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NASとは? わかりやすく10分で解説

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ファイルが増えるたびに「どれが最新版だっけ?」となったり、在宅・出社・外出先でデータの置き場が分散して管理が破綻したり――こうした“日常の小さな混乱”を、仕組みとして解消する選択肢がNASです。NASは単なる大容量ストレージではなく、ネットワーク越しに複数人・複数端末で安全に共有するための「ファイル置き場の基盤」でもあります。この記事では、NASの基本、他方式(外付けHDD/クラウド/SAN)との違い、導入時の判断ポイント、運用上の注意点まで整理します。

NASとは

NAS(Network Attached Storage)は、ネットワーク経由でデータを保存・共有するための専用ストレージ装置です。外付けHDDやUSBメモリが「1台のPCに直接つないで使う」ことを前提としているのに対し、NASはLAN(社内ネットワークや家庭内ネットワーク)に接続し、複数の端末から同時にアクセスできる点が特徴です。

一般的な利用形態は、WindowsやmacOSから共有フォルダとして開いてファイルを保存する、あるいはスマートフォンアプリで写真・動画をバックアップする、といったものです。業務用途では、部署共有のドキュメント置き場、データ受け渡し、バックアップ先として導入されることが多くあります。

NASの重要性と利用シーン

NASの価値は「容量が大きい」よりも、データの置き場を一つに寄せ、アクセス制御とバックアップを運用として回せる点にあります。例えば、次のようなシーンで効果が出やすいです。

  • オフィスのファイル共有:部署の共有フォルダを中心に運用し、最新版管理や引き継ぎをしやすくする
  • チームの共同作業:複数人が同じフォルダを参照し、権限で編集・閲覧を分ける
  • バックアップの集約:PCごとのバックアップ先をNASへ統一し、復旧の手順を標準化する
  • 家庭内の写真・動画保管:スマホの自動バックアップ先にし、家族で共有する

一方で「NASがあれば安心」と短絡すると危険です。NASは共有基盤であるぶん、障害・誤操作・マルウェア感染の影響範囲が大きくなり得ます。後述するように、バックアップ設計と権限設計をセットで考えることが重要です。

NASの主な特徴

NASは「ネットワークにつながるファイル置き場」ですが、実務上はもう少し具体的に、ファイル共有プロトコル運用機能の組み合わせとして理解すると判断しやすくなります。

ファイル共有プロトコルで提供される

多くのNASは、ファイル共有の方式としてSMB(Windowsの共有)NFS(UNIX/Linux系でよく使う共有)などを提供します。利用者はこれを「ネットワークドライブ」や「共有フォルダ」として扱い、普段のファイル操作(作成/編集/削除)をそのまま行えます。

ここで重要なのは、NASは基本的にファイル単位でデータを扱うという点です。後述のブロックストレージ(SAN)とは設計思想が異なるため、「何を置くか」を間違えると性能や運用の期待値がズレます。

アクセス制御と運用機能を備える

NASは単純なディスク箱ではなく、ユーザー/グループごとの権限管理、ログ、スナップショット、レプリケーションなど、運用を支える機能を持つことが一般的です。代表例は次の通りです。

  • アクセス制御:ユーザー・グループ別に閲覧/編集を制限する
  • RAID:複数ディスクで冗長化し、ディスク故障に耐えやすくする
  • スナップショット:ある時点の状態を保持し、誤削除やランサムウェア被害から戻しやすくする
  • レプリケーション:別筐体や別拠点へ複製し、障害時の復旧性を高める

ただし、RAIDはバックアップではありません。RAIDは「ディスク故障で止まりにくくする」仕組みで、誤削除や暗号化(ランサムウェア)から守るものではない点に注意が必要です。

スケールアップとスケールアウトの考え方

NASの拡張は大きく2つの方向があります。

  • スケールアップ:同じ筐体にディスクを追加・換装して容量や性能を上げる
  • スケールアウト:ノード(筐体)を追加し、複数台で一つのファイル基盤として拡張する

一般的な中小規模向けNASはスケールアップ中心で、エンタープライズ領域ではスケールアウト型のファイルストレージが選択肢になります。原稿にあった「Scale-out FBS」や「NAS Gateways」は、こうしたエンタープライズ文脈(分散ファイル、ゲートウェイ構成)で語られることが多い概念です。

ただし本記事の軸が「NASとは何か」であれば、特定ベンダーや市場調査に寄りすぎると読者の理解が散りやすいため、ここでは拡張の方向性として整理し、詳細は別記事に逃がすのが読みやすさの観点で安全です。

NASの種類

NASは用途や規模で選ぶものが大きく変わります。ここでは「家庭・小規模」と「企業・大規模」で、判断軸を分けて整理します。

小規模ビジネスや個人向けNAS

家庭や小規模オフィス向けNASは、導入と運用のしやすさを重視したモデルが中心です。Web画面で共有フォルダやユーザーを作成でき、スマホバックアップ、簡易クラウド同期、メディアサーバ機能などが提供されることもあります。

一方で、同時アクセス数が増えたり、重い処理(暗号化、大量の小ファイル、複数ユーザーの同時編集)が増えたりすると、CPUやメモリ、ディスク構成の差が体感性能に出やすくなります。価格だけでなく想定ユーザー数と用途で選ぶことが重要です。

エンタープライズ向けNAS

企業向け(中~大規模)では、冗長電源、複数コントローラ、スケールアウト、統合認証連携、監査ログ、バックアップ/DR連携など、可用性と統制を重視した設計になります。特に業務で使う場合は「止まらない」だけでなく、「誰が何にアクセスしたか」「権限が適切か」「復旧手順があるか」が問われます。

この領域では、NAS単体ではなく、バックアップ基盤や監視、ネットワーク設計とセットで導入されるケースが多く、要件定義の比重が高くなります。

NASのコンポーネント

NASは、ストレージ装置に見えても、内部には小さなサーバのような構成要素を持ちます。性能や安定性の差は、これらの組み合わせで決まります。

ストレージドライブ(HDD/SSD)

容量と価格のバランスでHDDが中心になりやすい一方、キャッシュや高速領域としてSSDを組み合わせる構成もあります。小さなファイルが多い、同時アクセスが多い、スナップショットや索引処理を多用する、といった条件ではディスク構成の影響が出やすくなります。

CPUとメモリ

NASはファイル共有だけでなく、暗号化、圧縮、インデックス、スナップショット、ウイルススキャン、アプリ機能などを処理します。CPUとメモリが不足すると「容量はあるのに遅い」「同時アクセスで急に重くなる」といった問題が起きます。業務利用では、将来の利用増も見込んで余裕を見ておくのが無難です。

OSと管理機能

NASには専用OSが搭載され、共有フォルダ、権限、スナップショット、ログ、通知などの運用機能を提供します。製品選定では、スペックだけでなく「管理画面の分かりやすさ」「更新・保守のしやすさ」「権限設計の柔軟性」も実務品質に直結します。

ネットワークインターフェース

NASはネットワーク越しに使うため、NIC(LANポート)の速度・冗長化が重要です。1GbEで十分なケースも多いですが、利用者が増える、バックアップを夜間にまとめて流す、動画素材など大容量を扱う、といった場合はボトルネックになります。必要に応じて、複数ポートの束ね(リンクアグリゲーション)や高速回線の採用を検討します。

NASとストレージ方式の違い

原稿には「ファイル/ブロック/オブジェクト」の説明がありましたが、NASの記事で重要なのは「NASは基本的にファイルストレージである」という整理です。ここを押さえると、用途の向き不向きが判断しやすくなります。

ファイルストレージ

NASの基本です。共有フォルダとして使えるため、ドキュメント共有、素材保管、部門ファイルサーバの置き換えなどに向きます。アクセス権やフォルダ構成で運用しやすい一方、データベースのように低遅延・高IOPSが必要な用途は不向きになりやすいです。

ブロックストレージ

ブロックストレージは、サーバからは「ディスク(ボリューム)」として見える方式で、データベースや仮想化基盤などで使われます。一般にSAN(Storage Area Network)という文脈で語られ、NASとは別の設計領域です。NASでブロック用途を無理に担うと、性能設計や運用責任が曖昧になりがちです。

オブジェクトストレージ

オブジェクトストレージは、IDとメタデータで管理し、APIでアクセスする方式です。大量データの保管やアーカイブに強く、クラウドストレージでよく採用されます。NASの「共有フォルダ」感覚とは異なるため、移行や併用では運用設計がポイントになります。

NASの実用例

NASは「何でも置ける」ように見えますが、用途ごとに設計ポイントが変わります。ここでは、ありがちな使い方と注意点をセットで紹介します。

ファイル共有(部署・プロジェクト)

最も典型的な用途です。フォルダ階層と権限設計(閲覧だけ/編集可/管理者)を整え、更新ルール(命名規則、保管期限、世代管理)を決めることで、散逸しがちなファイルを整理できます。逆に、ルールなしで置き場だけ作ると「探せない」「誰でも消せる」「最新版不明」になりやすい点に注意が必要です。

バックアップ先としてのNAS

PCのバックアップ先としてNASを使う場合は、バックアップ対象・頻度・保持期間を決め、復旧手順まで含めて運用することが重要です。NAS自体が暗号化被害を受ける可能性もあるため、スナップショットや別媒体・別拠点への二重化など、バックアップの“出口”も用意します。

リモートワーク・外部アクセス

在宅からNASへ直接アクセスしたい場合、安易なポート開放は避け、VPNやゼロトラスト型のアクセス制御、強固な認証(多要素認証)など、安全な経路を前提にします。利便性のために入口を緩めると、NASは攻撃者にとって魅力的な標的になります。

家庭内のメディア保管

写真や動画の保管では、スマホ自動バックアップや家族共有が便利です。ただし、メディア用途でも「誤削除」「端末紛失」「ランサムウェア」の可能性はゼロではありません。家庭用途でも、最低限スナップショットや外部バックアップを意識すると安心感が変わります。

NAS導入で押さえるべき注意点

最後に、NASの導入判断で失敗しやすいポイントを整理します。

RAID=バックアップではない

RAIDはディスク故障に強くする仕組みであり、誤削除や暗号化、設定ミスを防ぐものではありません。NASを“最後の砦”にしないために、別媒体・別拠点・別アカウントなど、障害ドメインを分けたバックアップ設計が必要です。

権限設計が甘いと「共有」が事故になる

便利さのために全員フル権限にすると、事故の影響範囲が最大化します。最低限、部署別・役割別に閲覧/編集を分け、管理者権限を絞ることが現実的な対策になります。

性能は「同時アクセス」と「小ファイル」で落ちやすい

NASの体感速度は、ユーザー数、同時アクセス、ファイルの粒度、ネットワーク設計で大きく変わります。導入時は「将来の利用増」「バックアップ時間帯の負荷」も含めて要件を見積もると、後から困りにくくなります。

外部公開は最小化し、入口は強くする

NASはデータが集まるため、侵入されると被害が大きくなります。外部からのアクセスが必要なら、認証強化と安全な経路(VPN等)を前提にし、管理画面の公開や不要サービスの有効化を避けます。

まとめ

NASは、ネットワーク経由でデータを保存・共有するための専用ストレージ装置であり、ファイル共有の基盤として「置き場の統一」「権限管理」「バックアップ運用」を実現しやすい点が強みです。一方で、RAIDだけでは守れないリスク(誤削除・暗号化・権限事故)もあるため、導入時はバックアップとアクセス制御をセットで設計することが重要です。用途と規模に合わせて、性能・運用・安全性のバランスが取れる形で選定しましょう。

Q.NASと外付けHDDの違いは何ですか?

NASはネットワークに接続して複数端末から共有でき、外付けHDDは基本的に1台へ直接接続して使います。

Q.NASはクラウドストレージの代わりになりますか?

用途によります。社内・家庭内の共有には有効ですが、外部共有や冗長性は別途設計が必要です。

Q.NASのRAIDを組めばバックアップは不要ですか?

不要にはなりません。RAIDはディスク故障対策であり、誤削除や暗号化被害は防げません。

Q.NASはファイルストレージですか?

一般にそうです。共有フォルダとして提供し、ファイル単位で保存・参照します。

Q.NASはデータベース用途にも向きますか?

多くの場合は向きません。低遅延が必要な用途はブロックストレージ(SAN等)が一般的です。

Q.NASの性能は何で決まりますか?

CPU/メモリ、ディスク構成、ネットワーク速度、同時アクセス数、ファイルの粒度で大きく変わります。

Q.外部からNASにアクセスするのは安全ですか?

安全設計が前提です。安易な公開は避け、VPN等の安全な経路と強い認証を使います。

Q.NASはランサムウェア対策になりますか?

単体では不十分です。スナップショットやオフライン/別拠点バックアップを併用します。

Q.家庭用NASでも権限設定は必要ですか?

必要です。誤操作や端末紛失時の影響を減らすため、最低限の分離は有効です。

Q.NAS導入前に最初に決めるべきことは何ですか?

用途、利用者数、容量見積り、バックアップ方針、外部アクセス要否の5点です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム