IT用語集

データインフォームドとは? わかりやすく10分で解説

水色の背景に六角形が2つあるイラスト 水色の背景に六角形が2つあるイラスト
アイキャッチ
目次

ビジネスの現場では「データを見てから決めよう」という場面が増えていますが、最終的な判断は常に人間が行っています。このように、データを一つの根拠として活用しつつも、人間の経験や直感を組み合わせて意思決定する考え方が「データインフォームド」です。

本記事では、データインフォームドの定義とデータドリブンとの違い、その役割やメリット、実践ステップ、周辺技術との関係、今後の展望までを整理して解説します。読み終えるころには、「自社の意思決定をどこまでデータインフォームドに寄せるべきか」を判断するためのヒントが得られるはずです。

データインフォームドとは

データインフォームドとは、「データから得られた示唆(インサイト)を根拠にしながら、人間が最終的な意思決定を行う」アプローチを指します。データは意思決定を支える重要な材料ですが、判断そのものをデータに丸投げするのではなく、あくまで意思決定を「インフォーム(情報提供)」する存在として扱います。

言い換えると、データインフォームドでは、データは判断の拠り所ではあっても最終的な裁定者ではありません。現場の知見、過去の経験、顧客との接点で得られた感覚などと組み合わせて「より納得度の高い決定」を目指す考え方です。

データインフォームドとデータドリブンの違い

しばしば混同されるのが「データドリブン(data-driven)」との違いです。一般的に次のように整理できます。

  • データドリブン:データを起点として物事を進める。できる限りデータで判断し、定量的な指標に強く依存するスタイル。
  • データインフォームド:データを重要な判断材料としつつも、最終判断は人間の知見・直感・前提条件を踏まえて行うスタイル。

どちらが優れているというより、「どこまでを数値で割り切れるのか」「どの部分は文脈や経験が必要か」によって使い分けるべきアプローチと考えると理解しやすくなります。

特に、新規事業やイノベーション領域のように「十分なデータがない」「過去に同じ事例がない」状況では、データドリブンだけでは意思決定が難しくなります。こうした場面で、定量・定性を統合して判断するデータインフォームドの考え方が活きてきます。

データインフォームドの出現背景

データインフォームドが重視されるようになった背景には、次のような環境変化があります。

  • 情報社会・デジタル化:SaaSやクラウドの普及により、あらゆる行動がログとして記録され、企業は膨大なデータへアクセス可能になった。
  • データ爆発:取得できるデータ量が急増する一方で、「どのデータをどう見るべきか」が分からないという課題が顕在化した。
  • 不確実性の高まり:市場環境の変化が激しく、「過去データの延長線上に未来がない」ケースが増え、データだけでは判断しきれない場面が増えた。

このような状況で、「データは重要だが、データだけでは決めきれない」という現場の感覚にフィットする枠組みとして、データインフォームドが再評価されています。

データインフォームドの特徴

データインフォームドの特徴を整理すると、次の3点に集約できます。

  • 人間中心の意思決定:データはあくまで意思決定を支える材料であり、最終判断は人間が行う。
  • 定量×定性のバランス:数値データだけでなく、顧客の声、現場の感覚、専門家の知見など定性的な情報も重視する。
  • 前提条件への自覚:「どのデータを、どのような前提で解釈しているのか」を意識しながら、データを使いすぎもしないし、軽視もしない。

このバランス感覚こそが、データインフォームドを他のアプローチと区別するポイントです。

データインフォームドの役割と意義

ここでは、データインフォームドがビジネスにおいてどのような役割を果たし、なぜ今あらためて注目されているのかを整理します。

ビジネスにおけるデータインフォームドの役割

ビジネスにおいて、データインフォームドは次のような役割を担います。

  • 意思決定の「納得度」を高める:データという客観的な根拠を提示することで、関係者間の合意形成を助ける。
  • バイアスを緩和する:純粋な勘や思い込みで決めてしまうリスクを減らし、判断の偏りを軽減する。
  • 意思決定プロセスを説明可能にする:「なぜそう決めたのか」を後から説明しやすくし、振り返りや学習につなげる。

特に、マーケティング施策の優先順位づけやプロダクトの機能改善など、関係者の意見が分かれやすい領域では、データインフォームドな議論の進め方が大きな効果を発揮します。

データインフォームドがもたらす価値

データインフォームドの価値は、「データ×人間の知見」の掛け合わせによって、意思決定の質を底上げできることにあります。

  • データだけでは見えにくい「背景事情」や「文脈」を、人間の経験が補う
  • 直感だけでは気づきにくいパターンや兆候を、データ分析が補足する

例えば、新機能リリースの是非を判断する際、定量データとしては「CVRや継続率の変化」、定性データとしては「ユーザーインタビューでの反応」「営業現場の肌感」などを組み合わせて評価するようなイメージです。

データインフォームドの利点と欠点

データインフォームドには明確なメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。

主な利点:

  • データと経験の両方を活かせるため、極端な判断を避けやすい
  • データが不足する領域でも、一定の仮説と判断が可能になる
  • 意思決定のプロセスを言語化しやすく、学習・改善につながる

主な欠点・注意点:

  • 十分なデータ収集・整備・分析のためのコストとスキルが必要になる
  • 「データも人も」関わるため、意思決定プロセスが複雑化しやすい
  • どこまでデータを重視し、どこから直感に委ねるかの基準が曖昧だと、かえって混乱を招く

つまり、データインフォームドは強力なアプローチである一方、組織としての運用ルールやスキルセットの整備が前提になるという点を押さえておく必要があります。

データインフォームドと意思決定の関係

データインフォームドは、「意思決定のどの段階で、どの程度データを使うか」を意識的に設計する考え方でもあります。

  • 課題設定の段階で、データから「本当に解くべき問題」を見直す
  • 施策の選択肢を比較する際に、データで期待値やリスクを定量的に整理する
  • 意思決定後も、結果データを追い、仮説の当たり外れを検証する

このように、意思決定の前後を通じてデータを活用し、学習サイクルを回していくことが、データインフォームドの本質です。

データインフォームドを活用するためのステップ

ここからは、データインフォームドを実務で活用する際のステップを、準備・分析・洞察・意思決定の4段階に分けて見ていきます。

ステップ1:データを使用可能にする初期の準備

最初のステップは、データを「分析に耐えうる状態」に整えることです。

  • どの意思決定にどのデータが必要かを明確にする
  • ログ、基幹システム、アンケートなど、データソースを洗い出す
  • 欠損値や重複の処理、名寄せ、フォーマット統一などの前処理を行う

この段階でのポイントは、「とりあえず集められるデータ」ではなく「意思決定に役立つデータ」を意識して選ぶことです。データ量の多さよりも、意思決定との関連性が重要になります。

ステップ2:データ分析へのアプローチ

次に、整えたデータを分析します。手法自体は統計分析・可視化・機械学習など多岐にわたりますが、共通して重要なのは次の点です。

  • 最初に「何を知りたいのか」「どの指標で判断するのか」を明確にする
  • 平均値だけでなく、分布やセグメント別の違いも確認する
  • 相関と因果を混同しないように注意する

分析の目的は、「意思決定のための材料を整えること」であり、複雑なモデルを作ること自体がゴールではありません。シンプルな集計や可視化で十分な示唆が得られるケースも多くあります。

ステップ3:情報を洞察に変換する

分析で得られた数値やグラフを、そのまま意思決定に使える「洞察」に変換するには、人間の解釈が不可欠です。

  • 「なぜこの数字になっているのか?」という問いを立てる
  • 現場の感覚や顧客の声と照らし合わせて、数字の裏側を考える
  • 複数の解釈がありうる場合は、前提条件や仮説を明示する

例えば、「あるチャネルのコンバージョン率が高い」という事実があったとき、それが「チャネルの質が良いから」なのか「他チャネルのターゲティングがずれているから」なのかで、取るべきアクションは変わります。ここで問われるのが、データを文脈に落とし込む力です。

ステップ4:インフォームドな意思決定を行う

最後に、洞察をもとに意思決定を行います。このときのポイントは、次のような観点を意識することです。

  • データが示していること・示していないことを整理する
  • データでは測れない要素(ブランドへの影響、組織文化、法規制など)も併せて検討する
  • 不確実性を前提にし、必要に応じて「小さく試す(PoC・実験)」という選択肢も検討する

こうして、データに基づきながらも、人間の視点で最終判断を下すのがデータインフォームドのゴールです。

データインフォームドの成功要因と課題

データインフォームドを組織で根付かせるためには、技術面だけでなく、組織・人・文化の観点からの準備が欠かせません。

データインフォームドの成功要因

データインフォームドがうまく機能している組織には、共通する成功要因があります。

  • 質の高いデータ基盤:信頼できるデータがタイムリーに取得でき、必要な人が必要な粒度でアクセスできる。
  • データリテラシーの底上げ:分析担当だけでなく、現場メンバーも基本的なデータの読み方を理解している。
  • 多様な視点の尊重:数字だけでなく、現場の声や専門家の意見も意思決定に反映されている。

特に、「データが正しい」ではなく「データを一緒に解釈する」姿勢をリーダーが示せるかどうかが、成否を左右します。

データインフォームド実装時の主な課題

一方で、実装の現場では次のような課題がよく挙がります。

  • そもそもデータが整備されておらず、欲しい指標がすぐに出てこない
  • 部門ごとにデータ定義がバラバラで、同じ指標でも数値が合わない
  • 分析結果をどう解釈すべきか分からず、「データは見たが結局いつもの感覚で決める」状態に戻ってしまう

これらを解消するには、データ基盤の整備と並行して、「データをどう使うか」のルールや役割分担を明確にすることが重要です。

データインフォームド実施時の社内調整

データインフォームドを組織に定着させるには、社内の調整も避けて通れません。

  • 経営層に対しては、データ活用の効果やリスク低減の観点からメリットを説明する
  • 現場に対しては、「評価のための監視」ではなく「意思決定を助けるためのデータ」であることを繰り返し伝える
  • 各部門のキーパーソンを巻き込み、データの定義や運用ルールを共に作っていく

特に、「データを見せると責められる」という認識がある組織では、データインフォームドな議論は進みません。まずは学習と改善を目的としたデータ活用であることを共有するところから始めるとよいでしょう。

データインフォームドを促進する文化づくり

最終的には、データインフォームドを支える組織文化の醸成が欠かせません。

  • 意思決定の場で「根拠となるデータ」や「前提条件」をセットで話すことを習慣化する
  • 仮説を立て、小さく試し、結果をデータで振り返るというサイクルを回す
  • 失敗を責めるのではなく、「何が学べたか」を言語化する雰囲気をつくる

こうした文化が根付くと、自然と「データを見て考える」「データと経験の両方を大切にする」組織へと変化していきます。

データインフォームドを支える周辺技術

データインフォームドを現実的なものにしているのが、データサイエンスやAI、ビッグデータ、機械学習などの周辺技術です。これらは単独で存在しているのではなく、意思決定を支えるために相互に連携しています。

データサイエンス

データサイエンスは、大量のデータから有用なパターンや関係性を見つけ、意思決定に役立つ形で提供するプロセスです。

  • データの収集・前処理
  • 可視化・探索的データ分析
  • 統計モデルや機械学習モデルの構築

データサイエンスがあるからこそ、生の数字の集合が「意味のあるストーリー」へと変換され、データインフォームドな意思決定を支える土台となります。

人工知能(AI)

人工知能(AI)は、大量のデータから学習し、予測や分類、異常検知などを自動で行う技術です。AIの活用により、次のようなことが可能になります。

  • 顧客の離脱確率や購入確率の予測
  • 問い合わせ内容の自動分類やチャットボット対応
  • 需要予測や在庫最適化

これらは単なる自動化ではなく、人間が判断する前段階として、データから「何が起きそうか」を素早く示してくれる存在です。データインフォームドの観点では、AIは「候補や仮説を大量に提示してくれるアシスタント」として位置づけると理解しやすくなります。

ビッグデータ

ビッグデータは、大量(Volume)・多様(Variety)・高速(Velocity)といった特徴を持つデータ群を指します。ログデータ、センサー情報、SNSの投稿など、多種多様なデータが対象となります。

ビッグデータを活用することで、従来は見えなかった顧客の行動パターンや、設備の故障予兆などを捉えられるようになりました。これは、データインフォームドな意思決定において、より広い視野で状況を捉えるための材料を提供してくれます。

機械学習

機械学習は、AIの中核をなす技術で、コンピュータがデータから自動的にルールやパターンを学習する仕組みです。

  • 過去データから「成功パターン」「失敗パターン」を学習し、将来の結果を予測する
  • 似た特徴を持つユーザーをグルーピングし、ターゲティングやレコメンドに活かす

データインフォームドの観点では、機械学習は「人間の勘では見抜きにくい傾向」を見つけるための拡張ツールと言えます。ただし、モデルの結果をどう解釈し、どこまで信頼するかを決めるのは、やはり人間の役割です。

データインフォームドの展望

最後に、データインフォームドが今後どのような形でビジネスや社会に影響していくのか、その展望と課題を整理します。

データインフォームドが業界に与えるインパクト

データインフォームドは、業界を問わず次のようなインパクトをもたらします。

  • 「経験と勘」に依存していた領域に、共通言語としてのデータを持ち込む
  • 属人的な判断プロセスを可視化し、組織として再現可能な形にする
  • 意思決定のスピードと品質を両立させるためのフレームワークを提供する

これにより、単発の成功体験に依存するのではなく、「成功パターンを学習し続ける組織」への変化を促します。

データインフォームドの可能性と変革

今後、データインフォームドは次のような変革の軸として機能することが期待されます。

  • 新規事業やプロダクト開発における、リスクとリターンのバランスを見極める枠組みとして
  • 人事・採用・評価など、これまで数値化が難しいとされてきた領域へのデータ活用の入口として
  • 行政・医療・教育など、公共性の高い分野での透明性ある意思決定の支えとして

いずれも、「データだけ」「人だけ」ではなく、両者の強みを掛け合わせることで実現できる変革です。

データインフォームドの未来の課題

一方で、データインフォームドの普及とともに、次のような課題も浮かび上がってきます。

  • データ品質とバイアス:偏ったデータに基づく判断が、意図せず差別や不公平を助長してしまうリスク。
  • プライバシーと倫理:個人データを扱う際の同意・匿名化・利用目的の明確化など、守るべきルールの順守。
  • 説明責任:「なぜその意思決定になったのか」を、専門家ではない人にも理解できる形で説明する必要性。

これらの課題にどのように向き合うかが、今後のデータインフォームドの信頼性と持続可能性を左右すると言えます。

まとめ

データインフォームドは、データを重視しつつも、人間の直感や経験を尊重するバランス型の意思決定アプローチです。データドリブンと比べ、より現実的で運用に乗せやすい考え方として、多くの組織で取り入れられつつあります。

  • データインフォームドは、データと人間の知見を組み合わせて意思決定の質を高める考え方である
  • ビジネスでは、合意形成・バイアス緩和・説明責任の観点から大きな価値を持つ
  • 実践には、データ基盤の整備・分析スキル・組織文化など、複数の前提条件が必要である
  • データサイエンスやAI、ビッグデータ、機械学習といった周辺技術が、データインフォームドを現実的なものにしている
  • 今後は、データ品質・プライバシー・倫理といった課題への対応が競争力を左右する

まずは、日々の会議や企画立案の場で「どのデータを見て、どう解釈し、そのうえでどう決めるのか」を意識することから、データインフォームドな組織づくりを始めてみてください。

FAQ

Q.データインフォームドとは何ですか?

データインフォームドとは、データから得られた示唆を根拠にしながらも、最終的な意思決定を人間が行うアプローチを指します。データは判断を助ける材料であり、決定そのものを自動化するものではありません。

Q.データドリブンとの違いは何ですか?

データドリブンはできる限りデータに基づいて意思決定する発想であるのに対し、データインフォームドはデータを重要な材料としつつも、人間の経験や直感も含めて総合的に判断する点が異なります。

Q.どのような場面でデータインフォームドが有効ですか?

十分なデータが揃っていない新規事業や、ブランドへの影響など数値化しにくい要素を含む意思決定の場面で有効です。定量データと現場の感覚を組み合わせて判断したいケースに向いています。

Q.データインフォームドを導入するために最初にやるべきことは何ですか?

まず、どの意思決定でどの指標を見たいのかを決め、必要なデータが取得・集計できる状態かを確認します。そのうえで、小さな意思決定からデータと直感をセットで使う習慣づくりを始めるとよいです。

Q.データインフォームドの主なメリットは何ですか?

データと人間の知見を組み合わせることで、バイアスを抑えつつ現場感も失わない意思決定ができる点がメリットです。また、判断の根拠を説明しやすくなり、組織内の納得度も高まりやすくなります。

Q.データインフォームドのデメリットや注意点はありますか?

データ整備や分析のコストがかかること、データと直感のどちらをどこまで重視するかの基準があいまいだと議論が散漫になりやすいことが注意点です。ルールづくりと役割分担が重要です。

Q.中小企業でもデータインフォームドは実践できますか?

実践できます。Excelやアクセス解析ツールなど身近なデータから始め、小さな意思決定で「事実と感覚をセットで見る」習慣を作ることで、段階的にデータインフォームドへ近づけます。

Q.どのような人材がデータインフォームドを推進できますか?

データの基本的な読み方を理解しつつ、現場業務にも精通している人材が推進役に向いています。数字だけでなく、ビジネスの文脈や顧客理解をセットで語れることが重要です。

Q.データインフォームドとAIや機械学習の関係は何ですか?

AIや機械学習は、大量のデータからパターンや予測を提示する役割を担い、データインフォームドな意思決定の材料を増やしてくれます。ただし、その結果をどう解釈し使うかは人間が判断します。

Q.データインフォームドを継続するうえで重要なポイントは何ですか?

定期的にデータを振り返り、仮説と結果のズレを学習につなげる姿勢が重要です。失敗を責めるのではなく、得られた知見を次の意思決定に活かす文化をつくることが継続の鍵になります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム