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災害情報デジタル化とは? 10分でわかりやすく解説

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災害情報のデジタル化とは、災害時の情報収集、整理、共有、発信、安否確認をデジタル技術で支援し、判断と行動を速くする取り組みです。企業では、従業員の安全確認、拠点の被害把握、顧客・取引先への情報提供、BCPの実行に直結します。紙のマニュアルや電話連絡だけに依存すると、情報の遅れ、確認漏れ、関係者間の認識違いが起きやすくなります。災害時に使える情報基盤を平時から整えることが、事業継続と安全確保の前提になります。

災害情報デジタル化とは

災害情報デジタル化とは、災害時に必要となる情報の収集・整理・伝達・共有を、クラウド、アプリ、地図、センサー、通知システム、ダッシュボードなどを使って扱いやすくする取り組みです。対象となる情報には、気象・地震・河川・避難情報、拠点の被害状況、従業員の安否、交通・物流状況、顧客・取引先への連絡情報などがあります。

目的は、紙や電話を単に電子化することではありません。災害発生時に、誰が、どの情報を、どの順番で確認し、どの判断につなげるかを明確にすることです。情報が速く集まっても、責任者、判断基準、共有範囲が決まっていなければ、対応は遅れます。

災害情報デジタル化の必要性

従来の災害対応では、電話連絡、紙のマニュアル、メール、テレビ・ラジオ、個別のExcel管理などが併用されてきました。これらは今も必要な手段ですが、災害時には通信混雑、担当者不在、情報の重複、更新漏れが起きやすくなります。

企業で特に問題になりやすいのは、情報の集約と更新です。複数拠点の被害状況、従業員の安否、出社可否、サプライチェーンの停止状況、顧客対応の優先順位が別々に管理されると、経営層や災害対策本部が正確な判断を下しにくくなります。

災害情報をデジタル化すると、情報を一つの画面や共通の基盤で確認しやすくなります。安否確認の未回答者、被害が大きい拠点、復旧を優先すべき業務、顧客への告知状況を可視化できれば、対応の抜けを減らせます。

デジタル化のメリット

災害情報をデジタル化する主なメリットは、情報の取得、共有、判断、記録を速くできることです。代表的な効果は次のとおりです。

  1. 従業員や拠点からの報告を短時間で集約できる
  2. 安否確認、被害状況、復旧状況を一覧で把握できる
  3. 地図やダッシュボードで被害範囲と対応状況を確認できる
  4. 顧客、取引先、従業員へ複数チャネルで情報を届けられる
  5. 対応履歴を残し、訓練や事後検証に使える

企業にとっては、災害時の混乱を抑えるだけでなく、BCPの実効性を高める効果があります。重要業務の継続、復旧優先順位の判断、従業員の安全確保、顧客への説明を、同じ情報に基づいて進めやすくなります。

デジタル化の課題

災害情報のデジタル化には、導入前に確認すべき課題もあります。システムを導入するだけでは、災害時に使える仕組みにはなりません。

導入・運用コストシステム費用だけでなく、設定、教育、訓練、保守、連絡先更新の工数が発生する。
データの標準化部署、拠点、自治体、取引先で情報形式が異なると、集約や比較に時間がかかる。
セキュリティ安否、所在地、連絡先、拠点被害などの情報を扱うため、権限管理と監査が必要になる。
運用体制誰が情報を登録し、誰が確認し、誰が発信を承認するかを決めておく必要がある。

災害時に初めて使うシステムは機能しにくいため、平時の訓練、連絡先の更新、操作手順の確認を継続します。特に、安否確認や対外発信は、担当者不在時の代理権限まで決めておく必要があります。

デジタル化の現状

国や自治体では、防災分野のデータ連携、避難所業務のデジタル化、防災アプリ・サービスの活用、災害対応機関間の情報共有に向けた取り組みが進んでいます。企業も、これらの公的情報や外部サービスを自社の災害対応に取り込むことができます。

企業側では、安否確認システム、クラウド型の災害対策ポータル、社内SNS、チャットツール、グループウェア、地図ダッシュボード、緊急通知システムなどが利用されています。ただし、複数のツールを導入しても、連絡経路と責任者が曖昧なままでは機能しません。

災害情報デジタル化を進める際は、自社内の情報だけで完結させず、自治体、気象庁、交通機関、通信事業者、インフラ事業者、取引先から得る情報も含めて設計します。

災害情報をデジタル化する方法

災害情報のデジタル化は、情報収集、情報管理、情報発信、双方向コミュニケーションの4段階で考えると整理しやすくなります。各段階で必要な情報、利用者、判断者、ツールを分けて設計します。

情報収集をデジタル化する

災害時の情報収集では、スピードと確認可能性が重要です。現場からの報告、外部機関の発表、センサー情報、SNS上の投稿などを扱う場合、情報源と信頼度を分けて管理する必要があります。

  • スマートフォンやタブレットによる現場写真、動画、テキスト報告
  • 安否確認システムによる従業員の状態把握
  • 気象、地震、河川、交通、停電などの外部情報の取得
  • IoTセンサーによる水位、温度、設備状態などの監視
  • SNSやニュースの確認による周辺状況の把握

SNSは速報性が高い一方、未確認情報や古い情報が混在します。災害時の偽・誤情報は救助や復旧の妨げになり得るため、公式情報との照合、発信元の確認、社内での扱いルールを決めておきます。

情報を一元管理する

収集した情報を担当者ごとの端末や個別ファイルに分散させると、判断に使うまでに時間がかかります。クラウド型の管理画面、ダッシュボード、共有データベース、地図システムなどを使い、関係者が同じ情報を確認できる状態を作ります。

  1. 拠点、従業員、取引先、設備、被害状況を共通の画面で確認する
  2. 情報の更新時刻、登録者、確認済み・未確認の状態を表示する
  3. 役割に応じて閲覧・編集・承認の権限を分ける
  4. クラウドやバックアップにより、拠点被災時も情報を参照できる状態にする

一元管理の目的は、すべての情報を集めることではありません。災害対策本部、拠点責任者、人事、総務、広報、情報システム部門が、それぞれの判断に必要な情報を確認できるようにすることです。

情報発信をデジタル化する

災害時の情報発信では、相手ごとに伝える内容を分けます。従業員には安否確認や出社可否、顧客にはサービス提供状況、取引先には納品や業務継続の見通し、地域には施設利用や安全情報を届ける必要があります。

Webサイト営業状況、サービス提供状況、復旧見通しなど、社外向けに確認しやすい情報を掲載する。
SNS速報性の高い補助チャネルとして使い、公式ページへの誘導や短い更新情報を発信する。
メール・SMS従業員、顧客、取引先へ重要連絡を直接届ける。送信対象と承認ルールを事前に決める。
アプリ通知安否確認、出社可否、避難指示、緊急連絡をプッシュ通知で届ける。

情報発信では、速さだけでなく正確性が必要です。発信内容、承認者、更新頻度、訂正方法、社内向けと社外向けの切り分けを事前に決めておきます。

双方向コミュニケーションを設計する

災害時には、対策本部から一方的に情報を送るだけでは不十分です。現場や従業員からの報告を受け取り、支援や判断に反映する双方向の仕組みが必要です。

  • 安否確認システムで、本人の状態、出社可否、支援要否を受け付ける
  • Webフォームやチャットで、拠点被害、設備異常、必要物資を報告できるようにする
  • チャットボットで、よくある質問への回答と担当者への引き継ぎを行う
  • オンライン会議で、災害対策本部と拠点責任者の定時報告を行う

双方向化すると、情報量が増えます。そのため、報告項目を標準化し、緊急度、拠点、被害種別、対応状況で分類できるようにしておく必要があります。

災害情報デジタル化のポイント

災害情報のデジタル化を実際に機能させるには、システム、運用、連携、UI/UX、セキュリティを同時に設計します。災害時だけ使う特別な仕組みではなく、平時から訓練し、更新し、改善する対象として扱います。

平時からシステムと運用を整える

災害情報システムは、災害が起きてから整備しても間に合いません。平時から、情報収集、承認、共有、発信、記録の流れを決め、訓練で確認しておきます。

  • 災害情報の収集・管理・発信フローを整理する
  • 安否確認、拠点報告、顧客告知の担当者と代理者を決める
  • システムの保守、アカウント管理、連絡先更新を定期的に実施する
  • 運用マニュアルとチェックリストを整備し、訓練で確認する

訓練では、回答率、未回答者へのフォロー時間、情報発信までの時間、判断に必要な情報の不足を確認します。システムの操作確認だけでなく、実際の判断に使えるかを検証します。

関係機関との連携を前提にする

災害対応は、自社だけで完結しません。自治体、防災関係機関、インフラ事業者、通信事業者、取引先、物流会社、ビル管理会社などとの情報共有が必要になります。

  1. 連絡窓口、連絡手段、緊急時の代替連絡先を事前に確認する
  2. 共有する情報の範囲、形式、更新頻度を決める
  3. 合同訓練や机上演習で、実際の連携手順を確認する
  4. 外部情報を自社の災害対策本部でどう扱うかを整理する

関係機関との連携では、情報の正確性と更新時刻が重要です。古い情報や未確認情報を判断に使わないよう、情報源、取得時刻、確認状況を残します。

利用者目線でUI/UXを設計する

災害時は、利用者が落ち着いて操作できるとは限りません。従業員、拠点責任者、災害対策本部、顧客、地域住民など、利用者ごとに必要な情報と操作を整理します。

操作性災害時でも迷わないよう、入力項目を絞り、押すべきボタンや回答方法を明確にする。
情報の優先順位避難、安否、出社可否、業務停止、復旧見通しなど、緊急度の高い情報を先に表示する。
アクセシビリティ色だけで重要度を示さず、文字、ラベル、アイコン、読み上げを考慮する。
端末対応PC、スマートフォン、タブレットで確認しやすいレスポンシブデザインを採用する。

アクセシビリティでは、色だけに依存しない情報提示が必要です。重要な警告や回答状態を赤・緑だけで示すのではなく、テキスト、アイコン、ラベルを併用します。

セキュリティと個人情報保護を設計する

災害情報には、従業員の安否、所在地、連絡先、家族状況、健康状態、拠点の被害状況、取引先情報などが含まれることがあります。これらは機微性が高く、共有範囲を誤ると情報漏えいや不適切利用につながります。

  • 役割に応じたアクセス制御とユーザー管理を行う
  • 通信経路をHTTPSやVPNなどで保護する
  • ログ取得、監査、操作履歴の保存を行う
  • 個人情報の利用目的、保存期間、共有範囲を事前に定義する
  • インシデント発生時の報告・エスカレーション手順を整備する

災害時には人命や安全確保のために情報共有が必要になる場面があります。ただし、平時から利用目的、共有先、権限、保存期間を決めておくことで、緊急時にも迷いにくくなります。

企業にとっての災害情報デジタル化

企業にとって、災害情報のデジタル化は防災部門だけの課題ではありません。事業継続、従業員保護、顧客・取引先対応、サプライチェーン維持、社会的責任に関わる経営課題です。

BCPへ組み込む

BCPは、災害や事故などの緊急時に重要業務を継続し、停止した場合でも目標復旧時間内に再開するための計画です。災害情報のデジタル化は、BCPを実行するための情報基盤になります。

  • 重要業務と重要拠点の被害状況を短時間で把握する
  • 従業員の安否と出社可否を確認する
  • 復旧優先順位を決めるための情報を集約する
  • 顧客・取引先への情報提供を迅速化する
  • 対応履歴を残し、事後検証と計画改善に使う

紙のBCPだけでは、災害時の状況変化に追いつけません。BCPの中に、どの情報を、どのシステムで、誰が確認し、どの判断に使うかを組み込む必要があります。

従業員の安否確認を効率化する

災害発生時に、従業員の安全を確認することは企業の優先事項です。安否確認を電話や個別メールだけで行うと、確認漏れ、重複連絡、集計遅延が起きやすくなります。

安否確認システム従業員がWebやアプリから安否、所在地、出社可否、支援要否を回答できる。
メール・SMS登録連絡先へ一斉通知し、回答状況と未回答者を一覧で確認できる。
社内SNS・グループウェア部署単位で補足情報を共有し、未確認者のフォローや業務継続判断に使う。

安否確認では、回答率だけでなく、未回答者へのフォロー手順、個人情報の取り扱い、代理回答の可否、休日・夜間の運用を決めておきます。

ステークホルダーへ情報提供する

災害時には、顧客、取引先、株主、地域社会、従業員家族などに対して、状況に応じた情報提供が必要です。情報発信が遅れると、問い合わせ集中、誤解、風評、取引先の判断遅れにつながります。

  • Webサイトで営業状況、サービス停止、復旧見通しを更新する
  • メールやSMSで重要顧客・取引先へ個別連絡する
  • SNSで速報を出し、詳細は公式ページへ誘導する
  • FAQページやチャットボットで問い合わせを整理する

発信内容は、事実、未確定情報、今後の見通しを分けて書く必要があります。発信前の承認者、更新頻度、訂正時の手順も事前に決めます。

企業の社会的責任として取り組む

災害情報のデジタル化は、自社の防災だけでなく、地域や取引先への影響を抑える取り組みでもあります。事業継続は、雇用、供給責任、サプライチェーン、地域経済に関係します。

  1. 地域社会への貢献:施設情報や営業状況を適切に発信し、地域の混乱を減らす。
  2. 従業員保護:従業員の安全確認と必要な支援を速やかに行う。
  3. 取引先への責任:納品、業務停止、復旧見通しを早期に共有する。
  4. 透明性の確保:確認済み情報を継続的に発信し、誤解や風評を抑える。

災害時に何を発信できるかは、平時の準備で決まります。自社の社会的責任を果たすためにも、情報の取得、確認、承認、発信の流れを整えておく必要があります。

災害情報デジタル化を進める手順

災害情報デジタル化は、全社一括で大規模システムを入れるよりも、重要な業務から段階的に進める方が現実的です。最初に目的と対象範囲を決め、情報と運用を棚卸しします。

1. 必要な情報と利用者を整理する

最初に、災害時に必要な情報を洗い出します。従業員の安否、拠点被害、システム稼働状況、顧客影響、取引先状況、交通・物流、自治体情報などを対象に、誰が何を判断するために使うかを整理します。

この段階で、経営層、災害対策本部、人事、総務、情報システム、広報、営業、拠点責任者ごとの必要情報を分けます。全員に同じ情報を見せるのではなく、役割ごとに必要な情報と権限を設計します。

2. 既存の連絡手段とシステムを棚卸しする

次に、現在使っている電話、メール、チャット、グループウェア、安否確認システム、ファイル共有、Webサイト、SNS、顧客管理システムを棚卸しします。

確認すべき点は、災害時に使えるか、管理者が誰か、連絡先が最新か、社外からアクセスできるか、権限設定が適切か、ログが残るかです。既存ツールで対応できる範囲と、新たに整備すべき範囲を分けます。

3. 優先領域から導入する

初期導入では、効果が大きく、運用しやすい領域から始めます。多くの企業では、安否確認、緊急連絡、拠点被害報告、社外告知ページの整備が優先候補になります。

導入範囲を広げすぎると、操作教育、権限管理、情報更新が追いつかなくなります。まずは、誰が使い、どの判断に使うかが明確な範囲から始め、訓練結果を見て改善します。

4. 訓練と改善を継続する

災害情報デジタル化は、導入して完了ではありません。訓練で使い、回答率、入力ミス、未回答者フォロー、発信承認、復旧判断までの時間を確認します。

訓練後は、マニュアル、連絡先、権限、画面表示、通知文面、回答項目を見直します。人事異動、拠点変更、取引先変更、システム更新があれば、災害情報基盤にも反映します。

まとめ

災害情報デジタル化は、災害時の情報収集、共有、安否確認、対外発信を速くし、企業の事業継続と安全確保を支える取り組みです。紙や電話をなくすことではなく、必要な情報を必要な人が確認し、判断できる状態を作ることが目的です。

実効性を高めるには、平時からの運用設計、関係機関との連携、利用者目線のUI/UX、セキュリティと個人情報保護、訓練による改善が欠かせません。特に安否確認、拠点被害報告、社外発信、BCP実行に関わる情報は、優先してデジタル化する価値があります。

災害対応では、完全なシステムよりも、実際に使える仕組みが必要です。自社のリスク、拠点、従業員数、顧客影響に合わせて、優先領域から段階的に整備します。

災害情報デジタル化に関するよくある質問

Q.災害情報のデジタル化とは何ですか?

A.災害時の情報収集、整理、共有、発信、安否確認をデジタル技術で支援し、判断と対応を速くする取り組みです。

Q.なぜ企業に災害情報のデジタル化が必要ですか?

A.従業員の安全確認、拠点被害の把握、顧客・取引先への情報提供、BCPの実行に必要な情報を短時間で扱うためです。

Q.最初に取り組むべきことは何ですか?

A.災害時に必要な情報、利用者、判断者、連絡手段を整理し、安否確認や緊急連絡など優先度の高い領域から始めます。

Q.安否確認システムを導入するメリットは何ですか?

A.従業員の安否、出社可否、支援要否を一覧で確認でき、未回答者へのフォローや復旧判断を進めやすくなります。

Q.小規模企業でも災害情報のデジタル化は必要ですか?

A.必要です。大規模な専用システムでなくても、安否確認、連絡先管理、緊急通知、共有フォルダの整備から始められます。

Q.セキュリティ面では何に注意すべきですか?

A.安否、所在地、連絡先などの情報を扱うため、アクセス制御、通信の暗号化、ログ取得、保存期間、共有範囲を設計します。

Q.BCPとはどう関係しますか?

A.災害情報のデジタル化は、重要業務、拠点被害、従業員の安否、顧客影響を把握し、BCPを実行するための情報基盤になります。

Q.SNSを災害情報の収集・発信に使えますか?

A.使えますが、未確認情報や古い情報が混在します。公式情報との照合、発信ルール、訂正手順を決めてから補助チャネルとして使います。

Q.平時から何を準備すべきですか?

A.連絡先、権限、操作手順、発信承認、未回答者フォロー、外部連絡先を整備し、定期訓練で実際に使えるか確認します。

Q.導入時に失敗しやすい点は何ですか?

A.ツール導入だけが先行し、誰が何を登録・確認・承認するかを決めないことです。運用設計と訓練まで含めて整備する必要があります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム