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FTPとは? わかりやすく10分で解説

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目次

FTPとは?

FTPは「File Transfer Protocol」の略称で、データをネットワークを通じて別のコンピュータに送受信するためのプロトコルです。これまでのテクノロジーの進歩と共に、FTPは今日ではウェブホストやデータベースのバックアップなど、さまざまな用途で使われています。

FTPの概要

FTPはTCP/IPというプロトコルをベースにして作られています。FTPは主に2つの通信を確立します。ひとつはコマンド用の通信であり、もうひとつはデータ転送用の通信です。コマンドを送受信することにより、FTPサーバーとクライアント間で適切な通信が行われます。FTPは、「アップロード」、「ダウンロード」、「ファイル削除」、「ファイル名変更」、「ディレクトリの作成・削除」などの操作を可能にします。

FTPの仕組み

FTPはクライアントとサーバーの間で動作します。クライアントはFTPサーバーへ接続し、ファイルをアップロードまたはダウンロードできるようになります。この接続の際にはユーザー名とパスワードが必要で、それを用いてサーバーは認証を行います。通常、FTPサーバーは特定のポート(デフォルトでは21番)をlistenしています。クライアントからの接続要求を受け取ると、サーバーは新しい通信チャネルを確立します。この通信チャネルはデータの送受信に使用されます。

FTPの歴史

FTPはインターネットが公に利用できるようになる前の1970年代初頭に開発されました。それ以来、テクノロジーの進化とともにFTPも更新されてきており、現在では最初のFTPとはかなり異なる形になっています。最初のFTPは非常に基本的なコマンドしかサポートしておらず、セキュリティの問題もありました。しかし、現在のFTPは多くのコマンドをサポートしており、セキュリティの問題にも配慮されています。

FTPの利点と欠点

FTP(File Transfer Protocol)は、その名の通りファイル転送を行うためのプロトコルです。FTPは長年使われてきた確かな技術ですが、それには明確な利点と一部の欠点があります。

FTPの利点

まず、FTPは汎用性があります。FTPは古き良き時代から使われており、いろいろなシステムやプラットフォームで動作します。Windows、Mac、Android、Linux、あらゆるOSでFTPを利用できます。

また、FTPは効率性に優れています。FTPは多数のファイルや大容量のファイルを高速に転送できます。特に、ファイルの一括アップロードやダウンロードに長けています。

さらに、FTPは操作性に長けており、コマンド一つでファイルやディレクトリの削除、名前の変更、ファイルのコピーなどが可能です。

FTPの欠点

一方で、FTPには一定の欠点も存在します。FTPの最大の問題点は、セキュリティにあります。FTPは通信内容が暗号化されず、ネットワーク上に平文で送信されます。つまり、第三者がネットワークを監視することで、FTPの通信内容を閲覧できてしまいます。

FTPの別の欠点は、ファイアウォールとの相性です。FTPはデータ転送に複数のポートを使うため、ファイアウォールとの相性がよくありません。

以上がFTPの利点と欠点です。FTPは長年にわたる運用の中でさまざまな利点を持つ一方、その性質上の欠点もあります。これらの特性を理解することが、FTPを上手に活用するための第一歩となります。

FTPの主要な機能

私たちは日常的に文書を作成したり、画像やビデオを撮影したりしますが、これらのデータは個々のデバイスに保存されるだけでなく、必要に応じて他のデバイスやサーバーに移動させることがあります。こうしたデータの移動を可能にするのがFTPの主要な機能です。

ファイル転送

FTPの最も基本的で主要な機能は「ファイル転送」です。FTPを使用すると、コンピュータとサーバーまたは2台のコンピュータ間でファイルを移動することができます。これは、Webサイトのアップロードやダウンロード、ソフトウェアの更新、データのバックアップなど、さまざまな目的で使用されます。また、FTPは大量のファイルの転送も簡単に行えるため、ビッグデータの分析やクラウドストレージとの連携にも使用されます。

ディレクトリ操作

次に重要な機能は、「ディレクトリ操作」です。FTPを利用すると、サーバー上のディレクトリ構造をユーザーのコンピュータから操作することができます。具体的には、新しいディレクトリの作成や既存のディレクトリの名前の変更、削除といった操作が可能です。こうしたディレクトリ操作の機能は、Webサイトの更新や管理、データの整理に非常に便利です。

その他の機能

FTPはファイル転送とディレクトリ操作の他にも、さまざまな機能を提供しています。たとえば、ファイルのパーミッション(アクセス権)の設定や変更もFTPを通じて実行できます。これにより、特定のユーザーだけがファイルを読み取ったり編集したりできるように制限を設けることができます。また、ファイルのサイズや日付の取得といった情報を参照する機能も提供されています。さらに、FTPは複数の接続を同時に管理することができるので、効率的なデータ管理とファイル転送が可能です。

FTPの基本的な使い道

FTPはさまざまなシーンでその力を発揮します。ここではFTPの最も一般的な使い方を3つ具体的にご紹介します。

Webサイトのアップロード

FTPはWebサイト制作において欠かせないツールの一つです。具体的には、一旦自分のPC上で完成させたWebサイトのファイルを、FTPを通じてWebサーバーにアップロードするのに用います。これを行うことで、制作したWebサイトが世界中から閲覧可能になります。FTPならば大量のファイルも容易に、そして高速にアップロードする事ができますので、サイト制作の効率アップに寄与します。

データのバックアップ

FTPはデータのバックアップにも適しています。特に大量のデータを安全かつ迅速に異なるストレージに転送するという状況では、FTPは非常に有用な方法となりえます。自宅のパソコンのデータをオフィスのサーバーに定期的に自動でバックアップしたり、Webサーバーへ定期的にバックアップを取ったりする場合にも、FTPは役立ちます。

大量のファイル転送

最後に大量のファイルの転送もFTPの得意分野です。インターネット上で大規模なデータを送受信する際には、FTPは非常に強力なツールとなります。たとえば、大容量の映像データを共有したい時や、大量の文書データを遠くにあるオフィスへ送りたい場合など、FTPを使用すれば簡単に、かつ迅速に転送を行うことができます。

基本的なFTPコマンド

さて、FTPを活用するためには、一部の基本的なコマンドを理解しておくことが重要です。ここからはFTPを使用する上で頻繁に使用される基本的なコマンドについて説明します。

FTPの接続と切断

まずはFTPサーバへの接続と切断について説明します。FTPサーバへの接続にはftpコマンドを使用します。このとき、ホスト名とポート番号を指定する必要があります。具体的なコマンドは「

ftp hostname port

」のようになります。デフォルトのポート番号は21です。


接続に成功すると、ユーザ名とパスワードの入力を求められます。入力後、無事に接続が確立されます。

接続を終了するためにはquitコマンドを使用します。これでFTPサーバからの接続が切断され、ローカルのコンソールに戻ります。

ファイルとディレクトリ操作

FTPサーバ上でファイルやディレクトリを操作するためのコマンドも一般的なそれぞれのコマンドです。上述した接続後、FTPサーバ上でファイルやディレクトリの操作をするためには、lsコマンドで現在のディレクトリの内容を表示したり、cdコマンドでディレクトリの移動を行なったりします。

また、ファイルやディレクトリをダウンロードするためにはgetコマンド、アップロードするためにはputコマンドを使用します。

get filename

といった具体的なコマンドで、FTPサーバ上の指定したファイルをダウンロードできます。同様に、

put filename

で指定したファイルをFTPサーバにアップロードできます。

その他のFTPコマンド

その他、FTPではmkdirコマンドやrmdirコマンドでディレクトリの作成や削除ができます。また、deleteコマンドでファイルの削除を行なったり、renameコマンドでファイル名を変更したりすることも可能です。

また、データ転送モードの制御に関連するコマンドも存在します。たとえば、asciiコマンドやbinaryコマンドで、転送モードをテキストモードあるいはバイナリモードに変更できます。

これらのコマンドを理解し、適宜活用することで、FTPサーバとのデータのやり取りがいっそうスムーズに行えるようになります。

FTPクライアントソフトウェアの紹介

ファイル転送の手段としてFTPは非常に便利ですが、FTPサーバーへ接続してファイルを管理するためには、専門のソフトウェアであるFTPクライアントが必要です。FTPクライアントには様々なものがありますが、ここでは特に人気のある三つのソフトウェア、FileZillaWinSCPCyberduckを紹介します。

FileZilla

FileZillaは、無料で利用できるFTPクライアントで、その多機能さと使いやすさから、全世界で広く使用されています。Windows・Mac・Linuxといったさまざまなプラットフォームに対応しており、FTPのみならずFTPSやSFTPのプロトコルにも対応しています。さらに、多言語対応・ブックマーク機能・一斉転送など便利な機能も充実しているため、初心者から上級者まで様々なユーザーにとって利便性の高いツールです。

WinSCP

WinSCPは、Windowsユーザー向けのFTPクライアントで、SSH(安全なリモートログインやファイル転送を可能にするプロトコル)やSFTPにも対応しています。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)が直感的で操作性が高く、ファイルマネージャスタイルとエクスプローラスタイルの2つのインタフェースを選択できます。また、詳細な設定機能、スクリプト実行機能なども搭載しており、自動化を求める上級者にも利用価値の高いツールです。

Cyberduck

マッキントッシュユーザーから特に支持を受けているのが、Cyberduckです。その美しいインターフェースと使いやすさが評価され、FTPだけでなく、SFTP、WebDAV、そしてAmazon S3やGoogle Cloud Storageなどのクラウドサービスにも対応した、多機能なファイル転送アプリケーションです。特に、クラウドストレージとの連携機能は、ファイルのバックアップや共有を頻繁に行うユーザーにとって大変便利です。

FTPの安全性とセキュリティ

今となっては、オンライン上の情報は常に様々な脅威に晒されています。そのため、ファイル転送プロトコルであってもその安全性を確保することが非常に重要です。

FTPの安全性を考える

FTPの安全性について理解するためには、FTPが基本的に非暗号化で通信することの理解が必要です。これは、ファイルの転送中に、第三者が通信を傍受してデータを閲覧したり、変更したりする可能性を意味します。

FTPはパスワードを平文で送信するので、通信を傍受されるとアカウント情報が漏洩するリスクもあります。したがって、重要な情報を取り扱う場合には、FTPの使用は避けた方がよいでしょう。特にパブリックなネットワークを通じてFTPを利用するときには注意が必要です。

FTPSとSFTPの紹介

上記で述べたようなFTPのセキュリティ上の問題を解決するために、FTPSとSFTPが利用されています。

FTPS(FTP Secure)は、FTPにSSL(Secure Sockets Layer)またはTLS(Transport Layer Security)を組み合わせ、通信路を暗号化することで、データの漏洩や改ざんを防ぎます。そのため、通信内容を第三者に知られることなく安全にファイル転送が可能となります。

次に、SFTP(SSH File Transfer Protocol)は、SSH(Secure Shell)を使用してFTPを安全に行うプロトコルです。SSHを用いることで、ユーザ認証情報と通信内容を暗号化し、データの傍受を防いでいます。

したがって、FTPを使用する際には、その安全性に十分注意を払い、可能であればFTPSやSFTPなどの安全な転送プロトコルを選択することを強く推奨します。

FTPを使用する際の注意点

FTPの活用は非常に便利ですが、同時に注意しなければならない点も存在します。特に、パスワードの管理やファイルの送受信時の注意点については、融通性と安全性のバランスを考慮し、適切に対処することが必須です。

パスワードの管理

FTPサーバへの接続には、通常ユーザ名とパスワードが必要となります。このパスワード管理は、セキュリティを確保する上で非常に重要な要素となります。あらかじめ設定されたパスワードを使用せず、自分だけが知っているユニークなパスワードを設定するべきです。そして、パスワードは定期的に変更し、保存場所も安全な状態を維持しましょう。また、パスワードは他者と共有せず、その存在自体もなるべく秘匿することが推奨されます。

ファイルの送受信時の注意

FTPを利用してファイルを送信する場合、転送する内容に応じて適切な転送モードを選択する必要があります。テキストファイルはASCIIモード、バイナリデータ(画像や音声など)はバイナリモードで転送しましょう。間違ったモードで転送を行うとファイルが正常に転送されない、またはデータが破損する恐れがあります。

また、FTPは通信内容が暗号化されていないため、情報が第三者に傍受されるリスクがあります。そのため、機密情報を扱う場合には、FTPの安全なバリエーション(FTPSやSFTPなど)を利用するといった対策が重要です。

これらを遵守することで、FTPを安全に活用することが可能となります。

FTPの今後の発展予想

最後に、FTPが今後どのように発展し、変化していくのか考えてみましょう。FTPは、その基本的な機能と普遍性が評価され、継続して利用されています。しかし、Cloudストレージの登場やIoTの普及など、テクノロジーの進化はこの標準に新たな影響を与える可能性があります。

Cloudストレージの影響

Cloudストレージサービスは、容易な共有性と拡張性、そして地理的な制限なしにデータへのアクセスを可能にしています。これがFTPの影響を及ぼしていることは間違いありません。

しかしFTPは自社のサーバーや特定のネットワーク環境を管理する企業にとっては、自身で完全な管理とカスタマイズを行えるため有益です。よって、完全にCloudストレージに置き換えられるわけではなく、FTPは引き続き有用性を保つでしょう。

IoTの進化とFTP

IoT(Internet of Things)の進化と共に、ネットワークに接続されたさまざまなデバイスや機器が大量のデータを生成し、消費します。FTPは、これらの大量のデータを効率的に転送する手段として機能することができます。

IoTデバイスが生成するデータの性質から、一部のデバイスではリアルタイムの分析が求められ、その効率的な転送が欠かせなくなるでしょう。このため、FTPはIoTが進化するほどにより重要となる可能性が考えられます。

FTPは、時間の経過と共にある程度の形状を変え、新たなテクノロジーと共存し、適応してきたことから、そのフレキシビリティと適応性がこれら新たな状況にも対応できると予想できます。

まとめ

この記事では、FTP(File Transfer Protocol)について説明しました。FTPは、私たちのデジタル生活を格段に便利にする一方、その運用には配慮が必要です。FTPの概要、基本的な使い方と機能、安全性とセキュリティ、そして注意点といった重要な要素について解説しました。

FTPのまとめ

FTPとは、ホスト間でファイルを転送するためのプロトコルです。FTPは利便性と共にセキュリティの課題を抱えていますが、FTPの代替としてよく用いられるFTPSやSFTPにより、これらの課題をある程度解消することができます。また、FTPクライアントソフトウェアを使えば、FTPの複雑さを大きく軽減し、簡単にファイル転送を行うことが可能です。

FTPの基本的な知識の活用方法

FTPの基本的な知識は、ウェブサイトの管理・データのバックアップ・大量ファイルの転送など、さまざまな場面で活用できます。そして、FTPを適切に利用するためには、セキュリティについての理解と、FTPを使用する際の注意点の把握が非常に重要です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム