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HEMSとは? 10分でわかりやすく解説

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電気代の高騰やエネルギー価格の変動が続く中、「何がどれだけ電気を使っているのか分からない」という状態は、無駄な出費につながりやすいものです。そこで役立つのが、家庭のエネルギーを“見える化”し、必要に応じて制御まで行えるHEMS(Home Energy Management System)です。この記事では、HEMSの仕組み・導入の考え方・データ活用の具体例・導入前に押さえる注意点までを整理し、あなたの家庭にとって導入すべきか判断できる材料を提供します。

HEMSとは何か?基本的な概念と仕組み

HEMSとは、Home Energy Management Systemの略称で、家庭内のエネルギー(主に電力)を計測・可視化し、場合によっては機器を制御して、消費の最適化を支援する仕組みです。省エネや脱炭素への関心が高まる一方で、電気料金プランの多様化や太陽光・蓄電池・EV(電気自動車)の普及により、家庭でも「エネルギーを管理する」必要性が増してきました。

HEMSの定義と目的

HEMSの役割は、大きく分けると「計測(見える化)」「分析(気づき)」「制御(自動化)」の3つです。目的は家庭によって異なりますが、代表的には次のようなゴールが挙げられます。

  1. エネルギー消費量の把握と最適化(使い方の改善)
  2. 電気料金の削減(ピーク回避、料金プランに合わせた運用)
  3. 快適性の維持(無理なく省エネ、室温の安定など)
  4. 環境負荷の低減(再エネ自家消費の最大化、CO2削減)

HEMSの価値は「節電を頑張る」ことではなく、“どこに手を入れると効くか”をデータで特定し、継続できる形に落とし込める点にあります。同じ「節電」でも、家電の使い方の見直しで効く家庭もあれば、給湯や空調の運用改善が効く家庭もあります。HEMSは、その当たりを付けるための土台になります。

HEMSを構成する要素と機能

HEMSは「計測する装置」「つなぐ装置」「表示・分析するアプリ」「制御対象(家電・設備)」が組み合わさって動きます。製品構成はベンダーにより異なりますが、概念としては次のように整理できます。

構成要素役割(例)
スマートメーター家庭全体の電力使用量を計測(契約によりデータ連携の範囲が変わることがあります)
ホームゲートウェイ/HEMSコントローラー機器やメーターのデータを集約し、家電・設備と連携する中核
エネルギー管理アプリ(スマホ/Web)見える化(リアルタイム・履歴)、分析、通知、レポート
スマート家電/設備(エアコン、給湯、蓄電池、EV充電器など)データ提供、遠隔操作、自動制御(機器側の対応が必要)

一般的な流れは「計測 → 集約 → 可視化(必要に応じて制御)」です。たとえば家庭全体の使用量はスマートメーターから、機器別の情報は対応家電や分電盤計測から取得し、アプリで時間帯別・日別・月別などに整理して確認します。重要なのは、見える化が“グラフを見ること”で終わらず、行動(設定変更・運用改善・自動化)につながる設計になっているかです。

HEMSの導入メリット

HEMSのメリットは「節約」だけではありません。家庭の状況(在宅時間、家族構成、住宅性能、太陽光の有無など)によって、得られる効果の出方が変わる点も踏まえ、代表的なメリットを整理します。

  • 電気料金の最適化:ピーク時間帯を避ける運用、料金プランに合わせた使い方の調整
  • ピーク抑制:同時使用の偏りを可視化し、契約容量やブレーカー落ちのリスクを減らす
  • 再エネの有効活用:太陽光の発電と消費のズレを把握し、自家消費を増やす(蓄電池・EV連携があると効果が出やすい)
  • 快適性と両立:無理な我慢ではなく、温度設定・運転パターンの見直しで“効率よく快適”を狙える
  • 異常の早期発見:いつもと違う消費パターン(待機電力の増加、機器の劣化の兆候など)に気づきやすい

なお、原稿内で「企業にとってのメリット」として語られがちですが、HEMSはあくまで家庭向けが中心です。企業の施設全体で最適化する場合は、一般にBEMS(Building Energy Management System)など別の枠組みが用いられます。HEMSは、住宅(戸建て・集合住宅の住戸)という単位で運用・改善するための仕組み、と捉えると誤解が減ります。

HEMSの普及状況と今後の展望

HEMSは、省エネ・脱炭素の流れに加えて、太陽光・蓄電池・EV・スマート家電の普及を背景に、役割が広がっています。今後は次のような方向で進化しやすい領域です。

  • AI・IoTの高度化:天気予報や生活パターンから、最適な運転計画を提案・自動化する
  • 蓄電池・EVとの連携:発電・蓄電・充電を一体で最適化し、電力の“時間シフト”をしやすくする
  • デマンドレスポンス(DR)との連携:電力需給が逼迫する時間帯に、家庭側が協力して消費を調整する仕組みが拡大する可能性
  • データ活用の広がり:家庭内最適化だけでなく、地域・サービス連携(同意に基づく)へ発展し得る

一方で、データの取り扱い(プライバシー)や機器間連携の互換性、通信障害時の振る舞いなど、運用上の論点も増えます。導入時は「できること」だけでなく「できないこと/条件があること」まで確認するのが、失敗を減らす近道です。

HEMSの導入方法と必要な機器

HEMSは“買って終わり”の家電とは異なり、住宅環境・対応機器・通信方式・設置条件によって、導入の難易度と効果が変わります。ここでは、導入の流れと、検討時に見落としやすいポイントまで含めて整理します。

HEMS導入の流れと手順

  1. 目的の明確化:節約なのか、見える化なのか、太陽光・蓄電池・EVの最適化なのかを決める
  2. 現状把握:検針票やアプリ、家電の使い方から「いつ増えるか」の当たりを付ける
  3. 対応機器・方式の確認:スマートメーター連携、分電盤計測、家電連携の可否をチェックする
  4. 製品選定:欲しい機能(制御の有無、対応家電、アプリの見やすさ、連携範囲)で比較する
  5. 設置・設定:通信・アカウント設定、機器登録、目標や通知条件の設定を行う
  6. 運用と改善:1〜2か月は“観察期間”として、改善点を見つけて設定に反映する

「導入目的の明確化」を最初に置いたのは、HEMSの価値が“何をどこまでやりたいか”で大きく変わるからです。たとえば「家庭全体の見える化だけで十分」なら、機器別の詳細計測や自動制御は必須ではありません。一方、太陽光・蓄電池・EVまで含めて最適化するなら、連携できる機器や通信方式を最初に押さえる必要があります。

HEMSに必要な機器と設備

HEMS導入で登場しやすい構成を、役割ベースで整理します(製品によっては一体化しています)。

機器・設備説明
スマートメーター(前提条件がある場合)家庭全体の電力データの入口。連携方式や利用条件は契約・地域・製品により異なります
HEMSコントローラー/ゲートウェイ機器データの集約と、家電・設備の連携の中心。対応規格(例:ECHONET Lite等)が重要です
計測機器(分電盤計測、クランプ式CTなど)回路別・機器別の消費の“粒度”を上げたい場合に有効
対応家電・設備エアコン・給湯・蓄電池・EV充電器など。制御やデータ取得には対応製品が必要です
アプリ/クラウド見える化・分析・通知・レポート。UIの分かりやすさが継続利用を左右します

「家庭全体」だけを見たいのか、「機器別」まで見たいのかで、必要機器が変わります。家庭全体の使用量だけでも、ピークの時間帯や季節変動は把握できます。一方で「何が原因か」を突き止めたい場合は、分電盤計測や対応家電のデータ取得が効いてきます。

HEMSの初期費用と運用コスト

HEMSのコストは、導入方式で差が出ます。代表的には次の要素がコストを左右します。

  • 導入範囲:見える化中心か、制御・自動化まで含めるか
  • 計測の粒度:家庭全体のみか、回路別・機器別まで取るか
  • 連携する設備:太陽光・蓄電池・EV・給湯などを統合するか
  • 工事の有無:分電盤周りの工事や機器設置が必要か
  • アプリ/クラウドの料金:月額課金があるか、保守サポートを含むか

「一般的には数十万円〜」といった断定は、家庭差・製品差が大きく誤解を招きやすいため避けた方が安全です。見える化中心なら比較的軽量に始められる一方、機器別計測や蓄電池・EV連携まで狙うと費用も上がりやすくなります。費用対効果を考える際は“何円安くなるか”だけでなく、「ピークが見えることで無駄を減らせる」「自動化で継続できる」といった運用価値も含めて評価するのが現実的です。

HEMSの導入に適した住宅の条件

HEMSはどの家庭でも使えますが、特に効果が出やすいのは「改善余地が見つかりやすい家庭」です。たとえば次のような条件が当てはまると、導入の価値が出やすくなります。

  • 在宅時間が長く、電力消費の波が大きい(空調・調理・家電稼働が多い)
  • 太陽光発電・蓄電池・EVなど、エネルギーの“出入り”が複雑になっている
  • スマート家電が多く、連携・自動化で負担を減らせる余地がある
  • 季節による電力変動が大きく、空調や給湯の改善余地がありそう

逆に、電力使用が少なく変動も小さい家庭では、節約“額”だけを目的にすると期待値が下がる場合があります。その場合でも、災害時のレジリエンス(蓄電池・EV活用)や、快適性と省エネの両立を重視するなら検討余地はあります。目的と家庭の特性を合わせて考えることが重要です。

HEMSのデータ活用方法

HEMSは「グラフを見るための仕組み」ではなく、データから“次に何を変えるか”を導くための仕組みです。ここでは、データの種類と見方、改善につなげる手順、外部連携の注意点まで整理します。

HEMSで収集できるデータの種類

収集できるデータは製品や連携機器によって異なりますが、一般に次のようなデータが対象になります。

  • 電力消費量データ(リアルタイム/履歴、家庭全体・回路別・機器別など)
  • 発電量・売買電データ(太陽光発電など)
  • 蓄電池の充放電・残量データ
  • 室内環境データ(温度、湿度、照度など)
  • 家電・設備の稼働状況(運転モード、設定温度、稼働時間など)

“何が取れるか”は、HEMS本体よりも、連携する機器(家電・分電盤計測・蓄電池など)に依存しやすい点が重要です。導入前に「家庭全体だけでよいのか」「原因究明までしたいのか」を決めると、必要なデータ粒度が定まります。

HEMSデータの見方と分析方法

分析は難しい統計から始める必要はありません。まずは「いつ増えるか」「何が原因か」「どこなら変えられるか」を順に見ていくのが現実的です。

  1. 全体の傾向:日別・週別・月別で、増える日・季節・イベントを把握する
  2. 時間帯別:ピークの時間帯を特定し、同時使用が起きていないかを見る
  3. 要因の当たり:機器別(または回路別)データがあれば、支配的な負荷を特定する
  4. 環境との関連:外気温・室温・湿度と消費の関係から、空調・給湯の改善余地を探る
  5. 比較で検証:設定変更や運用変更の前後で、効果が出たかを確認する

ポイントは「一度に全部を最適化しようとしない」ことです。最初は、消費の大きい要因を1つだけ見つけて、改善を試し、効果が出たら次へ進む。HEMSは、この改善サイクルを回しやすくする道具です。

HEMSデータを活用した省エネ対策

データが見えると、対策は“根性論”から“設計”に変わります。代表的な対策例を、誤解が起きない形で具体化します。

  • ピークを削る:同時使用が集中する時間帯に、運転開始時刻や家事の順番をずらす
  • 空調の効率改善:設定温度の微調整だけでなく、運転モード・風量・フィルタ清掃などで効率を上げる
  • 給湯の最適化:夜間沸き上げのタイミング、湯量設定、保温の見直し(設備により効果が異なる)
  • 待機電力の棚卸し:常時稼働機器(ルーター、録画機器等)や古い機器の消費を把握し、更新判断につなげる
  • 再エネ自家消費の向上:発電時間帯に合わせて稼働を寄せる、蓄電池・EV充電のタイミングを調整する

「夜間の電力使用を減らす」といった一律の提案は、料金プランや生活パターンによって逆効果になり得ます。HEMSのデータを使う意味は、あなたの家庭にとって“効く手”を選べることにあります。

HEMSデータの外部連携と活用事例

HEMSのデータは、家庭内の改善だけでなく、サービス連携に使われる場合もあります。ただし、外部連携はメリットと注意点がセットです。

  • 電力会社・サービスとの連携:デマンドレスポンスや料金最適化サービスで、ピーク調整や節約提案を受ける
  • 設備メーカーとの連携:運転データから、最適設定の提案や故障予兆の検知に活用する
  • 地域施策との連携:自治体の省エネ施策に同意の上で参加し、啓発やインセンティブ施策につながることがある
  • データプラットフォーム連携:同意に基づく集計・比較で、改善のヒント(ベンチマーク)を得る

外部連携では、利用規約・同意範囲・データの保存期間・第三者提供の有無などを確認することが重要です。家庭のエネルギーデータは生活パターンが推測され得るため、利便性だけでなく、納得できる条件かどうかで判断しましょう。

HEMSに関するよくある質問(FAQ)

Q.HEMSは何をしてくれる仕組みですか?

家庭の電力などの使用状況を計測・可視化し、必要に応じて家電や設備の運転を制御して、エネルギーの無駄を減らすのを支援します。

Q.HEMSとBEMSの違いは何ですか?

HEMSは住宅(家庭)向け、BEMSはビルなど建物全体向けのエネルギー管理です。対象規模と運用の前提が異なります。

Q.スマートメーターがあれば、すぐにHEMSが使えますか?

使えるとは限りません。データ連携の方式や契約条件、製品側の対応により、取得できるデータ範囲や手順が変わります。

Q.機器別の電力消費まで分かりますか?

製品と構成次第です。家庭全体の使用量だけのケースもあれば、分電盤計測や対応家電連携で回路別・機器別に把握できるケースもあります。

Q.太陽光発電・蓄電池・EVと連携できますか?

対応製品同士であれば連携できます。発電・蓄電・充電を一体で見える化・制御できると、自家消費の最適化に効果が出やすくなります。

Q.賃貸住宅でも導入できますか?

導入できる場合がありますが、分電盤工事や設備機器の交換が必要な構成は難しいことがあります。工事不要の範囲から検討するのが現実的です。

Q.HEMSのデータはどのくらい正確ですか?

計測点によって異なります。家庭全体の計測、回路別計測、機器側の報告値では精度や粒度が変わるため、用途に合う取り方を選ぶことが重要です。

Q.停電や通信障害が起きるとどうなりますか?

多くの場合、見える化やクラウド連携は制限されますが、家電自体の基本動作は継続します。自動制御の可否は製品設計によるため確認が必要です。

Q.導入効果(節約)はどのくらい見込めますか?

家庭の使い方と導入範囲で大きく変わります。まずはピーク時間帯や支配的な負荷を特定し、改善を検証できるかが効果を左右します。

Q.プライバシーやセキュリティ面で注意することは?

エネルギーデータは生活パターンの推測につながり得ます。外部連携の同意範囲、保存期間、第三者提供の有無、機器の更新方針を確認しましょう。

まとめ

HEMSは、家庭のエネルギー消費を計測・可視化し、必要に応じて制御まで行うことで、無駄を減らしやすくする仕組みです。導入効果は家庭の状況や導入範囲によって変わるため、まずは「何を目的に、どの粒度で把握したいか」を決めることが重要です。見える化で傾向をつかみ、ピークや支配的な負荷を特定し、運用改善や自動化につなげることで、電気料金の最適化や快適性の維持、再エネ活用といった成果が現実的になります。外部連携を活用する場合は、利便性だけでなくプライバシーや同意範囲まで含めて確認し、納得できる形でHEMSを運用していきましょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム