを確認する

日本の個人情報保護法上、顔、虹彩、声、歩行、静脈、指紋、掌紋など、規定された身体的特徴から抽出した特徴情報を、本人認証を目的とする装置やソフトウェアで本人を認証できるようにしたものは、個人識別符号に該当します。個人識別符号を含む情報は個人情報として扱います。

一方で、タイピングリズムやマウス操作などの行動データは、直ちに同じ条項の個人識別符号と断定せず、本人識別性、他情報との照合可能性、利用目的、保存形態を確認します。生体認証で扱うデータは、法令上の区分と実際の識別可能性を分けて判断します。

目的外利用と過剰収集を避ける

生体情報は、利用目的を明確にして取得します。入退室管理のために取得したデータを、勤怠評価、行動分析、マーケティングなど別目的に転用すると、利用者の不信感と法的リスクが増えます。

取得する特徴量は本人確認に必要な範囲に限定し、保存期間と削除条件を決めます。委託先が処理に関与する場合は、再委託、アクセス権限、ログ、削除証跡、事故時の連絡手順まで契約と運用で確認します。

生体認証の課題と対策

誤拒否と誤受入れ

生体認証には、本人を誤って拒否する誤拒否と、他人を誤って受け入れる誤受入れがあります。利便性を優先して閾値を緩めると誤受入れが増えやすく、厳しくすると誤拒否が増えやすくなります。

用途に応じて、閾値、再試行回数、追加認証、代替手段を設計します。高リスクな操作では、生体認証だけで処理を完了させず、PIN、ICカード、端末証明書、管理者承認などを組み合わせます。

提示攻撃とライブネス検知

写真、動画、マスク、偽指、録音音声などを使ってセンサーをだます攻撃は、提示攻撃と呼ばれます。対策では、提示攻撃検知(PAD)を検討します。ライブネス検知はPADの一部であり、まばたき、奥行き、血流、反射、動きなどを使って、生体サンプルが実在する本人から取得されている可能性を高める仕組みです。

ただし、ライブネス検知を備えていれば十分とは限りません。センサーの耐タンパ性、認証器の保護、端末改ざんへの対策、失敗回数の制限、重要操作時の追加認証も組み合わせます。

生体情報の漏えい

生体情報は、パスワードのように再発行しにくい場合があります。漏えい時に被害を抑えるには、元画像を不要に保存しない、テンプレートを暗号化する、端末内照合を優先する、中央保管を避けられる構成を検討する、アクセス権限を最小化する、といった管理が必要です。

漏えい時の対応手順も準備します。対象データ、影響範囲、利用停止、再登録、本人通知、委託先確認、関係機関への報告要否を判断できるよう、事前に責任者と手順を決めます。

利用者への説明と代替手段

生体認証は、利用者の身体に結びつく情報を扱います。導入時は、取得する情報、利用目的、保存場所、保存期間、第三者提供の有無、削除方法、問い合わせ先を説明します。

また、けが、病気、障害、宗教・文化的理由、機器との相性によって、生体認証を使いにくい利用者がいます。代替手段を用意しない設計は、利用者の排除や業務停滞につながります。PIN、ICカード、ワンタイムパスワード、管理者承認など、用途に応じた代替手段を準備します。

導入時に確認する項目

用途と必要な保証水準

最初に、生体認証を何に使うのかを明確にします。スマートフォンのロック解除、社内システムへのログイン、重要操作の再認証、入退室管理では、求める保証水準と許容できる失敗率が異なります。

高リスクな用途では、生体認証単独ではなく、多要素認証、端末管理、ログ監査、異常検知を組み合わせます。低リスクな用途でも、認証失敗時の代替手段と問い合わせ対応は必要です。

データの保存場所と照合方式

生体情報を端末内で照合するのか、サーバー側で照合するのかを確認します。端末内照合は、サービス側に生体情報を集約しにくい点が利点です。サーバー側照合は、一元管理しやすい反面、漏えい時の影響が大きくなります。

保存場所を決める際は、暗号化、鍵管理、アクセス権限、ログ、バックアップ、削除、障害時の復旧、委託先の管理まで確認します。

なりすまし対策と失敗時対応

導入する方式ごとに、提示攻撃への耐性、センサー品質、失敗回数の制限、追加認証の条件を確認します。写真や動画への対策が必要な顔認証、偽指への対策が必要な指紋認証など、方式ごとに確認点が異なります。

認証に失敗した場合の再試行、ヘルプデスク対応、本人確認、再登録、緊急時の一時解除手順も決めます。失敗時対応が曖昧だと、現場で例外処理が増え、セキュリティと利便性の両方が崩れます。

監査と継続的な見直し

生体認証は、導入後も継続的に確認します。認証失敗率、誤受入れの疑い、ヘルプデスク件数、センサー故障、代替手段の利用状況、権限変更、ログ確認の結果を定期的に評価します。

利用者の増加、端末変更、OS更新、制度変更、業務変更があると、認証方式の妥当性も変わります。導入時の設計で固定せず、利用状況とリスクの変化に合わせて調整します。

まとめ

生体認証は、指紋、顔、虹彩、静脈、声、歩行などの特徴を使って本人確認を行う技術です。入力負担を減らしやすく、スマートフォン、PC、オンラインサービス、入退室管理などで利用されています。一方で、判定は確率的であり、誤拒否、誤受入れ、提示攻撃、データ漏えい、プライバシー上の懸念が残ります。

情報セキュリティで生体認証を使う場合は、単独の認証方式として過信せず、所持要素や知識要素と組み合わせます。特にオンライン本人認証では、生体情報を端末内で認証器の活性化に使い、サービス側には生体情報を集約しない設計を検討します。

導入時は、用途、保証水準、保存場所、照合方式、なりすまし対策、代替手段、説明と同意、監査方法をそろえて確認します。生体認証の価値は、技術そのものではなく、認証精度、情報管理、運用手順を一体で維持できるかで決まります。

Q.生体認証とは何ですか?

A.指紋、顔、虹彩、静脈、声、歩行など、本人に結びつく身体的・行動的特徴を使って本人確認を行う技術です。

Q.生体認証はパスワードより安全ですか?

A.盗み見や使い回しを減らしやすい一方、なりすまし対策やデータ管理が不十分だとリスクが残ります。用途に応じて他の認証要素と組み合わせます。

Q.生体認証は偽造できないのですか?

A.偽造や提示攻撃の可能性はあります。写真、動画、偽指などへの対策として、提示攻撃検知、ライブネス検知、多要素認証を検討します。

Q.生体情報が漏えいしたらどうなりますか?

A.パスワードのように簡単に変更できない場合があります。保存するデータを最小化し、暗号化、アクセス制御、削除手順、代替認証を準備します。

Q.生体認証では誤判定が起きますか?

A.起きます。本人を拒否する誤拒否と、他人を受け入れる誤受入れがあるため、用途に応じて閾値、再試行回数、追加認証、代替手段を決めます。

Q.生体情報は画像として保存されますか?

A.多くの認証方式では、照合に必要な特徴を抽出したテンプレートとして扱います。ただし、本人を認証できる水準の特徴情報は保護対象として厳格に管理します。

Q.生体認証だけでログインさせてもよいですか?

A.高い保証水準を求めるオンライン認証では、生体認証だけに依存せず、端末やセキュリティキーなどの所持要素、PINなどと組み合わせます。

Q.行動生体認証はどのような用途に適していますか?

A.タイピングや操作の癖は環境や体調で変動するため、単独の本人確認よりも、普段と異なる操作を検知するリスク判定の補助に使いやすい方式です。

Q.ライブネス検知とは何ですか?

A.写真や動画などではなく、生体から取得している可能性を高めるため、まばたき、奥行き、血流、反射、動きなどを確認する仕組みです。

Q.生体認証を導入するときの確認項目は何ですか?

A.用途、保証水準、保存場所、照合方式、なりすまし対策、データ保護、プライバシー説明、失敗時の代替手段、監査方法を確認します。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム