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データウェアハウスとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

データウェアハウスとは?

データウェアハウス(Data Warehouse:以降、DWH)は、直訳すると「データの倉庫」です。企業内外の複数のシステム(販売管理、会計、CRM、Webログ、広告、サポートなど)やデータソースから集めたデータを、分析に使いやすい形へ整えたうえで一元的に保管し、統一されたルールで管理するための基盤を指します。

重要なのは、DWHが「ただの保存場所」ではない点です。日々の業務を回すためのデータ(例:受注の追加、在庫の更新)を扱う仕組みとは役割が異なり、DWHは意思決定の材料を用意するために設計されます。つまり、バラバラなデータを同じ定義で見られる状態にし、分析・レポーティング・ダッシュボードなどの土台になることがDWHの価値です。

DWHの基本

DWHは、しばしば次の4つの性質で説明されます。これはDWHの提唱者として知られるWilliam H. Inmon氏が示した考え方に基づく整理で、DWHの「らしさ」を理解するうえで役立ちます。

1. 主題指向(Subject-oriented)
業務処理の単位(注文、請求など)ではなく、「売上」「顧客」「商品」「チャネル」などの分析テーマ(主題)でデータを整理します。部門やシステムの都合ではなく、意思決定に必要な切り口で見られる状態を目指します。

2. 統合(Integrated)
システムごとに表記や粒度、定義が違うデータを、共通ルールでそろえて扱えるようにします。たとえば「顧客ID」や「日付」「商品コード」「地域」などを統一し、同じ指標が部署によってズレる状態を減らします。

3. 時系列(Time-variant)
DWHは過去の状態を含めて保持する前提で設計されることが多いです。ある時点の売上、当時の顧客属性、過去の価格やキャンペーン情報など、「いつの状態か」を追えるようにすることで、トレンド分析や比較、要因分析が可能になります。

4. 非揮発(Non-volatile)
業務データベースのように日々の更新・削除を繰り返すのではなく、DWHでは分析の整合性を保つために、基本的には追記・蓄積が中心になります。結果として、同じ条件で再集計しても結果が変わりにくく、説明責任を果たしやすくなります。

なお、運用上は「完全に不変」というよりも、データ品質の修正や取り込みミスの是正が発生することはあります。その場合も、いつ・何を・なぜ直したかが追えるように運用設計することが大切です。

DWHの役割

DWHの役割は、大きく分けると集約・統合・保存、そして分析を成立させるための土台作りです。現実のデータは、欠損、表記ゆれ、コード体系の違い、粒度の差などが混在します。DWHでは、こうしたズレを吸収し、分析に耐える形へ整えます。

代表的な処理として、データを抽出・変換・格納するETL(Extract / Transform / Load)があります。近年は、まず格納してから変換するELTが採用されることもありますが、どちらにせよ目的は同じで、分析で使えるデータへ整えることです。

また、DWHは大量データを長期にわたって扱う前提のため、トレンド把握、異常検知、仮説検証、将来予測の準備(特徴量の作成など)にも向きます。結果として、DWHは「集めたデータを価値へ変える」ための基盤として、企業のデータ活用を前に進めます。

DWHの開発者: William H. Inmon氏

DWHの概念を体系化した人物として、William H. Inmon氏が挙げられます。彼は「データウェアハウスの父」と呼ばれることもあり、DWHを「主題指向で統合され、時間変化を扱い、非揮発なデータの集合体で、意思決定を支援するもの」と定義しています。

この定義は、DWHの本質が「保存」ではなく「意思決定支援」にあることを示しています。データが増えるほど、部門ごとに管理されたサイロが生まれやすくなりますが、DWHはその状況を整理し、全社で同じ前提で語れる状態を作ることに意味があります。

DWHのビジネスへの影響

DWHは、企業がデータに基づく意思決定を行う際の「前提の統一」に効きます。たとえば、同じ「売上」でも、計上基準、返品扱い、締め日の考え方が部門ごとに違うと、会議の時間の多くが定義合わせに消えます。DWHで定義とデータの形をそろえれば、議論は「何が起きたか」から「なぜ起きたか」「次に何をするか」へ移りやすくなります。

また、時系列で保持されたデータにより、顧客行動や需要の変化、製品ライフサイクル、市場の反応などを分析できます。こうした分析は、施策の評価(効果測定)や、改善の優先順位付けにも直結します。DWHは、データ活用を継続的に回すための土台として、競争力の強化に寄与します。

DWHとデータベースの違い

DWHとデータベースは似ているように見えますが、得意分野が異なります。ポイントは「何のために最適化されているか」です。

データベースの基本概念

一般に「データベース」と言う場合、日々の業務処理を支える運用データベース(OLTP:Online Transaction Processing)を指すことが多いです。受注の追加、在庫の更新、請求の確定といった処理を、正確かつ高速に行えるよう設計されています。特徴としては、更新頻度が高いこと、整合性(同時更新の制御など)を強く意識すること、そして業務の即時性を重視することが挙げられます。

データベースとDWHの類似点と相違点

DWHもデータベースも、データを保存し検索する点は共通します。ただし、DWHは分析(OLAP:Online Analytical Processing)を主目的とするため、設計思想が変わります。運用DBが「正しく回す」ための仕組みであるのに対し、DWHは「正しく理解し、比較し、判断する」ための仕組みです。

運用DBは現在の状態(最新の在庫、現時点の顧客情報など)を扱うことが多い一方、DWHは過去を含む履歴を残し、時系列で分析できるようにします。また、DWHは複数ソースの統合が前提となるため、共通定義の整備、データ品質の確保、粒度の統一などが重要になります。

DWHかデータベースかの選択

どちらを選ぶべきかは目的次第です。日々の業務を処理するなら運用DBが適しています。一方で、部門横断の分析、履歴を使ったトレンド把握、複雑な集計や可視化が必要なら、DWHが本領を発揮します。

実務では「DBかDWHか」の二択ではなく、運用DB(業務)+DWH(分析)を役割分担させることが一般的です。業務データを安定運用しつつ、分析はDWH側で行うことで、互いの性能や設計思想を邪魔しにくくなります。

その他のデータ管理手法の違い

DWHの位置づけを理解するには、データレイク、データマート、ビッグデータといった関連概念との違いを押さえておくと整理しやすくなります。

データレイクとの違い

データレイクは、非構造化データも含めて、さまざまなデータを比較的そのままの形で蓄積する考え方です。後から目的に応じて加工・探索することを想定するため、データサイエンス用途や探索的分析に向く場面があります。

一方DWHは、基本的に分析の前提(定義・形式・粒度)をそろえることに重きを置きます。「後で自由に加工できる」ことよりも、「誰が見ても同じ指標になる」ことを優先するイメージです。どちらが優れているかではなく、目的と運用設計が異なります。


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データマートとの違い

データマートは、特定の部門や業務目的に合わせて作られる、比較的小規模な分析用データ領域です。営業向け、マーケティング向け、財務向けなど、用途を絞って最適化することで、利用者が必要なデータへ速くたどり着けるメリットがあります。

一方でDWHは、全社の共通基盤として、部門横断で統合したデータを管理することが多いです。データマートはDWHから切り出して作る場合もあり、両者は対立概念というより階層関係として設計されることがあります。

ビッグデータとの違い

ビッグデータは、規模(Volume)、種類(Variety)、速度(Velocity)といった特性を持つ大量データの総称として語られます。技術やアーキテクチャは目的によってさまざまで、分散処理やストリーミング処理などが検討対象になります。

DWHは、特に構造化データの分析を得意とし、SQLを中心に大規模集計を高速化する設計が採られることが多いです。現代のデータ基盤では、ビッグデータ的なデータ取り込みと、DWH的な整理・統合を組み合わせた構成も一般的になっています。


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DWHとBI(ビジネスインテリジェンス)

DWHとBIは、企業のデータ活用においてセットで語られることが多い関係です。ざっくり言えば、DWHが「整えたデータを蓄える場所」で、BIが「見える形にして判断を助ける道具」です。

BIとは何か?

