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アイトラッキングデバイスとは? 10分でわかりやすく解説

水色の背景に六角形が2つあるイラスト 水色の背景に六角形が2つあるイラスト
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アイトラッキングデバイスは、ユーザーの視線の動きを計測し、「どこを・どの順序で・どれくらいの時間見たか」をデータとして扱える技術です。勘や主観に寄りがちなUI/UX評価や広告評価を、観察可能な指標で補強できる一方、精度や解釈、プライバシーといった注意点もあります。

本記事では、アイトラッキングデバイスの定義と仕組み、代表的な活用方法、導入手順、導入時に起きやすい落とし穴までを整理します。読み終えるころには、「自社の目的に合うか」「導入するとしたら何から決めるべきか」を判断できる状態を目指します。

アイトラッキングデバイスとは?

アイトラッキングデバイスの定義

アイトラッキングデバイスは、人間の視線(眼球運動)を計測し、記録するための機器です。視線データを解析することで、ユーザーが画面や実空間のどこに注目したか、視線がどのように移動したかを推定できます。

ここで重要なのは、アイトラッキングが「理解した/納得した」までを直接証明する技術ではない点です。あくまで「視線が向いた」「一定時間留まった」といった観測結果を得る技術であり、解釈には文脈(タスク、画面設計、被験者条件)が必要になります。

アイトラッキングデバイスで分かること

アイトラッキングの分析でよく扱われる代表例を整理します。

  • 注視(Fixation):ある領域に視線が一定時間留まった状態。理解・読み取り・確認などが起きている可能性が高い場面で増えやすい指標です。
  • サッケード(Saccade):視線が素早く移動する動き。探索や視線移動のパターン把握に用いられます。
  • 視線の順序:どの要素からどの要素へ視線が移ったか。情報設計が意図通りに読まれているかの確認に使えます。
  • 滞在時間:全体、または特定領域(AOI)にどれだけ時間を使ったか。迷い・読み飛ばし・気づきにくさの推定材料になります。

ただし、注視時間が長いことは「魅力的」だけでなく「分かりにくい」「迷っている」でも起こり得ます。指標は単独で断定せず、タスク結果(成功/失敗、所要時間、クリック、アンケートなど)とセットで扱うのが安全です。

アイトラッキングデバイスの仕組み

アイトラッキングは、主に「眼球の特徴点(瞳孔など)」と「視線方向の推定」を組み合わせて成立します。代表的な方式は次のとおりです。

  1. 赤外線を用いた方法:眼球に赤外線を照射し、反射光から瞳孔や角膜反射の位置関係を捉えて視線方向を推定します。一般に精度を出しやすい方式ですが、照明環境や装着条件の影響を受けます。
  2. カメラを用いた方法:カメラ映像から眼球の動きを画像処理で推定します。導入しやすい一方で、環境条件や個人差(眼鏡、まつげ、顔の向きなど)の影響を受けやすく、用途により精度要件の見極めが重要になります。

取得したデータは、専用ソフトウェアで処理し、ヒートマップや視線軌跡、AOI分析などの形で可視化・集計します。

アイトラッキングデバイスの種類

アイトラッキングデバイスには、実験環境や対象(画面/実空間)に応じて複数の形態があります。

種類説明
スタンドアローン型専用機器として用意されるタイプです。比較的安定した計測が可能な一方、導入費用や設置の手間が発生します。研究・評価用途で選ばれやすい形態です。
組み込み型PCやモバイル端末など既存機器のカメラ/センサーを利用して視線推定を行う考え方です。手軽に試しやすい反面、用途によっては精度・再現性に限界が出るため、目的に応じた評価が必要です。
ウェアラブル型メガネ型など装着して使うタイプです。実店舗や作業現場など、実空間の行動観察に向いていますが、装着感や姿勢変化、データの前処理(視線と映像の同期)など運用面の検討が欠かせません。

用途や予算に応じて、適切なアイトラッキングデバイスを選択することが重要です。

アイトラッキングデバイスの歴史

アイトラッキングは、眼球運動の研究を出発点として、光学機器や映像処理、センサー技術の進歩とともに発展してきた領域です。現在は、ユーザビリティ評価やマーケティング調査だけでなく、VR/ARの入力や支援技術などの方向にも広がっています。

ただし「普及しているから何でも分かる」わけではありません。近年は取り扱えるデータ量が増え、分析も高度化していますが、その分だけ目的設計(何を知りたいか)と解釈のルールが重要になっています。

アイトラッキングデバイスの活用方法

アイトラッキングは「視線」という行動データを扱うため、設計改善や意思決定の裏付けに使いやすい一方、実験設計が曖昧だと結論がぶれやすい特徴があります。ここでは、活用領域ごとに「何が分かるか」と「注意点」をセットで整理します。

ユーザビリティ評価への応用

ウェブサイトやアプリの評価では、ユーザーの視線を追跡することで、どこが見られ、どこが見落とされ、どこで迷いが生じたかを把握しやすくなります。典型的には次のような改善に結びつきます。

  • 重要情報(料金、注意事項、CTA)が視線の導線上に乗っているか
  • ナビゲーションやフォーム項目が意図通りに読まれているか
  • ユーザーが理解できずに行き来している領域がどこか

注意点として、アイトラッキング単独では「使いやすい/使いにくい」を断定しにくい場面があります。視線結果は、タスク成功率、操作ログ、ヒアリング(なぜそうしたか)と組み合わせると、改善の確度が上がります。

マーケティングリサーチへの活用

広告やパッケージ、店頭POPなどでは「目に入ったか」「認識されたか」を評価する材料として使われます。例えば、パッケージの要素(ブランドロゴ、商品名、訴求文、注意書き)が視線の順序や滞在時間の上でどう扱われているかを確認できます。

ただし、視線は「気になった」「読んだ」可能性を示しても、「買う」「選ぶ」を直接保証するものではありません。購買意向や選択結果、訴求理解のテストなどと併用して、因果を過度に言い切らない設計が大切です。

医療分野での活用事例

医療分野では、視線の動きが評価の一材料になることがあります。例えば、読字や注視の偏り、眼球運動の特徴などを観察する研究や、支援技術(視線入力)などが挙げられます。

ただし、医療用途は前提条件が厳しく、評価・解釈の責任範囲も大きくなります。一般的なUX用途と同列に扱わず、目的・対象・手順の適合性を慎重に検討する必要があります。

教育分野での活用事例

教育分野では、教材のどこでつまずいたか、説明の順序が理解に合っているかなどを推定する材料として活用されることがあります。eラーニングでは、学習者がどの説明に時間を割いたかを可視化し、教材設計の改善に役立つ場合があります。

一方で、視線は個人差が大きいデータです。学習者を評価・採点する目的に安易に転用すると、誤解や不公平につながり得ます。教材改善のための匿名・統計的な扱いなど、運用設計が欠かせません。

アイトラッキングデバイスの導入方法

導入の成否は「機器選び」だけで決まりません。目的の定義、実験/計測の設計、データの解釈ルール、そしてプライバシーの扱いまで含めて、運用として成立させることが重要です。

アイトラッキングデバイスの選定ポイント

選定時は、スペックの良し悪しよりも「目的に対して必要十分か」を軸に判断します。

  1. 目的に合った精度と機能性:画面UIの細部を評価したいのか、店舗の棚全体の視線を見たいのかで要求が変わります。必要な粒度を先に決めましょう。
  2. 導入コストと運用コスト:機器費用だけでなく、設置、分析、レポート作成の工数が継続的に発生します。社内で回すのか外部委託するのかも含めて見積もると現実的です。
  3. 互換性とスケーラビリティ:計測環境(OS、ブラウザ、計測ソフト)との相性、データの出力形式、将来の対象拡張を確認します。
  4. ユーザーへの負担:被験者への物理的・心理的な負担が少ないかは結果の質に直結します。装着感、計測時間、説明の分かりやすさまで含めて設計します。

導入前に決めておくべきこと

「何を測るか」が曖昧だと、データは増えても判断ができません。最低限、次の3点を言語化してから導入に入ると失敗しにくくなります。

  • 目的:例)CTAが見られていない原因を特定したい、フォームの離脱要因を探したい
  • 対象:例)LP、申込フォーム、商品棚、教材スライド
  • 成功条件:例)重要要素が視線導線に乗る、迷いの往復が減る、理解テストの正答率が上がる

アイトラッキングデバイスの設置方法

設置方法はデバイスの種類によって異なりますが、一般的な流れは次の通りです。

  1. デバイスをコンピューターやモバイル機器に接続します。
  2. デバイスのドライバーやソフトウェアをインストールします。
  3. デバイスの位置と角度を調整し、被験者の目の位置に合わせます。
  4. 必要に応じて、照明条件を調整し、反射やグレアを最小限に抑えます。

正確なデータを収集するためには、設置状態を一定に保つことが重要です。途中で姿勢が大きく変わる場合は、計測の前提が崩れるため、椅子や距離、画面位置を含めて環境を整えます。

アイトラッキングデバイスのキャリブレーション

計測の前にキャリブレーション(較正)を行い、被験者の目の特性をデバイスに認識させます。一般的な手順は次の通りです。

  1. 被験者にデバイスの前に座ってもらい、画面上の指定された点を見つめてもらいます。
  2. デバイスが被験者の目の動きを認識し、キャリブレーションデータを収集します。
  3. 必要に応じて、複数の点を使用してキャリブレーションを行います。
  4. キャリブレーションの精度を確認し、必要であれば再キャリブレーションを実施します。

キャリブレーションは、被験者ごとに必要です。眼鏡やコンタクト、まつげ、照明の影響などで精度が変わることがあるため、計測中に違和感が出た場合は、原因切り分けの一手段として再実施を検討します。

アイトラッキングデバイスのデータ分析方法

主な分析手法には以下があります。

  1. ヒートマップ:視線の集中度を可視化し、注目度の高い領域を把握します。
  2. ゲイズプロット:視線の順序と移動を点と線で示し、探索や迷いのパターンを確認します。
  3. エリア・オブ・インタレスト(AOI)分析:関心領域を定義し、その領域内での滞在時間や到達順を集計します。
  4. 統計分析:注視時間、視線の移動量などを数値化して比較します。

分析の落とし穴は「見た目が強い可視化」に引っ張られることです。ヒートマップが赤いから重要、という短絡は避け、タスク設計とセットで解釈することが重要です。例えば、フォーム入力の遅さが「理解不足」なのか「入力負荷」なのかは、視線だけでは決めきれません。

情報のレポート化

レポートは「データの羅列」ではなく「判断材料」にすることが重要です。最低限、次の要素が揃うと読み手が判断しやすくなります。

  • 目的と前提(対象、被験者条件、タスク)
  • 主要な発見(どこで何が起きたか)
  • 根拠(視線指標、操作ログ、ヒアリングなど)
  • 示唆(次に変えるべき仮説と優先度)

レポートの活用

作成したレポートは、改善施策の優先順位付けに使うと効果が出やすくなります。例えば「見られていない要素を目立たせる」だけでなく、「読ませたい情報の順序を設計し直す」「迷いが起きる分岐を減らす」といった、情報設計そのものの改善にもつなげられます。

アイトラッキングデバイスの課題と今後

アイトラッキングは強力な手段ですが、万能ではありません。課題を把握したうえで使うと、期待値のズレを減らし、導入効果を高められます。

アイトラッキングデバイスの現状の課題

  1. 精度と再現性:個人差や環境(照明、姿勢、眼鏡など)でデータ品質が変わることがあります。用途によっては「誤差を許容できるか」を先に決める必要があります。
  2. コストと運用負荷:機器価格だけでなく、実験設計・計測・分析・レポート作成が継続的に必要です。社内で運用する場合は担当者の育成も課題になります。
  3. ユーザー負担とプライバシー:計測への抵抗感や疲労、同意取得、データの保管・扱いは避けて通れません。特に視線はセンシティブな行動データになり得るため、運用ルールが重要です。

これらの課題を踏まえ、「目的に対して必要十分な範囲で計測する」という姿勢が現実的です。測りたいことを絞るほど、運用は安定します。

精度向上・運用改善の方向性

精度や実用性を高める取り組みとしては、センサーやアルゴリズムの改善、キャリブレーションの簡便化などが挙げられます。また、視線データ単独ではなく、クリック・スクロール・発話・アンケートなどの行動データを組み合わせて解釈の確度を上げる運用も一般的です。

コスト削減と普及の可能性

コスト面では、汎用機器の活用や解析の効率化などにより導入障壁が下がる可能性があります。ただし、コストが下がっても「目的設計と解釈の難しさ」は残るため、導入後に使いこなせる体制(役割分担や分析の型)を作ることが重要です。

新たな応用分野

今後は、エンタテインメント、運転支援、ロボットとのインタラクションなど、視線が「入力」や「支援」に使われる領域も広がる可能性があります。活用が広がるほど、データの扱い(同意、保管、目的外利用の防止)も重要になります。

まとめ

アイトラッキングデバイスは、視線の動きを計測・分析することで、UX改善やマーケティング評価などを「観測可能なデータ」で補強できる技術です。一方で、視線は解釈が難しいデータでもあり、目的設計、実験条件の統一、他データとの併用、プライバシー配慮といった運用設計が欠かせません。導入する場合は、まず「何を判断したいか」を明確にし、必要十分な精度・形態のデバイスを選び、分析の型を整えることが成功の近道になります。

Q.アイトラッキングデバイスで「何が分かる」のですか?

視線がどこに向き、どの順序で移動し、どれくらい留まったかを推定できます。

Q.アイトラッキングは「理解したか」を判断できますか?

視線だけでは判断できないため、タスク結果やヒアリングと併用します。

Q.ヒートマップが赤い場所は「重要」と考えてよいですか?

重要とは限らないため、タスクと文脈を踏まえて解釈します。

Q.キャリブレーションは毎回必要ですか?

被験者ごとに必要で、精度維持のために状況に応じて再実施します。

Q.ウェアラブル型とスタンドアローン型はどう使い分けますか?

実空間の行動観察はウェアラブル、画面評価の安定計測はスタンドアローンが向きます。

Q.被験者数はどれくらい必要ですか?

目的次第のため、探索なら少数で仮説を作り、検証は条件を揃えて増やします。

Q.眼鏡や照明は計測に影響しますか?

影響するため、環境条件を固定し、必要に応じて再キャリブレーションします。

Q.導入時に最初に決めるべきことは何ですか?

目的、対象、成功条件の3点を先に決めることが最優先です。

Q.プライバシー面で注意すべきことはありますか?

同意取得、目的の明確化、保管とアクセス管理をルール化します。

Q.アイトラッキングの結果を施策に落とすコツはありますか?

視線データを根拠に仮説を作り、ABテストなどで効果検証まで行います。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム