IT用語集

防災DXとは? わかりやすく10分で解説

水色の背景に六角形が2つあるイラスト 水色の背景に六角形が2つあるイラスト
アイキャッチ
目次

はじめに

私たちが暮らす社会にはさまざまなリスクがあります。中でも地震・豪雨・台風などの自然災害は、短い時間で生活や事業を大きく揺さぶります。そこで注目されているのが、デジタル技術を防災に取り入れる「防災DX」です。

防災DXとは?

防災DXとは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の考え方を防災に取り入れ、災害への備えや対応、復旧の進め方を改善していく取り組みです。たとえば、災害情報の収集・共有・発信をデジタルでつなぎ、必要な判断と行動を早く正確に行えるようにします。

現場では、AIによる被害推定、クラウドによる情報共有、地理情報(GIS)での可視化、スマホ通知、チャット・業務システム連携など、複数の技術を組み合わせて使われます。

防災DXが重要な理由

防災で一番つらいのは「情報が足りない/遅い/バラバラ」な状態です。防災DXは、情報を集める・整える・共有する流れを改善し、意思決定を支えます。

  • 情報の迅速化:被害状況や避難情報を、なるべく早く集約して伝えやすくする
  • 情報の正確性:誤情報や二重計上を減らし、根拠と更新履歴を残す
  • 対応の細やかさ:地域・時間帯・要配慮者など、状況に合わせた対応を取りやすくする

結果として、避難の遅れや支援の偏りを減らし、被害の拡大を抑えることにつながります。

防災DXが持つ可能性

防災DXは「災害が起きてからの対応」だけでなく、「起きる前の備え」も強くします。たとえば、過去データや地形・気象情報を使ったリスクの見える化、物資・人員配置の最適化、避難所運営の負担軽減などです。

ただし、防災は現場の制約が大きい領域です。停電、通信障害、混乱、人的リソース不足など、悪条件を前提に設計しないと「使えない仕組み」になりがちです。その意味でも、防災DXは技術だけでなく運用設計まで含めて考える必要があります。

デジタル技術を活用した防災

防災DXは、従来の防災を置き換えるものではなく、補強するものです。紙や電話が必要な場面もあります。だからこそ、デジタルに寄せすぎず、複数の手段を組み合わせ、現場が迷わず動ける形に整えることが重要です。

以降では、防災DXを進めるうえでの準備、得られるメリット、課題、そして国内で見られる取り組みの傾向を整理します。

防災DXのための準備

防災DXを「導入して終わり」にしないためには、技術・人・データ・運用をセットで整える必要があります。ここでは、特に重要な準備項目をまとめます。

DXの導入に必要な要素

防災DXでよく使われるのは、AI、クラウド、GIS、モバイル通知、データ連携(API/CSVなど)といった技術です。ただし、ポイントは技術そのものよりも、現場で使える形に落とすことです。

  • 平時から使って慣れておく(災害時だけ起動する仕組みは定着しにくい)
  • 「誰が、何を見て、どう判断し、次に何をするか」を手順化する
  • 停電・通信断でも最低限回る代替手段(紙・無線・オフライン運用)を用意する

投資や教育の負担は避けられないため、段階導入(できるところから広げる)と、運用負荷を増やさない設計が現実的です。

データの見直しと共有

防災DXの中心はデータです。避難所、要配慮者、備蓄、道路、河川、ライフライン、被害報告など、扱う情報は多岐にわたります。重要なのは「集める」より先に「整える」ことです。

  • データの持ち主(担当部署)と更新頻度を明確にする
  • 項目名や分類を統一し、入力ルールを決める(現場で迷わない)
  • 個人情報・機微情報の取り扱いを定義し、アクセス権を管理する

災害時は一刻を争います。だからこそ、平時から「共有できる状態」を作っておくことが、防災DXの成否を左右します。

情報システムの標準化

災害対応では、自治体・消防・警察・医療・企業・ボランティアなど、多くの組織が連携します。システムやデータ形式がバラバラだと、現場が「変換作業」に追われ、対応が遅れます。

理想は、共通の基盤や共通フォーマットでつながることです。現実には一気に統一は難しいため、まずは「最低限そろえる」ことから始めるのが有効です(例:被害報告の項目、避難所情報の項目、位置情報の扱いなど)。

防災人材の確保と育成

防災DXは「分かる人が1人いる」では回りません。災害対応は属人化しやすいため、複数人で回せる体制が必要です。

  • 運用担当(現場)/システム担当(技術)/意思決定(管理)の役割分担
  • 操作だけでなく、判断の基準(どの情報を信頼するか)も共有する
  • 訓練・演習で「うまくいかなかった点」を毎回更新する

防災は「運用がすべて」と言っても過言ではありません。人材育成は遠回りに見えて、実は最短ルートです。

防災DXの導入で得られるメリット

防災DXのメリットは、単に「デジタル化して便利になる」ではありません。災害時に必要な判断と行動を支え、支援の偏りや遅れを減らすことに価値があります。ここでは代表的なメリットを整理します。

緊急情報の迅速な伝達・共有

災害時は、正しい情報を早く伝えることが重要です。防災DXにより、被害情報や避難情報の収集・整理・配信がスムーズになり、対応の初動が早くなります。

また、複数組織で同じ情報を見られるようにすることで、電話やメールの往復を減らし、連携ミス(言った/聞いてない)も抑えやすくなります。住民向けにも、状況に応じた情報を出しやすくなり、混乱を抑える効果が期待できます。

被害状況のリアルタイム把握

現地の状況が分からないと、支援は動けません。画像・位置情報・報告データなどを集約して可視化できると、支援が必要な場所を早く特定し、人員や物資の優先順位を決めやすくなります。

ただし、リアルタイムに近づけるほど、誤情報や未確認情報も混ざりやすくなります。更新時刻や根拠(誰が、どこから)を残し、確度に応じて扱いを変える運用が重要です。

住民サービスの均一化・向上

罹災証明書の手続きや各種申請、避難所情報の提供などをオンライン化できると、住民の負担が減り、自治体側の処理も効率化できます。結果として、地域や担当者による差を減らし、公平性を保ちやすくなります。

一方で、スマホが使えない方、通信が不安定な地域もあります。オンラインだけに寄せず、窓口・電話・掲示・巡回など、複数チャネルを併用する設計が現実的です。

防災行政の効率化

平時から情報や業務フローを整えておくと、災害時の事務作業(集計、報告、調整)が軽くなり、職員が本来注力すべき現場対応や判断に時間を使いやすくなります。

さらに、定型作業を自動化できれば、慢性的な人手不足への対策にもなります。ただし、自動化は「例外対応」が残るため、例外をどう扱うか(人が見る部分)まで決めておくことが大切です。

防災DXの課題

防災DXには大きな効果が期待される一方で、現実的な課題もはっきりしています。ここでは、つまずきやすいポイントと、考え方の方向性を整理します。

技術導入の遅れ

防災は、すべての自治体や組織が同じ条件で進められるわけではありません。予算や人員、ITの経験値に差があるため、導入の進み方にばらつきが出やすいのが実情です。

解決の方向性としては、段階的導入、共同利用(広域での共通基盤)、外部支援の活用などが考えられます。まずは「効果が出やすい領域」から着手し、成果と運用ノウハウを積み上げるのが現実的です。

システム構築・維持の負担

防災DXは、作って終わりではありません。更新・訓練・保守・問い合わせ対応など、維持にコストがかかります。災害時に動かないのは論外なので、保守体制は重要です。

負担を抑えるには、クラウドの活用、既存サービスの利用、共同調達、民間企業との連携などが選択肢になります。ただし外部連携では、責任分界(どこまで誰が対応するか)を明確にしておく必要があります。

DX人材不足

防災DXを進めるには、技術と運用の両方が分かる人材が必要です。しかし現場は多忙で、育成に時間を割きにくいという問題もあります。

対策としては、研修の体系化、マニュアル整備、演習の定期化、担当のローテーション設計などが有効です。「特定の人だけが分かる」を減らし、チームで回せる形にすることが重要です。

防災情報システムの標準化問題

地域ごとに異なる仕組みがあると、広域連携のときに支障が出ます。データ形式が違う、用語が違う、項目が足りない――こうした差が、災害時の混乱を増やします。

解決の方向性としては、データ項目・分類・更新ルールの標準化、最低限の共通フォーマットの整備、連携のための変換ルールの整備などが考えられます。「全部同じ」にするより、「つながる」を優先する考え方が現実的です。

防災DX取組みの現状

日本では、防災DXに向けた取り組みが少しずつ広がっています。災害対応の情報共有、住民向けの通知、被害把握の高度化、申請手続きのオンライン化など、テーマは多岐にわたります。

日本の現状

防災DXは、災害時の情報伝達を早め、被害の最小化を目指す動きとして注目されています。罹災証明書などの住民サービスを含め、業務のデジタル化が進む場面もあります。

一方で、地域によって進み具合に差があり、標準化や人材・予算の確保が課題になりやすい点も見逃せません。

対応体制

大規模災害に備えて、自治体は防災計画や訓練を進めています。その中で、AIやICTの活用により、被害状況の共有や支援判断を支える仕組みづくりが進められています。

たとえば、首都圏などの大都市では、帰宅困難者対策、被害情報の集約、物資配送の効率化など、複数のテーマでデジタル活用が検討・推進されることがあります。ただし、こうした取り組みは地域の状況や制度、運用体制に強く依存するため、導入時には「現場で回るか」を優先して設計する必要があります。

ICT技術の活用状況

被害情報の収集・分析・伝達においてICTは重要です。現場報告、センサー情報、地図情報などを扱えるようになると、支援の優先順位づけや避難所運営の判断がしやすくなります。

一方で、システム維持の難しさ、人材不足、通信障害時の運用など、課題も残ります。だからこそ、平時からの訓練と、オフラインも含めた運用設計が重要です。

日本の防災DXの今後

豪雨や地震などの災害リスクが高い日本では、防災DXの重要性は今後も高まると考えられます。今後は、技術が進むだけでなく、標準化運用の成熟が鍵になります。

また、防災は「一部の地域だけが強い」状態では不十分です。広域連携、相互応援、データ連携などを含め、全体として底上げしていく視点が必要になります。

日本の防災DXの状況

防災DXの先進的な取り組み

防災DXは全国で検討・推進されており、自治体や企業がそれぞれの課題に応じて取り組みを進めています。たとえば大都市では、帰宅困難者対策、被害状況の把握、各種手続きの迅速化、ドローン活用などがテーマとして取り上げられることがあります。

ただし、同じ「先進」と言っても、地域の条件や災害リスク、予算や人員によって最適解は変わります。導入事例を参考にする際は、「自分たちの地域で回る形は何か」を前提に、要素を取捨選択することが大切です。

防災DXの具体的手法

防災DXでは、複数の手法を組み合わせて使うケースが一般的です。

  • 予測・見える化:過去データや地理情報を使い、リスクや被害想定を可視化する
  • 情報集約:現場報告、各機関の情報、住民からの通報を集約し、地図やダッシュボードで共有する
  • 伝達の多重化:スマホ通知、Web、SNS、防災無線、掲示など複数経路で情報を届ける
  • 物資・人員の最適化:避難所の状況や在庫、道路情報を基に配分を判断する

大切なのは「便利そうだから導入」ではなく、「災害時に困る点を減らす」視点で選ぶことです。

日本の防災DXの評価

防災DXは、情報共有の高速化や住民サービスの改善につながる可能性がある一方で、標準化や運用体制、人材確保といった課題も伴います。つまり、評価は「技術」ではなく「運用の完成度」で決まる分野です。

災害は予測しにくく、条件も厳しくなりがちです。だからこそ、防災DXは平時からの準備と改善を重ね、いざという時に本当に役立つ形にしていくことが求められます。

Q.防災DXとは何ですか?

デジタル技術とデータ活用で、防災の備え・対応・復旧の進め方を改善し、判断と行動を早める取り組みです。

Q.防災DXで使われる代表的な技術は何ですか?

AI、クラウド、GIS(地図)、データ連携、スマホ通知、チャット連携などが代表例です。単体ではなく組み合わせて使われます。

Q.防災DXの一番の価値は何ですか?

災害時に「情報が遅い・足りない・バラバラ」を減らし、支援や避難の判断を早く正確に行えるようにする点です。

Q.災害時に通信や電力が止まったら、防災DXは使えませんか?

そのリスクがあるため、オフライン運用、紙・無線・掲示などの代替手段、複数チャネルでの伝達をセットで設計することが重要です。

Q.防災DXを始めるとき、最初に見直すべきものは何ですか?

データの持ち主、更新頻度、入力ルール、共有範囲などの整理です。データが整っていないとシステムを入れても効果が出にくくなります。

Q.標準化が必要と言われるのはなぜですか?

広域連携や相互応援の際に、データ形式や用語が違うと変換・確認に時間が取られます。最低限そろえるだけでも連携が楽になります。

Q.防災DXの導入で住民は何が変わりますか?

避難情報が届きやすくなったり、避難所の混雑状況が分かりやすくなったり、罹災証明書などの手続きが早くなる可能性があります。

Q.防災DXで特に注意すべきリスクは何ですか?

誤情報の拡散、個人情報の取り扱い、アクセス権の管理、システム停止時の影響などです。技術だけでなく運用ルールが重要です。

Q.DX人材が不足している場合、どう進めればよいですか?

段階導入とマニュアル整備、訓練の定期化、共同利用や外部支援の活用が現実的です。「特定の人しか分からない」状態を減らす設計が重要です。

Q.防災DXは今後どう発展していきますか?

技術進歩に加えて、標準化と運用の成熟が進むほど効果が出やすくなります。広域連携や相互応援を前提にした「つながる仕組み」が重要になります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム