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電子署名とは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

リモートワークやオンライン取引が当たり前になった今、「このデータは本当に本人が作ったのか」「途中で書き換えられていないか」を、紙や対面に頼らず証明する必要が増えています。そこで重要になるのが電子署名です。電子署名は、デジタルなやり取りに「本人性」と「改ざん検知」を持ち込むための技術であり、情報セキュリティの考え方とも密接に結びついています。

この記事では、電子署名の基本から仕組み、種類、情報セキュリティへの寄与、活用場面、運用上の注意点までを整理します。読み終えたときに、電子署名が担保できること/できないこと、導入や運用でどこを押さえるべきかを判断できる状態を目指します。

電子署名とは?

電子署名とは、電子データ(文書、メール、申請データなど)に対して付与される「署名」です。紙にサインする代わりに、データの内容と署名者を結びつけ、主に次の性質を提供します。

  • 本人性:署名を作ったのが、想定している本人(または組織)であることを検証しやすくする
  • 完全性:署名後に内容が変わっていれば検出できる(改ざん検知)
  • 否認防止:一定の前提を満たす運用では、「自分は署名していない」と言い逃れしにくくする

ここで大事なのは、電子署名は「暗号化して内容を隠す」ための技術ではなく、“誰が作り、内容が変わっていないか”を確かめるための技術だという点です。内容の秘匿が必要なら、別途暗号化(例:TLS、ファイル暗号化)を組み合わせます。

情報セキュリティとは?

情報セキュリティとは、情報や情報システムをさまざまな脅威から守り、機密性(Confidentiality)完全性(Integrity)可用性(Availability)を維持するための考え方と取り組みです。脅威には、盗難・漏えい・改ざん・破壊・不正アクセス・なりすましなどが含まれます。

電子署名は、このうち特に完全性なりすまし対策(本人性の検証)に関わる重要な要素です。適切な運用と組み合わせることで、デジタル上の取引や申請に「信用の土台」を作ります。

電子署名の仕組み

電子署名を理解するうえでは、公開鍵暗号(鍵ペア)ハッシュ関数デジタル証明書(PKI)の3点が核になります。ここでは「何がどの役割を担っているのか」が分かるよう、流れに沿って整理します。

鍵と暗号(公開鍵暗号方式)

電子署名で一般的に使われるのは、公開鍵暗号方式(公開鍵暗号)です。ここでは「公開鍵」と「秘密鍵」という2つの鍵(鍵ペア)を用います。

  • 秘密鍵:署名を作るために使う鍵。署名者だけが保持し、厳格に保護する必要がある
  • 公開鍵:署名を検証するために使う鍵。検証者に配布してよい

電子署名の基本はシンプルで、署名者は秘密鍵で署名を作り、受け手は公開鍵で署名を検証します。秘密鍵が漏えいしてしまうと、第三者が本人になりすまして署名できてしまうため、運用上も最重要の管理対象になります。

ハッシュ関数

ハッシュ関数は、データから固定長の要約値(ハッシュ値)を作る仕組みです。電子署名では、署名対象のデータそのものではなく、まずデータから作ったハッシュ値に対して署名するのが一般的です。

流れとしては次のようになります。

  1. 署名対象データからハッシュ値を計算する
  2. そのハッシュ値に対して秘密鍵で署名を作る(= 電子署名)
  3. 受け手は同じデータからハッシュ値を再計算し、公開鍵で署名を検証する

もし途中でデータが1文字でも変われば、再計算したハッシュ値が変わるため、署名検証に失敗します。これにより改ざんを検知できます。

なお、ハッシュ関数は「一方向性」であり、ハッシュ値から元データを復元できない性質があります。ただし、これは内容を秘匿する仕組みではありません。元データが公開されていれば、誰でもハッシュ値は再計算できます。秘匿が必要な場合は、暗号化など別の手段が必要です。

デジタル証明書(認証局とPKI)

公開鍵暗号だけでも「署名が正しいか」は検証できますが、もう一段重要なのがその公開鍵が“誰のものか”です。ここを支えるのがデジタル証明書とPKI(公開鍵基盤)です。

デジタル証明書は、ある公開鍵が特定の個人・組織に属していることを、第三者が保証するための電子的な証明書です。一般に認証局(CA)が発行し、証明書には公開鍵や所有者情報、発行者情報、有効期限などが含まれます。

たとえば、運転免許証が「その人が誰か」を公的に示すように、デジタル証明書は「この公開鍵はこの主体のものだ」と示します。検証側は、証明書の発行者(認証局)を信頼できるか、証明書が失効していないか(CRL/OCSPなど)を確認しながら、署名の検証精度を高めます。

電子署名の種類と特徴

「電子署名」と呼ばれるものには幅があります。実務では、技術的なデジタル署名(公開鍵暗号に基づく署名)を指すことが多い一方、業務上の「同意」や「承認」を示す手段も広く電子署名と呼ばれることがあります。ここでは混同が起きやすいポイントを押さえながら代表例を整理します。

PGP署名(OpenPGP署名)

PGP(Pretty Good Privacy)/OpenPGPは、メールやファイルに対して署名や暗号化を行う仕組みです。署名を付けることで、受け手は送信者が想定どおりか内容が改ざんされていないかを検証できます。

特徴として、証明書発行の仕組みが認証局中心のPKIと異なり、利用形態によっては「信頼のつなぎ方(鍵の信頼モデル)」を設計する必要があります。組織内で運用する場合は、鍵配布や更新、失効管理まで含めてルール化すると事故を減らせます。

電子印鑑(承認の証跡としての“印”)

「電子印鑑」は、業務上の承認や稟議の証跡として使われることが多い表現です。システム上の押印操作、承認ログ、ワークフローの履歴などで「誰が承認したか」を示します。

ただし、電子印鑑という言葉は技術方式が一つに定まっているわけではありません。単なる画像貼り付けから、証明書を使ったデジタル署名までさまざまです。目的(改ざん検知が必要か、本人性の証明が必要か、監査対応が必要か)に応じて、必要な方式を選ぶことが重要です。

デジタルID(証明書・鍵・本人確認の枠組み)

デジタルIDは、オンライン上で個人や組織を識別するための仕組みの総称です。証明書、鍵、本人確認プロセス、認証方式、失効管理などが組み合わさり、「この主体である」と示す基盤になります。

電子署名の運用では、デジタルIDの設計が品質を左右します。本人確認の強さ、鍵の保管方式(端末内・ICカード・HSMなど)、失効時の運用、監査ログの整備など、技術と運用がセットで求められます。

電子署名の情報セキュリティへの寄与

電子署名は、データのやり取りにおける「信用の部品」です。特に次の3点で情報セキュリティに貢献します。

データの完全性(改ざん検知)

電子署名は、署名対象データから算出したハッシュ値を利用して、署名後の改ざんを検知します。途中でデータが変われば検証に失敗するため、受け手は「受け取ったデータが当時の内容と一致するか」を判断できます。

ここで重要なのは、完全性は「改ざんされていないことを保証する」ではなく、実務上は“改ざんされていれば高い確度で検知できる”という意味合いで理解することです。前提となる鍵管理や検証手順が崩れると、効果は大きく落ちます。

否認防止(後から言い逃れしにくくする)

秘密鍵が適切に管理され、本人確認やログが整備されている場合、電子署名は「その主体が署名した」という主張を裏付けやすくします。これが否認防止の考え方です。

ただし、否認防止は技術だけで完結しません。秘密鍵が共有されていた、端末が乗っ取られていた、承認フローが形骸化していた、といった運用不備があると「本人の行為」と言い切れない状況が生まれます。運用設計がセットである点が、電子署名の重要な注意点です。

相手の確認(なりすまし対策の一部)

電子署名は、相手の正当性を確かめる仕組みの一部としても機能します。たとえばWeb通信のTLSでは、サーバ証明書が電子署名を含み、利用者は「この接続先は想定しているサイトか」を検証しやすくなります。

ただし、ここでもポイントは「証明書を誰が発行し、何を確認しているか」です。証明書の種類や発行ポリシーによって、確認できる範囲は変わります。用途に合った信頼モデルを選ぶことが重要です。

電子署名の活用

電子署名は「紙を電子に置き換える」だけでなく、やり取りの信頼性と検証可能性を上げるために使われます。典型的な活用場面を見ていきましょう。

ビジネスでの活用

契約、発注、業務委託、社内承認、報告書など、ビジネスでは合意形成と証跡が必要な場面が多くあります。電子署名を使うことで、印刷・押印・郵送といった手間を減らしつつ、改ざん検知や監査対応の観点でも整合性を取りやすくなります。

一方で、契約や承認の要件(本人確認のレベル、監査ログ、保存期間など)が業務や規制によって異なるため、「署名が付いているからOK」ではなく、要件に合わせた方式選択が必要です。

官公庁・公共分野での活用

オンライン申請や各種届出では、申請者の同一性確認や改ざん防止が重要になります。電子署名は、申請データの完全性を担保し、提出後の改変を検知するうえでも有効です。

公共分野では、手続きの正確性や保存・監査の要件が厳格になりやすいため、証明書の取り扱い、失効確認、タイムスタンプの活用など、運用面の設計が成果を左右します。

個人での活用

個人でも、ローンや保険、各種サービス契約、電子申請など、署名が必要な手続きは増えています。電子署名を利用できれば、対面や郵送に依存しない手続きが可能になり、利便性が上がります。

ただし、個人利用では端末紛失・アカウント乗っ取り・パスワード再利用などのリスクが現実的です。利用するサービスの本人確認の仕組みや、二要素認証の有無、通知・ログの確認性も合わせて見ておくと安心です。

電子署名を使う上での注意点

電子署名の価値は、技術よりも「運用が崩れていないか」で決まります。特に押さえるべきなのは、秘密鍵の管理認証局と証明書の扱い有効期限・失効の3点です。

秘密鍵の管理

秘密鍵が漏えいすると、第三者が本人になりすまして署名できてしまいます。つまり、秘密鍵の漏えいは「印鑑を盗まれる」以上に深刻になり得ます。保管方式(端末内保管、ICカード、HSMなど)や、端末の保護(OS更新、マルウェア対策、ディスク暗号化)、アクセス制御、バックアップ方針まで含めて設計が必要です。

運用面では、鍵の共有禁止、退職・異動時の手順、紛失時の失効手続き、署名操作のログ保全などを明確にすると、事故時の被害を抑えられます。

認証局の信頼性(証明書の“出どころ”)

証明書は「公開鍵が誰のものか」を示しますが、これは発行者の確認プロセスが信頼できて初めて意味を持ちます。認証局がどのような本人確認・組織確認を行っているか、失効対応の仕組みがあるか、監査や運用体制が整っているかは重要な判断材料です。

また、社内認証局(プライベートCA)を使う場合は、信頼の範囲が社内中心になります。外部との取引で使うのか、社内用途に限定するのかで設計を分ける必要があります。

証明書の有効期限と失効(CRL/OCSP)

証明書には有効期限があり、期限切れの証明書は検証に失敗したり、運用ルール上は受け付けられなくなったりします。更新を怠ると、業務停止につながることもあります。

さらに実務では、期限より前に「失効」するケース(鍵漏えい、退職、端末紛失など)が重要です。検証側が失効を確認できないと、リスクが残ります。証明書の更新計画と合わせて、失効確認が運用に組み込まれているかも点検ポイントになります。

従来の署名と電子署名の違い

手書き署名と電子署名は、どちらも「承認」「合意」を示す点では似ていますが、検証方法と運用リスクが大きく異なります。

検証の方法が異なる

手書き署名は、筆跡や印影、押印手順、保管状況などの状況証拠で判断されることが多い一方、電子署名は鍵と証明書、検証手順によって機械的に検証できます。改ざん検知の観点では、電子署名のほうが強みを発揮しやすい領域があります。

複製の容易さと管理の難しさ

電子データは複製が容易で、配送も高速です。これは利点でもありますが、同時に「鍵が漏れれば即座に広範囲で悪用され得る」ことも意味します。そのため、電子署名は技術の導入だけでは足りず、鍵管理・アクセス制御・ログ・失効対応といった運用が不可欠です。

法的な扱いは要件次第

電子署名は多くの国・地域で法的に位置づけられていますが、どの方式で、どの要件(本人確認、改ざん防止、証拠保全など)を満たすかによって、法的評価や求められる手続きは変わります。

したがって、「電子署名なら必ず同じ効力」と一律に考えるのではなく、契約・申請・社内承認など用途ごとの要件を確認し、適切な方式と運用を選ぶことが現実的です。

電子署名の将来性

業務のオンライン化が進むほど、「データに信用を付ける技術」の重要性は増します。電子署名はその中核であり、今後も活用領域が広がると見込まれます。

リモート化・自動化との相性

電子署名は、遠隔での合意形成や、ワークフローの自動化と相性が良い技術です。本人性や改ざん検知を担保しながら、手続きをオンラインで完結させやすく、業務のスピードや監査可能性の向上につながります。

新技術との組み合わせ

タイムスタンプ(署名時刻の証明)やハードウェアによる鍵保護、ゼロトラストの考え方に沿ったアクセス制御など、周辺技術との組み合わせが進むことで、より安全で運用しやすい形へ進化していく余地があります。

課題は「技術」より「運用」

一方で、電子署名の成否を分けるのは運用です。鍵管理、失効、ログ、本人確認、例外処理など、現場の運用が崩れれば、技術的に強い方式でも意味を失います。将来に向けては、セキュリティとユーザビリティを両立した運用設計が、より重視されるでしょう。

まとめ

電子署名は、デジタルなやり取りにおいて「本人性」と「改ざん検知」を提供し、情報セキュリティの重要な一角を担う技術です。公開鍵暗号、ハッシュ関数、デジタル証明書(PKI)を軸に仕組みが成り立ち、適切に運用されることで、取引や申請、承認の信頼性を高めます。

一方で、電子署名は万能ではありません。内容の秘匿は暗号化が必要であり、否認防止も鍵管理やログなど運用の品質に依存します。導入時は「何を証明したいのか」「どの要件を満たす必要があるか」を整理し、方式と運用をセットで設計することが重要です。

Q.電子署名で何が証明できますか?

署名者の本人性の検証と、署名後にデータが改ざんされていないことの確認に役立ちます。

Q.電子署名はデータを暗号化して内容を隠しますか?

いいえ。電子署名は改ざん検知と本人性の検証が主目的で、秘匿が必要なら別途暗号化が必要です。

Q.公開鍵と秘密鍵は何が違いますか?

秘密鍵は署名の作成に使い厳重に保護します。公開鍵は署名の検証に使い共有できます。

Q.ハッシュ関数は電子署名で何のために使いますか?

署名対象データから要約値を作り、その要約値に署名することで改ざんを検知しやすくします。

Q.デジタル証明書はなぜ必要ですか?

公開鍵が誰のものかを示し、署名検証の信頼性を高めるために必要です。

Q.認証局は何をしている組織ですか?

本人確認や組織確認を行い、公開鍵と主体を結びつけた証明書を発行します。

Q.秘密鍵が漏えいすると何が起きますか?

第三者が本人になりすまして署名でき、契約や申請の信頼性が大きく損なわれます。

Q.証明書の有効期限が切れるとどうなりますか?

検証に失敗したり運用上受理されなくなったりするため、更新計画と監視が必要です。

Q.失効確認(CRL/OCSP)はなぜ重要ですか?

鍵漏えいや退職などで無効になった証明書を見抜くために重要です。

Q.電子署名の法的な扱いは同じですか?

いいえ。国や用途の要件によって扱いが異なるため、目的に合う方式と運用を選ぶ必要があります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム