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生産設備や制御システムの現場では、「人が気を付ける」だけでは事故を防ぎきれません。そこで重要になるのが、危険な状態や手順の誤りを仕組みで止めるインターロックです。本記事では、インターロックの考え方を安全設計の視点で整理し、適用分野、設計・実装、運用・管理までを具体例つきで解説します。読み終えるころには、「どこに」「どんな条件で」「どのレベルの対策を入れるべきか」を判断できるようになります。
インターロックとは、危険な状態や矛盾した操作が起きないように、装置・工程の動作を条件付きで許可/禁止する仕組みのことです。典型例は「安全扉が開いている間は機械を動かせない」「圧力が規定値を超えたら自動的に停止する」などで、事故の未然防止と設備・製品の保護を目的に設計されます。
インターロックの主な役割は以下の通りです。
なお、IT分野では「排他制御(ロック)」をインターロックと呼ぶことがありますが、現場の安全設計で言うインターロックは人身・設備の安全を中心に扱います。以降は、この安全設計の文脈で解説します。
インターロックは、状態(センサー値・位置・扉の開閉・圧力・速度など)を監視し、条件が満たされない限り「危険側の動作」を許可しないという考え方で構成されます。基本の流れは次のとおりです。
重要なのは「条件を満たしたら進む」だけでなく、条件が崩れたときにどう安全側へ倒すかまで含めて設計する点です。例えば、扉スイッチが故障した場合でも危険な動作が継続しないように、フェールセーフ(故障時は停止側へ)を前提にすることが一般的です。
インターロックは実装手段だけでなく、目的や適用範囲で整理すると理解しやすくなります。
| 分類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 機械式(メカ) | キーインターロック、機構的ストッパー | 電源不要で成立する一方、柔軟性は低い |
| 電気・回路式 | 安全リレー、接点回路、非常停止回路 | 構成が比較的シンプルで、停止系に強い |
| 制御ロジック(PLC等) | 安全PLC、SIS/SIF、工程間の許可条件 | 条件分岐が多い現場で有効。設計・検証が重要 |
| 手順・運用(手続き) | 作業許可、ロックアウト・タグアウト | 人の運用を前提にしつつ、手順で誤りを抑える |
| IT/ソフトウェア(補助) | 権限による操作制限、排他制御 | 安全系そのものではなく、誤操作抑止の補助として有用 |
現場では、これらを単独で使うよりも、安全機能の重要度に応じて重ねる(冗長化・多層化)ことが多いです。
インターロックを導入するメリットは、単に「事故が減る」だけではありません。安全が担保されることで、結果的に品質や稼働率にも影響します。
一方で、デメリット(または設計上のコスト)もあります。
これらを避けるには、「安全を守るために必要な条件」を最小限・明確にし、検証と運用ルール(解除管理)まで含めて設計することが重要です。
インターロックは便利な言葉ですが、範囲が広く、誤解が入りやすい点に注意が必要です。
「安全上止めるべきもの」と「運用上抑止したいもの」を混同すると、必要な安全機能が不足したり、逆に過剰停止を招いたりします。まずは危険源とリスクを整理し、インターロックが担うべき範囲を決めることが出発点です。
生産設備では、扉・カバー・治具の状態、停止位置、回転数、搬送状態などを監視し、危険な動作の開始を抑止します。例えば、次のような設計が代表的です。
ポイントは「現場の実態(作業手順・保守頻度・想定される近道行為)」まで踏まえ、安全を守りつつ運転が回る設計に落とし込むことです。
化学プラントや製油所などのプロセス系では、圧力・温度・流量・液位などのプロセス変数が条件になります。例えば「圧力が上がりすぎたら供給遮断」「冷却水が不足したら加熱を停止」など、危険状態の進行を止めるためのインターロックが組まれます。
この領域では、単なる運転制御(BPCS)とは別に、独立した安全計装(SIS)として安全機能(SIF)を設計する考え方が一般的です。つまり、止めるべきときに確実に止まることを、設計・検証・運用で担保します。
鉄道信号、原子力、医療、搬送設備など「失敗が重大事故に直結する」領域では、インターロックは安全の中核になります。ここでは、
などを組み合わせ、単一故障で危険側に倒れない設計が求められます。
インターロックは、工場だけでなく身近な設備にも多く使われています。
いずれも共通するのは、「正しい条件のときだけ動かす」「条件が崩れたら安全側に倒す」という設計思想です。
インターロック設計の起点は「何を守るのか(人・設備・環境)」「何が危険源か」「危険がどんな経路で顕在化するか」を整理することです。安全設計では、次の流れで検討すると抜け漏れが減ります。
このプロセスを踏まずに「とりあえず条件を増やす」と、誤停止が増えたり、解除が常態化したりして、結果的に安全が弱くなることがあります。
ハードウェア中心のインターロックは、一般に次の要素で構成されます。
設計手順は次の考え方が実務的です。
特に「断線したらどうなるか」「接点が溶着したらどうなるか」など、故障を前提に安全側へ倒す設計になっているかを確認することが重要です。
PLCや制御ソフトでインターロックを実装する場合は、コードを書く以前に条件の仕様を固定することが欠かせません。現場で揉めやすいのは「どの条件を満たせば解除できるか」「解除後にどんな復帰手順が必要か」です。
また、ITの排他制御(ロック)は、データ整合性の観点で有効ですが、人身安全を担保する安全機能の代替にはならない点を明確にしておく必要があります。
インターロックは「動く」だけでは不十分で、意図どおりに止まり、意図しないときに危険動作を許可しないことを検証する必要があります。
インターロックは「設計・実装したら終わり」ではなく、変更(装置更新、工程変更、ソフト改修)に伴って安全性が変化し得ます。変更管理(MOC)とセットで検証を回すことが、実務では重要になります。
運用で最も重要なのは、インターロックを「現場が守れる形」にすることです。ルールが現実に合わないと、解除・迂回が常態化し、仕組みが形骸化します。
特に「解除できる人」と「解除してよい条件」を曖昧にすると、事故時の原因究明が困難になります。解除は例外であることを、運用設計で担保しましょう。
インターロックの信頼性は、部品の劣化や現場環境(振動、粉塵、油、水分)でも低下します。定期点検では次を押さえると実務的です。
障害対応は、次の型で進めると混乱が減ります。
インターロックは「便利な機能」ではなく、安全要求に直結するため、分野によっては規格・ガイドラインに沿った設計・文書化が求められます。代表例として、機械安全や機能安全の規格が参照されます。
自社の設備・業界がどの枠組みで設計・監査されるのかを確認し、必要な水準(達成レベル)に合わせてインターロックを設計することが重要です。
インターロックは「現場が理解して初めて機能する」側面があります。特に、停止したときの復帰手順や解除条件を誤ると、危険な再起動につながります。
教育のゴールは「仕組みを知る」ではなく、現場が迷わず安全側に判断できる状態にすることです。
インターロックは、危険な状態や矛盾した操作を防ぐために、装置や工程の動作を条件付きで許可/禁止する安全の仕組みです。生産設備、プロセス制御、安全重視の社会インフラなど幅広い領域で活用され、事故の未然防止と設備保護に大きく貢献します。
一方で、インターロックは「条件を増やせば安全になる」という単純な話ではありません。危険源とリスクを整理したうえで、安全機能の定義、実装方式の選定、異常系を含む検証、そして解除管理や保守点検を含めた運用設計まで一貫して行うことが重要です。インターロックを正しく設計・運用することで、現場の安全性と信頼性を実務として高められます。
非常停止は緊急時に人が押して止める仕組みで、インターロックは危険条件の成立を監視して自動的に動作許可や停止を制御する仕組みです。
設計が不適切だと誤停止は増えますが、条件の最小化、センサー配置の適正化、異常系の検証、解除管理の整備で誤停止は抑えられます。
人身安全を担う場合は、故障時の安全側動作や独立性が求められるため、原則としてハードウェアや安全系の制御と組み合わせて設計します。
必要な場合はありますが例外扱いにし、権限・手順・記録・期限を必ずセットにして、解除が常態化しない運用にします。
設計者だけで決めず、現場運転・保守・安全担当を含めて危険源と手順を共有し、必要条件と復帰手順まで合意して決めるのが確実です。
危険源とリスクの洗い出しです。何を守るのかを明確にしてから、安全機能として必要なインターロックを定義します。
故障を前提に安全側へ倒れるように設計します。断線や短絡などの故障モードを想定し、危険動作を許可しない構成にします。
現場で理解できず解除が増えたり、誤停止が増えて形骸化したりします。条件の目的を明確にし、シンプルさを優先して設計します。
センサー・配線・停止系の確実性、誤停止の兆候、復帰手順の妥当性を確認します。点検結果は記録し、変更時に再評価できるようにします。
発生条件と入力状態を追跡でき、原因切り分けや誤停止低減、教育、再発防止に役立ちます。