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キャッシュフロー計算書とは? 10分でわかりやすく解説

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利益は出ているのに、手元資金が不足する。こうした状況を確認するときに役立つのがキャッシュフロー計算書です。損益計算書(PL)は一定期間の収益・費用・利益を示します。一方、キャッシュフロー計算書は、現金および現金同等物が増えたのか、減ったのか、その理由を活動別に示す財務諸表です。

キャッシュフロー計算書の目的と構成を押さえたうえで、数字の読み方、他の財務諸表との関係、経営判断への使い方を解説します。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書の定義

キャッシュフロー計算書とは、企業の一定期間における現金および現金同等物の増減を示す財務諸表です。営業活動、投資活動、財務活動の3区分を中心に、現金がどの活動から生じ、どの活動に使われたのかを把握できます。

ここでいう「現金」は、手許現金や要求払預金を指します。「現金同等物」は、容易に換金可能で、価値変動リスクが僅少な短期投資を指します。日本の作成基準注解では、取得日から満期日または償還日までの期間が3か月以内の定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなどが例示されています。具体的に何を現金同等物に含めるかは、企業の会計方針で定義されます。

キャッシュフロー計算書の目的

キャッシュフロー計算書の主な目的は次の通りです。

  1. 企業の資金繰り、つまり現金の増減状況を把握すること
  2. 支払能力や手元資金の余力を評価すること
  3. 将来のキャッシュフローを見積もり、投資・調達・還元の判断に役立てること

PLは発生主義に基づいて作成されるため、売上の計上時期と入金時期がずれることがあります。キャッシュフロー計算書は、そのずれを含めて現金の動きを確認できる点に意味があります。

キャッシュフロー計算書の重要性

キャッシュフロー計算書が重視される理由は、利益と資金繰りが一致しないことがあるためです。たとえ利益が出ていても、売掛金の回収が遅れる、在庫が増える、借入返済が重なると、支払いに必要な資金が不足する場合があります。

短期の資金繰り悪化は、仕入、給与、税金など期限のある支払いに直結します。キャッシュフロー計算書は、こうしたリスクの兆候を早期に確認する材料になります。

他の財務諸表との関係

キャッシュフロー計算書は、貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)とあわせて読むことで、企業の状態を多面的に確認できます。BSはある時点の財政状態、PLは一定期間の利益、キャッシュフロー計算書は一定期間の現金の動きを示します。

貸借対照表(BS)ある時点の資産、負債、純資産を示します。財務の安定性、借入依存度、手元資金の水準を確認できます。
損益計算書(PL)一定期間の収益、費用、利益を示します。収益力、採算、費用構造を確認できます。
キャッシュフロー計算書(CF)一定期間の現金および現金同等物の増減を示します。資金繰り、支払能力、現金増減の理由を確認できます。

キャッシュフロー計算書の構成

キャッシュフロー計算書は、一定期間における現金および現金同等物の増減を、営業活動、投資活動、財務活動の3区分に分けて表示します。外貨建て取引や海外子会社がある場合は、現金及び現金同等物に係る換算差額なども含めて、期首残高から期末残高へつなげます。

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは、企業の本業に関連する現金の収支を示します。商品・サービスの販売による収入、仕入代金の支払い、人件費や販売費・一般管理費の支払いなどが含まれます。投資活動と財務活動に分類されない取引が営業活動に含まれる場合もあります。

営業CFが安定してプラスであれば、事業が自力で現金を生み出している状態と判断しやすくなります。逆に、営業CFが慢性的にマイナスの場合は、収益構造、回収条件、在庫水準、支払い条件などに課題がある可能性があります。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、固定資産や投資有価証券など、将来の収益獲得や資金運用に関連する現金の収支を示します。工場や機械の購入、研究開発設備、M&A、投資有価証券の取得・売却などが該当します。

投資CFは、マイナスだから悪いとは限りません。成長投資を進めている企業では、投資CFがマイナスになりやすくなります。一方、投資を抑制している局面や資産を売却している局面では、投資CFがプラスになる場合があります。確認すべきなのは、営業CFとのバランスと、投資の目的です。

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、資金調達や返済、株主への還元に関連する現金の収支を示します。借入金の調達・返済、社債の発行・償還、株式発行、配当金の支払い、自己株式の取得などが含まれます。

財務CFは、借入や増資で資金を調達するとプラスになり、返済や配当、自社株買いを行うとマイナスになりやすい区分です。プラスかマイナスかだけでなく、営業CFや投資CFとの関係をあわせて確認します。

現金及び現金同等物の増減

現金及び現金同等物の増減は、営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュフローを中心に、該当する換算差額などを加減し、期首残高から期末残高へつなげて示されます。貸借対照表上の科目残高とキャッシュフロー計算書上の現金及び現金同等物が完全に一致しない場合は、注記で調整関係が示されます。

最終的に現金が増えたか減ったかだけでなく、どの活動が増減に影響したのかを確認できる点が、キャッシュフロー計算書の価値です。

営業活動によるCF本業に関連する現金の収支です。商品・サービスの販売収入、仕入支出、人件費支出などを通じて、本業の現金創出力を確認します。
投資活動によるCF固定資産や投資有価証券など、長期資産に関する収支です。将来の収益獲得に向けた投資額や資産売却による回収額を確認します。
財務活動によるCF借入、返済、社債、株式発行、配当、自己株式取得などに関する収支です。資金調達と資本政策を確認します。
現金等の増減営業・投資・財務活動によるCFを中心に、該当する換算差額などを加減し、期首残高から期末残高への変化を示します。

キャッシュフロー計算書の分析方法

キャッシュフロー計算書は、数字の大小だけでなく、理由、継続性、バランスを確認します。単年の増減だけで判断すると、大型投資、資産売却、一時的な資金調達などの影響を見誤る場合があります。

営業キャッシュフローの分析

営業キャッシュフローは、本業の現金創出力を示します。営業CFが安定してプラスであれば、資金繰りの基盤が安定していると判断しやすくなります。

  • 推移(複数年):一時的な増減か、継続的な変化かを確認する
  • 利益との関係:営業利益が増えているのに営業CFが弱い場合、売掛金、在庫、支払い条件の影響を確認する
  • 売上高営業CF率:営業CF ÷ 売上高で、売上に対する現金創出力を確認する

営業CFが悪化するときは、売掛金の増加、在庫増、前払い費用の増加など、運転資金の増加が原因になる場合があります。利益と営業CFの差が大きい場合は、どの項目で現金化が遅れているかを確認します。

フリーキャッシュフローの算出

フリーキャッシュフロー(FCF)は、事業で得た現金から投資に使った現金を差し引いた、資金余力を見るための分析指標です。

簡易的には、フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフローで計算されます。投資CFは設備投資などでマイナスになりやすいため、実質的には営業CFから投資支出を差し引く読み方になります。

FCFがプラスであれば、借入返済、追加投資、配当などを検討しやすくなります。FCFがマイナスでも、成長投資による一時的なものであれば、それだけで悪いとは判断できません。投資が将来の収益や現金創出に結び付く計画になっているかを確認します。

キャッシュフロー関連指標の活用

キャッシュフロー計算書から補助指標を作ると、企業間比較や時系列比較がしやすくなります。ただし、指標は会計基準上の表示項目そのものではなく、分析のために加工した見方である点を踏まえて使います。

営業CFマージン計算方法:営業CF ÷ 売上高
意味:売上に対して、どの程度の現金を本業から生み出しているかを確認します。
投資CFマージン計算方法:投資CF ÷ 売上高
意味:売上規模に対して、どの程度の投資を行っているかを確認します。
財務CFマージン計算方法:財務CF ÷ 売上高
意味:売上規模に対して、資金調達、返済、還元の規模がどの程度かを確認します。
FCF計算方法:営業CF + 投資CF
意味:事業で得た現金から投資に使った分を差し引いた資金余力を確認します。

指標は便利ですが、単年だけで結論を出すのは危険です。大型投資や資産売却など一時的な要因がある年は数値が大きく動くため、複数年の推移で確認します。

業界比較と時系列分析

キャッシュフローの特徴は業種によって大きく異なります。製造業は設備投資の影響を受けやすく、流通業は在庫や回収条件の影響を受けやすいなど、事業特性によって読み方が変わります。

同業比較と時系列分析を組み合わせると、単年の数字だけでは分からない変化を確認しやすくなります。

  • 比較対象は、事業内容や規模が近い企業を選ぶ
  • 大型投資、資産売却、訴訟費用などの一時要因を切り分ける
  • 現金同等物の範囲など、会計方針の違いを確認する
  • 短期の変動と中長期トレンドを分けて読む

キャッシュフロー計算書の活用事例

キャッシュフロー計算書は、経営判断、資金繰り管理、投資判断、株主還元の妥当性確認などに使えます。PLやBSだけでは見えにくい、現金の動きとその理由を確認できるためです。

経営判断への利用

営業CFの安定性は、事業の持続力を確認する材料になります。営業利益が伸びているのに営業CFが伸びない場合、売掛金や在庫の増加で資金化が遅れていないか、取引条件の見直しが必要ではないかを確認します。

投資CFの中身を見ると、設備投資が維持更新なのか、成長投資なのか、あるいは資産売却で資金を確保しているのかを読み取れます。営業CF、投資CF、財務CFを分けて見ることで、利益だけでは分からない経営方針の変化を把握できます。

資金繰り管理への活用

現金等の増減と、営業CF・投資CF・財務CFのバランスを見ることで、短期・中期の資金繰りを点検できます。例えば、次のような状態では、手元資金が不足する前に対策を検討します。

  • 営業CFが弱い状態で、投資CFが大きくマイナスになっている
  • 投資や運転資金の不足分を借入で補い、財務CFがプラスになっている
  • 売上は伸びているが、売掛金や在庫が増え、営業CFが伸びていない

このような場合は、投資計画、回収条件、在庫水準、資金調達枠、返済スケジュールをあわせて確認します。

投資判断への応用

投資家視点では、FCFの安定性は重要な観点です。FCFが安定してプラスであれば、成長投資、借入返済、配当、自社株買いを継続できる余地があります。

一方で、投資を増やしてFCFが一時的にマイナスになる企業もあります。その場合は、投資の目的、投資回収の見込み、営業CFへの将来影響を確認します。FCFのプラス・マイナスだけでなく、資金の使い道と投資成果の説明可能性を見ます。

株主還元政策の評価

配当や自社株買いには、原則として現金が必要です。FCFの範囲内で還元できているか、または借入で還元を賄っていないかを確認すると、還元の持続性を点検できます。

財務CFがマイナスでも、営業CFとFCFが安定していれば、返済や還元を進める局面と判断できます。一方、営業CFが弱いまま借入を増やして還元している場合は、将来の返済負担や資金繰りへの影響を確認する必要があります。

まとめ

キャッシュフロー計算書は、企業の現金および現金同等物の流れを把握するための財務諸表です。営業活動、投資活動、財務活動の3区分を中心に現金の動きを整理し、資金繰り、支払能力、投資余力、還元の持続性を判断する材料になります。

確認すべき点は、単年の良し悪しではなく、推移活動区分ごとのバランス一時要因の切り分けです。キャッシュフロー計算書をPL・BSとあわせて読むことで、利益だけでは見えない資金面の変化を把握し、意思決定の精度を高めやすくなります。

Q.キャッシュフロー計算書は、なぜ損益計算書(PL)だけでは代用できないのですか?

A.PLは発生主義で作成されるため、売上計上と入金時期がずれることがあります。キャッシュフロー計算書は、現金および現金同等物の増減を活動別に示し、資金繰りの実態を確認できます。

Q.「現金同等物」とは何ですか?

A.容易に換金可能で、価値変動リスクが僅少な短期投資を指します。具体的な範囲は、企業の会計方針で定義されます。

Q.営業キャッシュフローがマイナスだと、必ず危険ですか?

A.一時的な要因でマイナスになる場合もあります。ただし、慢性的にマイナスであれば、回収条件、在庫、採算、支払い条件を点検する必要があります。

Q.投資キャッシュフローがマイナスなのは悪いことですか?

A.悪いとは限りません。成長投資を行うほど投資CFはマイナスになりやすく、資産売却を進める局面ではプラスになる場合があります。営業CFとのバランスを確認します。

Q.フリーキャッシュフロー(FCF)はどう見ればいいですか?

A.簡易的にはFCF=営業CF+投資CFで計算し、事業で得た現金から投資に使った分を差し引いた資金余力を見ます。マイナスでも、成長投資による一時的なものであれば、投資回収の見込みをあわせて確認します。

Q.財務キャッシュフローがプラスの会社は資金繰りが苦しいのですか?

A.借入や増資で現金を増やすと財務CFはプラスになります。悪い状態とは限りませんが、営業CFで支出を賄えているか、返済計画に無理がないかを確認します。

Q.キャッシュフロー計算書は単年だけ見れば十分ですか?

A.単年だけでは、大型投資や資産売却などの影響で判断を誤る場合があります。複数年の推移と一時要因の切り分けを確認します。

Q.業界比較をするときに注意すべき点は何ですか?

A.業態によって投資規模や運転資金の特性が異なります。事業内容・規模が近い企業を選び、会計方針の差や一時要因も考慮して比較します。

Q.「利益は出ているのに現金が減る」典型原因は何ですか?

A.売掛金回収の遅れ、在庫増、前払い費用の増加などで運転資金が増えるケースが典型です。営業利益と営業CFの差に注目します。

Q.経営判断で、まず見るべき順番はありますか?

A.まず営業CFで本業の現金創出力を確認し、次に投資CFで資金の使い道、財務CFで調達・返済・還元の状況を確認すると、全体像を把握しやすくなります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム