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BOMとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

BOMとは?

BOM(Bill of Materials)とは、日本語で「部品表」を意味し、製造業の現場で広く使用されています。製品を製造するために必要な部品や素材を明示したもので、その製品の「レシピ」のようなものだといえます。 BOMには、部品の名前、型番、メーカー、数量、規格など、各部品の詳細情報が載せられています。

BOMを理解するには、製品管理との関連性を意識することが近道です。製品を製造するためには、使用する部品の一覧を明確に管理することが重要であり、それがまさにBOMの役割です。

また、BOMの中にはさまざまな要素が含まれています。それぞれ異なる機能や目的を持っており、製造現場での使用法も異なります。具体的には、品名、型名、品目コード、IS規格といった基本用語を理解しすることも重要となります。

製造業におけるBOMの重要性

BOMは、製造業における生産活動に不可欠なツールで、その目的は「部品の管理を効率的に行うこと」です。BOMを活用することで、製品に必要な各部品の一覧を完全に把握し、必要な部品を適切なタイミングで揃えることができます。その結果、手配漏れや部品不足を防ぐことが可能となります。

加えて、BOMを使用することで、部品の棚卸し作業も容易になります。手動で行う場合と比べ、ヒューマンエラーを防ぎつつ、正確な在庫数を維持できます。

さらに、BOMは製造業のコストコントロールにも役立ちます。部品の必要量とそのコストを把握することで、製品製造コストの見積もりや分析、そして最適化が可能となります。以上のような理由から、BOMの重要性は非常に高く評価されています。

BOMの種類とその特徴

BOMには複数の種類があります。一つ目は「サマリ型」で、すべての必要な部品を並列にまとめた部品表です。二つ目は「ストラクチャ型」で、製品完成までの過程を部品の組み立て順序と親子関係で表した部品表です。

製造業における用途別に4種のBOMが存在します。E-BOM(設計部品表)、M-BOM(製造部品表)、S-BOM(サービス部品表)、及び購買BOMです。これらのBOMはそれぞれ異なる目的と特徴を持っており、それぞれの業界や企業のビジネスニーズに合わせて個別に使用されます。

各種類のBOMが提供する情報の範囲は、製品設計の詳細仕様から部品の加工工程情報、さらには保守・メンテナンスに関する情報や、調達する部品の情報まで非常に広範囲です。

BOMの日々の運用

BOMの日々の運用は、製品製造のための部品を管理し、生産効率を高めるための活動です。具体的には、部品の調達、部品在庫の管理、そして製品組立のスケジュール管理等が含まれます。

日々の運用における一つの大きな課題は、部品の変更管理です。製品設計の変更は頻繁に発生するため、それに伴う部品の追加や変更を即座にBOMに反映する必要があります。そのため、BOMをバージョン管理することが重要となります。

また、製造現場の状況に合わせて、BOMの効果的な運用方法が必要です。具体的には、適切な部品表形式の選択、適切な調達戦略の策定、正確な部品調達のスケジューリングなどが求められます。

BOM独自の管理

サマリ型BOM

サマリ型BOMは、製品の各部品が一覧でまとめられているタイプの部品表です。製品を製造するために必要な部品を全てリストアップしていますので、管理者はこの表を見ることで「何が」「どれだけ」必要なのか一目瞭然です。これにより手配漏れや部品不足を未然に防ぐことが可能になります。

ただし、各部品の関連性や組み立て順序等は明記されていないため、製造工程管理の面では情報が不足してしまうという特徴があります。一覧性や部品の網羅性に優れている一方で、具体的な製造工程に対する情報は求められません。

このように、サマリ型BOMは「何が必要か」を明確にするための部品管理方法と言えます。

ストラクチャ型BOM

ストラクチャ型BOMは、製品の組み立て順序や部品の関連性を表現したタイプの部品表です。各部品の親子関係や取り付け順序等が明記されているため、「どの部品から順に製造すれば良いか」がわかります。

このような情報は製造工程の管理にとって重要な指標となるため、ストラクチャ型BOMは製造業の現場でしばしば使用されます。

ただし、各部品の網羅性や部品の一覧性については、サマリ型BOMに劣るという欠点もあります。

自社に適したBOMタイプの選択

サマリ型BOMとストラクチャ型BOMの選択は、その製品の特性や部品表を使う業務の性質によって変わります。一般に、多種多様な部品を使用する製品や、部品の手配や在庫管理が主なタスクの業務ではサマリ型BOMを、組み立て工程の管理が重要な業務ではストラクチャ型BOMを選択すると良いでしょう。

一つの部品表で全ての情報を網羅しようとすると情報過多になり、逆に業務効率を落とす可能性があります。部品表は必要な情報を効率良く、分かりやすく伝えるためのツールですので、それぞれの特徴を理解し、適材適所で使用することが重要です。

また、ウェアラブルデバイスや車など、高度な製造技術を要する製品では、部品の関連性や順序が非常に複雑となるため、ストラクチャ型BOMが優れていると考えられます。一方、単純な製品や、部品管理が主体の業務では、サマリ型BOMが適しているでしょう。

管理方式の選択

部品表の導入にあたり重要となるのは、情報の整理共有です。まずは必要な部品情報を洗い出し、その内容を明確にして記録するようにします。部品表の作成は時に手間がかかる作業ではありますが、この工程を丁寧にこなすことで後工程の業務効率が大きく向上します。

また、BOMを導入することで、部品の適切な管理、製造工程のスムーズな進行、在庫の最適化、コスト削減など、様々なメリットが期待できます。しかし、適切な導入と運用が求められるため、予め想定される労力やコストと得られるメリットを比較検討することが重要です。

一つの製造業においても、製品や部門の特性によって最適なBOMの形は異なります。それぞれの部門や業務のニーズを把握し、それに最適化した部品表を選択し、運用することが求められます。部品表の活用は、単に「部品を管理する」だけでなく、「より効率的な製造を実現する」ための重要な手段と言えるでしょう。

用途別のBOMについて

製造業で活用されるBOMの中でも特に用途別に分けられる4つの種類、すなわちE-BOM、M-BOM、S-BOM、購買BOMについて詳細に解説します。

それぞれの概要、活用法、その特徴について深く掘り下げていきましょう。

BOMの種類を理解することで、適切なBOMを活用し、より一層難しい部品管理を効率的に行うことが可能となります。

E-BOM(設計部品表)とその活用

E-BOMは"Engineering Bill Of Materials"の略で、製品設計の仕様を満たすために必要な部品一覧を表します。これには部品の種類、規模、数などが含まれます。

E-BOMは設計段階で作られます。技術者が何を設計しているのか、何が必要なのかを論理的に表現したものです。これを活用することで、製品設計がより効率的になります。

また、E-BOMを基にした開発過程の管理により、進行状況の把握、予測の精度を向上することも期待できます。

M-BOM(製造部品表)とその活用

M-BOMは"Manufacturing Bill Of Materials"の略で、E-BOMに加えて、製造工程、部品の組み立て順序、工場で使用される機器や装置の情報などを含んだものです。

M-BOMが重視されるのは製造段階です。この段階で部品点数が確定し、部品の手配や生産計画の原資料として使われます。

M-BOMを適切に管理することで、生産工程の複雑性を軽減し、生産コストを削減する製造計画策定に役立ちます。

S-BOM(サービス部品表)とその活用

S-BOMは"Service Bill Of Materials"の略で、保守やメンテナンスに必要な部品一覧を含みます。

製品のメンテナンスを効率的に行うために、製品の修理や交換が必要な部品をすべてまとめたものがS-BOMです。

S-BOMの存在は、製品のアフターサービスにおいて極めて重要であり、顧客満足度向上や製品の信頼性を保つ立場からも、適切に管理し活用することが求められます。

購買BOMとその活用

購買BOMは、購買部門が調達する部品をまとめたものです。これは、部品を調達する際の購買情報を把握するために使用されます。

購買BOMを活用することで調達部門は、需要予測がより的確になったり、購買効率の向上、調達リスクの減少につながります。

このように購買BOMを適切に管理することで、企業の調達戦略の最適化に寄与します。

BOMシステムの導入メリット

現在、多くの製造業では部品の管理に効率が求められており、そこで登場するのがBOMシステムです。このセクションでは、その導入の必要性、具体的なメリットや効果、そして導入時の注意点について解説します。

BOMシステムの必要性

製造業における部品管理の難しさは、部品の多種多様さと変動によるものです。その管理を人為的に行うと、手配漏れや部品不足といったミスが生じる可能性があります。また、部品の種類や数量、製造元といったデータが日々変動するため、常に最新の情報に基づいた管理が求められます。

これらの課題を解決するために必要なのが、BOMシステムの導入です。BOMシステムは、部品情報を一元的に管理し、最新の情報に基づいて部品の手配を行うことができます。これにより、部品管理の効率性と精度が大きく向上します。

また、BOMシステムを導入することで、製造現場の人員をより価値ある業務に集中させることが可能となります。これは、製造業にとって大きな競争力となります。

BOMシステムの効果

まず最初に挙げられるBOMシステムのメリットは、人為的ミスの減少です。部品の手配漏れや部品不足を防止することで、生産ラインの遅延やロスを防ぐことが可能となります。

次に、BOMシステムは部品情報をデータ化するため、部品の追加や変更が容易です。これにより、製品の改良や新製品の開発がスムーズに進められます。

また、BOMシステムを導入することで、部門間での情報共有が容易になります。これにより、各部門間の連携がスムーズになり、全体の業務効率が向上します。

BOMシステムの注意点

BOMシステムを導入する際の最も重要なポイントは、品目コードの整備です。品目コード未設定の部品が存在すると、システムの有効性が半減してしまいます。

また、BOMシステムを導入する際には、各部門間でのBOMの統合も必要となります。これにより、全社規模での部品管理が可能になります。

さらに、BOMシステムの導入には一定のコストがかかります。そのため、導入のタイミングや予算計画もしっかりと考える必要があります。

BOMの最適な管理方法

BOMの最適な管理方法は、生産管理システムを利用することです。生産管理システムは、生産プロセス全体を統合的に管理することが可能で、BOMの管理だけでなく、生産スケジュールの管理や品質管理も一元的に行うことが可能です。

生産管理システムを使用することで、BOMシステムと他のシステムが連携し、より高度な生産管理が可能となります。

最適なBOMの管理方法は、業務プロセスや製品の特性により異なります。そのため、自社の現状を踏まえて、最適なシステムの導入を検討することが重要です。

生産管理システムによる管理

生産管理システムを利用したBOM(部品表)管理は, 業務の効率化を図る一方で、製造業の様々な課題を解決するという大きなメリットがあります。

ここでは、そんな生産管理システムについて詳しく解説し、その使用で得られるBOM管理のメリットや導入時の注意点を解説します。

さらに生産管理システムを用いた効率的なBOMの運用方法についても触れていきます。

生産管理システムとは

生産管理システムとは、製品の製造から販売に至るまでの全工程を一元的に管理し、業務の効率化やコスト削減を目指すためのシステムです。

製品の生産計画や進捗管理、資材の在庫管理など、製造業にとって重要な業務を統合的に管理することで、よりスムーズかつ効率的な生産活動を支えます。

特に、BOM管理においては、部品の管理や調達、組み立て工程等を一元的に把握することが可能となり、生産効率の向上や人為的ミスの削減に寄与します。

生産管理システムによるBOM管理のメリット

生産管理システムを利用したBOM管理のメリットの一つは、データの一元化です。全ての部品情報をシステム内で一括管理することで、情報の把握や共有が容易となり、部品の手配漏れや在庫過剰などのリスクを軽減します。

また、部品の追加や変更が容易となることもメリットの一つです。それによりフレキシブルな生産体制の構築を促し、需要変動に迅速に対応することが可能となります。

さらに、システム化により人為的なミスを削減します。ワークフローの自動化とデータの正確性向上により、質の高い製品製造を支えます。

生産管理システム導入時の注意点

生産管理システムを導入する際には、まずはシステム選択をします。ユーザーフレンドリーさやカスタマイズ性、コストパフォーマンスなど、企業のニーズに合わせたシステムの選定が求められます。

また、システム導入後にも、定期的なメンテナンスや教育訓練、システム改善への取り組みが重要となります。これによりシステムを最大限に活用し、持続的な業績向上を進めます。

さらに、製造現場のフロアとのコミュニケーションも重要です。システム導入の意義や目的を共有し、スムーズな運用体制へとつなげます。

生産管理システムによる効率的なBOM管理

生産管理システムを用いた効率的なBOM管理の運用では、「全体最適」を常に意識します。全ての部品や工程を一元的に把握しながら、各部分が最適に動作するよう調整します。

また、生産管理システムのデータ分析機能を活用して、製品製造の改善ポイントを見つけ出すことも重要です。部品の在庫状況や需要予測、製造工程の効率等を分析し、改善策を実行します。

最後に、システムを通じて得られる豊富なデータをもとに、製造現場の実態や問題を把握します。それに基づいて生産戦略を見直し、組織全体の効率と生産性の向上を目指します。

BOMの今後

製造業における部品の管理に欠かせないBOM。情報の正確さと迅速な更新が求められる現代において、それらを実現する最新テクノロジーの活用はますます重要になりつつあります。本節ではそのあたりにスポットを当て、BOM管理の可能性とその未来について考えていきましょう。

AIやIoTの導入による進化

AIやIoTの導入によりBOM管理は大きな進化を遂げてきました。これらのテクノロジーは、部品の在庫管理や生産ロータリーの最適化、品質管理などを自動化し、人為的なミスを大幅に減らすことが可能になりました。

また、AIは複雑な組み立て順序を容易に管理でき、IoTを利用して部品の位置情報をリアルタイムに追跡することも可能です。このように、テクノロジーはBOM管理をより一層効率化・高度化するための強力な手段となっています。

これからもAIやIoTの進化によりBOM管理の可能性は無限に広がり、よりスムーズな製造業プロセスの実現に寄与するでしょう。

DXとBOM

デジタルトランスフォーメーション(DX)は製造業に多大な影響を及ぼしており、BOM管理もその一部です。DXの進行により、BOMは紙ベースの管理から電子化され、データベース化されることが多くなってきました。

DXにより部品データの一元化が進み、情報の精度や迅速な更新が可能になるだけでなく、全データがリンクされるため、部門間のコミュニケーションや業務効率も向上しています。このようなデータ管理の変革は、近代製造業におけるBOM管理における効率性、速度、正確さを向上させています。

今後、より一層のデジタル化が進むなかで、BOM管理の効率化とデータの利活用が一層進むことでしょう。

リアルタイムに更新されるBOM

BOM管理においてAIやIoT、そしてクラウド技術の応用により、リアルタイムのBOM更新が実現可能になっています。

膨大な量のデータをリアルタイムで分析し、適切な情報をタイムリーに提供することは、変動する市場に素早く対応し、競争力を保つ製造業にとって必要不可欠な要素です。

モノのインターネット(IoT)やAIにより生成・収集されるデータは、製造現場のリアルタイムな動きを反映し、更なる生産効率向上や品質管理を可能にします。

BOM管理の産業への貢献

BOM管理は単なる部品の管理だけでなく、製造業全体の業績向上にも寄与しています。製品の製造工程や部品情報は、製品の品質を決定し、結果として顧客満足度や市場での競争力に影響を与えます。

更に、BOM管理に最新テクノロジーを活用することで、生産効率の向上或いはコストの削減といった直接的なメリットだけでなく、新製品開発のスピードや製品ライフサイクル全体の管理、長期的な事業戦略策定等にも寄与できます。

BOM管理は製造業に多大な影響力を持つ重要な要素であり、その技術の進化は今後も引き続き、業界全体への影響力を増していくことでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム