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Fortranとは? 10分でわかりやすく解説

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目次

Fortranは、科学技術計算や数値シミュレーションの分野で長年使われてきたプログラミング言語です。いわゆる“古い言語”という印象を持たれがちですが、規格はアップデートされ続けており、現場では「既存の資産(膨大なコードとライブラリ)を活かしつつ、高速に計算したい」という理由で今も選ばれています。本記事では、Fortranの概要、基本文法、開発の進め方、活用事例までを、初心者にも理解できる粒度で整理します。

Fortranとは何か?

Fortran(フォートラン)は、主に科学技術計算・数値解析・シミュレーションで用いられるプログラミング言語です。配列(ベクトル・行列)を扱う計算に強く、コンパイラ最適化とも相性がよいため、大規模計算で高い性能を出しやすい点が特徴です。

Fortranの概要と歴史

Fortranは1950年代にIBMで開発され、科学技術計算を「人が読み書きできる形」で記述し、機械語へ翻訳(コンパイル)するという発想を早期に実用化しました。名称はFORmula TRANslation(数式の翻訳)に由来するとされています。

Fortranは「古いまま残っている言語」ではなく、長い歴史のなかで規格(標準)が段階的に整備され、機能が拡張されてきました。代表的な標準の流れは次の通りです。

  1. FORTRAN I(1957年)
  2. FORTRAN II(1958年)
  3. FORTRAN IV(1962年)
  4. FORTRAN 77(1978年)
  5. Fortran 90(1991年)
  6. Fortran 95(1997年)
  7. Fortran 2003(2004年)
  8. Fortran 2008(2010年)
  9. Fortran 2018(2018年)
  10. Fortran 2023(2023年)

特にFortran 90以降は、モジュール(module)による部品化、配列演算の表現力、派生型(ユーザー定義型)などが整い、「手続き型の数値計算言語」から、より大規模開発に耐える設計へ進化しています。

Fortranの特徴と用途

Fortranは次のような特徴を持ちます。

  • 数値計算・配列処理に強い(行列演算や配列全体への操作を自然に書ける)
  • コンパイラ最適化が成熟しており、高性能計算(HPC)で実績がある
  • 長年の資産(レガシーコード、検証済みの数値計算ライブラリ)が多い
  • 現代的な機能(モジュール化、例外的な入力検証、並列化のための機能など)も利用できる

そのため、Fortranが特に活躍するのは「計算が重い」「正しさの検証が積み上がっている」「長期運用する」タイプの領域です。例えば、次のような用途があります。

  • 科学技術計算(物理・化学・材料・地球科学などのシミュレーション)
  • 工学計算(構造解析、流体解析、熱解析など)
  • 気象・気候(数値予報モデル、気候変動の研究)
  • 金融工学(数値計算・最適化・シミュレーション)

Fortranが使われる分野

分野具体例
科学技術計算数値シミュレーション、物理モデリング、最適化計算など
工学構造解析、流体力学、熱伝導解析、CAEなど
気象・地球科学気象予測、海洋モデル、地震・津波解析、気候モデルなど
金融工学モンテカルロ法、リスク評価、数値最適化、デリバティブ評価など

これらの分野では、同じ計算を何度も回したり、巨大な格子(メッシュ)・行列を扱ったりします。実行速度と安定性が効いてくるため、Fortranの強みが素直に活きます。また、古いコードが残っていること自体が理由になる場合もあります。すでに検証が終わっている計算ロジックを、ゼロから別言語に移植するのはコストもリスクも大きいためです。

Fortranと他のプログラミング言語の比較

Fortranは“何でもできる汎用言語”ではありません。強みが明確な一方、用途によっては他言語のほうが適することもあります。現場では「目的に応じて組み合わせる」ことがよくあります。

言語相性が良いポイント(概観)
C/C++システム寄りの処理や細かい制御に強い。Fortranと同様に高性能を狙える。
Python実験・可視化・前処理・後処理が得意。数値コアはFortran(またはC系)に任せる構成が多い。
MATLAB試行錯誤や可視化に強い。用途によっては高速化や大規模化の工夫が必要になる。
Julia数値計算に強く、高速性も狙える。採用は拡大傾向だが、既存資産の厚さは分野によって差がある。

Fortranの立ち位置は、「計算の心臓部(数値コア)で性能と安定性を出しやすい言語」です。可視化やデータ処理など周辺領域はPythonで、数値コアはFortranで、という分業は典型的です。

Fortranの基本文法

ここでは、初心者がつまずきやすいポイントを補いながら、Fortranの基本文法を整理します。なお、現代のFortranは“自由形式(free form)”で書くのが一般的で、拡張子は「.f90」などがよく使われます。

基本構造(PROGRAM / IMPLICIT NONE)

