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パソコンを購入するとき、「CPUは速くしたいが、GPUはほどほどでいい」「静音性を優先したい」など、欲しい構成が人によって違います。そうした要望に合わせて仕様を選び、受注後に組み立てるのがBTO(Build to Order)です。この記事では、BTOの仕組みと大量生産との違い、導入・運用でつまずきやすいポイントまでを整理し、あなたの目的に合う選び方を判断できる状態を目指します。
BTO(Build to Order)とは、顧客の注文に応じて製品仕様を確定し、受注後に製造・組み立てを行う方式を指します。あらかじめ完成品を大量に作って在庫するのではなく、「注文を受けてから作る」ことを前提に、部材調達や組立工程を組み立てます。
パソコン分野では「BTOパソコン」という呼び方が一般的で、CPU・メモリ・ストレージ・GPU・電源・保証などを選択して購入する形がよく見られます。業界によっては「受注生産」や「受注組立」と表現されることもありますが、共通する考え方は、需要を見込みで作らず、注文で作ることです。
BTOは、次の特徴を持つ生産・提供の考え方です。
BTOを採用すると、顧客ニーズに合わせた提供がしやすくなり、売れ残り(完成品在庫)のリスクを抑えやすくなる一方で、部材調達や工程設計が不安定だと納期・品質が揺れやすい側面もあります。
BTOと大量生産方式は、同じ「ものづくり」でも前提が異なります。比較すると、判断軸がはっきりします。
| BTO | 大量生産方式 | |
|---|---|---|
| 生産方式 | 受注後に仕様確定し、製造・組立を開始 | 需要予測に基づき、計画生産して在庫する |
| 製品のカスタマイズ | オプションや構成選択で柔軟に対応しやすい | 標準仕様を中心に、バリエーションは限定されやすい |
| 在庫リスク | 完成品在庫は抑えやすいが、部材在庫の設計が重要 | 完成品在庫を抱えやすく、売れ残りリスクが大きい |
| コストの出方 | 個別対応で組立・管理コストが増えやすい | 規模の経済で製造コストを下げやすいが在庫コストが出やすい |
| 納期 | 部材・工程次第で変動しやすい | 在庫があれば短いが、欠品時は長くなる |
ポイントは「在庫をゼロにできる」ではなく、何を在庫し、どこを受注後に動かすかを設計する点にあります。完成品を持たなくても、主要部材の在庫や調達枠が弱いとリードタイムは伸びます。
BTOのメリットには、次のようなものがあります。
一方で、デメリット(注意点)もあります。
購入者側の観点でも、BTOは「自由に選べる」反面、選び方を誤ると用途に合わない構成になります。例えば、動画編集を想定しているのにメモリ容量やストレージ種別を軽視してしまう、といったズレは起きがちです。
BTOは、次のような条件で効果が出やすい方式です。
逆に、仕様差が小さく大量に売れるものや、即納が最優先のものは、大量生産+在庫の方が合理的になる場合があります。どちらが正しいかではなく、製品特性と提供価値、供給能力を合わせて選ぶことが重要です。
BTOは「受注してから作る」方式ですが、実務では“受注後にすべてが始まる”わけではありません。短納期を保つには、部材の調達枠、工程の標準化、構成管理の仕組みが前提になります。
BTO(受注生産・受注組立)は、一般に次の流れで進みます。
この流れの中でつまずきやすいのが、仕様確定と部材引当です。構成の組み合わせが多いほど、互換性や性能の説明が難しくなり、確認作業も増えます。そのため、BTOの現場では「選択肢を増やす」こと以上に、増やした選択肢を事故なく回す仕組みづくりが重要になります。
BTOは完成品在庫を抑えやすい一方で、部材をどう持つかが成否を分けます。押さえたいポイントは次の通りです。
受注管理と生産管理が分断されると、納期回答が曖昧になり、欠品や手戻りが増えやすくなります。システム連携が難しい場合でも、最低限「仕様確定→部材引当→工程投入」の連携は運用ルールとして固めておく必要があります。
BTOは納期が競争力になりやすい分、短縮策は“気合い”ではなく設計で決まります。代表的な施策は次の通りです。
短納期を維持する鍵は、選択肢の多さではなく、選択肢を“標準工程で処理できる範囲”に収めることです。無制限の個別対応に寄るほど、納期と品質が揺れやすくなります。
BTOの強みであるカスタマイズは、次の観点で設計すると実務に落ちやすくなります。
購入者側も「自分で選ぶ」以上、用途の優先順位を決めることが大切です。例えば、ゲーム用途ならGPUと電源、制作用途ならメモリとストレージ、静音性ならケースや冷却方式など、効くポイントが用途で変わるからです。
BTOは“個別対応”に見えますが、裏側は標準化と仕組みで回しています。受注から生産、検査、出荷までを支える代表的な要素を見ていきます。
受発注システムは、注文情報(構成、オプション、納期、配送など)を一元管理し、後工程へ正確に渡す役割を担います。BTOでは入力ミスがそのまま組立ミスにつながるため、仕様確定の段階でのチェックが重要です。
生産管理システムは、工程の進捗、部材引当、負荷の偏りなどを見える化し、計画を調整するために使われます。受発注と生産管理が連携すると、納期回答の精度が上がり、手戻りや欠品起因の遅延を減らしやすくなります。
BTOは完成品を作り置きしない一方で、部材調達や工程能力は先読みが必要です。需要予測は、部材の調達枠を確保したり、繁忙期の人員・工程計画を組んだりするための材料になります。
また、生産や調達のシミュレーションは「どこが詰まるか」を事前に検証するのに役立ちます。予測と検証を組み合わせることで、納期のぶれを小さくし、安定供給に近づけることができます。
BTOで選択肢を増やすほど、組立工程や検査が複雑になります。そこで重要になるのが、製品をモジュールとして組み合わせられるようにする設計です。
モジュール化は、共通部材・共通工程を増やしながら、外側の選択肢で差を出す考え方です。プラットフォーム設計は、複数モデルで共通の基盤(筐体・基板設計・検査手順など)を持ち、バリエーションを効率よく展開する考え方です。選択肢を増やしつつ、工程を増やしすぎないことが、BTOを安定させる近道になります。
3Dプリンターをはじめとするデジタル製造技術は、少量多品種や試作の短縮に強みがあります。BTOの文脈では、治具の作成、外装部品のカスタム、試作の高速化など、工程の柔軟性を高める方向で活用されることがあります。
ただし、すべての部品が3Dプリンターに置き換わるわけではありません。材料特性、強度、コスト、量産性などの条件があるため、BTOの「一部のボトルネックを解消する技術」として位置づけると現実に沿った理解になります。
BTOを導入して成果を出すには、モデル選択と運用設計が欠かせません。ここでは、導入判断と運用での実務ポイントを整理します。
BTOと一口に言っても、どこまで受注後に動かすかでモデルが変わります。例えば、完全受注生産(設計から受注後に開始)に近い形もあれば、主要部材は持ちつつ最終組立だけを受注後に行う形もあります。
短納期が最優先なら、選択肢を絞り、主要部材を確保して最終工程で吸収するモデルが現実的です。逆に、仕様の個別性が価値そのものなら、設計・見積・確認の工程を含めた体制が必要になります。自社の強み(スピード/柔軟性/品質)と供給能力が噛み合うモデルを選ぶことが重要です。
BTOは受注が起点なので、受注段階の精度がそのまま品質になります。具体的には、次の点を押さえると安定します。
受注管理と生産管理をつなげることで、納期と品質のぶれを小さくしやすくなります。システム導入が難しい場合でも、チェックリストと引当ルールの整備だけで事故率は下がります。
BTOはサプライヤーの供給状況に影響されやすいため、協業体制は重要です。単に仕入れるのではなく、需要見通しの共有、代替部材の合意、納期遅延時の対応など、運用の取り決めが効いてきます。
部材不足が続くと、BTOは「選べる」より「選べない」が増えます。その状態でも顧客体験を崩さないために、代替提案や推奨構成の更新など、販売側の運用もセットで設計します。
BTOの運用は、現場で起きた“ズレ”をどれだけ早く潰せるかで強くなります。見るべき指標は、売上だけでなく次のような実務指標です。
「選択肢を増やす」改善だけでなく、「事故を減らす」「納期のぶれを減らす」改善がBTOの体力になります。市場環境が変わったときは、モデルそのもの(どこを受注後にするか)を見直す判断も必要です。
BTOを導入し、効果的に運用するためには、会社に合ったモデルの選択、受注・生産プロセスの最適化、パートナー企業との協業体制の構築、PDCAによる継続的改善が欠かせません。カスタマイズの魅力を維持しながら、納期と品質を安定させられるかが、BTOの競争力を左右します。
Build to Orderの略で、注文に応じて仕様を確定し、受注後に製造・組み立てを行う方式です。
近い概念です。一般にBTOは、標準化した部材と工程を前提に受注後に組み立てる考え方を指します。
必ずしもそうではありません。完成品在庫は抑えやすい一方、部材在庫や調達枠の設計が必要です。
用途に合わせた仕様を選べることと、完成品の売れ残りリスクを抑えやすいことです。
部材不足や工程混雑の影響を受けやすく、納期や管理コストがぶれやすい点です。
用途の優先順位を決めずに構成を選び、GPUやメモリ、ストレージなどの配分が目的とズレることです。
主要部材の調達枠と標準工程の設計、仕様確定のチェックルールの整備が重要です。
選択肢を増やしても工程を増やしすぎず、納期と品質を安定させやすくなります。
部材供給の影響を受けやすいためで、需要見通し共有や代替部材の合意が納期安定につながります。
納期遵守率、手戻り率、欠品起因の遅延件数、問い合わせ内容などの実務指標です。