ビジネスインテリジェンス(BI)は、企業がデータを使って意思決定を行うための手法や仕組み、そしてそれを支えるツール群を指します。ダッシュボード、レポート、可視化、ドリルダウン、アラートなどを通じて、業績や傾向を把握しやすくします。

BIツールは「見せ方」が注目されがちですが、実際には「同じ定義で集計できるデータがあるか」が成果を左右します。つまり、BIは単体で完結しにくく、データ基盤とセットで効果が出やすい領域です。


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DWHのBIへの役割

DWHは、さまざまな情報源から集約されたデータをクリーニングし、整理し、統合したうえで、BIツールが使える形で提供します。BIはそのデータを用いて集計・可視化を行い、現場の判断を支えます。したがって、DWHはBIの主要なデータソースになりやすい存在です。

DWHとBIの相乗効果

DWHがデータの定義と整合性を担保し、BIが利用者にとって理解しやすい形で提示することで、データ活用が「個人の腕」から「組織の仕組み」へ近づきます。DWHが「倉庫」で、BIが「取り出して使う道具」という比喩は分かりやすい一方で、実務的にはDWH側の設計(粒度、履歴の持ち方、集計の前提)がBIの品質を左右する点が重要です。

DWHとBIの活用例

たとえば、取引データの異常検知では、過去の履歴を含むデータをDWHに蓄積し、BI側で傾向や例外を可視化することで、調査の起点を作れます。また、製造・物流・マーケティングなどでも、複数ソースを統合した指標をもとに、施策の効果測定や改善の優先順位付けを行えます。重要なのは「高度なことをする」よりも、同じ数字を、同じ意味で、継続的に見られる状態を作ることです。

DWHの機能と特性

DWHは、企業内のさまざまなデータを一元化し、分析・活用するための基盤です。特に、データ統合時系列管理永続的な保管検索・分析の効率化が代表的な特性として挙げられます。

データの統合

DWHは、業務システムや外部サービスなど、複数のデータソースからデータを集め、統一された形式で管理します。これにより、データの一貫性が保たれ、部門横断の分析が行いやすくなります。

また、同じ実体(顧客、商品など)がシステムごとに別のIDで管理されている場合、統合の設計が重要になります。ここを丁寧に行うことで、冗長性の排除だけでなく、分析結果の信頼性が上がります。

時系列のデータ管理

DWHは、過去データを時系列で保持しやすい設計が取られます。これにより、売上や顧客行動の変化、季節性、施策の前後差などを捉えやすくなります。

「いつの状態のデータか」を追えるようにすると、単純な集計だけでなく、原因探索や改善の検証まで踏み込みやすくなります。分析の説得力は、こうした履歴設計に左右されます。

データの永続的な保管

DWHは長期保存に向くため、過去の経緯を踏まえた分析が可能になります。たとえば、前年同月比や季節要因の比較、顧客の継続・離脱の推移などは、履歴があって初めて成立します。

また、監査や説明責任の観点から、一定期間のデータ保持が必要になるケースもあります。その場合も、保存だけでなく「検索できる」「再現できる」状態にしておくことが重要です。

検索・分析の効率化

DWHは、大量データに対する集計や結合、複雑なクエリを前提に性能設計されます。運用DBで重い集計を回して業務影響が出る、という問題を避ける意味でも、分析はDWH側へ寄せる設計が有効です。

高速化のためには、データの持ち方(スキーマ設計)、パーティショニング、集計テーブルの設計、利用パターンの把握などが効きます。つまり、DWHは「導入すれば速い」ではなく、使い方と設計が揃って速くなる性格の基盤です。

DWHの最適化

DWHは「作って終わり」になりやすい領域でもあります。成果につなげるには、構築プロセス、性能、選定、セキュリティを運用として回す必要があります。

DWH構築のプロセス

DWH構築は一般的に、データの収集、変換、格納(ETL/ELT)、統合、分析という流れで進みます。最初にやるべきことは、技術選定よりも、分析したい問い必要な粒度・履歴を整理することです。ここが曖昧だと、後工程で迷走しやすくなります。

次に、データの取り込みにおいては、正確性だけでなく、欠損や異常値への扱い、更新頻度、遅延許容など、運用前提を決めます。そのうえで、変換処理で共通定義へそろえ、DWHへ格納します。

DWHのパフォーマンス最適化

パフォーマンス最適化は、クエリの応答速度、処理時間、リソース効率などを改善する取り組みです。重要なのは、設計と運用の両面から見ることです。

設計面では、スキーマ設計、分割(パーティショニング)、集計設計、履歴の持ち方などが効きます。運用面では、利用されるクエリ傾向を把握し、よく使われる集計を用意する、重い処理の実行時間帯を調整するなどが有効です。

DWH選定のポイント

DWHの選定では、提供形態(クラウド/オンプレミス)、拡張性、性能、運用負荷、連携性、利用者の使いやすさ、コスト、サポートなど複数の要素を見ます。

とくに見落としやすいのが、「取り込み元との接続」「データ品質を維持する運用」「権限設計」の3点です。ツールの機能比較だけでなく、継続運用できるかの観点で判断することが重要です。

DWHのセキュリティ

DWHは企業の重要データが集まる場所であり、セキュリティは必須要件です。アクセス制御(最小権限)、監査ログ、暗号化、ネットワーク制御、データ分類、マスキング、バックアップと復旧手順などを設計に含めます。

クラウド型の場合は、クラウド事業者側の責任範囲と利用者側の責任範囲を理解し、設定不備が起きない運用体制を整えることが重要です。セキュリティは「機能」ではなく「運用」です。

Q.DWHとは何ですか?

複数のデータソースから集めたデータを分析用に整え、一元的に保管・管理する基盤です。

Q.DWHと運用データベースの違いは何ですか?

運用データベースは日々の更新・取引処理を高速に行うための仕組みで、DWHは分析と意思決定を支援するために設計されます。

Q.DWHが「主題指向」とはどういう意味ですか?

受注や請求といった処理単位ではなく、売上・顧客・商品など分析テーマ(主題)でデータを整理する考え方です。

Q.DWHの「統合」とは何をしますか?

システムごとに異なるIDや表記、粒度、定義を共通ルールでそろえ、同じ指標を同じ意味で見られる状態にします。

Q.DWHの「時系列性」はなぜ重要ですか?

過去データを保持して変化を追えるようにすることで、トレンド分析や施策の前後比較、要因分析が可能になります。

Q.DWHの「非揮発性」とは何ですか?

頻繁な更新・削除を前提とせず、追記・蓄積を中心に運用し、同条件の再集計でも結果が変わりにくい状態を目指す性質です。

Q.ETLとELTの違いは何ですか?

ETLは変換してから格納し、ELTは先に格納してから変換する進め方です。どちらも分析に使える形へ整えることが目的です。

Q.DWHとデータレイクはどちらを選ぶべきですか?

探索的に幅広いデータを扱うならデータレイク、共通定義で安定した分析を回すならDWHが向きます。目的と運用で使い分けます。

Q.DWHとデータマートの関係は?

データマートは部門や用途に特化した小規模な分析領域で、DWHから切り出して作ることもあります。両者は補完関係です。

Q.DWHで特に重要なセキュリティ対策は?

最小権限のアクセス制御、監査ログ、暗号化、データ分類、バックアップと復旧手順の整備が基本です。クラウドでは責任分界の理解も重要です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム