製品やサービスの開発や改善を行う際、消費者の選好を正確に把握することは非常に重要です。しかし、従来の手法では個々の属性に対する評価を別々に行うため、「現実の購買行動で行っているような総合判断」を十分に再現できないという課題がありました。そこで注目されているのが、属性の組み合わせに対する評価を行うことで、より現実に近い形で消費者の選好を分析できるコンジョイント分析です。本記事では、コンジョイント分析の概要や基本手順、実務で活用する際のポイントなどについて、10分でわかりやすく解説します。
コンジョイント分析とは、製品やサービスの属性を組み合わせ、消費者の選好を分析する手法です。複数の属性を同時に考慮し、それぞれの属性がどの程度消費者の選択に影響を与えているかを定量的に評価します。
ここでいう「属性」とは、製品やサービスを特徴づける要素のことで、たとえば自動車であれば「価格」「燃費」「デザイン」「安全性能」「ブランド」などが該当します。コンジョイント分析では、これらの属性をさまざまに組み合わせた「仮想的な商品案」を提示し、その評価結果から各属性の重みや好まれ方を推定していきます。
コンジョイント分析は、消費者の選好を理解するための有力な手法の一つです。従来の手法では、個々の属性に対する評価を別々に行っていましたが、現実の購買行動では複数の属性を同時に見比べながら意思決定が行われます。
コンジョイント分析では属性の組み合わせに対する評価を行うことで、より現実的な消費者の選好を把握することが可能です。例えば、自動車の購入を考える際、人は「燃費が良いから多少高くても許容できる」「安全性能が高いならデザインは多少妥協できる」といったトレードオフを無意識に行っています。コンジョイント分析では、このようなトレードオフ構造を推計できる点が大きな特徴です。
コンジョイント分析は、1970年代に米国で開発された比較的新しい分析手法です。当初はマーケティング分野で主に利用されていましたが、その後、経済学、心理学、医療、公共政策など、さまざまな分野で応用されるようになりました。
近年では、コンピュータの性能向上とインターネットの普及により、より大規模かつ複雑なコンジョイント分析が可能になっています。オンライン調査パネルを利用した大規模データの収集や、シミュレーションによる市場シェア予測など、活用範囲も広がっています。また、機械学習やAIを活用した新しい推定手法も開発されるなど、コンジョイント分析は今なお発展し続けている分析手法だと言えます。
コンジョイント分析の主な目的は、以下の通りです。
コンジョイント分析を活用することで、企業は消費者のニーズにより適合した製品やサービスを提供することができます。また、競合他社と比較した優位性の確認や、ターゲットごとの訴求ポイントの違いを把握することも可能です。コンジョイント分析は、マーケティングにおける意思決定を支援する重要なツールと言えるでしょう。
以上、コンジョイント分析について、その定義、消費者選好解析手法としての特徴、歴史と発展、目的と意義についてご説明しました。ここからは、具体的な手法や実践のポイントを見ていきます。
コンジョイント分析を実施する際の基本的な流れは、以下の通りです。
この一連の流れを適切に実施することで、消費者の選好構造を定量的に把握することができます。コンジョイント分析の精度を高めるためには、各ステップを丁寧に進めていくことが重要です。
コンジョイント分析を行う上で、最初に行うべきことは、分析対象となる製品やサービスの属性と水準を設定することです。属性とは、製品やサービスの特徴を表す要素のことで、例えば、自動車であれば「価格」「燃費」「デザイン」「安全性能」などが属性に当たります。水準とは、各属性の具体的な値や選択肢のことを指し、「価格:200万円・250万円・300万円」「燃費:15km/L・20km/L・25km/L」といった形で設定します。
属性と水準の設定に際しては、以下の点に留意する必要があります。
適切な属性と水準の設定は、コンジョイント分析の結果の信頼性に直結します。事前の綿密なリサーチと慎重な検討が求められるステップだと言えるでしょう。
属性と水準が決まったら、次はそれらを組み合わせてプロファイルを作成します。プロファイルとは、複数の属性の水準を組み合わせた、仮想的な製品やサービスのことです。すべての組み合わせを用いると数が膨大になるため、実務では直交表(直交計画法)などを使い、情報量を保ちつつプロファイル数を絞り込むことが一般的です。
作成したプロファイルは、回答者に提示し、評価してもらいます。提示方法には、以下のようなものがあります。
提示方法は、調査対象や予算、実施期間などを考慮して選択します。回答者の負担をできるだけ軽減し、正確なデータを収集できる方法を採用することが望ましいでしょう。
プロファイルの評価データが収集できたら、いよいよ分析の段階です。分析には、専用のソフトウェアや統計解析ツールを使用するのが一般的です。主な分析手法には、以下のようなものがあります。
| 分析手法 | 概要 |
|---|---|
| 最小二乗法 | 全体のデータを用いて、属性ごとの部分効用値を推定する基本的な手法です。 |
| ACA(Adaptive Conjoint Analysis) | 対比較や順位付けデータを利用し、回答途中で出題内容を調整しながら個人別の部分効用値を推定する手法です。 |
| 潜在クラス分析 | 回答者をいくつかのセグメントに分類し、セグメント別に異なる部分効用値を推定する手法です。 |
| 階層ベイズ法 | 個人別の部分効用値を推定しつつ、母集団全体の分布も同時に推定する柔軟な手法です。 |
分析の結果、各属性の重要度や部分効用値が明らかになります。これにより、消費者の選好構造を定量的に理解することが可能です。分析結果の解釈には注意が必要ですが、コンジョイント分析は製品・サービス開発や改善に役立つ有益な知見を提供してくれます。
以上、コンジョイント分析の手法について、基本的な流れ、属性と水準の設定方法、プロファイルの作成と提示方法、データ収集と分析の方法を中心にご説明しました。
コンジョイント分析は、様々な分野で活用されています。主な適用分野としては、以下のようなものが挙げられます。
このように、コンジョイント分析はマーケティングを行う際、様々な意思決定の場面で活用することができる、汎用性の高い分析手法だと言えます。
コンジョイント分析を有効に活用するためには、以下のようなポイントに留意する必要があります。
これらのポイントを押さえることで、コンジョイント分析を効果的に活用し、意思決定の質を高めていくことができるでしょう。
コンジョイント分析を実施する際には、以下のような点に注意が必要です。
これらの点に十分配慮しつつ、コンジョイント分析を実施することが大切です。注意点を踏まえた上で、適切に分析を行うことが求められます。
コンジョイント分析の結果からは、以下のような情報が得られます。
これらの情報を活用することで、以下のようなアクションを起こすことが可能です。
コンジョイント分析の結果は、マーケティング戦略立案のための重要なインプットとなります。分析結果を適切に解釈し、自社の戦略や施策に落とし込んでいくことが重要です。
コンジョイント分析の価値は、何よりも消費者の選好を定量的に理解できる点にあります。従来のアンケートでは、「価格」「品質」「デザイン」などの重要度をそれぞれ個別に尋ねることが多く、実際の購買行動で行われる総合判断とのギャップが生じることもありました。
コンジョイント分析では、各属性の重要度や部分効用値を数値化することが可能です。これにより、消費者の選好をより客観的かつ精緻に把握できるようになります。また、「どの属性をどの程度変えると、好意度や想定シェアがどれだけ変わるか」をシミュレーションできる点も、実務上大きな価値があります。
コンジョイント分析は、意思決定の質を高め、その改善に役立ちます。具体的には、以下のような点で意思決定の改善が図られます。
このように、コンジョイント分析は、マーケティングにおける意思決定の質を高め、その改善に大きく寄与することができるのです。
コンジョイント分析を活用することは、企業の競争優位性の確立にもつながります。消費者の選好をより深く理解することで、競合他社との差別化を図ることができるからです。
例えば、コンジョイント分析の結果から、自社製品・サービスの強みとなる属性や、水準の組み合わせを特定することができます。その属性を前面に打ち出すことで、競合他社との差別化を図ることが可能となります。また、消費者の選好に合わせた新製品・新サービスを開発することで、市場における優位性を確立することもできるでしょう。
コンジョイント分析は、競合他社との差別化や市場における優位性の確立に役立つ、戦略的に重要な分析手法だと言えます。
コンジョイント分析は、製品やサービスの属性を組み合わせて消費者の選好を分析する手法であり、マーケティングにおける意思決定を支援する重要なツールです。属性と水準の設定、プロファイルの作成と提示、データ収集と分析を適切に行うことで、消費者のニーズにより適合した製品・サービスの開発や価格設定、プロモーション戦略の立案が可能になります。
コンジョイント分析を活用することで、企業は競合他社との差別化を図り、市場における優位性を確立することができるでしょう。まずは、自社の課題や意思決定シーンを整理し、「どのような選好情報があれば、より良い判断ができるか」を明確にした上で、コンジョイント分析の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
製品やサービスの複数の属性を組み合わせた「仮想商品」を提示し、その評価結果から各属性の重要度や好まれ方を数値的に推定するためのマーケティング分析手法です。
新製品・新サービスの開発、価格設定、プラン設計、広告・プロモーションの訴求ポイント検討、ブランド戦略など、顧客の選好を踏まえた意思決定全般で役立ちます。
通常のアンケートは属性ごとに「重要かどうか」を聞くのに対し、コンジョイント分析は属性を組み合わせた商品案同士を比較・評価してもらうことで、実際の購買に近い総合判断を再現できる点が違います。
目的や設計によりますが、全体傾向を見るだけなら数百サンプル、セグメント別の特徴も見たい場合は、それぞれのセグメントで十分な人数を確保することが望まれます。
はい、オンラインアンケートはコンジョイント分析と相性が良く、複数のプロファイルを効率的に提示できるため、現在では一般的な実施方法となっています。
各属性の相対的重要度、各水準の部分効用値、想定シナリオごとの好まれやすさやシェア構成などが分かり、どのような組み合わせが支持されやすいかを把握できます。
使用可能です。決裁プロセスが複雑なBtoBでも、「価格」「サポート」「導入期間」「機能」などの属性を設計し、意思決定に関わる人の選好を分析することで有益な示唆が得られます。
現実的な属性・水準の設定、属性間の相関を避ける工夫、回答者の負担を抑えた設問数の設計、サンプル構成の妥当性などに注意する必要があります。
あくまで調査条件下での選好構造を反映した推計値であり、そのまま実際の市場シェアを保証するものではありません。競合状況や販路、認知度など他要因も加味して解釈する必要があります。
調査設計・統計解析に関する基礎知識、分析ツールの利用環境、マーケティング側と分析担当者の連携体制が必要です。初回は外部専門家と連携し、ノウハウを蓄積していく方法も有効です。