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情報セキュリティポリシーとは? 企業に必要な理由や策定方法など

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いまや情報は高い価値を持つものであり、企業にとって守るべき資産の1つとなっています。IT化が進んだ昨今では、情報資産の多くはデジタル化された状態で保管されており、情報セキュリティ対策が欠かせないものとなりました。そんな情報セキュリティ対策の指針となるものが「情報セキュリティポリシー」です。 

この記事では、情報セキュリティポリシーの概要から必要とされる理由、策定方法などについて解説します。

情報セキュリティポリシーとは

情報セキュリティポリシーとは、企業や組織・団体がもつ情報資産に対して、社内外の脅威から、どのようにして守るのか? どのような対策を講じるのか? といった方針を策定し明文化したものです。この文書は情報セキュリティ対策の指針になるとともに、「何を」「何から」「どのようにして守るのか」が明確化されることで、会社を挙げて適切なセキュリティ対策を実行できるようになります。

この、情報セキュリティポリシーは、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)規格などとも密接に関連しています。ISMSは、国際規格ISO/IEC 27000シリーズなどで規定され、組織の情報セキュリティを総合的に高める際に参考にされます。

情報セキュリティポリシーは、単なる文書ではなく、組織の情報資産を保護するための方向性と戦略を示す重要なツールです。ISMSなどの国際規格とも連携し、組織全体での情報セキュリティの強化に貢献します。今日のDX化が進む時代において、情報セキュリティポリシーの策定と運用は、企業や組織の信頼と成長を支える不可欠な要素と言えるでしょう。

企業に「情報セキュリティポリシー」が必要な理由

企業にとって情報はビジネスを営むために必要な資産ですが、ひとたびセキュリティ事故が発生すると、組織の社会的信用の失墜や個人情報の漏えいによる損害賠償など、多大な影響をもたらす可能性もあります。このようなリスクから組織を守るためにもセキュリティ対策は必須であり、その根幹として情報セキュリティポリシーが必要になります。

サイバー攻撃は年々巧妙化・複雑化し続けており、セキュリティ対策もあわせて高度に対策し続けなければなりません。日々刻々と変化する社会情勢にあって、セキュリティ対策の根幹となる情報セキュリティポリシーは、あらゆる対策を講じる上での方針・指針を明確にします。

また、情報セキュリティはすべての企業で等しく適応できるものとは限りません。企業の規模や事業内容によっても対策すべき内容は異なり、業務形態やシステムの構成などをふまえた上で、それに見合った情報セキュリティポリシーを策定する必要があります。

情報セキュリティポリシーの策定は、直接的にはセキュリティ上の脅威から身を守るためのものですが、副次的な効果として従業員のセキュリティ意識の向上や、取引先などからの信頼性の向上も期待できます。

情報セキュリティポリシーの構成

情報セキュリティポリシーは、おおきく基本方針、対策基準、実施手順の3つの項目から構成されます。

基本方針はセキュリティの全体像を表し、企業の情報セキュリティ方針や目標、適用範囲や対象者、違反者への処罰内容などを定めます。対策基準は基本方針に基づいて具体的なセキュリティ対策のガイドラインやトラブル時の対応方法などを定める基準となります。実施手順は対策基準を具体的な方法・手順としてマニュアル化し、セキュリティ教育なども盛り込む実行部分です。

この3つに分けられた構造が、方針の明確化、効率的な実施、具体的な操作手順の統一を可能にし、情報セキュリティが一貫して運用されることになります。

なお、基本方針と対策基準の部分を情報セキュリティポリシーと呼び、実施手順部分はセキュリティプロシージャと呼ぶ場合もあります。

基本方針

基本方針は、情報セキュリティポリシーの根幹をなすもので、セキュリティの全体像をまとめる役割を果たします。基本方針が事前に明確に定められていないと、有効な対策や実施手順を策定することは困難です。

基本方針の内容は、例えば企業のセキュリティ方針や目標、適用範囲、対象者、違反者への処罰内容などが含まれます。企業のセキュリティに対する姿勢を具現化し、社外公開されることで企業がセキュリティを重視する姿勢をアピールする手段にもなります。

基本方針は、一般には頻繁に変更されるものではありません。企業の長期的なビジョンと整合性を持たせるために、一定の安定性が求められます。そのため、策定にあたっては特に慎重を期す必要があります。 

基本方針がしっかり策定されていることのメリットは、セキュリティ方針の一貫性と明確性が保たれることで、全体のセキュリティ対策の効果が向上することです。もし策定に不備があった場合、例えば重要な項目の抜け漏れが生じていたりすると、方針の曖昧さからセキュリティ対策に隙が生じ、組織全体のセキュリティが損なわれる恐れがあります。

基本方針の定義とその適切な策定は、企業のセキュリティを強固にする重要なステップであるため、戦略的な視点での取り組みが求められます。

対策基準

対策基準は、基本方針で定めたセキュリティの方針を具体的に守るための基準であり、ガイドラインとも呼ばれます。この段階では、企業全体の方針からさらに踏み込み、具体的に何をするかまで定義されます。

業務内容やシステムの形態、部門レベルの事情なども考慮する必要があります。例えば、特定のシステムに対するアクセス制限、トラブル時の応急措置、定期的なセキュリティ監査の実施などが対策基準として盛り込まれます。

対策基準がしっかり策定されることでのメリットは、セキュリティ対策の明確化と実効性の向上です。具体的な方針に基づいて行動できるため、セキュリティの精度が高まります。一方、策定に不備がある場合、重要な基準の抜け漏れや曖昧なガイドラインとなり、セキュリティ対策の偏りや不足が発生する恐れがあります。

対策基準は、情報セキュリティポリシーの運用面での骨格を形成し、企業全体のセキュリティ強化に不可欠な要素となるため、戦略的かつ慎重に進める必要があります。

実施手順

実施手順は、対策基準を具体的な方法・手順として落とし込んだマニュアルです。対策基準がセキュリティ対策の方向性を示すのに対し、実施手順はそれを具体的にどう実行するかの細部まで規定します。これには、日頃のセキュリティ管理のプロセスから、突発的なインシデントへの対応手順、そしてセキュリティ教育の形態や教育の頻度、効果測定方法なども含まれます。

例えば、パスワードの変更周期、セキュリティパッチの適用方法、災害時のデータ復旧プロセスなどです。これらが明確にされることで、社員一人ひとりが具体的に何をすべきかを理解できるようになります。

なお、実施手順は状況の変化に則して頻繁に改訂されることが一般的です。新しい技術の導入や組織体制の変更、外部環境の変化などに応じて、柔軟にアップデートする必要があります。

精度の高い実施手順を策定する利点は、オペレーションの効率化とセキュリティの一貫性の確保です。具体的な手順が明記されているため、迅速かつ正確な対応が可能となります。一方で、策定に不備があると、作業のムラや手順の誤解が生じ、セキュリティ対策の効果が損なわれます。これにより、セキュリティ対策の不均等や、最悪の場合、セキュリティの隙にも繋がるため、十分な注意が必要です。

情報セキュリティポリシーとの関わり

情報セキュリティポリシーは組織全体での取り組みであり、利用者、情報システム部門、経営者にそれぞれの立場での関与を求めます。

利用者

利用者は実際に機密情報をとり扱っており、情報セキュリティポリシー活用の最前線です。策定時には、個人情報の取り扱いに関する制約や特定の業務でのセキュリティニーズなどを具体的に示す役割を求められます。情報セキュリティポリシーが正しく守られた場合、その見返りとして、安全なファイル共有サービスが導入されたり、VPNを通じたリモートワークが可能になったりと、業務の利便性が向上するかもしれません。もちろん、このためには利用者自身がセキュリティ意識を高め、パスワード管理の徹底など具体的な運用に協力することが前提となります。

情報システム部門

情報システム部門は技術的な専門知識を活かしてセキュリティポリシーの策定に寄与します。最新の脅威情報に基づいてファイアウォールやウイルス対策の更新を行うよう提案したり、システムの脆弱性評価を実施したりするなど具体的なアイディアを求められます。この部門がポリシーを適切に運用すれば、新しい技術の導入がスムーズに行えたり、システム障害の早期復旧につながったりします。

経営者

経営者は組織のリーダーとして、情報セキュリティポリシーの方向性を決定します。自社が重視するコンプライアンスの項目やリスク許容度などを明確にし、その方針を全社に広める役割を果たします。ポリシーが正しく運用されると、外部監査に対して適切に対応できるようになり、企業の信頼性が高まります。また、顧客データ漏洩などの危機を未然に防ぐことで、ブランドイメージを保護できます。ポリシーも適切な運用には、経営層が組織全体にセキュリティ文化を根付かせるためのリーダーシップが不可欠です。

情報セキュリティポリシーの効果的な運用は、利用者、情報システム部門、経営者の協力と理解が不可欠です。それぞれの役割と責任を明確にし、連携を強化することで、組織全体としてのセキュリティが向上します。

情報セキュリティポリシーの策定方法

情報セキュリティポリシーの策定は、組織全体の情報資産を保護するための重要なプロセスです。具体的な流れと注意点を以下に示します。

  1. 責任者を明確にして体制を決める
    責任者の選定は、情報セキュリティの成功における鍵となります。責任者は経営層と連携し、全従業員が一体となって対応できる体制を構築する必要があります。この段階での誤りは、後のプロセスに悪影響を及ぼす可能性があるため、十分な配慮が求められます。

  2. 情報資産の棚卸し、環境・リスクの確認
    現状の情報資産の把握とリスク評価は、効果的なセキュリティ対策の基盤を築くために不可欠です。適切なリスクの評価なしに方針を策定することは、無益な対策に資源を割く結果を招くことがあるため、慎重に進める必要があります。

  3. 基本方針、対策基準、実施手順を定める
    前述した3つの要素をしっかりと策定することが重要ですが、これらを連携させ、一貫性を保つことも忘れてはいけません。実施手順は特に頻繁に見直されるべきで、時流に沿った対策が求められます。

  4. 策定後の効果測定、改善を行う
    策定した内容を実際に実施した際に見つかる不具合や新しいリスクへの対応など、策定後も継続的に見直しと改善が必要です。サイバー攻撃の日々の巧妙化・複雑化を鑑みると、このプロセスは終わりのない連続的な活動であると理解することが重要です。

情報セキュリティポリシーの策定は、継続した取組みです。確定した方針でも、それが完璧であるとは限らず、むしろ組織の成長と共に変化するものであると認識することも重要です。ポリシー策定とメンテナンスを適切に行えれば、組織全体のセキュリティレベル向上とリスクの削減につながりますが、不適切な策定は、貴重なリソースの無駄につながる恐れもあります。

この記事のまとめ

情報セキュリティポリシーを策定しましょう。

情報セキュリティポリシーの策定は、企業にとって必要不可欠なものです。情報資産は企業の重要な資産であり、あらゆる脅威にさらされています。これらの脅威から情報資産を守るために、情報セキュリティポリシーは必要です。

この記事では、簡単に情報セキュリティポリシーについて解説しましたが、具体的な策定手順などは国や自治体などからガイドラインとして公開されています。それらを参考に、自社に合った情報セキュリティポリシーを策定してみてはいかがでしょうか。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム