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COBOLは、金融・公共などの基幹システムを長年支えてきた、歴史あるプログラミング言語です。ところが近年は、技術者の高齢化やシステムの複雑化、周辺基盤の老朽化などが重なり、保守や運用の難しさが目立つようになりました。この記事では、COBOLの基本を押さえつつ、いま現場で何が課題になりやすいのか、そしてSIer視点で「学ぶことにどんな意味があるのか」を整理します。
COBOLは Common Business-Oriented Language の略称で、直訳すると「共通の業務向け言語」という意味合いになります。帳票出力、集計、請求、入出金、在庫など、業務処理で必要となる要素を扱いやすいように設計されました。
COBOLは1950年代末、業務アプリケーションの開発をより効率化し、異なる機種でも同じ考え方で開発できるようにする目的で策定が進みました。当時は機械語やアセンブリ言語による開発が中心で、読み書きの難しさが大きな壁でした。そこで、英語に近い記述で処理の意図を表現できるようにし、保守・引き継ぎをしやすくする思想が取り込まれたのがCOBOLの大きな特徴です。
こうした特性から、COBOLは「止められない業務」を支える基幹領域で採用され続けてきました。
| 分野 | 具体例 |
|---|---|
| 金融 | 勘定系、決済、保険契約管理、請求・入金処理 |
| 公共 | 住民情報、税・年金関連、各種申請・照会 |
| 流通 | 販売管理、在庫管理、出荷、請求・入金 |
| 製造 | 生産管理、原価計算、調達、実績集計 |
これらの領域では、日次・月次の締め処理や大量データの集計など、バッチ処理の比重が高いことも多く、COBOLの強みが活きやすい傾向があります。
COBOLプログラムは、役割が明確な区分で構成されます。代表的には次の4つです。
この構造により、どこに何が書かれているかが比較的見通しやすく、長期保守の場面でも解析の起点を作りやすいのが特徴です。
COBOLでは、処理を書く前に「どんなデータを、どの桁で、どう表現するか」を明確に定義します。業務データの形式をコードに落とし込みやすい反面、データ仕様の変更が波及しやすいという側面もあります。現場では、データ定義が業務仕様の写しになっているケースが多く、改修時はデータ定義から読み解くのが近道になることがあります。
IFやPERFORM、CALLなどで処理を組み立てますが、改修が積み重なると分岐が増え、読みづらくなりがちです。COBOLに限りませんが、段階的に構造化し、処理単位を小さく保つことが、保守性の差につながります。
COBOLは新規開発で採用される機会が減っています。一方で、稼働中の基幹システムにはCOBOL資産が大量に残っており、業務継続の観点から安定運用が最優先になります。つまり、言語の流行とは別に、既存資産を理解できること自体が価値になりやすい状況です。
結果として、改修のたびにコストが上がり、対応スピードも落ちやすくなります。
COBOLからモダン言語へ置き換える動きはありますが、全面刷新は難易度が高いのが実情です。成功の鍵は「一気に置き換えるかどうか」よりも、業務を止めずに段階的に切り分けられるかにあります。典型的には、次のような選択肢が検討されます。
どの方式でも、「何が業務の本体なのか」「どこに暗黙知があるのか」を把握できないと、移行後に業務事故が起きやすくなります。
COBOLは“新規で書く”よりも、“既存を読める”ことが価値になりやすい言語です。SIerの現場では、COBOL資産を理解しながら、業務継続と改善を両立させる人材が求められます。COBOLの読み解きができると、保守だけでなく、モダナイゼーションや統合案件でも橋渡し役になれます。
COBOLは“書く練習”も大切ですが、現場では“読めること”が価値に直結しやすい点が重要です。
COBOLに触れた経験は、単なる言語スキルというより、基幹業務の仕組みを理解する力として評価されることがあります。
COBOLは、長年にわたり社会や企業の中枢を支えてきた実績ある言語です。近年は人材不足やシステム複雑化により保守・運用の難易度が上がっていますが、だからこそ「読める」「整理できる」人材の価値は下がりません。SIer視点では、COBOLを学ぶことは保守要員になるだけでなく、基幹刷新や統合の場面で業務とITをつなぐ力を身につけることにもつながります。
止められない基幹業務を支えるシステムに大量の資産が残っており、安定運用が最優先されるためです。
一般には新規採用は減っていますが、要件や運用条件によっては選択肢になり得ます。
人材の偏りと、業務仕様がコードに埋まって属人化しやすい点が大きな要因です。
全面刷新は難易度が高く、周辺から段階的に切り分ける方式が現実的なことが多いです。
業務ルールの暗黙知を見落とし、移行後の処理差分が業務事故につながることです。
DATA DIVISIONの読み方と、入出力の流れを追う方法を先に身につけるのが近道です。
連続したデータを順に処理する設計と相性がよく、バッチ処理で安定した実績があるためです。
既存資産を読み解き、業務要件とITの橋渡しができることが価値になります。
影響範囲が見えにくく、関連処理の波及を考慮した回帰テストが必要になりやすいためです。
新規採用は限定的でも、既存資産の運用と段階移行が続く限り、理解できる人材は当面必要です。