IT用語集

ネットワークの冗長化とは? メリットや方法など

水色の背景に六角形が2つあるイラスト 水色の背景に六角形が2つあるイラスト
アイキャッチ
目次

ネットワークは、社内外のシステムや端末をつなぎ、業務やサービスを動かし続けるための基盤です。メール、Web会議、SaaS、業務アプリ、顧客向けWebサービスなど、多くの業務はネットワークが「使えること」を前提に成立しています。一方で、機器故障や回線障害、設定ミス、想定外のトラフィック増加などにより、ネットワークは止まり得ます。だからこそ、障害が起きても通信を止めにくくし、復旧までの影響を最小化するために「冗長化」を設計として組み込むことが重要です。

本記事では、ネットワークの冗長化について、考え方の整理からメリット、代表的な方式、設計・運用で見落としやすい注意点までを解説します。読み終える頃には、自社に必要な冗長化の範囲と優先順位を判断し、方式選定や運用設計の論点を整理できるようになります。

冗長化とは

冗長化とは、必要な設備・機能をあらかじめ複数用意し、事故や障害が発生してもシステムやサービスを継続できるようにする設計思想です。IT分野では、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、回線、電源、さらには運用手順までを含めて「単一障害点」を減らすために用いられます。

重要なのは、冗長化は単なる「二重化」ではなく、障害時にどのように切り替わり、どこまで業務影響を許容できるかまで含めて成立する設計である点です。機器を2台用意しただけでは、切り替え条件、経路制御、セッションの扱い、運用手順が未整備であれば、障害時に止まる可能性は残ります。

可用性の目標を先に決める

冗長化の設計では、先に「どれくらい止められないか」を明確にすることが重要です。たとえば次のような目標が整理できると、必要な方式とコストのバランスが取りやすくなります。

  • 許容できる停止時間(目標復旧時間)
  • 切替時の瞬断の可否(数秒の瞬断は許容できるか)
  • 通信セッションの維持が必要か(Web会議やVPNなどは影響が出やすい)
  • 対象範囲はどこか(拠点内LAN、拠点間、インターネット出口、重要システムのみなど)

これらは、一般にRTO/RPOといった継続計画の考え方とも関係しますが、ネットワーク冗長化では特に「停止時間」と「瞬断・セッション維持」の扱いが設計の分岐点になりやすい点を押さえるとよいでしょう。

ネットワークの冗長化とは

ネットワークは、サーバーや端末などを接続し、データを相互にやり取りするための「経路」です。業務システムや外部サービスがどれだけ高度でも、ネットワークが止まれば利用できません。ネットワークの冗長化とは、ある経路や機器に障害が起きても、代替の経路・装置・回線へ切り替えて通信を継続しやすくする設計を指します。

ネットワークを川の流れに例えると理解しやすいでしょう。どこか一部が詰まって流れが止まれば、その下流の生活や仕事に支障が出ます。ITシステムでも、通信の途中にある機器や回線のどこかが停止すれば、下流に相当する業務・サービスへ影響が波及します。冗長化は、この「詰まり」が発生しても別ルートで流れを維持するための備えです。

冗長化の対象は「経路」だけではない

ネットワークの冗長化というと回線やルーターの二重化を想像しがちですが、実務では次のような観点も重要になります。

  • 通信経路(回線、上位回線、経路制御)
  • 中継機器(ルーター、スイッチ、無線AP、ファイアウォール、ロードバランサ)
  • 付帯要素(電源、配線経路、ラック・空調、設置場所)
  • 名前解決・割り当て(DNS、DHCP)
  • 運用(監視、切替手順、変更管理、定期テスト)

たとえばルーターを2台にしても、両台が同じ電源系統、同じ配線経路、同じ設定手順に依存している場合、実質的に単一障害点が残ることがあります。冗長化は「全体のつながり」で点検することが重要です。

ネットワーク冗長化のメリット

通信断による業務停止リスクを下げられる

最大のメリットは、障害が発生しても通信が完全停止しにくくなり、業務停止リスクを下げられる点です。クラウド利用が進むほど「社内ネットワークが止まる=業務の入口が止まる」になりやすく、復旧までの時間がそのまま損失に直結します。冗長化は、停止の確率と停止時間の両方を減らすための設計として有効です。

計画メンテナンスを現実的にしやすい

冗長化しておくと、片系を止めて機器交換や設定変更を行い、もう片系で通信を維持する、といった運用が取りやすくなります。結果として、夜間作業の負担や計画停止の影響範囲を小さくできる場合があります。ただし、切替方式や構成によっては瞬断が発生したり、メンテナンス中に性能が低下したりすることがあるため、事前に影響を見積もることが重要です。

負荷分散の設計が取りやすくなる

冗長化は基本的に可用性のための設計ですが、構成によっては負荷分散(ロードバランシング)の設計と相性が良い場合があります。たとえば、複数回線・複数機器を用意し、通常時からトラフィックを分散できれば、ピーク時の輻輳や装置過負荷による遅延を抑えやすくなります。

一方で、冗長化が必ずしも負荷分散を意味するわけではありません。待機系が通常時に処理しない「Active/Standby」構成では、性能面の改善は限定的です。可用性と性能のどちらを狙うのかを明確にし、方式を選ぶ必要があります。

「止めない運用」の土台になり、レジリエンス向上に寄与する

DDoS攻撃や障害を完全に防ぐことは難しいものの、単一障害点を減らすことで、影響範囲を局所化しやすくなります。ただし冗長化自体はセキュリティ機能ではなく、可用性のための設計です。ファイアウォールやWAF、DDoS対策、監視と運用体制などの対策とセットで、継続性(止めない)を高める基盤として捉えることが重要です。

ネットワークの冗長化の方法

ネットワークの冗長化は、大別すると「物理的な冗長化」と「論理的な冗長化」に分けられます。特に論理的な冗長化は、OSI参照モデルの各層で考え方や代表的な方式が異なります。ここでは、層ごとの代表例を整理しつつ、方式選定時に押さえたい実務上の論点も補います。

OSI参照モデルに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

→「OSI参照モデルとは? 特徴や役割をわかりやすく解説

第1層:物理層

物理層の冗長化は、装置・配線・電源・設置環境を物理的に複線化し、断線や故障、局所的な事故の影響を減らす方法です。たとえば、別ルートの配線を用意する、別筐体のスイッチを用意する、回線の引き込み経路を分離する、といった対策が該当します。

物理層は地味に見えますが、障害時の影響が非常に大きい領域です。たとえば機器が冗長でも、電源が単一系統であれば停電や電源装置障害でまとめて停止し得ます。また、同じ配線ダクトや同じルートにケーブルを通している場合、工事や断線で同時に影響を受けることがあります。物理層では「二重化しているように見えて同じ場所に依存している」状態を避けることが重要です。

物理層で見落としやすいポイント

  • 電源系統(UPS、電源ユニット二重化、ブレーカー分離)の設計
  • 配線経路の分離(同一ダクト、同一ラック内の偏りの回避)
  • 設置場所の分離(同一フロア・同一盤内に依存しない)
  • 保守部材の確保(予備機・予備SFP・予備ケーブルなど)

第2層:データリンク層

第2層では、リンク(ポート)やスイッチングの冗長化、そしてループ制御が重要になります。冗長経路を作るとループが発生しやすく、ブロードキャストストームなどの問題につながるため、冗長化とループ回避はセットで考えます。

チーミング/ボンディング

チーミング(NICチーミング)やボンディングは、複数のネットワークアダプター(NIC)を束ねて冗長化する考え方です。片方のNICに障害が起きても、もう片方へ切り替えて通信を継続しやすくなります。サーバー側の冗長化として導入しやすい一方、スイッチ側の設定やモードの整合が必要になる場合があるため、事前の設計と説明資料の整備が重要です。

リンクアグリゲーション

リンクアグリゲーションは、複数の物理ポートを論理的に束ね、1つのリンクのように扱う技術です。冗長化に加えて帯域確保にもつながります。一般的にはLACPを使う構成が多く、リンク断が起きても残りの回線で通信を維持しやすくなります。

ただし、リンクアグリゲーションは「複数リンクを束ねる」一方で、通信が特定のリンクに偏ることがあります。ハッシュ方式やトラフィックの特性によっては、期待したほど帯域が増えないこともあるため、性能要件がある場合は事前に検証しておくと安全です。

STP

ネットワークをループ状に構成すると、ブロードキャストストームやMACアドレステーブルのフラッピングなどが起き、正常な通信が困難になります。STPはループを検出し、不要な経路をブロックすることでループを回避する仕組みです。障害時にブロックを解除して別経路へ切り替えることで、冗長構成を成立させます。

STPには複数の種類があり、収束時間や設計思想が異なります。切替速度が要件になる場合、構成規模、運用体制、障害時の影響範囲を踏まえて選定し、切替テストまで含めて運用設計に落とし込みます。

第3層:ネットワーク層

第3層では、ルーティングやデフォルトゲートウェイの冗長化、回線・経路の冗長化が中心になります。第2層の冗長だけでは拠点間やインターネット出口の冗長が成立しないことが多いため、業務影響が大きい環境では第3層の設計が重要になります。

VRRP/HSRP

VRRPやHSRPは、複数台のルーターを論理的に1台のように扱い、デフォルトゲートウェイを冗長化する技術です。稼働系に障害が発生した場合、待機系が引き継ぐことで通信を継続します。端末側(クライアント)から見ると、デフォルトゲートウェイのIPアドレスが変わらないため説明しやすく、拠点ネットワークの可用性を高める基本要素の一つです。

ただし、切替が成立するためには、ルーター間の状態監視や経路の健全性チェックの設計が重要です。単にVRRPを組んでも、上流回線が片側だけで切れている場合に適切に切替わらない、といった設計ミスが起き得ます。実環境では「どの障害を検知して切替条件とするか」を具体化します。

マルチホーミング

マルチホーミングは、外部ネットワーク(インターネットなど)への接続回線を複数持ち、回線障害時の迂回や負荷分散を狙う考え方です。回線の引き込み、プロバイダの分離、経路制御などを組み合わせることで、外部要因の障害に強い設計を取りやすくなります。

一方で、設計の自由度が高いぶん、運用難易度が上がりやすい点に注意が必要です。切替方式、監視の設計、DNSの扱い、対外公開サービスの到達性など、論点が増えます。導入時は、障害時の切替シナリオを具体化し、机上だけでなくテストで成立性を確認することが重要です。

第4層:トランスポート層

第4層の文脈では、ファイアウォールやロードバランサなどのネットワーク機器に搭載されているHA機能が代表例です。ここでは、装置冗長と切替時のセッションの扱いが、業務影響に直結しやすいポイントになります。

HA

HAは、2台の機器を稼働系(Active)と待機系(Standby)として構成し、稼働系に障害が発生した際に待機系へ切り替えて通信を継続する仕組みです。機器によっては、セッション情報や状態を同期し、切替時の影響(再接続の必要性)を減らす設計が可能な場合もあります。

ただし、HAがあっても無停止を保証するわけではありません。切替の検知時間、同期方式、セッション維持の可否、ルーティングの収束などが影響し、瞬断や一時的な通信不安定が理解されにくい形で発生することがあります。対外サービスや重要業務がある場合は、切替テストの実施と、影響の説明資料(瞬断の目安、再接続の必要性の有無)を準備しておくと運用が安定します。

HAに関して詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。

→「HA構成とは? 種類と特徴などをわかりやすく解説

冗長化を検討するときの注意点

冗長化は「無停止」を保証しない

冗長化しても、切替時に瞬断が発生することがあります。また、方式によってはセッションが引き継がれず、アプリ側の再接続が必要になる場合もあります。特に、VPN、Web会議、長時間のファイル転送などは影響が出やすく、ユーザー体験として「一瞬つながったがすぐ切れる」「しばらく遅い」といった形で現れることがあります。

求める可用性を具体化したうえで、切替の方式、タイマー値、セッション同期の有無、アプリ側の再接続特性まで含めて設計することが重要です。

単一障害点を見落としやすい

ルーターやスイッチを二重化しても、上流回線、電源、配線経路、監視の欠如、設定ミス、運用手順などが単一障害点になることがあります。「機器は冗長化できたのに、結局そこが止まった」とならないよう、論点を機器だけに限定せず、全体のつながりで点検します。

点検で有効な観点

  • 電源や設置環境は冗長になっているか
  • 上流回線・プロバイダは分離できているか
  • DNSやDHCPなど周辺サービスは単一障害点になっていないか
  • 運用手順(切替、復旧、連絡、記録)は整備されているか

複雑化により運用リスクが増える

冗長化は構成が複雑になりがちで、設定ミスや運用ミスのリスクが上がることがあります。特に、フェイルオーバー条件、ループ制御、経路制御、同期設定などが絡むと、障害時に意図した動作をしないケースが出やすくなります。監視、障害対応手順、切替テストの計画まで含めて「運用できる設計」になっているかを確認しましょう。

切替テストをしないと「冗長化したつもり」になりやすい

冗長構成は、平常時に問題がなくても、障害時に初めて想定外が露見することがあります。たとえば、切替が遅い、片系で性能が不足する、特定通信だけ復旧しない、監視が検知しない、といった問題です。導入時や変更時には、影響範囲を制御しながら切替テストを行い、結果を手順書と監視設定に反映することが重要です。

ネットワーク冗長化の進め方

冗長化は「方式を選ぶ」だけではなく、優先順位の設計と運用への落とし込みまでがセットです。次の流れで整理すると、過不足のない設計になりやすくなります。

重要通信と対象範囲を棚卸しする

まずは、止まると影響が大きい通信を明確にします。拠点内LANだけでなく、インターネット出口、拠点間、クラウド接続、リモートアクセス、顧客向け公開サービスなど、通信の流れを業務の視点で棚卸しします。

許容停止と切替要件を決める

許容できる停止時間、瞬断の許容、セッション維持の必要性などを整理します。ここが曖昧だと、過剰な投資になったり、逆に必要な要件を満たせなかったりします。

単一障害点を洗い出し、優先順位を付ける

機器、回線、電源、配線、周辺サービス、運用を含めて単一障害点を洗い出します。全てを一度に冗長化するのは現実的でないことも多いため、影響の大きい箇所から優先順位を付けて段階的に進める設計が有効です。

監視・手順・テストを前提に運用へ組み込む

冗長化は、障害の検知と切替が成立して初めて意味を持ちます。監視の閾値、通知先、一次対応の手順、復旧後の戻し方まで含めて整備し、変更時には切替テストを計画に組み込みます。

この記事のまとめ

ネットワークの冗長化は、通信断による業務停止リスクを下げ、安定したサービス提供を支えるための重要な考え方です。冗長化には物理・論理の両面があり、OSI参照モデルの各層で代表的な方式が異なります。

一方で、冗長化は無停止を保証するものではなく、切替時の瞬断やセッション影響、単一障害点の見落とし、複雑化による運用リスクなどの注意点もあります。「どこまで止められないのか」「どこが単一障害点になり得るのか」「運用として回せるか」という観点を具体化し、自社環境に合った冗長化を選択しましょう。

ネットワークの冗長化とは何ですか?

ネットワークの冗長化とは、障害が発生しても通信を止めにくくするために、経路や機器、回線などを二重化・多重化して代替手段を用意することです。

冗長化と負荷分散は同じ意味ですか?

同じではありません。冗長化は障害時に通信や処理を継続するための可用性の考え方で、負荷分散はトラフィックや処理を複数経路・複数装置に分けて性能や安定性を高める考え方です。

冗長化すればネットワークは絶対に止まりませんか?

絶対に止まらないとは言い切れません。切替時の瞬断が発生することや、回線・電源・設定ミスなど別の単一障害点が原因で停止することもあります。

物理的な冗長化とは何を指しますか?

機器やケーブル、電源、回線引き込み経路などを物理的に二重化し、故障や断線が起きても影響を受けにくくする対策を指します。

第2層の冗長化で代表的な方式は何ですか?

NICチーミングやリンクアグリゲーション、ループを回避するためのSTPなどが代表例です。目的に応じて方式を選定します。

VRRPは何の冗長化に使いますか?

主にデフォルトゲートウェイとなるルーターの冗長化に使います。稼働系に障害が起きた場合に待機系が引き継ぎ、通信を継続しやすくします。

HA(フェイルオーバー)とは何ですか?

2台以上の機器を稼働系と待機系で構成し、稼働系に障害が発生した際に待機系へ自動的に切り替えて通信を継続する仕組みです。

冗長化はセキュリティ対策になりますか?

冗長化そのものは可用性を高めるための設計であり、直接のセキュリティ機能ではありません。ただし単一障害点を減らして影響範囲を抑える設計は継続性の向上に寄与します。

冗長化を導入すると運用は楽になりますか?

計画メンテナンスをしやすくなる面がありますが、構成が複雑になることで設定ミスや切替手順など運用の難易度が上がることもあります。

冗長化設計で最初に決めるべきことは何ですか?

どれくらい止められないかを具体化することです。許容停止時間や瞬断の可否、切替時にセッション維持が必要かを整理すると方式選定が進めやすくなります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム