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PL法とは? 10分でわかりやすく解説

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PL法(製造物責任法)は、製造物の欠陥によって他人の生命、身体、財産に被害が生じた場合に、製造業者等の損害賠償責任を定める法律です。企業実務では、設計、製造、表示、販売後対応のどこで安全性を確保するか、事故時にどの部署がどの順序で対応するかが論点になります。PL法を理解する際は、対象となる製造物、欠陥の判断、責任主体、時効、免責事由を分けて確認します。

PL法とは

PL法とは、製造物責任法の略称です。製造物の欠陥により、人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合に、製造業者等の損害賠償責任を定めています。被害者の保護、国民生活の安定向上、国民経済の健全な発展への寄与を目的とする法律です。

PL法の特徴は、製造業者等の過失そのものを被害者が立証しなくても、欠陥、損害、因果関係を主張・立証できれば責任追及の対象になり得る点です。通常の不法行為責任では過失の立証が問題になりやすいのに対し、PL法では「製造物に通常有すべき安全性があったか」が中心になります。

PL法で対象になる損害

PL法で対象になるのは、欠陥製品によって他人の生命、身体又は財産が侵害された場合です。一方で、損害が当該製造物そのものにだけ生じた場合は、PL法上の損害賠償責任の対象から外れます。その場合は、売買契約、保証、民法上の契約不適合責任、不法行為責任など、別の法的枠組みで検討します。

たとえば、欠陥のある家電製品が発火し、周囲の家具や建物に損害が生じた場合はPL法の問題になり得ます。一方、その家電製品自体が壊れただけで、他の財産や身体に損害がない場合は、原則としてPL法ではなく契約上の責任などを確認します。

PL法の適用範囲

PL法の適用を考える際は、対象物が「製造物」に当たるか、責任主体が「製造業者等」に当たるか、事故原因が「欠陥」に当たるかを順に確認します。

製造物の定義

PL法における製造物は、製造又は加工された動産です。家電製品、自動車、食品、日用品、医療機器、機械部品、原材料など、製造又は加工を経て流通する動産が対象になります。最終製品だけでなく、部品や原材料も対象に含まれます。

未加工の農林水産物や不動産は、原則としてPL法上の製造物には当たりません。ソフトウェアやオンラインサービスそれ自体も、一般には動産ではないため、日本のPL法上の製造物としては慎重に整理します。ただし、ソフトウェアが組み込まれた機器、物理媒体に記録されたソフトウェア、IoT機器、AI搭載製品では、製品全体の安全性や表示、更新、運用条件を含めて検討する必要があります。

責任主体となる製造業者等

PL法で責任主体になり得るのは、製造業者だけではありません。輸入業者、自社の氏名・商号・商標などを表示した者、表示や販売態様から実質的な製造業者と認められる者も含まれます。

  • 製造業者:製品を製造又は加工した事業者
  • 輸入業者:海外で製造された製品を日本国内に輸入した事業者
  • 表示製造業者:自社ブランドや商標を製品に表示した事業者
  • 実質的製造業者:表示や販売態様から、実質的に製造業者と認められる事業者

販売店や小売事業者が常にPL法上の製造業者等になるわけではありません。ただし、自社ブランドで販売する場合、輸入に関与する場合、実質的に製造主体と評価される表示を行う場合には、責任主体として検討対象になります。

欠陥の判断

PL法における欠陥とは、製造物の特性、通常予見される使用形態、製造業者等が引き渡した時期、その他の事情を考慮して、製造物が通常有すべき安全性を欠いている状態を指します。単に品質が悪い、性能が低いというだけでは足りず、安全性を欠いているかが問題になります。

欠陥は、実務上、次の3類型で整理されることが多くあります。

製造上の欠陥設計どおりに製造されず、特定の製品に不良やばらつきが生じている状態です。製造工程、検査、出荷判定、ロット管理が確認対象になります。
設計上の欠陥設計そのものに安全上の問題があり、通常予見される使用で事故が生じ得る状態です。代替設計の可能性、危険性の程度、発売時の技術水準などを確認します。
表示上の欠陥警告、注意事項、使用条件、禁止事項、保守点検方法などの表示が不十分で、利用者が危険を認識できない状態です。取扱説明書、ラベル、Web上のサポート情報も確認対象になります。

PL法の責任と期間制限

PL法では、製造業者等の過失ではなく、製造物の欠陥によって損害が生じたかが中心になります。ただし、被害者側は、欠陥、損害、欠陥と損害との因果関係を主張・立証する必要があります。

無過失責任と立証の関係

PL法は、製造業者等の過失の有無にかかわらず責任を問い得る枠組みです。これは、被害者が製造工程や設計判断の内部事情を詳しく把握することが難しいため、製品の欠陥を中心に責任を判断する考え方です。

ただし、被害者が何も立証しなくてよいわけではありません。製造物に欠陥があったこと、生命・身体・財産に損害が生じたこと、欠陥と損害に因果関係があることを示す必要があります。企業側では、設計記録、試験結果、検査記録、出荷記録、警告表示、事故対応記録を残しておくことが、防御と再発防止の両面で意味を持ちます。

消滅時効と10年の期間

PL法に基づく損害賠償請求権は、一定期間が経過すると時効によって消滅します。財産損害の場合は、被害者又は法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないときに時効で消滅します。人の生命又は身体を侵害した場合は、この期間が5年間になります。

また、製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過した場合も、原則として時効により消滅します。ただし、身体に蓄積した場合に人の健康を害する物質による損害や、一定の潜伏期間を経て症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算します。

免責事由

PL法では、製造業者等が一定の事項を証明した場合、責任を免れる余地があります。代表的なものは、製造物を引き渡した時点の科学又は技術に関する知見では、欠陥があることを認識できなかった場合です。これは、開発危険の抗弁と呼ばれます。

また、部品や原材料が他の製造物に使われた場合に、完成品メーカー等の設計に関する指示に従ったことで欠陥が生じ、かつ欠陥が生じたことについて過失がない場合も、免責の検討対象になります。部品メーカーや原材料メーカーは、完成品メーカーとの仕様書、指示内容、検査記録、変更履歴を保存しておくことが重要になります。

企業が取るべきPL法対応

PL法対応は、事故が起きた後の法務対応だけでは足りません。設計、製造、表示、販売後対応、リコール、保険を一連の業務として管理します。

製品安全管理体制を整える

製品安全管理では、設計段階から危険を洗い出し、製造工程でばらつきを管理し、販売後に事故情報を収集できる状態を作ります。品質保証部門だけでなく、開発、製造、営業、カスタマーサポート、法務、広報が連携する体制が必要になります。

  • 設計段階でリスクアセスメントを実施し、記録を残す
  • 製造工程の検査基準、出荷判定、変更管理を明確にする
  • トレーサビリティを確保し、対象ロットや出荷先を追跡できるようにする
  • 事故、クレーム、問い合わせを一元管理し、設計・表示・製造工程へ戻す
  • 重大事故時の判断者、報告先、社外説明の手順を決めておく

取扱説明書と警告表示を整える

取扱説明書、警告ラベル、Web上のサポート情報は、表示上の欠陥を防ぐための実務上の要点です。利用者が危険を理解し、安全な使用方法を判断できるようにします。

  • 想定される誤使用を洗い出し、禁止事項と理由を明記する
  • 危険度の高い事項は、見出し、色、ピクトグラム、配置で識別しやすくする
  • 専門用語だけに依存せず、利用者の知識水準に合わせて説明する
  • 保守点検、消耗品交換、使用期限、保管条件を明確にする
  • 仕様変更や新たなリスク判明時に、説明書やWeb情報を更新する

表示は、製品に添付する説明書だけで完結しません。ECサイト、サポートページ、FAQ、動画、アプリ内表示など、利用者が使用前後に参照する情報も含めて整合を確認します。

リコール体制を整える

製品の欠陥や重大な事故リスクが判明した場合、被害拡大を防ぐために、回収、交換、修理、注意喚起、販売停止などを判断します。リコールは、技術部門だけで判断すると遅れることがあります。品質保証、法務、広報、営業、経営層が同じ情報を確認できる体制を作ります。

  • 事故件数、重篤度、再現性、影響範囲に基づく判断基準を定める
  • 行政機関への報告、販売店・取引先への連絡、利用者通知の手順を整える
  • 対象製品、対象ロット、販売期間、出荷先を特定できる状態にする
  • 回収、交換、修理、返金、代替品提供の方法を事前に決める
  • 公表文、FAQ、コールセンター対応、営業向け説明資料を準備する

PL保険を活用する

PL保険は、製品の欠陥に起因する事故で発生した損害賠償責任に備える保険です。被害者への賠償金、和解金、訴訟費用などが補償対象になる場合があります。対象製品、販売地域、補償限度額、免責事項、リコール費用の扱いは契約によって異なります。

保険は金銭的な損失に備える手段であり、事故そのものを防ぐものではありません。ブランド毀損、取引停止、顧客対応、再発防止にかかる負担は保険だけで解決できないため、予防的な安全管理と組み合わせて扱います。

AI・IoT時代のPL法で確認すべき点

IoT機器やAI搭載製品では、製品の安全性がハードウェアだけで決まりません。ソフトウェア更新、クラウド連携、通信機能、学習データ、セキュリティ対策、利用者への説明が事故原因に関係する場合があります。

日本法上の基本整理

日本のPL法では、製造物は製造又は加工された動産です。そのため、オンラインサービスやソフトウェア単体をPL法の製造物として扱えるかは、提供形態により慎重に確認します。一方、AIやソフトウェアが組み込まれた機器が製造又は加工された動産として流通する場合、その機器全体の安全性が問題になります。

企業は、AI・IoT製品について、発売時点の設計だけでなく、更新後の挙動、セキュリティ修正、サポート期間、利用者への注意喚起、通信停止時の動作も確認します。PL法だけでなく、個人情報保護、サイバーセキュリティ、契約、消費者保護、業法規制もあわせて整理します。

EUなど海外制度の動向

海外展開する企業は、日本法だけでなく、販売先の制度も確認します。EUでは、新しいProduct Liability Directiveが2024年12月8日に発効し、加盟国は2026年12月9日までに国内法化することになっています。新制度では、ソフトウェアやAI、デジタル製造ファイルなど、デジタル要素を含む製品責任の扱いが拡張されています。

日本国内向けの製品であっても、海外販売、越境EC、海外部品の利用、海外クラウドとの連携がある場合、事故時の責任範囲が複雑になります。輸出入を行う企業は、対象国の製品安全規制、表示義務、事故報告、リコール制度、保険の適用範囲を確認します。

PL法対応で確認するチェックポイント

PL法対応を進める際は、法務部門だけでなく、設計、品質保証、製造、営業、サポートを含めて確認します。次の項目を点検すると、実務上の弱点を把握しやすくなります。

  • 対象製品の危険源と想定される誤使用を洗い出しているか
  • 設計変更、部品変更、製造条件変更の記録が残っているか
  • 検査基準と出荷判定の記録を追跡できるか
  • 取扱説明書、警告ラベル、Web情報に矛盾がないか
  • 事故情報、クレーム、問い合わせが品質保証部門へ集約されるか
  • 重大事故時の行政報告、社外公表、取引先説明の手順があるか
  • 対象ロット、販売先、修理履歴、出荷履歴を追跡できるか
  • PL保険の補償範囲、免責、海外販売時の扱いを確認しているか

まとめ

PL法は、製造物の欠陥により他人の生命、身体又は財産に被害が生じた場合に、製造業者等の損害賠償責任を定める法律です。製造業者等の過失の有無ではなく、製造物に通常有すべき安全性があったかが中心になります。ただし、被害者側には欠陥、損害、因果関係の主張・立証が必要です。

企業側は、設計、製造、表示、販売後対応、リコール、保険を分けずに管理します。特にAI・IoT製品では、ソフトウェア更新、通信、セキュリティ、クラウド連携、利用者への説明が安全性に関係します。自社製品のリスクを洗い出し、記録、表示、追跡、事故対応の体制を整えることが、PL法対応の基礎になります。

FAQ

Q.PL法とはどのような法律ですか?

A.製造物の欠陥によって他人の生命・身体・財産に損害が生じた場合に、製造業者等の損害賠償責任を定める法律です。

Q.PL法の対象となる製造物とは何ですか?

A.製造又は加工された動産です。最終製品だけでなく、部品や原材料も対象に含まれます。

Q.当該製品そのものの故障もPL法の対象ですか?

A.損害が当該製品そのものにだけ生じた場合は、原則としてPL法の対象外です。契約責任や保証などを確認します。

Q.PL法では過失がなくても責任を負いますか?

A.責任を負い得ます。ただし、被害者側は欠陥、損害、欠陥と損害との因果関係を主張・立証する必要があります。

Q.PL法における欠陥とは何ですか?

A.製造物の特性、通常予見される使用形態、引渡時期などを考慮して、通常有すべき安全性を欠いている状態です。

Q.PL法の時効期間は何年ですか?

A.財産損害では損害及び賠償義務者を知った時から3年、人の生命・身体侵害では5年です。引渡しから10年という期間制限もあります。

Q.取扱説明書や警告ラベルはPL法と関係しますか?

A.関係します。注意喚起が不十分な場合、表示上の欠陥として問題になる可能性があります。

Q.PL保険に入ればPL法対応は十分ですか?

A.十分とはいえません。PL保険は金銭的負担に備える手段であり、事故予防、表示、リコール体制、記録管理も必要です。

Q.AI・IoT製品にもPL法は関係しますか?

A.関係します。AIやソフトウェアを組み込んだ機器が製造又は加工された動産として流通する場合、製品全体の安全性が問題になります。

Q.企業が最初に確認すべきPL法対応は何ですか?

A.設計、製造、表示、販売後対応、リコールの手順と記録を確認し、事故時に対象製品と対応責任者を特定できる状態を作ります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム