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マルチホーミングとは? わかりやすく10分で解説

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目次

インターネット接続は「回線が切れる」「経路が不安定になる」「特定宛先だけ遅い」といった要因で、業務影響が出ることがあります。こうしたリスクを下げる代表的な設計がマルチホーミングです。この記事では、マルチホーミングの定義から代表的な構成(BGPを使う構成/使わない構成)、リンクアグリゲーションとの違い、セキュリティ面の考え方、導入時の注意点までを整理し、要件に合う選び方を解説します。

マルチホーミングとは

マルチホーミングとは、ホスト(端末)またはネットワーク(拠点・組織)が、複数のネットワークに接続される状態を指します。実務では「複数のISP(回線事業者)に接続し、冗長化や経路最適化を狙う構成」を意味することが多く、拠点ルーターやデータセンターの回線設計で用いられます。

重要なのは、単に回線を2本引くことではなく、障害時にどう切り替えるか(フェールオーバー)平常時にどう使い分けるか(負荷分散・経路制御)、そして運用としてどう監視し、障害を検知し、復旧させるかまで含めて設計する点です。

マルチホーミングの機能と特徴

マルチホーミングで得られる代表的な効果は、次の3点です。

  • 冗長化:回線・設備・事業者のどこかが故障しても、別経路で通信を継続しやすい
  • 経路の選択:宛先や品質(遅延、損失、混雑)に応じて、より適した経路を使える場合がある
  • 事業者リスクの分散:ISP側障害や広域障害の影響を受けにくくする(設計次第)

ただし「自動で最適なISPを常に選ぶ」かどうかは構成によります。たとえばBGPで経路制御を行う構成では、障害検知や経路切替をプロトコルで制御できます。

マルチホーミングが必要となる場面

  • 停止が許容されにくい業務(受発注、決済、顧客向けWeb、コールセンター基盤など)
  • データセンター・クラウド接続で、回線断や品質劣化がSLAに直結する場合
  • 拠点間VPNやリモートアクセスで、回線依存の単一障害点を避けたい場合
  • 特定宛先(特定クラウド・特定CDN等)だけ遅い/不安定になりやすく、経路の選択余地を持たせたい場合

マルチホーミングのメリット

  • 可用性の向上:回線断・設備故障・ISP障害時の業務停止リスクを下げる
  • 性能面の改善余地:宛先別・時間帯別に経路を使い分け、混雑を避けられる場合がある
  • 運用の選択肢:切替方針(自動/手動)、平常時の使い方(片系待機/両系活用)を要件に合わせやすい

マルチホーミングの仕組み

マルチホーミングは「複数の接続を持つ」状態そのものを指すため、実現方法は一つではありません。大きく分けると、BGPを使う構成と、BGPを使わない構成(デュアルWANなど)があります。

代表的な構成パターン

BGPでマルチホーミングする

自社ネットワークを2社以上のISPへ接続し、BGPで自社のアドレス(一般にプロバイダ非依存のアドレス空間)をアナウンスして経路を制御する方式です。障害時はBGPが経路変更を行い、到達性を維持します。

一方で、BGP構成には設計上の注意(経路フィルタ、意図しないトランジット化の回避、運用監視など)が不可欠です。

BGPを使わずにデュアルWANとして構成する

拠点のルーター/ファイアウォールの「デュアルWAN機能」で、回線切替や一部の負荷分散を行う方式です。一般に、対外的に自社プレフィックスをアナウンスするわけではないため、経路制御の自由度はBGPより限定的ですが、設計・運用は比較的シンプルにできます。

用途としては「拠点のインターネット接続を止めたくない」「VPNの片系断を避けたい」など、可用性目的の冗長化に向くケースが多いです。

インターネット回線の冗長化と二重化

似た言葉に「冗長化」「二重化」がありますが、意味が混ざりやすい点です。

  • 冗長化:片方が故障しても、もう片方で継続できるようにする考え方(回線・機器・電源などの単一障害点を減らす)
  • 二重化:冗長化の一形態として「2系統にする」ことを指す場合が多い(アクティブ/スタンバイ、またはアクティブ/アクティブなど)

「全く同じ情報を常に並列送信して損失を防ぐ」といった方式は一般的なインターネット回線設計の中心概念ではありません。通常は、障害時に経路を切り替える、平常時にセッションや宛先単位で分散する、といった挙動を設計します。

プロバイダとの契約の考え方

マルチホーミング目的が事業者リスクの分散であれば、異なるISP(できれば異なる設備・収容・ルート)を選ぶことが基本です。一方、同一事業者で回線を複数本契約する構成は、回線断には強くても、事業者側の広域障害には弱い可能性があります。どのリスクを避けたいかで選び方が変わります。

回線の安定性とマルチホーミング

回線の安定性は、ISPだけでなく、拠点内の機器冗長(ルーター二重化、電源二重化)、収容回線の物理経路、監視と障害対応体制などの積み上げで決まります。回線を増やすだけでは単一障害点が残るため、「どこが落ちたら止まるか」を先に棚卸しすることが重要です。

マルチホーミングとリンクアグリゲーションの比較

マルチホーミングと混同されやすいのがリンクアグリゲーションです。リンクアグリゲーション(LAG)は、複数の物理リンクを束ねて1本の論理リンクとして扱い、帯域の拡大や冗長性を得る技術です。LACPはその制御プロトコルの一つで、IEEE 802.3adとして標準化されています。

リンクアグリゲーション

リンクアグリゲーションは「同一の対向機器間」で複数リンクを束ねることが中心です。スイッチ間、サーバーとスイッチ間、NASとスイッチ間など、主にLANやデータセンター内の設計で使われます。

マルチホーミングとリンクアグリゲーションの主な違い

  • スコープ:マルチホーミングはネットワークが複数ネットワークへ接続される状態、リンクアグリゲーションは同一対向間の複数リンク束ね
  • 目的:マルチホーミングは回線・事業者・経路の冗長化や経路制御、リンクアグリゲーションは帯域拡大とリンク冗長
  • 代表技術:マルチホーミングはBGPなどのルーティング制御が関係しやすい、リンクアグリゲーションはLACPなど

利用シーンの考え方

「インターネット接続の停止を避けたい」「ISP障害リスクを分散したい」ならマルチホーミングが主題です。一方「スイッチ間の帯域が足りない」「サーバー接続を太くしたい」ならリンクアグリゲーションが主題になります。目的が違うため、要件から逆算して選びます。

マルチホーミングのセキュリティ上の利点

マルチホーミングは可用性の文脈で語られやすい一方、セキュリティ運用にも影響します。ただし「回線が複数ある=自動的に安全」という話ではなく、設計と運用で効果が変わる点に注意が必要です。

システム障害への対応

障害時に通信を継続できることは、セキュリティ面でも重要です。たとえば、監視・ログ転送・EDR更新・認証基盤連携などが止まると、検知や対応が遅れます。回線冗長は、こうした運用停止リスクを下げます。

ネットワークの安定性と耐障害性の向上

広域障害や経路不安定が起きても、別経路を使える設計は耐障害性を高めます。ただし、拠点内の単一障害点(電源、CPE、収容装置)が残っていると効果が限定されるため、回線以外の冗長化も合わせて検討します。

データ保護と通信の前提

マルチホーミング自体が暗号化を提供するわけではありません。盗聴・改ざん対策は、TLSやIPsecなどの暗号化、ゼロトラスト設計、端末防御などで担保します。そのうえで、回線切替時も同じセキュリティポリシーが維持されるよう、FW/UTMポリシー、NAT、VPN終端、DNSの挙動などを整理しておくことが大切です。

DDoS対策との関係

マルチホーミングは、DDoS対策の「土台」になり得ますが、回線が複数あるだけで自動的に防げるわけではありません。実際のDDoS対策は、スクラビングサービス、BGPでのブラックホール/リダイレクト、CDN/WAF、ISP側の対策連携などと組み合わせて設計します(どこまでを自社でやり、どこまでをサービスに委ねるかが焦点です)。

マルチホーミング導入時の注意点

導入効果を出すには、回線費用だけでなく、設計・運用コストを含めて見積もる必要があります。

コスト面の考慮

  • 回線費用(2回線目の月額、工事費)
  • 機器費用(デュアルWAN対応ルーター、FW、冗長構成なら台数増)
  • 運用費用(監視、障害対応、回線事業者との調整)
  • BGP構成の場合は、設計・運用負荷が上がりやすい

プロバイダ選びのポイント

  • 障害時の連絡・復旧体制(SLA、サポート窓口、エスカレーション)
  • 物理経路の分離(同ルート・同収容を避けられるか)
  • 遅延・損失の傾向(主要クラウドや主要拠点宛てで実測する)
  • DDoSや障害時の対策オプション(提供範囲、切替手順)

運用・管理の設計

「切替できる」ことよりも、切替したことに気づける切替後も業務が成立する戻す手順が安全であることが重要です。

  • 監視:回線死活だけでなく、DNS、主要SaaS到達、VPN疎通なども監視対象にする
  • 切替ポリシー:自動切替の条件(損失率、遅延、断)と、戻し条件(ヒステリシス)を定義する
  • 通信の対称性:外向き/内向きの経路が変わったとき、NATやセッションがどうなるかを事前に検証する
  • 定期訓練:計画停止でフェールオーバーテストを実施し、手順を更新する

適切なバックアップ環境の構築

回線を増やしても、ルーター1台・電源1系統のままだと単一障害点が残ります。要件に応じて、ルーター冗長(HA)、電源二重化、収容経路の分離など、回線以外も含めたバックアップ設計を行います。

マルチホーミングの展望

通信の前提が多様化するほど、単一回線に依存しない設計の価値は上がります。ただし「何でもマルチホーミングにすべき」ではなく、目的(可用性・性能・リスク分散)に対して最小の複雑性で実現する姿勢が現実的です。

IoT時代の役割

IoTの普及で、拠点・工場・店舗などの通信断がビジネス停止に直結しやすくなります。回線冗長に加えて、LTE/5Gバックアップ、閉域網、SD-WANなどを組み合わせ、現場に合わせた「止めない通信」を設計する流れが強まっています。

5Gとマルチホーミング

5Gはバックアップ回線や可搬回線として有用ですが、無線特性(電波・混雑・設置環境)によって品質が変動します。固定回線と5Gを併用する場合は、切替条件や業務優先度(どの通信をどちらに流すか)を明確にして効果を出します。

発展とビジネスの可能性

リモートワーク、SaaS依存、クラウド移行が進むほど、回線品質はユーザー体験に直結します。マルチホーミングは、回線というインフラを「止めない」「揺らさない」方向へ寄せる一手段として、今後も利用が続くでしょう。

クラウド活用との関係

クラウドは「どこからでも使える」一方、ネットワークが不安定だと価値が出ません。マルチホーミングはクラウド活用の前提を強くしますが、あわせて、DNS冗長、IdP冗長、監視、障害時の業務継続手順(代替手段)まで含め、全体として設計することがポイントです。

Q.マルチホーミングとは何ですか?

ホストまたはネットワークが複数のネットワークへ接続される状態で、実務では複数ISP回線で冗長化や経路制御を行う構成を指します。

Q.回線を2本引けば必ずマルチホーミングになりますか?

回線を2本持つだけでは不十分で、障害時の切替方法や平常時の使い方まで設計してはじめて効果が出ます。

Q.BGPを使うマルチホーミングは何が違いますか?

BGPで経路情報を制御できるため、到達性や経路の切替をプロトコルで扱えますが、設計と運用の難易度は上がります。

Q.デュアルWANとマルチホーミングは同じですか?

近い目的で使われますが、デュアルWANは機器機能で切替・分散する構成が中心で、BGPによる対外的な経路制御とは前提が異なります。

Q.リンクアグリゲーションとの違いは何ですか?

リンクアグリゲーションは同一対向間の複数リンク束ねで帯域拡大とリンク冗長を狙い、マルチホーミングは複数ネットワーク接続で回線・経路の冗長化を狙います。

Q.マルチホーミングで通信は必ず速くなりますか?

必ず速くなるわけではなく、宛先や分散方式、回線品質次第です。可用性目的で導入し、性能は副次効果として評価するのが現実的です。

Q.DDoSに強くなりますか?

回線が複数あるだけで自動防御にはなりませんが、スクラビングやBGP制御などと組み合わせる土台になり得ます。

Q.導入時に一番見落としやすい注意点は何ですか?

回線以外の単一障害点と、切替後に業務が成立するかの検証です。監視・切替条件・戻し条件まで運用設計が必要です。

Q.同一ISPで2回線にしても意味はありますか?

回線断や局所障害には強くなりますが、ISP側の広域障害リスクは分散しにくいため、避けたいリスクに応じて選びます。

Q.運用で最低限やるべきことは何ですか?

回線死活だけでなく主要SaaS到達やVPN疎通も含めた監視と、計画停止による定期フェールオーバーテストです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム