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損益分岐点とは? 10分でわかりやすく解説

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UnsplashArt Lasovskyが撮影した写真  

赤字が続き、売上が伸び悩む企業にとって、「どうやって利益を出すか」は切実な課題です。この記事では、利益を生み出すための重要な指標である「損益分岐点」について、はじめての方にもわかりやすく解説します。損益分岐点を理解し、適切に活用することで、売上目標の設定やコスト管理、価格戦略など、さまざまな経営課題の解決につなげることができます。

損益分岐点とは何か

損益分岐点の定義

損益分岐点とは、企業の収益と費用が等しくなり、利益がちょうどゼロになる売上高(または販売数量)の地点を指します。言い換えると、その地点を1円でも上回れば黒字、下回れば赤字になる境目のラインです。

損益分岐点の重要性

損益分岐点を把握することは、企業経営において非常に重要です。損益分岐点を知ることで、「どれだけ売れば損をしないか」「どこから利益が出始めるのか」を具体的な数値で把握できます。さらに、目標利益を上乗せした「目標売上高」の設定にも役立ちます。

損益分岐点を下回る売上高では赤字となるため、損益分岐点は現在の収支状況を判断するうえでも欠かせない指標です。

損益分岐点と企業経営の関係性

損益分岐点は、以下のような企業経営の意思決定に役立ちます。

  1. 価格設定:損益分岐点を考慮することで、目標利益を確保できる価格レンジを検討できます。
  2. コスト管理:固定費・変動費の内訳を把握し、どこまで削減できるかを考える基準になります。
  3. 生産・販売量の調整:どのくらいの数量を売れば黒字になるのかを把握し、生産計画や販売計画に落とし込めます。

このように、損益分岐点は企業の収益性を判断するうえで欠かせない指標であり、中長期の経営戦略を立てる際の基礎データとなります。

損益分岐点を求める方法

損益分岐点を計算する前提条件

損益分岐点を正確に計算するためには、一般的に次のような前提条件を置きます。

  1. 固定費と変動費を明確に区分できること
  2. 売上高と変動費の関係が比例的(売上に応じて一定割合で増減)であること
  3. 生産量と販売量がほぼ一致していること(在庫の増減が小さいこと)
  4. 単価や原価率が分析期間中は大きく変化しないこと

これらの条件がある程度満たされていれば、損益分岐点の計算結果を経営判断の目安として活用できます。

損益分岐点の計算式

売上高ベースの損益分岐点は、次の式で求められます。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費 ÷ 売上高)

この式において、固定費は売上高に関わらず一定額発生する費用、変動費は売上高や販売数量に比例して増減する費用を指します。売上高から変動費を差し引いた金額が「限界利益(貢献利益)」であり、この限界利益が固定費を上回った分が利益となります。

主な用語のイメージは、次の表の通りです。

項目概要代表例
固定費売上高に関わらず一定額発生する費用家賃・基本給部分の人件費・減価償却費 など
変動費売上高や販売数量に比例して増減する費用材料費・仕入原価・販売手数料 など
限界利益売上高 − 変動費。固定費の回収と利益の源泉となる売上高が増えるほど拡大

損益分岐点計算の具体例

損益分岐点の計算を、具体例で確認してみましょう。

ある企業の年間固定費が1,000万円、変動費率が60%(売上高が増えると、その60%分が変動費として増える)であるとします。この場合、損益分岐点売上高は次のように求められます。

損益分岐点売上高 = 1,000万円 ÷(1 − 0.6) = 1,000万円 ÷ 0.4 = 2,500万円

この企業が利益を出すためには、少なくとも2,500万円の売上高が必要ということになります。売上高が損益分岐点(2,500万円)を上回れば黒字、下回れば赤字となるというイメージです。

損益分岐点を下げるための方策

企業は、損益分岐点をできるだけ低く抑えることで、早い段階で黒字化しやすくなります。主な方策は次の通りです。

方策具体例期待される効果
固定費の削減オフィス移転・サブスク契約の見直し・間接部門コストの削減固定費そのものが減り、損益分岐点売上高が低くなる
変動費率の改善仕入先の見直し・生産効率の向上・歩留まり改善限界利益率が高まり、少ない売上でも固定費を回収しやすくなる
売上高の増加販促強化・新商品の投入・販売チャネルの拡大損益分岐点を超える売上を安定的に確保しやすくなる
価格戦略の見直し値上げ・高付加価値商品の比率拡大・値引き条件の整理1件あたりの限界利益が増え、損益分岐点売上高が下がる

これらの施策を組み合わせて損益分岐点を引き下げることが、景気変動に強い・安定的な収益構造づくりにつながります。損益分岐点を意識しながら、継続的に改善策を検討していくことが重要です。

損益分岐点分析の活用方法

価格設定への応用

損益分岐点分析は、商品やサービスの価格設定に大きく役立ちます。損益分岐点と目標利益を前提に、「いくらで」「何個売れば」目標を達成できるかを逆算できるためです。

市場の需要や競合他社の価格帯を踏まえながら、自社の限界利益率を維持できる価格を検討することで、「売れているのに利益が残らない」といった事態を防ぎやすくなります。

コスト管理への活用

損益分岐点分析は、コスト構造の見直しにも有効です。固定費と変動費を分けて捉えることで、「どこを優先的に削減すべきか」「どの費用が利益を圧迫しているか」を可視化できます。

例えば、「固定費を1割削減できれば、損益分岐点売上高がどれだけ下がるか」「変動費率を数ポイント改善できれば、どのくらい利益が増えるか」といったシミュレーションを通じて、実効性の高いコスト削減策を検討できます。

事業計画立案への利用

新事業の立ち上げや既存事業の拡大を検討する際にも、損益分岐点分析は有効です。事業計画の段階で、想定される固定費・変動費・販売単価・販売数量から損益分岐点を算出すれば、どの程度の売上規模に到達すれば採算が取れるのか、投資回収にどのくらいの期間が必要なのかを事前に検討できます。

これにより、リスクの大きさや、計画が現実的かどうかを多角的に評価しやすくなります。

経営意思決定への反映

損益分岐点分析は、さまざまな経営意思決定の根拠としても活用できます。事業の継続・撤退、設備投資の是非、新拠点開設、人員増減などの判断において、「損益分岐点がどのように変化するか」を確認することで、より納得感のある意思決定が可能になります。

経営トップや管理職は、損益分岐点に関する情報を定期的に把握し、中長期の経営戦略や現場の予算管理に反映させていくことが求められます。

このように、損益分岐点分析は、価格設定・コスト管理・事業計画・経営意思決定など、企業経営のさまざまな場面で活用できる「共通言語」といえる指標です。損益分岐点を正しく理解し、自社の実情に合わせて適切に分析・活用することが、収益性の向上と安定的な事業運営につながります。

損益分岐点に関するよくある質問

Q.損益分岐点とは具体的に何を示す指標ですか?

損益分岐点は、収益と費用が等しくなり、利益がちょうどゼロになる売上高または販売数量の境目を示す指標です。この点を超えると黒字、下回ると赤字になります。

Q.損益分岐点売上高はどのような計算式で求めますか?

一般的には「損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費 ÷ 売上高)」または「固定費 ÷ 限界利益率」の式で求めます。限界利益率は「1 − 変動費率」です。

Q.変動費と固定費の違いがよく分かりません。

変動費は売上高や販売数量に比例して増減する費用で、材料費や仕入原価などが代表例です。固定費は売上に関係なく一定額発生する費用で、家賃や基本給部分の人件費などが該当します。

Q.損益分岐点を下げるには何を優先すべきですか?

固定費の削減と変動費率の改善が有効です。家賃やサブスクなどの固定費を見直しつつ、仕入や生産プロセスを改善して原価率を下げることで、損益分岐点を引き下げられます。

Q.サービス業や小売業でも損益分岐点分析は使えますか?

サービス業や小売業でも活用できます。売上単価、変動費率、固定費を整理すれば、必要な売上高や客数を算出でき、価格設定や販促計画の検討に役立ちます。

Q.複数の商品がある場合の損益分岐点はどう考えればよいですか?

商品構成比を前提として平均的な単価と変動費率を算出し、全体としての損益分岐点を求める方法が一般的です。主力商品ごとに個別の損益分岐点を試算するのも有効です。

Q.損益分岐点分析にはどのような限界や注意点がありますか?

単価やコストが一定と仮定しているため、価格変動や需要変動を完全には反映できません。また、準固定費の扱いが難しい点にも注意が必要で、他の指標と併用して判断することが重要です。

Q.どれくらいの頻度で損益分岐点を見直すべきですか?

価格改定や大きな投資、コスト構造の変化があったタイミングでは必ず見直すべきです。少なくとも年1回は、予算策定や事業計画とあわせて点検することが望ましいです。

Q.在庫の増減が大きい場合の損益分岐点はどう扱いますか?

在庫の増減が大きい場合は、生産量ではなく販売量ベースで分析する必要があります。売上高と売上原価を中心に、実際に販売された数量を前提として損益分岐点を計算します。

Q.中小企業が損益分岐点分析を始める際の第一歩は何ですか?

まずは月次の損益計算書から、売上高・変動費・固定費を仮置きでもよいので分類することです。そのうえで、現在の損益分岐点売上高を把握し、ギャップを埋める具体策を検討します。

まとめ

損益分岐点とは、収益と費用が等しくなり利益がゼロとなる売上高の地点を指します。このポイントを把握することで、目標利益を得るために必要な売上高を逆算でき、収支状況の判断や価格設定、コスト管理、事業計画立案など、さまざまな経営判断に活用できます。

損益分岐点を下げるためには、固定費の削減、変動費率の改善、売上高の増加、価格戦略の見直しといった方策が考えられます。損益分岐点分析には限界や前提条件もありますが、他の経営指標やマーケティング分析と組み合わせて総合的に判断することで、より実態に即した意思決定が可能になります。

変化の激しい経営環境のなかでこそ、損益分岐点という基本指標を押さえておくことが、企業の収益力と安定性を高める第一歩といえるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム