UnsplashのSudharshan TKが撮影した写真
JSON(JavaScript Object Notation)は、システム間でデータをやり取りするときに広く使われるテキスト形式です。見た目がシンプルで扱いやすい一方で、書き方の細かなルール(クォート、カンマ、型)を外すとすぐにパースエラーになり、運用では「想定外の型」「バリデーション不足」「サイズ肥大化」などの事故も起きやすくなります。本記事では、JSONの基本から、現場でつまずきやすいポイント、設計・検証・セキュリティまでを整理し、JSONを安心して扱うための判断軸を作ります。
JSON(JavaScript Object Notation)とは、データの記述や交換に用いられる軽量なテキストベースのフォーマットです。JavaScriptのオブジェクト表記に近い形で表現できますが、現在は言語に依存しない汎用フォーマットとして、APIの入出力や設定情報の受け渡しなどで広く利用されています。
JSONが支持される理由は、構造が「オブジェクト(キーと値)」と「配列(値の並び)」に整理されており、人間が読み取りやすく、コンピュータもパースしやすい点にあります。ただし、読みやすいからといって曖昧に書けるわけではありません。JSONは仕様上、書式ルールが厳密で、少しのミスが処理停止につながります。
JSONには、実務上メリットになりやすい特徴があります。
一方で「軽量で高速」と言い切るのは危険です。データ量が増えれば当然重くなりますし、ネストが深いJSONは扱いづらく、パース時間やメモリ負荷も無視できません。JSONは万能ではなく、用途と規模に合わせた設計が必要です。
JSONは主に次の要素で構成されます。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| オブジェクト | キーと値のペアを波括弧 {} で囲む(例:{"name":"Alice"}) |
| 配列 | 複数の値を角括弧 [] で囲む(例:[1,2,3]) |
| 値 | 文字列、数値、真偽値(true/false)、null、オブジェクト、配列 |
特に初心者がつまずきやすいルールは次のとおりです。
{"1": "a"} のようにクォートする)たとえば、見た目は正しそうでも末尾カンマだけでエラーになります。
{
"name": "Alice",
}このようなミスを減らすには、手書きを最小限にし、フォーマッタや検証ツールを前提に運用するのが安全です。
JSONとXMLはどちらもデータ交換に使われますが、得意分野が異なります。
| JSON | XML |
|---|---|
| データ構造(オブジェクト・配列)を表現しやすい | 文書構造(タグ階層)を表現しやすい |
| 比較的コンパクトでAPI向き | 名前空間や属性など表現力が高い |
| 多くのWeb APIで標準的 | 既存の業務標準や文書交換で利用されることがある |
近年はWeb関連でJSONが主流になりやすい一方、既存システム連携や文書中心の要件ではXMLが選ばれることもあります。「どちらが優れているか」ではなく、用途に合う形式を選ぶのが現実的です。
JSONはWebサービス(API)で最もよく使われます。クライアントとサーバー間でデータをやり取りする際、JSONに統一すると言語や実装の違いを越えて同じ構造で受け渡しできるためです。特にREST APIでは、リクエスト/レスポンスのボディがJSONであるケースが一般的です。
ただし、運用で問題になりやすいのは「仕様のあいまいさ」です。たとえば、同じ項目がある時は数値、ある時は文字列、といった揺れがあると、受け手は例外処理だらけになります。APIでは、後述するスキーマやバリデーションを前提に、型と必須項目を揃えるのが重要です。
モバイルアプリでも、バックエンドとの通信でJSONが頻繁に使われます。通信帯域や処理資源が限られる場面では、不要な項目を返さない設計や、ページングなどの工夫が実務上の効きどころになります。
また、ローカルで設定情報を保持する目的でJSONを使うこともあります。ただし、後から項目が増える可能性があるなら、バージョン管理やマイグレーションの方針を持っておかないと、古いデータが読めずに不具合になるケースがあります。
JSONは設定情報の受け渡しにも利用されます。階層構造を扱いやすいため、環境ごとの設定(機能のON/OFF、接続先、閾値など)をまとめるのに向いています。
ただし、JSONは仕様上コメントを書けません。設定ファイルに説明を残したい場合は、次のような代替を検討します。
「コメントが書けるからJSONを設定ファイルに使う」と考えると、仕様とのズレで混乱しやすいので注意が必要です。
ドキュメント指向データベースでは、JSONに近い形でデータを扱えることが多く、アプリケーションとデータの構造が揃いやすいという利点があります。一方、リレーショナルデータベースでもJSON型をサポートする例があり、構造化データと半構造化データを併用する設計が可能です。
ただし「JSONをDBに入れれば自由」という発想は危険です。検索・索引・整合性の設計を後回しにすると、集計や運用監視が難しくなります。JSONで柔軟性を得るなら、どの項目を正規化し、どの項目をJSONに寄せるかを先に決めておくべきです。
JSONは多くの言語で標準サポートされています。代表例は次のとおりです。
JSON.parse / JSON.stringify)json)json)json_encode() / json_decode()System.Text.Json(JsonSerializer など)ライブラリ選定で見落としやすいのは「例外時の挙動」と「型の扱い」です。たとえば、数値の精度(小数・巨大整数)や、nullの取り扱い、未知フィールドが来たときの処理方針は、言語や設定によって差が出ます。サンプルが動くだけで判断せず、運用時の入力ゆらぎも想定して設計しましょう。
JSONの品質を確保するには、構文チェックだけでなく、「期待した構造か」を検証することが重要です。次のような用途でツールを使い分けると効果的です。
外部からJSONを受け取る場合は、検証を前提にしないと事故が起きます。「パースできたから正しい」とは限らないためです。
JSONはそのままだと読みづらいことがあります。ツリー表示や差分比較に強いツールを使うと、デバッグや調査が速くなります。特に、ネストが深いJSONや配列が大きいJSONでは、可視化が作業効率に直結します。
エディタを選ぶ際は、シンタックスハイライトだけでなく、次の機能があると運用が楽になります。
人が書くJSONは、どうしてもミスが混入します。編集ツール側でミスを早期に見つけられる環境を整えるのが現実的です。
JSON設計で重要なのは「受け手が迷わない構造」です。次の観点を押さえると、後から壊れにくくなります。
たとえば、日付を表す場合、「2025-12-30」のような文字列にするのか、UNIX時間の数値にするのかで、受け手の実装が変わります。形式を先に決めて固定し、仕様として明記するのが安全です。
現場で多いトラブルは、入力の「揺れ」と「欠落」です。これを減らすには、JSONを受け取る側で次をセットにする必要があります。
仕様が曖昧なまま運用が始まると、「とりあえず動かす」例外処理が積み上がり、将来の改修が難しくなります。最初から完全なスキーマを作れなくても、必須項目と型だけでも固定しておくと、破綻しにくくなります。
JSONはただのテキストですが、攻撃者にとっては入口になり得ます。実務で押さえたいポイントは次のとおりです。
「JSONだから安全」ということはありません。入力値として扱う以上、他のフォーム入力と同じように、検証と制限を前提にしましょう。
JSONが重くなる原因は、たいてい「返しすぎ」「詰め込みすぎ」です。パフォーマンスを落とさずに使うには、次の工夫が効きます。
「JSONが遅い」のではなく、設計が重いことが原因のケースが多いです。まずはデータ量と返却範囲を見直しましょう。
JSON処理のエラーは、ユーザー体験や運用負荷に直結します。次の方針を持つと、調査と復旧がしやすくなります。
特にAPIでは、エラーメッセージが曖昧だと、利用者も運用者も困ります。「どの項目が」「なぜ」不正なのかが分かる形にしつつ、内部情報を出しすぎないバランスが重要です。
JSONは、システム間のデータ交換で広く使われる軽量なテキストフォーマットです。構造がシンプルで扱いやすい反面、書式ルールは厳密で、型の揺れやバリデーション不足があると運用で破綻しやすくなります。JSONを安全に活用するには、設計(構造と型の統一)、検証(スキーマや制約)、運用(サイズ・ログ・エラー方針)をセットで考えることが重要です。基本を押さえた上で、用途に合った形でJSONを使い分けましょう。
システム間でデータをやり取りするために使われる、軽量なテキスト形式のデータフォーマットです。
書けません。コメント付きの形式はJSONとは別物として扱う必要があります。
良くありません。JSONの文字列はダブルクォートが必須です。
許されません。オブジェクトや配列の最後にカンマがあるとパースエラーになります。
言えません。構造や型が期待どおりかを検証しないと運用上の不具合や事故が起きます。
受け手に例外処理が増え、障害や改修コストが上がり、仕様変更にも弱くなります。
必須項目の有無、型、文字数、列挙値などが仕様どおりかを確認します。
返却項目の削減、ページング、キャッシュ、通信圧縮などでデータ量と負荷を減らします。
サイズ制限と構造・型の検証を行い、エラー応答で内部情報を出しすぎないようにします。
コメントが書けないため、説明は別資料で管理し、形式と運用ルールを先に決めることが重要です。