Fortranでは、プログラム全体をPROGRAMから始め、END PROGRAMで閉じます。初心者の段階で強く推奨したいのがIMPLICIT NONEです。これを入れると、変数の宣言漏れ(タイポ)がコンパイル時に検出されやすくなり、原因不明の計算ミスを減らせます。

program hello
  implicit none
  print *, "Hello, Fortran!"
end program hello

Fortranのデータ型

Fortranには、次のような基本データ型があります。数値計算が中心になるため、整数・実数・複素数・論理型が標準で強力です。

データ型説明
INTEGER整数型。カウンタや添字などに使う。
REAL実数型(浮動小数点)。シミュレーションの実数値に使う。
COMPLEX複素数型。周波数解析などで有用。
CHARACTER文字型(文字列)。メッセージやファイル名などに使う。
LOGICAL論理型(.TRUE. / .FALSE.)。条件分岐やフラグに使う。

注意点として、実数の精度は「REAL=単精度」「DOUBLE PRECISION=倍精度」と単純に覚えられがちですが、現代のFortranではKIND(種別値)で精度・表現を指定する書き方が一般的です。特に数値誤差に敏感な計算では、精度設計(どの変数をどの精度で持つか)が品質に直結します。

Fortranの変数宣言

Fortranでは、変数を使用する前に宣言します。基本形は次の通りです。

データ型 :: 変数名1, 変数名2, ...

例として、整数のカウンタiを宣言するなら以下です。

integer :: i

配列を宣言する例は次の通りです。

real, dimension(100) :: a

この例では、実数配列aを100要素で宣言しています。Fortranは配列処理が強みのため、配列の次元や添字範囲(1始まりがデフォルト)を意識して設計すると、コードが読みやすくなります。

制御構文(IF / DO)

条件分岐や繰り返しの基本構文は、他言語と同様に押さえておく必要があります。

IF文(条件分岐)

if (condition) then
  ! 条件が真の場合の処理
else
  ! 条件が偽の場合の処理
end if

数値計算では「しきい値による分岐」「収束判定」「例外条件(ゼロ除算回避など)」が多いため、条件式の設計は重要です。例えば浮動小数点の比較では、完全一致より許容誤差(トレランス)を使う、などの配慮が必要になることがあります。

DO文(繰り返し)

do i = 1, 100
  ! 繰り返す処理
end do

この例では、iが1から100まで増えながら処理が繰り返されます。計算量が大きい場合、ループが性能ボトルネックになることが多いため、配列演算への置き換えや、並列化(後述)を検討するのが現場的です。

入出力(READ / WRITE)

Fortranの入出力は、シミュレーションのパラメータ読み込みや結果保存で頻繁に使われます。最も簡単な例は次の通りです。

READ(読み込み)

read(*, *) x, y

標準入力から値を読み込み、xyに格納します。

WRITE(出力)

write(*, *) "Result:", result

標準出力に文字列と変数を出力します。

実務では、ファイル入出力(open / close)や、フォーマット指定(桁数・指数表記・区切りなど)も重要になります。計算結果は「見た目の整形」以上に、後工程(可視化、分析、再現性)を左右するため、出力形式を早めに決めておくと運用が楽になります。

Fortranを使ったプログラミング

ここでは、Fortranで実際に開発を進めるために必要な、開発環境・コンパイル・実行・デバッグの要点を整理します。初心者でも「手を動かして確認できる状態」をゴールにします。

Fortranの開発環境

Fortranを始めるには、まずコンパイラが必要です。代表的なものは次の通りです。

  • GNU Fortran(gfortran):無料で使えることが多く、学習・研究用途で広い
  • Intel Fortran Compiler:最適化や周辺エコシステムが強い構成で使われることがある
  • IBM XL Fortran:特定環境で利用される
  • Oracle Developer Studio(旧 Sun Studio):特定環境で利用される

学習用途なら、まずはgfortranで十分に始められます。エディタはVS Codeなど、普段使っているものをそのまま使って構いません。慣れてきたら、ビルド手順(コマンドやMakefile)を整えていくと管理が楽になります。

Fortranプログラムの作成手順

  1. テキストエディタでFortranのソースコードを書きます。
  2. 拡張子を付けて保存します(例:.f90)。
  3. コンパイラでコンパイルします。
  4. 生成された実行ファイルを実行します。

この段階で意識したいのは「モジュール化」です。小さくてもよいので、データ構造や手続きを部品として分ける癖を付けておくと、後で大きくなったときに破綻しにくくなります。

Fortranプログラムのコンパイルと実行

gfortranでコンパイルする例です。

gfortran -o app main.f90

実行は次の通りです(OSにより表記が異なることがあります)。

./app

実務では、最適化オプション(例:最適化レベル、デバッグ情報の有無)を状況に応じて切り替えます。例えば「デバッグ中は最適化を弱める」「本番計算は最適化を有効にする」といった運用が典型です。

Fortranプログラムのデバッグ方法

デバッグは“地味だけれど結果を左右する工程”です。Fortranでも基本は同じで、次のような方法が有効です。

  • writeで途中経過(変数・配列の一部)を出力して追う
  • デバッガを使い、停止・ステップ実行・変数の確認を行う
  • 境界条件(配列添字、ゼロ除算、NaN発生など)を重点的に点検する
  • 小さな入力データで再現ケースを作り、原因の切り分けをする

数値計算では「エラーで止まる」よりも「止まらずに間違った値が出る」ほうが怖いことがあります。implicit none、入力の妥当性チェック、途中値のサニティチェック(値域や収束の確認)を仕込むことが、結果の信頼性に効いてきます。

Fortranの活用事例

Fortranは、今も数値計算を必要とする領域で使われています。ここでは代表的な活用例を、なぜFortranが選ばれやすいのかという観点も含めて紹介します。

科学技術計算でのFortranの活用

物理シミュレーション、化学反応解析、材料計算、数値最適化などでは、巨大な配列を何度も更新するような計算が頻出します。Fortranは配列処理の表現力が高く、コンパイラ最適化も成熟しているため、計算コアに採用されることがあります。また、過去の検証済みコードを引き継ぎやすい点も大きい要因です。

気象シミュレーションへのFortranの適用

気象・気候モデルは、空間格子と時間ステップの組み合わせで、膨大な計算を繰り返します。モデルの継続改良も長期にわたるため、実績のあるコード資産を維持しながら性能を引き出す必要があります。こうした背景から、Fortranが使われ続けている領域の一つです。

宇宙開発におけるFortranの利用

軌道計算、構造解析、流体解析など、宇宙開発でも数値計算が中心となる領域があります。ここでも重要なのは「速さ」と「正しさ」の両立であり、長期的な検証の積み上げが資産になります。Fortranは、こうした“積み上げるタイプの計算”と相性がよい言語の一つです。

金融工学分野でのFortranの応用

金融工学では、モンテカルロ法や数値最適化など、計算負荷が高い手法が使われます。要求されるのは「速く回すこと」だけでなく「同じ条件で同じ結果が出ること(再現性)」でもあります。Fortranは数値計算の領域で蓄積があるため、計算コアとして採用されるケースがあります。

まとめ

Fortranは、科学技術計算や数値シミュレーションを中心に長年使われてきたプログラミング言語です。配列処理の強さとコンパイラ最適化の成熟により、計算コアで高い性能を狙いやすいこと、そして検証済みのコード資産が豊富であることが、今も利用される理由です。基本文法(宣言、配列、IF/DO、入出力)を押さえたうえで、implicit noneやモジュール化などの実務的な作法を取り入れると、学習から実戦へ移りやすくなります。

Q.Fortranはどんな用途に向いた言語ですか?

大規模な数値計算やシミュレーション、配列(行列)計算を高速に回したい用途に向きます。

Q.Fortranは今でも使われていますか?

使われています。科学技術計算やHPCの領域で、既存資産と性能の両面から継続利用されています。

Q.「FORTRAN 77」と「現代のFortran」は何が違いますか?

モジュール化、自由形式の記法、配列演算、派生型などが整い、大規模開発や保守がしやすくなっています。

Q.初心者はどのコンパイラを選ぶのが無難ですか?

まずはGNU Fortran(gfortran)で十分です。無料で始められ、学習情報も多いです。

Q.Fortranのソースファイル拡張子は何を使えばよいですか?

現代的な記法(自由形式)なら.f90が一般的です。環境や運用に合わせて統一すると管理が楽になります。

Q.なぜimplicit noneが推奨されるのですか?

変数名の打ち間違いが暗黙の新規変数として扱われる事故を防ぎ、計算結果の取り違えを減らせます。

Q.Fortranは配列計算が得意と言われますが、具体的に何が便利ですか?

配列全体への演算や、配列処理を前提とした最適化が得意で、数値計算を見通しよく書きやすい点が便利です。

Q.Fortranで並列計算はできますか?

できます。用途によりOpenMPなどの並列化手法を組み合わせ、計算を高速化する運用が行われます。

Q.Fortranは他言語(CやPython)と連携できますか?

できます。計算コアをFortranで実装し、周辺処理や可視化を他言語で行う構成はよくあります。

Q.学習を進めるときの順番のおすすめはありますか?

変数・配列・IF/DO・入出力を押さえたうえで、モジュール化とテスト(小さな再現ケース)を習慣化するのがおすすめです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム