最近では自宅やオフィスだけでなく、駅やカフェ、病院などさまざまな場所でWi-Fiが利用できます。ホテルなどの宿泊施設もそうで、Wi-Fiを利用したい場所としてよく挙げられます。宿泊客にとって、Wi-Fiが利用できるかどうかはホテルを選ぶ際の条件のひとつとなっているのです。
この記事では、ホテルにおけるWi-Fi設備の重要性から導入するメリット、注意点、セキュリティ対策までをわかりやすく解説します。
いまやホテルにとってWi-Fi設備は、ほぼ必須の設備といえます。Wi-Fiによるインターネット接続はホテルにおける標準サービスとして考えられるようになっており、特に外国人旅行客にとって欠かせない条件のひとつです。近年、海外ではあらゆる場所でWi-Fiに接続できるよう環境整備が進められており、日本へ旅行する外国人旅行客も「ホテル内なら使えるはず」と想定して訪れるケースが多いといえます。

また、日本人にとってもテレワークやワーケーションが普及したことで、ホテルで仕事をするケースが増えています。PCだけでなく、スマートフォンやタブレットで情報検索や動画鑑賞をする利用者も多く、ホテルにおけるWi-Fi設備の重要性は高まっています。
Wi-Fiサービスの有無は、ホテルを選ぶ際の検索条件のひとつにもなるほど重要視されています。Wi-Fi設備がないことで宿泊先の候補に入らない可能性もあるため、集客の観点でも重要です。
さらに、単にWi-Fiが「ある」だけでは不十分です。宿泊施設内のどこからでも快適に利用できる環境を整えることが大切です。Wi-Fiが利用できても、「遅い」「つながらない」「部屋だけ弱い」といった体験が多発すると、ホテルの評判に悪影響をもたらします。
動画視聴やオンライン会議など、通信量の大きい利用が一般化しています。低速・不安定な構成だと、ピーク時に体感品質が一気に落ちることがあります。Wi-Fi設備を導入する際は、最大利用者数と利用シーン(客室・ロビー・会議室など)に応じて、十分な速度が確保できる設計が重要です。
Wi-Fiを整備することで、宿泊体験の向上だけでなく、運営面でも複数のメリットが期待できます。
テレワークやワーケーションの普及により、ホテルは「泊まるだけ」の場所ではなく、「仕事をする場」「仕事と休暇を両立する場」としても選ばれています。快適なWi-Fiがあることで、こうした需要に応えやすくなります。
Wi-Fi接続時にホテルのポータルサイトを表示して案内することで、利用者の満足度向上が期待できます。館内案内、周辺観光情報、朝食や大浴場の混雑目安など、必要な情報をまとめておけば、利用者は便利に感じるでしょう。
情報提供が整理されると、従業員が利用者の問い合わせに追われにくくなり、通常業務に集中しやすくなります。

Wi-Fi導入はメリットが大きい一方で、運用を含めて押さえるべき注意点もあります。
ホテルのWi-Fiはどのようにしたら使えるのか、情報をわかりやすく提示しておく必要があります。利用方法がわからずストレスを与えると、ホテルへの印象も悪くなりかねません。
例えば、読み取るだけでWi-FiのSSIDとパスワードが入力された状態にできるQRコードも簡単に作成できるので、用意しておくと便利です(QRコードが読み取れないPC向けなどに、別途情報提示は必要です)。
Wi-Fiは「使えるのが当たり前」と受け止められやすく、遅いというだけで不満につながることがあります。客室稼働率が高い日や団体利用がある日など、ピーク時に品質が落ちにくい構成にしておくことが重要です。
ホテルのWi-Fiは不特定多数が利用するため、セキュリティ設計が非常に重要です。Wi-Fi設備を利用したことで不正アクセスや情報漏えいなどの被害が発生すれば、それこそ評判を落としかねません。
通信の暗号化は必須です。WEPなどの脆弱な暗号化方式は利用しないことが重要です。可能であればWPA3、少なくともWPA2(AES)など、強固な暗号化方式を利用しましょう。
宿泊者向けネットワークと、フロント端末・予約管理・決済などの業務ネットワークは分離することが基本です。VLAN分割などで経路を分け、相互にアクセスできない構成にします。ゲストWi-Fiで何かが起きても、業務側に影響が波及しにくくなります。
同じWi-Fiに接続している利用者同士が、互いの端末へアクセスできる状態は望ましくありません。クライアント分離(端末間通信の遮断)を有効化し、盗み見や不正アクセスのリスクを下げます。
Wi-Fiは無線通信であるため、宿泊施設外からのタダ乗りにも注意が必要です。電波が外へ漏れること自体は完全に避けにくいですが、利用者だけが接続しやすい導線(フロントでの案内、客室内の掲示、必要に応じた認証)を用意し、運用上の対策も組み合わせましょう。
Wi-Fiは「規格」と「設計」と「運用」で品質が決まります。設備の新旧だけでなく、使い方に合う設計ができているかを確認しましょう。
端末側(スマホ・PC)の対応状況もさまざまです。新しい規格に対応していても、古い端末が混在する環境では最適化が必要になります。客層や利用端末の傾向を踏まえて検討しましょう。
電波強度だけではなく、同時接続台数、電波干渉、ローミング、帯域設計などが体感に直結します。客室が多い施設ほど、設計の差が出やすい点に注意が必要です。
より安全で快適なネットワーク環境を整えましょう。
宿泊客にとってWi-Fiの有無は宿泊先を決める際の基準のひとつとなっています。そのことからも、ホテルにWi-Fi設備は重要な設備といえます。
Wi-Fi設備を導入する際は、単に導入するだけでなく、施設内のどこからでも利用でき、ピーク時でも十分な速度が確保できる環境を構築することが重要です。また、セキュリティ対策も十分に行い、安全で快適なネットワーク環境を整えましょう。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
A. 多くの宿泊者にとってWi-Fiは標準サービスとして期待されやすく、無料提供が一般的です。無料か有料か以上に、「客室で安定して使えるか」「混雑時に遅くならないか」が満足度に影響します。
A. 回線帯域だけでなく、アクセスポイントの台数不足、設置位置、電波干渉、館内LANの帯域不足、同時接続の集中など複数要因が考えられます。ピーク時を前提に設計・見直しすることが重要です。
A. 基本的には分けるべきです。宿泊者向けと、フロント端末・予約管理・決済などの業務ネットワークを分離することで、リスクの波及を抑えられます。
A. 可能ならWPA3、少なくともWPA2(AES)を推奨します。WEPなど古い暗号化方式は脆弱性が指摘されているため避けましょう。
A. 設定次第では起こり得ます。クライアント分離(端末間通信の遮断)を有効化することで、同一Wi-Fi内での盗み見や不正アクセスのリスクを下げられます。
A. 壁材や扉、配管などで電波が減衰したり、アクセスポイントの配置が偏っていたりすることが原因として多いです。「電波が届く」だけでなく「混雑に耐える」台数・配置が必要です。
A. 案内として便利ですが、掲示方法や運用が重要です。第三者が容易に入手できる場所への掲示は避け、必要に応じてパスワードの定期変更や接続の制御も検討しましょう。
A. 暗号化(WPA3/WPA2)、ゲストと業務ネットワークの分離、管理画面の保護、機器のアップデート、クライアント分離が基本です。あわせて障害時の切り分け手順も整備すると運用が安定します。
A. 電波は外へ漏れ得るため完全にゼロにはしにくいですが、利用者向けの案内導線、必要に応じた認証、通信制御などを組み合わせることでリスクを下げられます。
A. 機器のファームウェア更新、管理者アカウントの保護、障害ログの確認、混雑状況の把握(ピーク時の速度・接続数)などが重要です。利用環境の変化に合わせて設計の見直しも行いましょう。