クラスタリングとは? わかりやすく10分で解説
クラスタリングとは
クラスタリングとは、機械学習やデータ分析の中でも非常に重要な手法で、データを自動的にグループ分けする作業を指します。データを特定の特性や類似性に基づいて「クラスタ」と呼ばれるグループに分けます。
クラスタリングは、意味のあるもしくは有用な「グループ」を発見することが目的で、これには特性やパターンの発見、異常の検出、カテゴライズ等があります。
特に顧客データのマーケティングや、遺伝子データの生物情報学など、大量のデータから知識を発見するための有力な手段として広く使われています。
クラスタリングの目的と利点
クラスタリングは、最も一般的に用いられる目的はデータセット内の隠れたパターンや構造を見つけ出すことです。
クラスタリングを用いる利点として、大量のデータでも類似性が高いデータをグループとして見つけることが可能であり、それぞれのグループだけに注目することで、データ全体の特性を理解する手助けになります。
また、この手法は「教師なし学習」に分類されます。つまり、事前に正解データが必要なく、未知のデータからも有用な情報を引き出すことが可能です。クラスタリングが教師なし学習に分類される理由は、学習データ自体からデータの特徴やクラスタ(グループ)を見つけ出すからです。そのため、新しい視点や発見が期待できる一方、評価が難しい側面もあります。
クラスタとは
クラスタとは、類似のデータが集まったグループを指します。クラスタリングの最終的な目標は、データセット内で互いに類似しているデータを一つのクラスタに結集し、それぞれのクラスタが他のクラスタとは異なる特性を持つようにデータを分けることです。
クラスタ内のデータがどれだけ似ているか(同質性)、違うクラスタのデータがどれだけ異なるか(異質性)を判断する尺度を類似度や距離と言います。
このようなクラスタリング手法を使用することにより、大量のデータの中から関連性のあるデータを見つけ出すことが容易になるわけです。
データ間の類似度
クラスタリングでは、データ間の類似度が非常に重要となってきます。類似度が高いデータ同士をグループとし、それに基づいてデータを分割、または合併していきます。類似度を測定する方法は非常に多く、使用する計算方法によりクラスタリングの結果も変わってきます。ここでは、その代表的な計算方法について解説します。
類似度を計算する際の手法は大きく三つに分けることができ、それらはユークリッド距離、マンハッタン距離、コサイン類似度と呼ばれています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
それらの類似度計算手法を使用して、具体的にどのように類似度を計算するのかを 類似度計算の具体例で解説します。
ユークリッド距離
ユークリッド距離とは、2つのデータポイント間の直線距離を計算する手法です。データの各特徴量(次元)について差を計算し、それぞれを二乗して足し合わせ、その平方根をとります。
ユークリッド距離による類似度計算は、働き方の特性上、外れ値に対して敏感となります。したがって、データの前処理として、スケーリング等が必要となる場合があります。
マンハッタン距離
マンハッタン距離とは、2つのデータポイント間の距離を、グリッド上で直角に移動するパスで計算する手法です。これは物理的な距離の模倣であり、都会のグリッド型道路(南北に進んだ後、東西に進む)から名付けられました。
マンハッタン距離はユークリッド距離と比較して、外れ値に対するロバスト性があります。その為、データのスケーリングが必要であるという問題は少ないといえます。
コサイン類似度
コサイン類似度は、2つのデータポイント間の角度を計算することにより、類似度を判断します。データのベクトル間の角度が小さいほど、データは似ていると判断されます。
コサイン類似度は、データポイントの絶対的な値ではなくその方向に注目するため、大量の次元空間におけるデータの類似度を計算する上で有用です。特にテキストデータ等、高次元データの分析に用いられることが多い手法です。
クラスタリングアルゴリズムの種類
クラスタリング手法は大きく四つに分かれます。それぞれ、階層的クラスタリング、非階層的クラスタリング、混合モデル法、そして密度ベースのクラスタリングです。それぞれの手法について、具体的に解説しましょう。
クラスタリングの手法は、使用するアルゴリズムにより特性が変わります。データの特性や目的により、適切なアルゴリズムを選択することが肝心です。
階層的クラスタリング
まず、階層的クラスタリングについて説明します。これは、個々のデータポイントをクラスタとして考え、最も類似性の高いクラスタを結合していく方法です。
階層的クラスタリングはさらに、凝集型と分割型に分けられます。凝集型は各データを個別のクラスタとしてスタートし、順次類似するクラスタをマージしていきます。一方の分割型は、全データを含む1つのクラスタからスタートし、データ間の差異に基づいてクラスタを細分化していきます。
階層的クラスタリングの結果はデンドログラムと呼ばれるツリー図で表現されます。このツリー図を切る位置により、最終的なクラスタ数を決定します。
非階層的クラスタリング
次に、非階層的クラスタリングについて説明します。この方法では、クラスタ数が事前に指定され、その数を元にデータポイントをグループ分けします。
K-meansクラスタリングがこの種類の方法で最も広く知られています。K-meansクラスタリングは、各クラスタ内のデータポイントの平均(中心)と各データポイントとの距離に基づいてデータをグループ分けします。このアルゴリズムは、中心とデータポイント間の距離が最小となるように繰り返し計算を行い、クラスタを更新していきます。
非階層的クラスタリングは、クラスタ数を事前に決めるため、解釈がシンプルであり、大規模なデータセットに対して効率的に動作します。
混合モデル法
次に紹介するのは、混合モデル法です。この手法では、データは複数の確率分布の「混合」から生成されると仮定します。混合ガウスモデルがこの手法の一つです。
混合モデル法は、データが複数のクラスタに結合する確率を計算します。つまり、各データポイントが各クラスタに所属する「確率」を求めることが可能です。
したがって、混合モデル法は「硬いクラスタリング」(各データポイントが一つのクラスタにしか所属しない)だけでなく「ソフトなクラスタリング」(データポイントが複数のクラスタに所属する確率が与えられる)も可能にします。
密度ベースのクラスタリング
最後に、密度ベースのクラスタリングをお話しします。この方法では、密度が高い領域、つまりデータポイントが密集している領域を一つのクラスタとみなす摘要です。
DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)はこの種類の代表的なアルゴリズムであり、任意の形状のクラスタを検出することが可能です。
密度ベースのクラスタリングはノイズのあるデータや異常値を含むデータセットに対しても強く、クラスタ数を事前に指定する必要がないのが特徴です。
クラスタリングの応用領域
さて、これまでに説明したクラスタリングの基本について理解したら、次はより具体的な応用領域について解説していきます。クラスタリングは、幅広い分野で利用されています。
ビジネスや研究のさまざまな場面で、我々は大量のデータと対峙します。そこで重要となるのが、観察対象を適切なグループに分けることです。これにより、より深い洞察を得ることが可能となります。
以下で、幾つかの代表的な応用例についてご紹介します。
マーケティングにおけるクラスタリング
マーケティングの分野でも、クラスタリングの活用は一般的です。顧客データをクラスタリングすることで、共通の特性を持つ顧客をグループ化し、それぞれに最適なマーケティング戦略を策定できます。
これは顧客セグメンテーションとも呼ばれ、顧客の購買行動、興味、嗜好などを理解し、それに基づいたパーソナライズされたサービスを提供するための重要な手法です。
特に、クラスタリングは大規模なデータセットに対して有効であり、その結果は販売予測やパーソナライズしたマーケティングの成功における重要な要素です。
自然言語処理におけるクラスタリング
クラスタリングは自然言語処理(NLP)という分野でも広く使われています。特に、大量のテキストデータを扱う場合、同じ主題や意味を持つ文章をまとめて管理するためにクラスタリングが利用されます。
例えば、大量のニュース記事を解析し、同じトピックに関連する記事を一緒にまとめるといった作業がこれに該当します。このようなトピックモデリングは、情報を整理し、分析しやすくするために非常に有用です。
また、同様の手法は質問応答システムやチャットボットなどの開発にも応用されています。
画像処理におけるクラスタリング
画像処理の分野でもクラスタリングは頻繁に利用されています。代表的な利用例としては、画像のセグメンテーションがあります。同じ色調やテクスチャを持つピクセルをグループ化することで、人間が理解しやすい形で画像を分割する作業です。
これにより、画像の大まかな領域や物体の位置を認識することが可能になります。これは、コンピュータビジョンやロボティクスなどの分野での画像解析に必須の作業となります。
また、例えば医療分野では、MRIやCT画像を解析し、異常領域を検出するといった用途にもクラスタリングは活用されます。
クラスタリングのその他の応用領域
他にも、クラスタリングは社会ネットワークの解析やバイオインフォマティクス、音楽の自動分類など、多種多様な場所で利用されています。
たとえば、社会ネットワーク解析では、ユーザー間のつながりや類似性をもとにコミュニティを抽出したり、対象者の社会的位置を特定したりする際にクラスタリングが使用されます。
バイオインフォマティクスでも、遺伝子やタンパク質の配列分析などにクラスタリングが使われ、生物種の分類や、疾患の診断に対する理解を深めるのに寄与しています。
このように、クラスタリングは様々なデータを扱う全ての領域で活用されています。クラスタリングはデータ分析の中心的手法であり、より深くデータを理解するための有効な道具と言えます。
クラスタリングの評価
データをクラスタに分けた後は結果が妥当なのかを評価します。そのための三つの主要な要素があります:クラスタの内部統一性、クラスタの外部分離性、シルエット係数です。これらの指標を理解し、使用することで効率的なクラスタリングを達成することが可能になります。
また、これらの評価指標は、クラスタリング手法の選択や、クラスタ数の調整、データの前処理など、クラスタリングの各段階の決定を補助します。
最後に具体的な評価方法のフレームワークを紹介します。それぞれの評価手法の選択は結果の解釈に大きな影響を与え、適切なモデル選択に繋がります。
クラスタの内部統一性
クラスタの内部統一性(内部結合度)とは、クラスタ内のサンプル間の距離が狭い(つまり類似性が高い)ほど値が大きくなる尺度です。内部統一性が高ければ、そのクラスタがより「まとまり」を持つことを示します。
内部結合度を高めることは、クラスタリングが目指す目標の一つです。クラスタ内のデータが似ていれば似ているほど、クラスタリングの結果は妥当性を持ちます。
しかし、単に内部統一性を追求するだけでは過大適応の問題が生じる可能性があるため、他の評価尺度とのバランスも重要です。
クラスタの外部分離性
クラスタの外部分離性(外部結合度)とは、異なるクラスタ間の距離が広い(つまり類似性が低い)ほど値が大きくなる尺度です。外部結合度が高いと、クラスタ間での差異性があり、各クラスタが他のクラスタから独立していることを示します。
内部統一性と同様に、外部分離性もクラスタリングの重要な目標です。各クラスタがどれだけ他のクラスタとは異なっているかを表すこの指標は、クラスタリングが真に意味のあるグループを特定しているかを評価します。
外部分離性が確保されている場合、クラスタ間に明確な境界が存在し、各クラスタが一意な特性を持つことが確定します。
シルエット係数
シルエット係数は、クラスタの内部統一性と外部分離性を統合した評価指標です。この値が大きいほどクラスタリングの質が高いと評価され、最適なクラスタ数の決定などに利用します。
具体的には、各データサンプルについて、自身が所属するクラスタ内の他のサンプルとの平均距離(クラスタの内部統一性)と、自身が所属しない最も近いクラスタのサンプルとの平均距離(クラスタの外部分離性)の差と比を計算します。
シルエット係数の範囲は-1から1で、1に近いほど良いクラスタリングと認識され、0ではランダムなクラスタリング、-1は不適切なクラスタリングを示します。
クラスタリングの評価フレームワーク
以上の指標を統合したクラスタリングの評価フレームワークとしては、シルエット図が有名です。シルエット図はシルエット係数を視覚的に表したもので、クラスタ内のサンプルがどれだけ類似しているか、また、異なるクラスタとどれだけ違うかを一目で確認することができます。
シルエット図を用いて、各クラスタが適切な大きさと形状を持っているか、クラスタ間で適切な距離が保たれているか、また、データが過度にクラスタリングされていないかなどを評価することができます。
以上のようにクラスタリングの評価指標と評価フレームワークを理解し適応する事で、より精度の高いデータのグループ分けが可能になります。
クラスタリングの取り組み方
クラスタリングは、類似度に基づいたデータのグループ化という主要な目的を持った一つのアプローチです。クラスタリングが実際にどのように取り組まれるかを理解するために、具体的なステップ、問題と制限、成功の要素、そして結果の視覚化について詳細に解説します。
クラスタリングを用いたデータ分析のステップ
クラスタリングを利用したデータ分析の最初のステップはデータの準備です。このステップでは元のデータの前処理が行われ、欠損値の補間やアウトライアーの取り扱いなどが行われます。この段階の適切な処理は、クラスタリングの結果の質に大きな影響を及ぼします。
次に、選択したクラスタリングアルゴリズムをデータに適用します。このステップでは、適切なクラスタの数を選択することが重要です。最適なクラスタの数は通常、多様な因子によって影響を受け、最適な値を知る一つの確立されたルールは存在しません。
最後に、クラスタリングの結果を評価します。このステップでは、クラスタリングの質を確認し、必要に応じてパラメータの調整を行います。結果を評価するためのメトリクスには様々なものが存在します。
クラスタリングの問題と制限
重要なのは、クラスタリングはデータの構造を完全に理解し、正確なグループ分けを自動的に行う魔法のツールではないということです。クラスタリングには問題点と制限が存在します。
ひとつ目の問題点として、クラスタリングの結果は開始点や初期値によって変わり得るという点があります。これは特に、非階層的クラスタリング手法で顕著であり、同じ手法を同じデータに適用しても異なる結果が得られることがあります。
また、ほとんどのクラスタリング手法は事前にクラスタの数を指定する必要がありますが、これはデータがどのように分割されるべきか事前に知ることは非常に難しいため、大きな制限となります。
クラスタリングを成功させるための要素
クラスタリングの成功には、データの理解と問題の正確な定義が重要です。まずデータを理解することで、適切なプロセスを決定し、クラスタリングの結果の解釈を助けることができます。
次に、問題の正確な定義は、適切なクラスタリングの手法を決定するために必要です。例えば、データがネストされた構造を持つ場合、階層的な手法が理に適っている可能性があります。
最後に、適切な評価基準を設定することも重要です。これにより、クラスタリングの結果が問題の解決に役立つかどうかを評価することができます。
クラスタリングの結果の視覚化
クラスタリングの結果を理解するための1つの有効な手段は、それを視覚化することです。視覚化により、データの構造やパターンを直観的に理解することが可能になります。
次元削減手法を用いると、高次元のデータでも2次元や3次元のグラフにより視覚化することが可能です。PCA(主成分分析)やt-SNEなどの手法がよく用いられます。
また、階層的クラスタリングの結果はデンドログラムと呼ばれるツリー構造のグラフにより表すことができます。デンドログラムは、クラスタ間の距離やクラスタ内の要素数など、クラスタの詳細な情報を視覚的に提供します。
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