システム開発では、機能が増えるほど内部構造が複雑になり、「どの部品がどの部品と、どんな契約(インターフェース)でつながっているのか」を関係者で共有する難易度が上がります。クラス図やコンポーネント図でも全体像は表せますが、内部の部品構成や接続のしかたまで踏み込んで整理したい場面も少なくありません。そこで役立つのが、UMLの構造図の一つであるコンポジット構造図です。本記事では、コンポジット構造図の基本、構成要素、作り方、活用の勘所を押さえ、どの場面で使うと設計の理解と合意形成に効くのかを解説します。
コンポジット構造図は、UMLにおける構造図の一種で、クラスやコンポーネントなどの「内部構造」を表すために用いられます。外から見た関係だけでなく、内部に含まれる部品(パーツ)や、部品同士・外部との接続(ポート/コネクタ)を示せる点が特徴です。
簡単に言えば、クラス図やコンポーネント図が「箱同士の関係」を中心に描くのに対し、コンポジット構造図は箱の中身の構造に踏み込みます。特に、役割分担が多い設計(サービス、アダプタ、ゲートウェイ、制御部品など)を、インターフェース単位で整理するのに向いています。
コンポジット構造図は、単に詳細を描くための図ではありません。主な目的は次のとおりです。
図の価値は「情報量」ではなく、責務と接続のルールを合意できることにあります。内部構造が明確になるほど、影響範囲の見積もりや、変更点の局所化にもつながります。
| 図の種類 | 主に表すもの | 得意な粒度 |
|---|---|---|
| クラス図 | クラスの属性・操作・関連などの静的構造 | 型・関連・責務の整理 |
| コンポーネント図 | コンポーネントと依存関係、提供/要求インターフェース | 配置単位・モジュール単位の全体像 |
| コンポジット構造図 | 内部のパーツ構成、ポート、コネクタ、接続のルール | 内部設計・接続の具体化 |
コンポジット構造図は、クラス図・コンポーネント図の代替というより、「その箱の中をどう設計したか」を説明するための補助線として使うのが現実的です。全体像はコンポーネント図、詳細はコンポジット構造図、といった住み分けがしやすくなります。
一方で、内部が単純な場合や、そもそも設計が固まっていない段階で描くと、図が更新されず形骸化しやすい点には注意が必要です。
コンポジット構造図は、内部の部品と接続を表すために、いくつかの要素を組み合わせます。ここでは、実務で理解しておきたい要点に絞って整理します。
パーツは、クラスやコンポーネントなどの内部に含まれる構成要素(部品)を表します。パーツは「ある型のインスタンス」を内部に持つ、という意味合いで使われることが多く、内部の責務分割を表現する中心になります。
ポートは、パーツ(あるいは外側のクラス/コンポーネント)が外部とやり取りするためのインターフェースの出入口です。ポートを明示することで、「この部品は外に何を提供し、何に依存するのか」を整理しやすくなります。
実務では、ポートを「公開APIの境界」「外部I/Fの境界」として扱うと、責務の漏れや依存の逆流を見つけやすくなります。
コネクタは、パーツ同士、またはポート同士の接続を表します。どの部品がどこにつながっているかを明示できるため、レビューや引き継ぎで効果を発揮します。
表記はツールや記法により揺れますが、意図としては「外側の契約を、内部のどこが満たすのか」「内部の依存がどこに向いているのか」を読み取れる状態が重要です。
コラボレーションは、複数のパーツが協調して目的を達成する相互作用のパターンを表すための要素です。コンポジット構造図の文脈では「この構造は、こういう協調を想定している」という前提の共有に役立ちます。
構造図だけでは「どう動くか」が伝わりにくいことがあります。必要に応じて、シーケンス図などと併用して、接続の意味を補うと誤解が減ります。
コンポジット構造図は、描き始める前の「切り出し方」で品質が決まります。ここでは、実務で再現しやすい順序に沿って説明します。
まず「何の内部構造を描くのか」を決めます。代表例は、特定のコンポーネント、特定のクラス、あるいはサブシステム単位です。範囲が曖昧だと、図が肥大化して読み物として成立しなくなります。
次に、内部を構成するパーツを洗い出します。重要なのは「何があるか」より、「それが何を担うか」を言語化しておくことです。責務が曖昧なパーツは、後から密結合や循環依存の温床になりやすくなります。
「パーツ=クラスの一覧」にならないように、責務単位で切るのがコツです。
パーツ間の関係性を定義します。ここでは「誰が誰を呼ぶか」「誰が誰に依存するか」を整理し、無秩序な参照を避けます。依存が双方向になると実装・テストが難しくなりやすいため、依存の向きを設計として揃えることが重要です。
外部との境界や、差し替えたい依存点がある場合は、ポートを置いてインターフェースを明確にします。特にチーム開発では「提供するもの/要求するもの」を分けて記述できると、合意形成が速くなります。
最後に、可読性と運用性を整えます。図は描いて終わりではなく、設計の更新に追随できて初めて価値が出ます。
図を保つための最小ルール(誰が更新するか、いつ更新するか、どこを正とするか)を決めておくと、形骸化を防ぎやすくなります。
部品数が多い設計では、口頭や文章だけで内部構造を共有するのは難しくなります。コンポジット構造図で内部を可視化すると、レビューや引き継ぎで「どこがボトルネックになりそうか」「責務が偏っていないか」を議論しやすくなります。
コンポジット構造図は、インターフェース設計の議論にも向きます。ポートを用いて「提供する契約」「要求する契約」を明示すると、責務の境界が曖昧な箇所を早期に発見できます。
構造図は静的な側面が中心ですが、コラボレーションや補助的な説明を添えることで「この接続は何のためか」を伝えやすくなります。必要に応じて、シーケンス図や状態機械図などを併用すると、設計意図がさらに明確になります。
図は「正しさ」を証明するものではありませんが、関係者の共通理解を作る強力な材料になります。特に、設計レビュー、チーム間のインターフェース合意、運用部門への引き継ぎでは効果が出やすい領域です。
コンポジット構造図は、UMLの構造図の一種として、クラスやコンポーネントの内部構造と接続を整理するために用いられます。パーツ、ポート、コネクタ、コラボレーションを適切に組み合わせることで、部品の責務分割と依存関係、外部との契約を明確にできます。作成時は、対象範囲の固定、責務単位でのパーツ識別、依存の向きの整理、インターフェース(ポート)の明示、図の運用設計まで含めて整えるのがポイントです。複雑な内部設計の共有や、コンポーネント間のインターフェース合意、設計理解の促進に役立つため、長期運用されるシステムほど効果を発揮します。
UMLの構造図の一種で、クラスやコンポーネントの内部構造と接続関係を表す図です。
外側の関係だけでなく、内部のパーツ構成やポート、コネクタまで踏み込んで表現できる点が違います。
内部に含まれる部品(責務単位の構成要素)を表し、どの部品が何を担うかを示します。
外部との出入口として、提供する機能と依存する機能の境界を明確にするために使います。
パーツ同士、またはポート同士の接続を表し、依存関係や連携経路を明確にします。
主に構造を表しますが、コラボレーションで協調の前提を示し、必要に応じてシーケンス図などと併用します。
内部が複雑で責務や接続ルールを合意したいとき、差し替え点や依存境界を明確にしたいときに効果的です。
対象範囲を固定し、責務単位でパーツ化し、粒度を揃えたうえで必要なら図を分割します。
更新責任者と更新タイミングを決め、実装と乖離しないよう運用ルールを最小限で定めるべきです。
全体像はコンポーネント図、振る舞いはシーケンス図などと併用すると、誤解が減り設計が伝わりやすくなります。