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MISIとは? 10分でわかりやすく解説

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企業の経営活動を支えるうえで、情報システムとIT基盤は「あるだけ」では十分ではありません。データの整合性が取れていない、部門ごとに数字が違う、必要な情報が必要なタイミングで出てこない、といった状態では、業務の非効率化や意思決定の遅延につながります。本記事では、MISIの基本概念から導入の進め方までを整理し、「自社で何を整えるべきか」「どこから着手すべきか」を判断できる状態を目指します。

MISIとは何か

MISIとは、Management Information System and Infrastructureの略称で、経営情報システム(MIS)と、それを支えるインフラストラクチャーを一体として捉える考え方です。経営戦略の立案、意思決定、業務遂行を支援するために「情報が流れる仕組み」と「その仕組みを安定運用する土台」を合わせて設計・運用します。

MISIの定義

MISIは、以下の2つの要素から構成されます。

  1. Management Information System(MIS):経営に必要な情報を収集・加工・可視化・提供する仕組み
  2. Infrastructure:サーバー、ネットワーク、クラウド、端末、認証、セキュリティ、運用基盤など

MISIのポイントは、業務アプリケーションだけでなく、ネットワーク・セキュリティ・運用体制まで含めて「経営に必要な情報を、継続的に使える状態」をつくることです。例えば、レポートを作れる仕組みがあっても、データ更新が止まる、権限管理が曖昧で監査に耐えない、障害時に復旧できない、といった状態では経営判断を支えられません。

MISIが扱う範囲

MISIは「特定の製品名」ではなく、経営活動を支えるための設計対象の範囲を指します。一般的には次のような要素が含まれます。

  • 基幹系・業務系システム(会計、販売、購買、人事、在庫、生産など)
  • データ統合・分析基盤(DWH、データレイク、BI、ダッシュボードなど)
  • インフラ(オンプレミス、クラウド、仮想化、ネットワーク、エンドポイント)
  • セキュリティ(認証・権限、暗号化、ログ、監視、バックアップ、脆弱性対応)
  • 運用(障害対応、変更管理、構成管理、SLA、ベンダー管理、教育)

自社の課題が「情報が見えない」のか「システムが止まる」のか「運用が回らない」のかで、優先すべき設計ポイントは変わります。MISIは、この優先順位を整理するための枠組みとしても有効です。

MISIの歴史

MISIの概念は、1960年代に普及し始めた経営情報システム(MIS)に源流があります。当時は大型コンピューターによる集中処理が中心でしたが、1970年代以降のPC普及で分散処理が広がり、1990年代以降はインターネットにより企業内外の情報共有が現実的になりました。現在はクラウド、データ分析、AI、自動化の進展により、システムとインフラを「変化に合わせて継続的に最適化する」ことが求められる局面に入っています。

MISIの目的

MISIの主な目的は、次のとおりです。

  1. 経営戦略の立案と意思決定を、データと仕組みで支える
  2. 業務の効率化と生産性向上を、全体最適で実現する
  3. 情報の共有・再利用を進め、属人化を減らす
  4. 変化に強い基盤をつくり、競争優位につなげる

「データがある」だけでは不十分で、正確性、鮮度、参照のしやすさ、権限管理、運用継続性が揃ってはじめて意思決定に使える情報になります。MISIは、その条件を満たす仕組みづくりを目的とします。

MISIの特徴

特徴説明
統合性部門ごとに分断された情報やシステムを連携し、同じ指標を同じ定義で扱える状態を目指す。
柔軟性組織変更、事業拡大、拠点追加、制度変更などに合わせて、構成や運用を見直せる。
拡張性データ活用や自動化など、段階的に機能を追加しやすい設計を重視する。
セキュリティ情報資産を守るために、認証・権限・ログ・監視・復旧を含めて設計する。

MISIの導入と運用には、IT部門だけでなく業務部門・経営層の関与が不可欠です。経営戦略とIT戦略の整合性、データ定義の合意、運用ルールの徹底が揃わないと、統合が逆に混乱を招くこともあります。

MISIの基本概念

情報システムの統合

企業には、会計、販売、購買、人事、在庫、生産など、業務ごとに最適化されたシステムが存在します。これらを連携させることで、同じ顧客・商品・拠点・期間に対して一貫したデータを参照できるようになり、二重入力や突合せ作業を減らせます。

統合で起きやすい課題

  • 部門ごとに同じ言葉でも定義が違う(例:売上、粗利、受注、キャンセルの扱い)
  • マスタが揃っていない(顧客名や商品コードが統一されていない)
  • 連携方式が場当たり的で保守できない(CSV手作業が残る、仕様が属人化する)

統合の成否は、技術だけでなく「データ定義の合意」と「運用で守れるルール設計」に左右されます。

経営戦略との連携

情報システムは業務を回す道具である一方、経営戦略を実現するための手段でもあります。MISIを設計する際は、経営が重視する指標(KPI)や意思決定の頻度、必要な粒度(拠点別、製品別、顧客別など)を明確にし、それを支えるデータ収集・可視化・運用の形を定めます。

連携を具体化する視点

  • 意思決定の単位:日次で見るのか、週次・月次で十分か
  • 必要なスピード:速報値が必要か、確定値重視か
  • 見たい切り口:製品別、チャネル別、地域別、顧客セグメント別など
  • 現場への落とし込み:KPIを現場業務の行動に結び付けられるか

ここが曖昧なまま導入を始めると、ツールは整っても「結局、何を見ればよいのか」が定まらず、活用が進みにくくなります。

意思決定支援

MISIは、経営層から現場までの意思決定を支援します。重要なのは、データを大量に並べることではなく、判断に必要な情報を、誤解の少ない形で提示することです。例えば、次のような情報が典型例です。

  • 売上・粗利・利益の推移と要因(増減の理由が説明できる粒度)
  • 顧客の動向(解約兆候、リピート率、問い合わせの増減)
  • 生産・在庫の状況(欠品リスク、滞留在庫、納期遅延の兆候)
  • 投資判断に必要な情報(費用対効果、稼働率、回収見込み)

判断に使える情報にするための条件

  • 指標の定義が明確で、部門間で共通理解がある
  • 更新タイミングと責任者が決まっている
  • 誤差や欠損がある場合に、扱い方が決まっている

この条件が揃うと、会議のための資料作成が減り、議論が「数字合わせ」から「打ち手」に寄りやすくなります。

組織全体の最適化

部門単位の最適化だけでは、全体最適は実現しません。MISIでは、部門間の情報連携や業務プロセスのつながりを前提に、企業全体のパフォーマンスを高めることを目指します。

  • 業務プロセスの標準化と例外処理の整理
  • 部門間での情報の受け渡しを減らし、データを一次情報として共有
  • 全社的な資源配分(人員、設備、予算)の根拠を揃える
  • 意思決定の前提を揃え、判断のスピードと再現性を高める

組織全体の最適化には、ルール作りと定着が欠かせません。システム導入と並行して、権限管理、変更管理、教育、運用手順といった「守れる仕組み」を整えることが現実的です。

MISIの導入効果

MISIの導入効果は、ツールや構成だけで決まるものではなく、設計と運用の成熟度で変わります。ここでは代表的な効果を、起きやすい改善点と合わせて整理します。

業務の効率化

MISIにより、データの二重入力や転記、突合せ、資料作成などの間接作業が減りやすくなります。

  • データ入力・集計の自動化による作業時間の短縮
  • 同じ情報を複数部門で持つことによる不整合の削減
  • 情報共有の迅速化による手戻りの減少
  • ペーパーレス化やワークフロー化による承認の高速化

効率化で生まれた時間を、分析や顧客対応、改善活動に回せるようになると、導入効果が見えやすくなります。

コスト削減

MISIのコスト効果は「単純にIT費を下げる」だけではありません。運用・保守・人手のかかり方を含めて、コスト構造を改善する観点が重要です。

  • 手作業や属人対応の削減による運用コストの圧縮
  • 重複したシステムや契約の整理による無駄の削減
  • 在庫・購買・生産の最適化による間接コストの改善
  • 障害や停止の影響を抑える設計による機会損失の低減

短期的には投資が先行しやすいため、どの指標で効果を測るか(例:作業時間、欠品率、リードタイム、監査対応工数)を事前に決めておくと評価がしやすくなります。

意思決定の迅速化

MISIが整うと、会議の直前にデータをかき集める負担が減り、意思決定が「確認」から「判断」に移りやすくなります。

  • 市場動向や販売状況に基づく施策の判断
  • 財務データに基づく投資・コスト配分の判断
  • 顧客データに基づく施策の優先順位付け
  • 生産・在庫データに基づく供給計画の見直し

ただし、スピードを上げるほど誤差や暫定値の扱いが重要になります。速報値と確定値を区別し、意思決定の種類によって使い分ける運用が現実的です。

競争力の強化

MISIは、データを根拠に改善を回し続けるための土台になります。継続的に改善が回ると、結果として競争力に影響します。

  • 顧客ニーズの変化に対する反応速度の向上
  • 品質・納期・サービスレベルの安定化
  • データ分析に基づく新サービスや業務改革の推進
  • サプライチェーンの可視化によるリスク対応力の向上

競争力への寄与を明確にするには、「どの改善が、どの顧客価値に結び付くのか」を言語化しておくことが重要です。

MISIの導入手順

MISIの導入は、システム導入というより「経営に必要な情報を、継続的に使える状態にするための整備」です。段階ごとに目的と成果物を明確にして進めると、途中でのブレが減ります。

現状分析

まず、現状の業務プロセス、既存システム、データの流れ、運用体制を棚卸しします。特に、次の観点を具体的に洗い出します。

  • どの情報が、どのシステムにあり、誰が更新しているか
  • 部門間で数字が合わない指標は何か
  • 手作業が残っている工程はどこか
  • 障害・停止・遅延が起きたときの影響範囲はどこか

現状分析の目的は「理想像を語ること」ではなく、導入で解くべき課題を特定し、優先順位を付けることです。

要件定義

現状の課題を踏まえ、MISIで実現したい状態を要件として定義します。要件定義では、次の点を明確にし、関係者で合意します。

  • MISIで支える意思決定の対象(例:投資、需給、価格、採用、拠点戦略など)
  • 必要な指標と定義(KPIの算出方法、データ粒度、更新頻度)
  • 必要な機能と性能(可用性、応答、処理量、バックアップ、監視)
  • セキュリティとコンプライアンス(権限、監査ログ、保存期間、データ保護)
  • 将来的な拡張や連携(追加拠点、M&A、外部サービス連携など)

要件定義が曖昧なまま進むと、導入後に「欲しかったものと違う」というギャップが生まれやすくなります。早い段階で判断軸を揃えることが重要です。

システム設計

要件に基づき、アーキテクチャ、データ連携、インフラ構成、運用設計を行います。設計は技術要素だけでなく、運用で守れる形にすることが要点です。

  • システム構成(クラウド/オンプレ、冗長化、バックアップ、DRの方針)
  • データ設計(マスタ統合、データ品質、更新タイミング、履歴管理)
  • ネットワーク設計(帯域、遅延、拠点間接続、リモートアクセス)
  • セキュリティ設計(認証、権限、暗号化、ログ、監視、脆弱性対応)
  • 運用設計(変更管理、障害対応、権限申請、ベンダー連携、教育)

「設計どおりに運用できるか」を確認するために、運用手順や責任分界点(誰が何をやるか)を文書化しておくと、導入後の混乱を抑えやすくなります。

導入と運用

設計に基づき、段階的に導入を進めます。大規模な切り替えはリスクが高いため、優先度の高い領域から導入し、効果測定と改善を回しながら範囲を広げる進め方が現実的です。

  • 導入スケジュールの管理と影響範囲の把握
  • データ移行(品質確認、移行リハーサル、切り戻し手順)
  • ユーザートレーニング(操作だけでなく運用ルールの定着)
  • 監視と保守(ログ監視、アラート設計、定期点検、更新手順)
  • 継続的改善(KPIの見直し、例外処理の整理、運用負荷の低減)

MISIは導入して終わりではなく、経営環境の変化に合わせて改善し続けることが前提です。定期的に「目的に対して情報が足りているか」「運用が形骸化していないか」を点検する仕組みを持つと安定します。

まとめ

MISIは、経営情報システム(MIS)とインフラストラクチャーを一体として捉え、経営判断と業務遂行を継続的に支えるための基盤です。適切に設計・運用できれば、業務効率の改善、コスト構造の見直し、意思決定の迅速化、競争力強化につながります。導入にあたっては、現状分析から始め、要件を合意し、運用まで含めた設計を行い、段階的に導入と改善を回すことが成功の近道になります。

Q.MISIとは何ですか?

経営情報システムとITインフラを一体で設計・運用する考え方です。

Q.MISIとMISの違いは何ですか?

MISに加えてネットワークやセキュリティなど基盤全体まで含めます。

Q.MISI導入で最初にやるべきことは何ですか?

現状の業務・データ・運用を棚卸しして課題の優先順位を付けることです。

Q.MISIはどの部門が主導すべきですか?

IT部門に加え、経営層と業務部門が目的と指標を合意して進めるべきです。

Q.MISI導入の効果はどのように測ればよいですか?

作業時間、突合せ工数、欠品率、リードタイムなど事前に指標を決めて測ります。

Q.MISI導入で失敗しやすい原因は何ですか?

目的とデータ定義が曖昧なままツール導入を進めることです。

Q.クラウドはMISIに必須ですか?

必須ではありませんが、柔軟性や拡張性を高める選択肢になります。

Q.MISIでセキュリティはどこまで扱いますか?

認証・権限・ログ・監視・復旧を含め、経営情報を守る設計まで扱います。

Q.MISIは一度導入すれば終わりですか?

終わりではなく、運用しながら継続的に見直して改善していきます。

Q.MISI導入の進め方で現実的な方法は何ですか?

優先度の高い領域から段階的に導入し、効果測定と改善を回す方法です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム