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DNSSECとは? わかりやすく10分で解説

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DNSSECとは何か?

インターネットを利用する際、サーバーやウェブサイトのアドレスは通常IPアドレスという形式で示されますが、その複雑な数字の組み合わせを直接覚えて使用するのは難しいですよね。そこで、覚えやすいドメイン名を使ってIPアドレスを参照するシステム、それがDNS(Domain Name System)です。

DNSとは

DNSは人間が覚えやすい文字列のドメイン名(たとえば「google.com」)を、コンピューターが認識できるIPアドレス(たとえば192.0.2.1)に変換するためのシステムで、電話帳のような役割を果たしています。このシステムのおかげで、ユーザーはウェブサイトのIPアドレスを記憶する必要がなくなりました。しかし、これが悪用された場合、ユーザーは気付かずに詐欺サイトなどに誘導されてしまう可能性があります。

DNSSECの定義

これを防ぐために開発されたのがDNSSEC(DNS Security Extensions)です。DNSSECは、DNSのレスポンス(回答)が改ざんされていないことを確認するための技術で、デジタル署名によってDNS情報が正当であることを証明します。これにより、ユーザーは自分がアクセスしようとしているウェブサイトが正当なものであることを保証することができます。

DNSSECの必要性

インターネット上のセキュリティは日々脅威にさらされており、DNSが攻撃対象となることも少なくありません。例えば、DNSキャッシュポイズニングという攻撃方法では、偽のDNS情報がユーザーに提供され、ユーザーは知らず知らずのうちに攻撃者の意図するサイトに誘導されてしまいます。

このような攻撃から安全にインターネットを利用するためにDNSSECの導入は欠かせないといえるでしょう。DNSSECによって、ユーザーは安心して正しいウェブサイトにアクセスできるようになります。

DNSSECの歴史と発展

DNSSECの誕生

DNSSECは、元々DNSのセキュリティ問題を解決するために生まれました。システムがデジタル化され、インターネットが一般的に利用されるようになると、情報の安全性が重要な課題となりました。この情報安全性が最初に問題視され始めたのは、1980年代後半から1990年代初頭のことです。それ以降、DNSの脆弱性についての懸念が高まり、課題の解決策として1990年代後半にDNSSECが提案されました。DNSSECの基本的な考え方と原則はこれ以降も大きく変わることはありませんでしたが、その具体的な実装方法や詳細は時間とともに進化し続けてきました。

DNSSECの進歩と改良

DNSSECは、その誕生以降技術的な改良を重ねてきました。DNSSECの初期バージョンでは、主にシグネチャの生成と検証に関連する問題が指摘されました。これは、DNSSECが提供するセキュリティ強度を維持するために、DNS応答の大きさを増やすというトレードオフが存在したからです。この問題を解決するために、DNSSECは次々と改良され、「NSEC3」と呼ばれる新しいレコードタイプの導入や、「DNSKEY」と「RRSIG」の2つの新しいレコードタイプの追加など、さまざまなアップデートが行われました。これにより、DNSSECはより効率的かつセキュアに、DNSデータの完全性と真正性を保証することが可能となりました。

DNSSECの仕組み

それでは、具体的にDNSSECがどのように動作するのか、その仕組みを理解していきましょう。簡単にいえば、DNSSECは埋め込まれた電子署名を通じてDNS応答の真正性を検証します。

DNSSECのプロトコルとアルゴリズム

DNSSECは、データの改ざん防止を確保するために公開鍵暗号化技術を使用します。最も一般的なアルゴリズムはRSAで、これがDNSSECでの電子署名と検証の基礎となります。しかし最近では、より効率的なアルゴリズムであるECC(楕円曲線暗号)が使われることも増えています。

DNSSECの証明書とキー

DNSSECでは、証明書ではなく2種類のキーペアを使用します。「ゾーン署名キー(ZSK)」と「キー署名キー(KSK)」です。ZSKはDNSレコードに署名するためのもので、KSKはそのZSK自体を署名する役割を持ちます。

これにより、公開鍵と秘密鍵のペアがしっかりと管理されることで、元のDNSレコードに対するさまざまな種類の攻撃を防ぐことが可能となります。

DNSSECの署名プロセス

最初に、DNSゾーンの各レコードはZSKにより署名され、署名データはレコードに追加されます。次に、ZSK自体がKSKにより署名されます。この署名済みZSKは、DS(委任署名)レコードとして親ゾーンに提供されます。

これらの過程を通じて、エンドユーザーは提供されるDNSレスポンスが信頼できるものであると確信することができます。

DNSSECの利点と欠点

インターネットの安定性とセキュリティを大いに向上させる DNSSEC ですが、その利点と欠点について確認しておきましょう。

DNSSECのメリット

DNSSECは、第三者によるDNS情報の改ざんや偽装を防止するメリットがあります。なぜならDNSSECを使用すると、情報が改ざんされていないことと情報が正当な権威から来ていることを確認できるためです。これにより、ユーザーは偽装されたWebサイトに誤ってアクセスするリスクを著しく減らすことが可能となります。

また、DNSSECは全体的なインターネットの安全性を強化します。DNSセキュリティが向上すると、サイバー犯罪者がユーザーを個人的に攻撃する能力は大幅に減少します。

最後に、DNSSECはその独自性から、イントラネットやVPNのような特定のネットワーク環境でも活用できるという利点があります。これにより、ネットワーク全般のセキュリティが向上します。

DNSSECのデメリット

DNSSEC を使用する最大のデメリットは、セットアップと維持が困難であるという点です。導入と運用には専門的な知識が必要で、エンドユーザーにとっては高度で複雑なセキュリティツールとなります。

また、DNSSECは既存のDNSシステムを改善するものであり、新たなインフラを作成するものではありません。これは、DNSシステムが根本的に不安定である場合、DNSSECがそれを解決することはできないという問題を引き起こします。また、必要な鍵を失くすと、そのドメインへのアクセスが全くできなくなるという重大なリスクもあります。

さらに、DNSSECの導入は、負荷分散やトラフィックルーティングなどの一部の高度な機能を制約する可能性があります。なぜなら、DNSSECはこのような動的な挙動に対して静的な保証を提供するため、それらの機能を制限する可能性があるからです。

この記事ではDNSSECのメリットとデメリットについて解説しましたが、それぞれの組織や個人がDNSSECを適用するかどうかは、これらの要因を念頭に置いた上で、自身のニーズとリソースを考慮して決定するべきです。

DNSSECのセットアップと設定

インターネットの世界は非常にデリケートであり、その安全性を保つためには適切なセキュリティ設定が不可欠です。特に、DNSSECのような安全なドメイン解決には細心の注意を払うことが求められます。それでは、DNSSECのセットアップと設定方法について詳細に解説していきましょう。

DNSSECの導入方法

まずDNSSECを導入するためには、導入するドメイン名のDNSゾーンを管理しているDNSサーバがDNSSECに対応しているかの確認が必要です。すでにDNSSECに対応している場合は、次の手順に進むことができます。対応していない場合は、DNSサーバをDNSSECに対応したものに変更するか、現行のDNSサーバがDNSSECに対応するのを待つ必要があります。

DNSSECの設定手順

次に、DNSSECの設定手順について解説します。まず公開鍵秘密鍵を生成します。これらの鍵はDNSSECがデータの整合性を確認するために使用されます。
次に、これらの鍵を用いてDNSレコードに署名します。署名は、データが改ざんされていないことを証明し、信頼性を保証するために行います。そして、生成した公開鍵情報からDS(Delegation Signer)レコードを作成し、それを登録機関に提出します。
このプロセスが完了すると、DNSSECが設定され、安全なドメイン名解決が行えるようになります。

DNSSECの維持と保守

一度DNSSECの設定が完了しても、その後の維持と保守が重要です。鍵の有効期限が切れる直前に、新しい鍵を生成し、古い鍵と交換することを鍵のローリングと呼びます。定期的に鍵のローリングを行うことで、鍵が漏洩した場合でも新しくなることで漏洩の影響を軽減することが可能です。
また、DSレコードが登録機関に誤って登録されていたり、削除されていたりすると、DNSSECの検証ができなくなってしまうので注意が必要です。

DNSSECとネットワークセキュリティ

それでは、DNSSECが具体的にどのようにネットワークセキュリティに影響を及ぼすのか、その詳細なDBSSECによるセキュリティ向上と、他のセキュリティ策との比較について見ていきましょう。

DNSSECによるセキュリティ向上

DNSSECの最大の特長は、DNS応答の真正性と完全性を保証することです。それによって、最も脅威となるDNSキャッシュポイズニングやDNSハイジャックなどの攻撃から保護することができます。これらの攻撃は、ユーザをフィッシングサイトなどの悪意あるサイトへ誘導し、情報を盗み出すことが目的です。しかし、DNSSECが導入されていると、攻撃者が偽のDNS応答を送信しても、その署名が正しい納品者から発行されたものではないと検知されるため、安全にユーザを保護できます。

また、DNSSECはインターネットのトラフィック全体よりも低いコストでセキュリティを提供します。通常、一度だけのセットアップと設定により、自動的に保護が与えられます。

DNSSECと他のセキュリティ策比較

DNSSECは極めて強力なセキュリティ対策であることは間違いありませんが、他のセキュリティ対策と比較した場合、それは一つの層を提供するに過ぎません。他の対策と併用することで、より強固なセキュリティを構築することが可能です。

例えば、ファイアウォールやスパムフィルター、重要なシステムへのアクセスを制限するための認証・承認システムなど、多くの異なる防御策があります。しかし、これらの措置は全てサーバーや個々のコンピュータに対する攻撃を防ぐものであり、DNSSECの提供するネットワーク全体の保護とは全く異なります。

従って、結論としてDNSSECは他のセキュリティ対策と結びつけて使用することが最適であるといえます。これによって、ネットワークは全方位からの攻撃に対して、より高い安全性を確保することが可能です。

DNSSECの今後と展望

インターネットの安全性と信頼性を向上させるためにDNSSECは重要な役割を果たしていますが、現在のその状況や将来について考えることが重要です。

DNSSECの現在の状況

DNSSECの導入と展開は思うように進んでいません。 その理由の一つとして挙げられるのが、DNSSECの設定と維持が困難と考えられていることです。その結果、多くのオーガニゼーションやISPがDNSSECの展開を避けています。

しかし、この現状は国や地域によって大きく異なります。一部の国では政府がDNSSECの展開を推進し、広範囲にわたりDNSSECが使用されています。加えて、最近ではクラウドサービスプロバイダーや大手ウェブ企業もDNSSECの導入を始めているため、これらの組織のユーザーや顧客は先進的なDNSSECの保護を享受することができます。

DNSSECの未来予想

DNSSECの現在の状況を見れば、明らかに今後の展望は10年前に比べて複雑なものになっています。DNSSECの最適化と管理が単純で直感的になる可能性があると思われます。それにより、今後のインターネットの進化に伴い、DNSSECの展開は更に広まると予想できるでしょう。

具体的な未来予想としては、新たなプロトコルの採用やアルゴリズムの改善、証明書管理の自動化などを通じて、DNSSECの管理と保守が容易になるかもしれません。これにより、現在後押しされている企業や組織だけではなく、中小企業や個々のWebサイト所有者もDNSSECを簡単に導入できるようになるでしょう。

また、新しい驚くべきセキュリティトレンドが突如として現れ、DNSSECが古い非効率的なセキュリティソリューションとなる可能性もあります。しかし、現状においてそのような傾向は見られず、DNSSECは依然として重要なセキュリティ技術であり続けています。

まとめると、DNSSECの未来は確定的ではありませんが、その重要性が高まるにつれ、その採用と使用は向上することが期待されます。

まとめ

DNSSECとはインターネットの基盤となるDNSのセキュリティを強化するためのシステムであり、資料を参照して構築することが可能です。この記事では、DNSSECの基本的な概念から歴史、導入方法、そしてそれによって得られる利点までを順番に解説しました。

DNSSECの導入は一部の技術的な知識を必要としますが、それを超えた先には、安全で信頼性の高いインターネット環境が広がっています。そのゴールを目指して、今後とも自身の知識を深め、適切なセキュリティ対策を講じていくことが求められます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム