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BLEとは? わかりやすく10分で解説

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目次

BLE(Bluetooth Low Energy)は、Bluetoothの仕組みをベースにしつつ「電池で長く動くこと」を強く意識して設計された近距離無線の規格です。ワイヤレス周辺機器やスマートホーム、ヘルスケア、ビーコンなどで当たり前のように使われていますが、用途によってはBluetooth Classicのほうが適する場面もあります。本記事では、BLEの基本、Classicとの違い、通信の仕組み、省電力の理由、代表的な活用例と設計・運用の注意点まで、誤解が起きやすいポイントを整理します。

BLEとは

BLE(Bluetooth Low Energy)は、省エネルギーでの利用を目的として設計されたBluetoothの無線通信規格です。短いデータを「必要なときだけ」送受信し、無線を使わない時間はデバイスをスリープさせやすい構造を持つため、電池駆動のセンサーやビーコン、ウェアラブルなどで特に力を発揮します。

現在では、ワイヤレスヘッドセットやマウス、キーボードなどの周辺機器に加え、スマートホーム(照明・鍵・温湿度センサー等)、医療・フィットネス機器(心拍計・体温計・活動量計等)など、幅広いデバイスで使われています。スマートフォン(iPhone/Android)側がBLEを標準的にサポートしている点も、普及を後押ししている要因です。

BLEとBluetooth Classicの違い

BLEとBluetooth Classicは、どちらも同じ2.4GHz帯を利用するBluetoothファミリーですが、想定する使い方が異なります。大づかみに言うと、Classicは「連続的な通信(音声・ストリーミング等)」を得意とし、BLEは「断続的な小さなデータ交換(センサー値・状態通知等)」を得意とします。

通信の前提が違う

Bluetooth Classicは、比較的連続した通信を前提にした設計です。一方BLEは、接続して通信する場合でも「短い通信を低い頻度で行い、合間はスリープする」運用がしやすいように作られています。これにより、同じ“無線通信”でも、電池寿命の設計が大きく変わります。

得意・不得意が違う

  • BLEが得意:センサー値の送信、機器状態の通知、簡易コマンド、ビーコン(広告)、電池駆動デバイスの長寿命運用
  • Classicが得意:音声や連続ストリーミング、比較的大きなデータを継続的に扱う用途

「BLEは高速で大量のファイル転送に向く」と理解されることがありますが、一般的なBLEの主戦場は“少量データを確実に、低電力で”です。ファイル転送のような用途では、Wi-FiやUSB、あるいは用途に応じて別の近距離通信(例:NFCで起動・認証して、実データは別経路で転送)を組み合わせる設計もよく採られます。

BLE規格の起源と発展

BLEは、2006年にノキアが「Wibree」として提案した省電力無線が起点となり、その後Bluetooth SIGに取り込まれる形で発展しました。2009年にBluetooth 4.0として正式に登場し、以降のバージョン更新で省電力性を維持しながら、接続の安定性、セキュリティ、実装の柔軟性などが強化されてきました。

IoT用途の拡大に伴い、センサー・ビーコン・ヘルスケア・産業用途など、用途ごとの要件(電池寿命、同時接続数、遅延、混雑耐性、セキュリティ)を満たせるよう、プロファイルや周辺技術も整備されています。

BLEの特徴

最大の特徴は省電力

BLEの最大の特徴は、消費電力を抑えやすい点です。たとえばビーコンのように、短い識別情報を一定間隔で送るだけの使い方であれば、コイン電池で長期間の稼働を狙えます。もちろん実際の電池寿命は、送信間隔、送信出力、周囲環境、温度、電池の品質などにも左右されます。

スマートデバイスとの親和性が高い

スマートフォンやタブレットがBLEの「セントラル(中央)」として動作し、センサーや周辺機器が「ペリフェラル(周辺)」として接続される構成は、今や典型的です。専用ゲートウェイを置かずに、スマホアプリからデバイスの状態確認や設定変更ができる点は、利用者体験の面でも大きな利点になります。

同時に複数デバイスを扱える(ただし役割に依存)

一般に、セントラル側(例:スマホ、ゲートウェイ)は複数のペリフェラルに同時接続できます。一方でペリフェラル側は、機器の実装や設計思想によって同時接続数や振る舞いが異なります。設計時は「どちらがセントラルになるのか」「同時に何台とつなぐ必要があるのか」を先に整理しておくことが重要です。

BLEの主な用途

BLEは、省電力性とスマートデバイスとの相性の良さから、さまざまな領域で使われています。ここでは代表例を、用途の“狙い”が分かる形で整理します。

IoT(センサー・スマートホーム)

温湿度、開閉、照度、人感など、センサーが周期的に小さなデータを送る用途はBLEが得意とする領域です。スマートホームでは、照明や鍵、各種センサーがスマホやハブ(ゲートウェイ)と連携し、状態確認や制御に利用されます。ポイントは「常時大量通信」ではなく、「必要な情報を必要なときに確実に渡す」ことです。

ヘルスケア・フィットネス(ウェアラブル)

活動量計、心拍計、体温計、血圧計など、電池寿命と装着性が重要なデバイスでBLEは定番です。測定値をスマホへ転送し、グラフ表示やクラウド連携につなげる設計も一般的です。ここでも重要なのは、測定データを“適切な粒度と頻度”で送り、電池寿命とユーザー体験(遅延・安定性)のバランスを取ることです。

周辺機器(マウス・キーボード等)

入力デバイスは「小さなデータを高い頻度で送る」タイプの代表例です。BLEは省電力を軸に、低遅延と安定性を両立する実装が成熟しており、モバイルからPCまで幅広く採用されています。

位置・近接検知(ビーコン)

BLEビーコンは、デバイスが「接続」せずに、一定間隔で識別情報などを周囲へ発信し、受信側がそれを手がかりに近接を判断する活用です。店舗での導線分析、展示のガイド、見守りなど、目的に応じて設計されます。

ただし、BLEビーコンで分かるのは原則として「近い/遠いの目安」です。壁や人体、什器、電波干渉の影響を受けやすく、数メートル単位の正確な測位を常に保証できるものではありません。用途に応じて「期待する精度」と「許容誤差」を先に決めておく必要があります。

BLEの通信方式

BLEを理解するうえで重要なのは、「役割(ロール)」と「接続しない通信(広告)」の存在です。BLEは常に“接続して通信する”とは限りません。

セントラルとペリフェラル

セントラル(Central)は、周囲のデバイスを探索し、接続を開始する側です。スマートフォンやタブレット、ゲートウェイがこの役割を担うことが多いです。ペリフェラル(Peripheral)は、接続要求を受け入れ、セントラルからの読み書きに応じてデータを提供する側です。センサーや周辺機器、ビーコン機器などが典型例になります。

なお、デバイスによっては状況に応じてセントラルにもペリフェラルにもなれます。たとえば、ある機器はスマホとはペリフェラルとして接続しつつ、別のセンサーとはセントラルとして接続する、といった構成も技術的には可能です(実際に可能かはチップやOS、実装設計によります)。

接続しない通信(広告:Advertising)

BLEには、接続を張らずに短い情報を発信する「広告(Advertising)」があります。ビーコンはこの代表例で、発信側が一定間隔でデータを送信し、受信側がスキャンして受け取ります。接続の確立が不要なぶん、単純で省電力にしやすい一方、受け取れるデータ量や信頼性(取りこぼし)には設計上の制約が出ます。

接続シーケンスの基本

  1. セントラルが周囲をスキャンし、ペリフェラルの広告を見つける
  2. セントラルが接続要求を送る
  3. 接続が成立すると、セントラルがペリフェラルのデータを読み取ったり、必要に応じて書き込んだりする
  4. 通信が不要になれば切断し、デバイスは再び省電力状態へ移行する

実務では、この流れに加えて「どのタイミングで起きるか(接続間隔)」「どのくらいスリープするか(レイテンシ)」「再接続をどう扱うか」などの設計が、省電力性と安定性を左右します。

BLEビーコン技術

BLEビーコンとは

BLEビーコンとは、BLEの広告機能を使って、一定間隔で識別情報などを発信する小型装置です。受信側(スマホやゲートウェイ)がビーコンの電波を受け取り、近接の手がかりとして利用します。設置が容易で、電池駆動で長期稼働を狙えるため、店舗・施設・イベントなど幅広い場面で採用されています。

ビーコンの仕組み

ビーコンは、広告パケットとしてID等を送信します。受信側は、受信強度(RSSI)の傾向などから距離の目安を推定し、「近いときだけ通知する」「特定エリアに入ったら案内を出す」などに活用します。

ただし、RSSIは環境変動の影響を強く受けます。人の往来や設置位置のズレ、電池残量によっても揺れるため、運用では「固定値で判定し続ける」のではなく、閾値の見直しや複数ビーコンの併用など、現場でチューニングする前提で設計するほうが安全です。

ビーコンの設定で変わるポイント

ビーコン運用では、少なくとも次のパラメータが、電池寿命と体感品質に直結します。

  • 発信間隔:短いほど検知しやすいが電池消費は増える
  • 送信出力:強いほど届きやすいが電池消費は増え、他ビーコンとの干渉も増えやすい
  • 設置位置:遮蔽物や人体の影響を避け、用途に合うカバー範囲を作る

BLEの省エネ特性と活用

省エネが成立する理由

BLEが省電力にしやすい理由は、通信が必要でない時間に無線回路を休ませやすいこと、そして通信そのものを短時間で終えやすいように設計されていることにあります。常時通信ではなく「短時間の送受信+長いスリープ」を基本に組み立てられるため、電池駆動の設計と相性が良くなります。

省電力化を左右する設計要素

省電力化は、ハードウェア(チップの特性、電源設計)とソフトウェア(通信頻度・スリープ制御)の両方で決まります。たとえば、次のような設計判断が、そのまま電池寿命の差になります。

  • どの頻度で送信するか(イベント駆動か、一定周期か)
  • 1回あたりの送信量をどう設計するか(細切れにするか、まとめて送るか)
  • 接続の維持が必要か(広告だけで足りるか、接続が必要か)
  • 再送や再接続が増える環境か(混雑・遮蔽物・干渉が多いか)

「とにかく省電力にする」だけでは、取りこぼしや遅延が増え、使い勝手が悪くなります。逆に品質優先で頻度を上げすぎると、電池寿命が一気に縮みます。用途に応じた“落としどころ”を先に決めることが、設計のコツです。

セキュリティ上の注意点

BLEは便利な一方で、無線である以上、盗聴・なりすまし・追跡といったリスクをゼロにはできません。特に、広告(ビーコン)のように“そもそも公開情報を飛ばす”使い方では、受信できる人を限定できない前提があります。

よくあるリスク

  • ペアリング/認証が弱い運用による不正接続
  • ビーコンIDのコピーによるなりすまし
  • 機器固有情報が露出することによる追跡(プライバシー問題)

対策の考え方

対策は「機器が扱う情報の重要度」と「攻撃が成立した場合の影響」で強度を決めるのが現実的です。たとえば、鍵や医療データのように影響が大きい用途では、強い認証、暗号化、権限設計、更新運用(鍵のローテーション等)を前提に設計すべきです。一方、ビーコンで単に“案内を出す”だけなら、個人に紐づく情報を送らない、サーバー側で検証する、といった設計でリスクを抑えられます。

まとめ

BLEは、省電力での近距離通信を得意とするBluetooth規格であり、センサー、ウェアラブル、周辺機器、ビーコンなど幅広い用途で活用されています。Bluetooth Classicとは得意分野が異なるため、連続通信が必要なのか、断続的な小データ通信で足りるのかを基準に選ぶのが基本です。

また、BLEの実力は「規格の理解」だけでなく、設計パラメータ(送信間隔、接続間隔、送信出力、運用環境)を用途に合わせて調整できるかで大きく変わります。省電力と品質、そしてセキュリティのバランスを前提に、最初に目的と制約を整理してから設計することが、失敗しない近道です。

BLEに関するFAQ

Q.BLEは何が「省エネルギー」なのですか?

無線を使わない時間にスリープしやすく、短時間の通信で必要なデータをやり取りする設計だからです。

Q.BLEとBluetooth Classicはどちらを選ぶべきですか?

連続通信や音声などが中心ならClassic、センサー値など小データを低電力で扱うならBLEが基本です。

Q.BLEはファイル転送のような大量データにも向きますか?

一般に主戦場は少量データのやり取りで、大量データはWi-Fi等の別手段が適することが多いです。

Q.ビーコンは接続しないのに、どうして情報が届くのですか?

ビーコンが広告パケットとして情報を発信し、受信側がスキャンして受け取る仕組みだからです。

Q.ビーコンで位置を正確に特定できますか?

環境の影響を受けやすく、原則は近接の目安であり、常に高精度な測位を保証するものではありません。

Q.セントラルとペリフェラルとは何ですか?

セントラルは接続を開始する側、ペリフェラルは接続を受け入れてデータを提供する側の役割です。

Q.スマホは何台ものBLE機器に同時接続できますか?

一般にセントラルとして複数ペリフェラルへ同時接続できますが、台数は端末やアプリ設計に依存します。

Q.BLEの電池寿命は何で決まりますか?

送信間隔、送信出力、接続の維持有無、再送の多さ、周囲環境などの組み合わせで決まります。

Q.BLEは安全に使えますか?

ペアリングや暗号化などの機能はありますが、用途に応じた認証設計や運用がないとリスクが残ります。

Q.2.4GHz帯の混雑はBLEに影響しますか?

影響します。Wi-Fi等と干渉し得るため、設置環境やパラメータ調整を前提に設計するのが安全です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム