LACP(Link Aggregation Control Protocol)は、複数の物理リンク(複数のポートやケーブル)を束ね、1本の論理リンク(リンクアグリゲーション)として扱うための制御プロトコルです。これにより、片系断が発生しても通信を継続しやすい構成と、複数リンクを使った帯域の有効活用を両立できます。
LACPは、リンクアグリゲーションを構成する両端機器(スイッチやサーバーNICなど)が、どのポート同士を束ねるか、束ねた状態が正常かを相互に確認しながら合意を取り、必要に応じてメンバーリンクの追加や切り離し(障害発生時など)を自動で行うために使われます。
1本のケーブルや1ポートだけに依存する構成では、そのリンクに障害が発生した時点で通信が途切れます。LACPを使ったリンクアグリゲーションでは、複数リンクのうち一部が利用できなくなっても、残りのリンクで通信を継続しやすくなります。あわせて、複数リンクを束ねることで、同時通信を受け止められる帯域を増やすことも可能です。
ここでは、物理ポートと論理ポートの関係、そして通信(トラフィック)がどのように流れるかを整理します。
物理ポートは、機器に実在するLANポートを指します。LACPを使うと、複数の物理ポートを1つの論理インターフェース(LAG:Link Aggregation Group)としてまとめられます。OSや上位のネットワーク機能からは、LAGは「1本のリンク」として扱われるため、ルーティングやVLAN設定なども論理インターフェース側で管理しやすくなります。
リンクアグリゲーションでは、通信を複数の物理リンクへ分散します。ただし、分散は常に均等になるとは限りません。一般的には、送信元や宛先のMACアドレス、IPアドレス、TCP/UDPポート番号などを使ったハッシュ方式(フロー単位)で、使用するリンクが決まります。
そのため、単一の大きな通信(1フロー)の速度は、基本的に1本の物理リンクの速度が上限になります。一方で、複数端末や複数セッションが同時に通信する環境では、全体として複数リンクを活用でき、混雑が起きにくくなります。
メンバーリンクの一部に障害が発生した場合、LACPはそのリンクを束から外し、残りのリンクで通信を継続します。その結果、利用できる帯域は減少しますが、通信断そのものは避けやすくなります(実際の挙動は設計や設定、上位構成にも左右されます)。
LACPが広く採用されている理由には、標準化された仕組みであることと、運用面で扱いやすい点があります。
LACPは、リンクアグリゲーションの標準仕様の一部として定義されています。歴史的にはIEEE 802.3adとして知られており、現在は仕様整理によりIEEE 802.1AXとして扱われるのが一般的です。標準規格に基づく仕組みであるため、異なるベンダー機器間でも構成を組みやすい点が特徴です。ただし、実装差や推奨設定の違いがあるため、事前検証は欠かせません。
LACPの価値は、単純に通信を速くすることではありません。リンク断に備えた冗長性を確保しつつ、並行する通信が多い環境では複数リンクを活用して混雑を抑えます。結果として、安定した通信を前提に、実効的なスループットを高める技術だと整理できます。
ここでは、動作モード(Active/Passive)と、設定前に押さえておきたいポイントを整理します。具体的なコマンドやGUI操作は機器ベンダーごとに異なるため、本記事では考え方に絞って説明します。
LACPには、主に次の2つの動作モードがあります。
一般に、片側がActiveであれば構成が成立しやすく、両側がPassiveの場合は成立しない、または不安定になりがちです。運用では「両側Active」または「片側Active・片側Passive」が選ばれることが多くなります。
設定前に確認しておきたい代表的なポイントは次の通りです。
基本的な設定手順のイメージは次の通りです。
LAGは「複数の物理リンクを束ねて1本の論理リンクとして扱う仕組み」そのものを指します。一方、LACPは、そのリンクアグリゲーションを両端機器でネゴシエーションし、状態を確認・管理するための制御プロトコルです。
必ず倍になるわけではありません。一般的にトラフィックはフロー単位で分散されるため、単一フローの最大速度は1本の物理リンク相当が上限になります。複数フローが同時に流れる環境で効果が出やすい仕組みです。
原則として、少なくとも片側をActiveに設定します。両側がPassiveの場合、LACPが成立しない、または成立しにくい構成になりがちです。運用では「両側Active」または「片側Active・片側Passive」が選ばれることが一般的です。
機器や設定によってはリンクがUpに見える場合もありますが、意図した形で束ねられず、不安定な動作になることがあります。基本的には、両端で同じ方式(LACP同士、または静的同士)にそろえるのが安全です。
メンバーリンクの一部断であれば、残りのリンクに切り替わり、通信断を避けられるケースが多くあります。ただし、実際の挙動は上位の構成(STPやL3冗長)や障害箇所、設計内容によって変わります。
送信元や宛先のMACアドレス、IPアドレス、TCP/UDPポート番号などを基にしたハッシュ計算で、使用するメンバーリンクが選ばれるのが一般的です。均等に分散されるとは限らず、偏りが生じることもあります。
リンク速度やデュプレックス、VLANやトランク設定、MTUなど、機器が求める条件をそろえる必要があります。条件が一致していない場合、LACPが成立しない、またはメンバーから外される原因になります。
機器の状態表示で、LAGのUp/Down状態、メンバーリンクの参加状況、LACPネゴシエーションの状態(同期・タイムアウトなど)を確認します。あわせてエラーカウンタやログを確認すると切り分けがしやすくなります。
LACPは標準規格に基づく方式として広く使われています。PAgPは特定ベンダー由来の方式として知られており、互換性や採用状況は環境によって異なるため、事前確認が必要です。
LACPが成立しているか、メンバーリンクがすべてUpになっているか、エラーが増加していないか、分散方式による偏りが起きていないかを確認します。単一フローが物理リンクの上限に達しているケースもよく見られます。