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MRPとは? わかりやすく10分で解説

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目次

製造業では「作りたい数」だけでなく、「そのために必要な部品が、いつ、いくつ揃っているか」が生産の成否を左右します。MRP(資材所要量計画)は、製品構成(BOM)と在庫、リードタイムをもとに、必要な部品を時間軸で逆算し、調達・製造の手配を整えるための考え方です。

本記事では、MRPの基本、計算の考え方、MRP IIやERPとの関係、導入時につまずきやすい点までを整理し、読了後に「自社にMRPが効く領域」と「導入で押さえるべき前提条件」を判断できる状態を目指します。

MRPとは?

MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)は、製造業において製品の生産計画を起点に、必要な材料・部品を「いつ」「どれだけ」手配すべきかを計算し、在庫と欠品の両方を抑えながら生産を回すための計画手法です。一般に、BOM(部品表)、在庫データ、基準生産計画(MPS)を用いて、部品の所要量を時間軸で算出します。

MRPは「部品の必要量を出すだけ」の仕組みではありません。発注から入荷までのリードタイム、ロットサイズ、発注点、安全在庫などの条件を踏まえ、現場が実行できる形(発注提案・製造指示の提案)に落とし込むことが目的です。

MRPの歴史

MRPは、1960年代にコンピュータの業務利用が進む中で、複雑化する製品構成と部品点数に対応するために発展してきました。MRPの原理を体系化した代表的な文献として、ジョセフ・オーリッキー(Joseph Orlicky)の著作(1975年刊)があります。

MRPからMRP II、そしてERPへ

MRPは資材(材料・部品)を中心に計画しますが、やがて設備能力(Capacity)、人員、コストなど「製造資源」全体を統合的に扱う考え方へ拡張され、MRP II(Manufacturing Resource Planning)へ発展しました。さらに企業全体の業務(販売・購買・会計・人事など)を統合するERP(Enterprise Resource Planning)へと広がっていきます。

重要なのは、MRP/MRP II/ERPが「別物」ではなく、扱う範囲(統合の広さ)が段階的に拡張した系譜として理解すると整理しやすい点です。MRPは今も、ERPの中核ロジックの一部として実装されていることが一般的です。

MRPの基本的な概念

MRPの考え方は、突き詰めると次の一文に集約できます。

「必要な部品を、必要なタイミングで、必要な量だけ確保する」

ただし現実の製造では「必要な量」は一意に決まりません。発注単位、歩留まり、不良率、工程の制約、調達のばらつきなどが絡むため、MRPは前提条件(マスタ)を置いて計算し、計画を回しながら前提を更新する運用が前提になります。

MRPが扱う代表的な入力データ

  • 基準生産計画(MPS):いつ、何を、どれだけ作るか(需要・受注を反映した上位計画)
  • BOM(部品表):製品を構成する部品・数量・階層構造
  • 在庫記録:現在庫、引当済み、入荷予定、製造途中品などの状態
  • リードタイム:発注〜入荷、製造開始〜完成までに要する時間
  • 補助条件:ロットサイズ、安全在庫、歩留まり、代替品、優先順位など

BOM(部品表)が“計算の骨格”になる

BOMは単なる一覧ではなく、「最終製品 → サブアセンブリ → 部品」という階層構造を持つ点が重要です。MRPはMPSを起点に、このBOMを上位から下位へ展開(いわゆる“BOM展開”)し、下位部品の所要量を算出します。

この構造が曖昧だと、計算結果がそれらしく見えても、現場の手配と一致しません。MRP導入で最初に苦労しやすいのは、実はシステム設定よりもBOMと品目マスタの整備です。

MRPにおける計算手法

MRPの計算は「未来の需要(MPS)に対して、部品が足りるか」を時間軸でチェックし、足りない分をいつ補うかを決めるプロセスです。一般に次の流れで整理できます。

MRPの基本ステップ

  1. 総所要量(Gross Requirements)の算出:MPSをBOMで展開し、必要な部品量を出す
  2. 手持ち+入手予定を反映:現在庫、発注残、製造中、引当を差し引きする
  3. 正味所要量(Net Requirements)の算出:不足分を確定する
  4. 手配提案の生成:不足分を「いつ発注/いつ製造開始」すべきか、リードタイムで逆算する
  5. 例外メッセージの提示:納期に間に合わない、在庫が過剰、計画変更が必要などを可視化する

「時間で逆算する」ことがMRPの肝

MRPの結果は、単なる数量表ではなく「時間で区切られた計画」です。たとえば、ある部品が第4週に必要で、調達リードタイムが2週間なら、第2週までに発注していないと間に合いません。ここに、発注単位や安全在庫、輸送遅延のリスクを織り込んでいくのが運用上の工夫になります。

需要予測との関係

MRPは予測や受注に基づくMPSを入力にするため、需要が大きく変動する業態では、計画の更新頻度や凍結期間(計画を変えない期間)の設計が重要です。需要予測の精度向上は有効ですが、現実には「100%当てる」よりも、外れたときに素早く計画を更新できる運用が効いてきます。

MRPの利点と制限

MRPには明確な利点がある一方、前提条件が整っていないと期待した効果が出にくい側面もあります。導入判断では、両方を同じ重さで押さえることが重要です。

在庫管理の最適化と生産計画の改善

MRPの代表的な効果は、欠品や過剰在庫の抑制です。必要時点を基準に手配を組むため、勘や経験に依存した「多めに持つ」判断を減らし、在庫を合理的に説明できる状態に近づきます。

また、生産計画の面では、部品の手配遅れによるライン停止を減らし、納期遵守率を高めやすくなります。ただし、これはMRPが魔法のように解決するのではなく、手配の前倒しが必要な箇所を早期に見える化することで、現場が動けるようになる効果だと捉えると現実的です。

組織全体の統合と情報共有

MRPが機能し始めると、調達・生産・在庫の情報が共通言語になります。たとえば「欠品の理由」が属人的な説明ではなく、「どの品目が、いつ、どの計画変更で不足したか」という形で追えるようになります。部門間の議論が“感覚”から“データ”に寄りやすくなる点は、導入価値として見落としにくいポイントです。

MRPの制限と対策

  • マスタ精度に強く依存する:BOM、在庫、リードタイムがずれると計算結果もずれるため、マスタ管理の責任分界と更新ルールが必要です。
  • 能力制約(設備・人員)を自動で解決しない:MRPは資材中心の計画であり、能力制約を考慮するにはMRP II、APS、スケジューラなどとの役割分担が現実的です。
  • 変動が激しいと計画が揺れやすい:凍結期間の設定、計画更新のリズム、例外対応のフロー(誰が何を決めるか)を先に設計します。
  • “計算できる”と“回せる”は別:導入初期は、全品目を一気に回すより、影響が大きい製品群やボトルネック品目から段階適用する方が失敗しにくくなります。

MRPの今後

近年、IoTやAIの文脈でMRPが再び語られることがあります。ただし、これは「MRPがAIで置き換わる」というより、MRPが依存するデータの鮮度と精度が上がり、計画の更新が現実に追いつきやすくなる方向性として捉えると、誤解が少なくなります。

IoT(Internet of Things)とビッグデータの影響

製造設備や倉庫からリアルタイムで実績データが取れるようになると、在庫差異や工程遅延の把握が早くなります。その結果、MRPの前提(リードタイム、歩留まり、仕掛量など)を現実に近づけやすくなり、計画の精度と信頼性が上がります。

AI(Artificial Intelligence)との結びつき

AIが得意とするのは、需要の変動パターンや外部要因の関係を見つけ、予測を改善することです。需要予測の精度が上がれば、MPSのブレが抑えられ、結果としてMRPの手配変更も減りやすくなります。

一方で、AIを使っても、BOMが不整備だったり、在庫実績が合っていなかったりすると、結局は誤った計画になります。AI活用は、MRPの代替というよりMRP運用を安定させるための補助輪として考える方が現場に馴染みやすいでしょう。

MRP導入のポイントとは?

MRPは導入して終わりではなく、日々の運用で価値が決まります。導入の成功確率を上げるには、「システム選定」より先に、運用の前提と責任範囲を固めることが効果的です。

MRP導入の準備段階

  • 対象範囲を決める:全社一斉ではなく、製品群・工場・品目カテゴリなど、段階導入の単位を切ります。
  • マスタ整備の優先順位を付ける:BOM、品目、リードタイム、ロット、安全在庫などを、影響の大きい品目から整えます。
  • 在庫精度を把握する:棚卸差異が大きい状態でMRPを回すと、計画への不信が生まれやすいため、現状の差異要因を洗い出します。
  • 例外時の意思決定を設計する:欠品しそうなときに、誰が代替・前倒し・分納を決めるのかを決めておきます。

MRP導入の留意点

MRPは、製造現場のすべての問題を自動で解決するものではありません。突発停止、供給制約、設計変更、歩留まり悪化などは起きます。そのときに重要なのは、MRPの結果を「正解」として押し付けるのではなく、例外を早く見つけ、対処の選択肢を並べる道具として使う姿勢です。

事例(イメージ)

たとえば部品点数が多い組立型製造では、欠品が1点あるだけで最終製品が出荷できません。MRPを段階導入し、ボトルネック部品や納期影響が大きい部品から手配提案を運用に乗せることで、欠品起因の遅延が減り、結果として在庫を「増やす」のではなく「狙って持つ」方向に改善していく、という進め方が現実的です。

まとめ

MRPは、製造業の計画と手配を「経験」から「再現可能な手順」へ寄せるための基盤です。BOM・在庫・リードタイムなどの前提データをもとに、必要な部品を時間軸で算出し、欠品と過剰在庫の両方を抑えながら生産を安定させます。

一方で、MRPはデータ品質と運用設計に依存します。導入効果を出すには、マスタ整備、在庫精度、例外対応フロー、段階導入の設計が欠かせません。AIやIoTはMRPを置き換えるのではなく、MRPの前提データを現実に近づけ、更新を速めることで、運用を支える技術として位置づけると理解しやすいでしょう。

Q.MRPとERPの違いは何ですか?

MRPは資材・部品の所要量計画が中心で、ERPは販売・会計・人事など企業全体の業務まで統合する仕組みです。

Q.MRP IIとは何が追加された考え方ですか?

MRP IIは資材に加え、設備能力や人員など製造資源全体を計画に取り込む考え方です。

Q.MRPの計算に必須のデータは何ですか?

基準生産計画(MPS)、部品表(BOM)、在庫記録、リードタイムが必須です。

Q.BOMが不正確だと何が起きますか?

部品所要量の計算が崩れ、欠品や過剰手配が発生しやすくなります。

Q.MRPは需要予測が外れると使えませんか?

使えますが、計画更新の頻度と凍結期間、例外対応の運用設計が重要になります。

Q.MRPは「プッシュ型」と言われるのはなぜですか?

予測や計画(MPS)を起点に部品を手配するため、需要の実績に引かれる「プル型」と区別されます。

Q.MRP導入で失敗しやすい原因は何ですか?

BOMや在庫、リードタイムなどのマスタ精度不足と、例外時の意思決定フロー未整備が主因です。

Q.少人数の工場でもMRPは有効ですか?

部品点数が多く欠品影響が大きい場合は有効です。対象品目を絞った段階導入が現実的です。

Q.IoTはMRPにどう役立ちますか?

実績データの取得が早くなり、在庫差異や遅延を反映して計画前提を更新しやすくなります。

Q.AIはMRPを置き換えますか?

置き換えるより、需要予測や異常検知でMRP運用を安定させる補助として機能します。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム