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MESとは? わかりやすく10分で解説

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目次

製造業の現場では、設備の稼働状況、作業実績、不良や手直し、材料の消費量など、判断に必要な情報が日々発生します。しかし実際には、紙やExcel、現場端末、個別システムに情報が分散し、「今どうなっているか」「なぜ遅れているか」を即答できない状態になりがちです。こうした“現場の実行”をデータでつなぎ、リアルタイムに把握・統制しやすくする仕組みがMES(製造実行システム)です。本記事では、MESの基本、ERPとの違い、主要機能、導入形態、導入効果、そして導入時の注意点までを整理し、自社に必要かどうかを判断できる材料を提供します。

はじめに

MESというテクノロジーがどういうものか、その重要性、製造業への影響などを解説していきます。

MESとは

MESとはManufacturing Execution Systemの略で、日本語では「製造実行システム」と訳されます。製造現場(工場の実行レイヤー)で起きる作業を、計画と実行の間でつなぐためのシステムで、生産指示の配布、作業実績の収集、設備や工程の進捗把握、品質データの記録などを扱います。

ポイントは「現場で、今起きていること」を扱う点です。たとえば、どのラインが何を製造中か、予定に対してどれだけ遅れているか、どの工程で不良が増えているかといった状態を、紙や口頭連絡ではなくデータとして集め、状況に応じて指示や判断につなげます。結果として、生産のムダや手戻りを減らし、製品品質の安定化や納期遵守の確度を高める効果が期待されます。

また、MESは製造業のデジタル化を推進する中核の一つとしても位置付けられます。リアルタイムに近い粒度で現場状況を可視化できると、遅延や異常の兆候を早期に捉え、段取り替えや要員配置などの手当てを迅速に行いやすくなります。

業界への影響

MESの活用が進む製造業では、生産効率の向上コスト削減に加え、「説明できる製造(トレーサビリティ)」の強化が進みやすくなります。

たとえば、実績データの収集と分析により、生産ラインのボトルネック(停止が多い設備、仕掛品が滞留する工程、段取り替えの偏りなど)を特定し、改善施策を打ちやすくなります。改善を勘や経験だけに頼らず、データで“効いた・効かなかった”を確認できる点は、継続改善(カイゼン)との相性が良い部分です。

また、MESによる生産プロセスの可視化は、意思決定のスピードにも影響します。計画変更が必要になったときに、現場の状況を把握できていれば「どこまで作っているか」「何が足りないか」「どこを止めると影響が大きいか」を見誤りにくく、変化への対応力(アジリティ)を高める助けになります。

MESとERPの違い

MESと同じく製造業で重要なシステムとしてERPがあります。ERPはEnterprise Resource Planningの略で、「企業資源計画」と訳されます。販売・購買・在庫・会計など、全社の基幹業務を横断して一元管理し、企業全体の最適化を目指す仕組みです。

一方、MESは製造現場の“実行”に近い領域を扱います。たとえば、同じ「生産」に関する情報でも、ERPが主に扱うのは計画や結果の集計(何をいつまでに何個作るか、実績がどうだったか)であるのに対し、MESは工程・設備・作業単位での進捗や品質、停止理由など、より細かい粒度で現場状況を追います。

そのため、MESはERPを置き換えるものではなく、連携して価値を出すケースが一般的です。ERPの生産計画や受注情報をMESに渡し、MESから実績・不良・消費量などをERPへ返すことで、計画と実行のギャップを縮め、全社としての判断(納期回答、在庫最適化、原価把握など)も行いやすくなります。

MESの主な目的

MESの目的を一言で言えば、製造現場を“見える化”し、統制し、改善につなげることです。結果として、品質・納期・コストといった製造業の主要KPIを改善し、競争力の維持・向上を支えます。

具体的には、MESを使うことで、現場の問題点(停止が多い、手待ちが発生している、不良が偏っている、段取り替えが計画通りでない等)をデータとして把握しやすくなります。問題が見えれば、原因の仮説を立て、対策を打ち、効果を検証するという改善サイクルが回しやすくなります。

また、生産ラインの稼働時間、生産量、不良率、OEE(設備総合効率)などの指標を、現場の実態に近い形で捉えられる点も重要です。ただし、KPIは計測方法や定義がぶれると比較できなくなるため、MES導入時は「何をどう測るか」を合わせて設計する必要があります。

MESの特性

データに基づいた意思決定

MESの中核となる特性の一つは、現場データに基づいた意思決定を支える「データ駆動」です。生産の各段階で、実績、設備状態、作業開始・終了、検査結果などが収集され、状況の把握と判断の材料になります。

ここで重要なのは、単にデータがあることではなく、必要な人が、必要なタイミングで、判断に足る粒度で見られることです。たとえば、遅れが出たときに“どの工程で詰まっているのか”が分かれば、応援要員の投入、段取り替え順の変更、仕掛の引き当てなど、具体的な打ち手に落とし込みやすくなります。

また、現場の状態をシステムで共有できると、口頭連絡や手書き記録に依存する場面が減り、情報の抜け漏れや転記ミスといったヒューマンエラーの低減にもつながります。

生産効率の改善

MESの二つ目の特性は、生産効率の改善に直接つながりやすい点です。現場の停止理由(段取り替え、故障、材料待ち、品質トラブルなど)や、工程ごとの滞留、作業時間のばらつきが見えると、改善対象を絞り込めます。

さらに、スケジューリングやリソース配分の精度を上げるための材料として、実績データを活用できます。計画と実績の差が分かれば、標準工数の見直し、段取り替え時間の短縮、設備保全の強化といった改善に結びつけやすくなります。

ただし、効率化は現場の負担増と表裏一体になりやすいテーマです。入力作業が増えて現場が疲弊するとデータ品質が落ち、結果として意思決定もぶれます。効率化を狙うほど、データ取得の自動化(設備連携)や入力設計(現場負担の最小化)が重要になります。

生産ラインの一貫性確保

MESの三つ目の特性は、生産ラインの一貫性(統制)を保ちやすくする点です。製造業では、工程条件の逸脱、指示の解釈違い、手順の省略などが品質問題につながります。MESにより、作業指示・手順・検査項目を標準化し、実行結果を記録できると、工程のばらつきを抑えやすくなります。

また、製造プロセス、スケジューリング、生産指示、品質検査などの情報を連携させて見える化できるため、「どのロットが、どの設備で、どの条件で、誰が作業したか」を追いやすくなります。これは不具合発生時の影響範囲特定や、監査・説明責任の観点でも重要です。

なお、統制を強くしすぎると例外対応がしにくくなることがあります。現場の実態として例外が避けられない場合は、例外ルール(誰が承認し、どう記録するか)まで設計することが現実的です。

製品の品質向上

MESは品質管理と相性が良いシステムです。検査結果、不良内容、手直し履歴、工程条件などを紐づけて記録できれば、問題の早期発見と再発防止に取り組みやすくなります。

たとえば、不良が特定工程に偏る、特定設備・特定条件で増える、特定時間帯で増えるといった傾向が見えれば、対策の当たりを付けやすくなります。改善結果もデータで確認できるため、“改善したつもり”で終わりにくい点もメリットです。

ただし、品質データは現場の入力・検査の運用と直結します。検査基準や判定ルールが曖昧だと、データを集めても比較できません。MES導入時は、品質項目の定義と運用(誰が、いつ、何を、どの基準で記録するか)を合わせて整える必要があります。

MESの機能と役割

MESは「現場の実行」を支えるために、複数の機能を組み合わせて提供します。ここでは代表的な機能を、現場で何に効くかという観点で整理します。

生産資源の配分と監視

MESを活用すると、設備、作業者、治具、原材料などの生産資源を状況に応じて配分しやすくなります。設備の稼働・停止、作業の着手・完了、材料の引き当て状況などを把握できれば、遅れが出そうな場所に先回りして手当てしやすくなるためです。

また、過去の実績を蓄積し、類似品の工数や停止傾向を参照できるようになると、計画の精度も上げやすくなります。結果として、頻繁な中断や段取り替えの混乱を減らし、ラインの安定運用に寄与します。

作業スケジューリング

作業スケジューリングもMESの重要な機能の一つです。製造工程、納期、在庫、設備制約(同時稼働不可、メンテ時間など)を踏まえ、現場の状況に合わせたスケジュール調整を支援します。

特に、急なオーダー変更や設備トラブルが起きたときに、現場の状況が見えていれば「何を優先するか」「どこまで影響が出るか」を判断しやすくなります。短納期対応を求められる現場ほど、計画と実行のズレを早く検知できる価値が大きくなります。

データ収集と分析

MESは、生産ラインからのデータを収集し、分析の材料にします。データの取り方は、設備からの自動取得(稼働信号、カウンタ、アラーム等)と、人による入力(停止理由、手直し理由、作業コメント等)を組み合わせるのが一般的です。

分析により、停止の主要因、工程間の滞留、作業時間のばらつき、不良の偏りといった“改善の当たり”を付けやすくなります。問題発生時も、状況把握が速くなるため、初動対応の精度を上げられます。

製品品質管理

品質管理もMESの代表的な役割です。工程内検査、最終検査、不良分類、手直し履歴などを記録し、ロットやシリアルに紐づけられると、品質問題の原因追跡や影響範囲の特定がしやすくなります。

また、規格外が出たときにアラートを出す、一定条件で出荷判定を止めるなど、品質ゲートとして機能させる運用も可能です。これにより、リコールやクレームといった大きな損失を抑える方向に寄与します。

MESの種類とそれぞれの特徴

MESには主にオンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型の3つの形態があります。どれが正解というより、現場要件と運用体制に合わせて選ぶことが重要です。

オンプレミス型MES

オンプレミス型MESは、自社でサーバーやネットワークを保有し、システムを運用する形態です。工場ネットワークを外部と分離したい、独自要件が多くカスタマイズが必要、といった場合に選ばれやすい傾向があります。

一方で、初期投資が大きくなりやすく、運用・保守の人的リソースも必要です。更新や拡張のたびに計画と検証が必要になり、スピード感よりも統制と安定性を重視する運用になりやすい点は理解しておく必要があります。

クラウド型MES

クラウド型MESは、ベンダーが管理する基盤上で提供される形態です。初期費用を抑えやすく、導入までのリードタイムを短縮しやすい点がメリットです。拠点が複数ある場合も、共通基盤として展開しやすくなります。

反面、ネットワーク品質に左右されやすい点、データの保管場所やアクセス制御をどう設計するかといったセキュリティ上の検討が必要です。工場は常に安定した回線が確保できるとは限らないため、オフライン時の振る舞い(停止するのか、ローカルに溜めるのか等)も要件として明確にすることが重要です。

ハイブリッド型MES

ハイブリッド型MESは、オンプレミスとクラウドを組み合わせる形態です。たとえば、設備に近い領域(リアルタイム制御に近い部分)はオンプレミスで持ち、集計・分析や拠点横断の可視化はクラウドで行う、といった設計が考えられます。

この方式は、セキュリティや遅延の課題に配慮しつつ、クラウドの拡張性を取り入れられる可能性があります。ただし、構成が複雑になりやすく、運用設計・監視・障害対応の難易度が上がる点には注意が必要です。

各タイプのMESを検討する際のポイント

選定では、機能の多寡よりも「自社の現場要件に合うか」を重視することが重要です。たとえば、リアルタイム性がどれほど必要か、設備連携の範囲、品質トレーサビリティの粒度、拠点展開の前提、外部委託先とのデータ共有の有無などで、適切な形態は変わります。

また、導入後の維持・更新まで含めて検討する必要があります。MESは現場の中核になりやすいため、サポート体制、バージョンアップ方針、拡張のしやすさ、監視・運用の責任分界(自社とベンダーの役割)も評価ポイントになります。

MES導入のメリットと効果

MES導入には多くのメリットがあり、製造業の競争力を高める要素として注目されています。ここでは代表的な効果を、何がどう改善するのかという観点で整理します。

製品品質の向上とその効果

MESの代表的な効果の一つが製品品質の向上です。品質データをリアルタイムに近い形で収集・分析できると、異常の兆候を早く捉え、工程内での手当てをしやすくなります。

これにより、リコールやクレームの発生リスクを下げ、企業の信用やブランドイメージの毀損を抑える方向に寄与します。品質が安定すれば、検査や手直しの負担も減らしやすく、結果としてコストにも良い影響が出やすくなります。

製造コストの削減とその効果

MESは、製造コストの削減にもつながります。停止やロスの原因が見えると、改善の優先順位を付けやすく、投資や対策を“効くところ”に集中しやすくなるためです。

具体的には、稼働状況、廃棄割合、手直し工数、設備保全の実績などを一元的に把握し、生産計画とのギャップを確認できます。これにより、ムダな段取り替え、過剰在庫、再加工といったコスト要因を抑え、利益率の改善を狙いやすくなります。

納期の短縮とその効果

MES導入で狙える効果として、納期遵守の精度向上と、状況によっては納期短縮も挙げられます。現場情報を早く把握できれば、遅れの兆候に対して先に手当てでき、結果として滞留時間を減らしやすくなります。

また、予定通りに納入できる確度が上がると、顧客との信頼関係を維持しやすくなり、契約継続や追加受注にも好影響が出やすくなります。短サイクルで製品を投入する業態では、市場投入のスピードを上げる観点でも価値が出ます。

部門間連携の容易化とその効果

MESは部門間連携を進めやすくします。ERPなどの上位システムと連携することで、現場の実績が全社の計画や在庫、原価の情報とつながり、意思決定がしやすくなります。

部門間の壁が高いと、現場が困っていることが経営に届かず、経営判断が現場の実態からずれることがあります。MESが現場の状況をデータとして共有できると、事実ベースで会話しやすくなり、意思決定の速度と精度を上げる助けになります。

MES導入の際のポイント

MES導入にあたっては、事前検討が重要です。特に、ベンダー選定、導入ステップの理解、リスク対策、運用設計の4点は効果を左右しやすいポイントです。

まず押さえたいのは、MESは「入れれば終わり」のシステムではない点です。現場で使われて初めてデータが揃い、改善に使える状態になります。そのため、導入時点から運用(入力負担、例外処理、教育、定着)までを設計しておくことが欠かせません。

ベンダー選定のポイント

ベンダー選定では、MESの専門知識、他システムとの連携経験導入後のサポートが重要です。MESは設備・ネットワーク・運用ルールと密接に関わるため、製造現場の事情を理解した支援があるかどうかで、定着の難易度が変わります。

また、「大手だから安心」とは限りません。自社の業態(離散/プロセス、受注生産/見込み生産、少量多品種/大量生産など)に合うか、設備連携の方法が現場に合うか、拠点展開の方針に沿うか、といった適合性を優先して評価する必要があります。

導入のためのステップと注意点

MES導入のステップは、一般に「現状整理(As-Is)」「要件定義(To-Be)」「導入計画」「設計・実装」「テスト」「教育・定着」「運用改善」といった流れで進みます。特に要件定義では、現場のKPIや意思決定に必要な情報が何かを明確にし、データ項目・定義・取得方法を決めることが重要です。

注意点として、最初から全範囲を完璧に狙うと、現場負担が増えすぎて定着しにくくなることがあります。対象ラインや工程を絞って効果を確認し、段階的に拡張する進め方は現実的な選択肢です。

MES導入の際のリスクと対策

MES導入時の代表的なリスクには、コスト超過、期間超過、品質(要件未達)、現場の抵抗、データ品質の低下などがあります。これらを抑えるには、事前に「何が起きると失敗するか」を洗い出し、対策を計画に組み込むことが必要です。

たとえば、現場の抵抗は“使いにくさ”や“入力負担”から生まれやすい傾向があります。入力が必要な項目は「本当に意思決定に必要か」を精査し、可能な範囲で自動取得を検討することが効果的です。さらに、導入前後で業務がどう変わるかを丁寧に共有し、教育とフォローを用意することが定着に直結します。

また、ネットワークや設備連携が前提になる場合は、現場環境の制約(電波、配線、古い設備、プロトコル差異)を早い段階で確認し、PoC(小規模検証)でリスクを潰しておくと手戻りを減らせます。

継続的な運用・管理

MESは導入後の運用で価値が積み上がるシステムです。定期的にデータの欠損や入力ばらつきを点検し、ダッシュボードの見せ方やKPI定義を見直すことで、意思決定の精度を上げやすくなります。

また、現場は常に変化します。設備更新、品種追加、工程変更、組織変更などがあれば、MES側の設定や運用ルールも更新が必要です。運用責任者と改善の窓口を明確にし、改善要望を吸い上げて反映するサイクルを作ることが、長期的に効果を出すポイントになります。

Q.MESとは何ですか

MESは製造現場の実行を支え、進捗・実績・品質などを管理する製造実行システムです。

Q.MESとERPの違いは何ですか

ERPは全社の基幹業務を管理し、MESは製造現場の工程・作業単位の実行を管理します。

Q.MESを導入すると何が改善しますか

現場の見える化が進み、停止や不良の原因特定がしやすくなり、品質・納期・コストの改善に役立ちます。

Q.MESが扱う代表的なデータは何ですか

進捗、作業実績、設備状態、停止理由、検査結果、不良内容、手直し履歴などです。

Q.クラウド型MESの注意点は何ですか

ネットワーク品質の影響と、データ保管・アクセス制御の設計を事前に確認する必要があります。

Q.オンプレミス型MESが向くのはどんな場合ですか

高い統制や独自要件が必要で、自社で運用・保守体制を確保できる場合に向きます。

Q.MES導入が定着しない主な原因は何ですか

入力負担が大きい設計や、データ定義の不統一により、現場で使われなくなることが主因です。

Q.MES導入はどこから始めるのが現実的ですか

対象ラインや工程を絞って効果を確認し、段階的に拡張する進め方が現実的です。

Q.MESと設備データ連携は必須ですか

必須ではありませんが、自動取得を増やすほどデータ品質が上がり、現場負担を下げやすくなります。

Q.MES導入後に必要な運用は何ですか

データ欠損や定義のばらつきを点検し、KPIや画面を見直して改善サイクルを回す運用が必要です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム