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準委任契約とは? 10分でわかりやすく解説

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ITシステム開発やコンサルティングサービスなどを依頼する際、準委任契約を結ぶことは少なくありません。しかし、その概要や適用範囲、メリット・デメリット、運用上の注意点まで含めて整理できている方は意外と多くないのではないでしょうか。本記事では、民法上の基本的な位置づけから、ITプロジェクトにおける使いどころ、トラブルを防ぐためのポイントまでを分かりやすく解説します。準委任契約の仕組みを押さえることで、自社にとって望ましい契約形態を選びやすくなり、円滑な業務遂行と良好なパートナー関係の構築につなげることができます。

なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件に対する法的助言ではありません。具体的な契約条件の検討にあたっては、弁護士など専門家への相談も併せてご検討ください。

準委任契約とは

準委任契約は、民法に定められた契約類型の一つで、当事者の一方が一定の業務を行うことを引き受け、相手方がその業務の遂行に対して報酬を支払うことを約束する契約を指します。ここでポイントとなるのは、「業務の遂行そのもの」が目的であり、「特定の成果物の完成」が必ずしも目的ではない、という点です。

準委任契約の定義

準委任契約は、民法上法律行為ではない事務の委託を内容とする契約とされています。つまり、契約や登記といった法律行為そのものを他人に依頼するのではなく、調査・設計・運用・助言など、事実行為を中心とする業務の遂行を依頼するイメージです。

例えば、次のような業務は準委任契約の対象となり得ます。

  • システム開発プロジェクトにおける要件定義やプロジェクトマネジメント支援
  • IT・業務プロセスに関するコンサルティング
  • 市場・技術・セキュリティなどの各種調査・研究業務
  • 既存システムの運用・保守サポート(役務提供型の場合)

準委任契約の法的位置づけ

準委任契約は、民法第656条で「法律行為でない事務の委託について、委任の規定を準用する」と定められています。つまり、法律行為を委託する「委任契約」に関するルール(善管注意義務、解除、報酬など)を、準委任契約にも基本的に当てはめて考えることになります。

もっとも、委任契約は「法律行為の委託」であるのに対し、準委任契約は「法律行為ではない事務の委託」である点が異なります。そのため、どのような行為を依頼しているのか(契約締結などの法律行為か、調査・検証などの事実行為か)を整理しておくことが重要です。

準委任契約の特徴

準委任契約の主な特徴は以下の通りです。

  1. 受任者は善良な管理者の注意をもって業務を遂行する義務(善管注意義務)を負う
  2. 受任者は、契約で定めた範囲内で委任者(発注者)の指図に従い業務を行う
  3. 原則として成果物の完成を約束するものではない
  4. 報酬は、業務の遂行(工数・時間・役務の提供)に対して支払われる
  5. 民法上、一定の条件のもとで当事者双方が契約を解除できる柔軟性を持つ

特に、準委任契約では成果物の完成そのものではなく、業務の遂行に対して責任を負う点が重要です。このため、成果物の完成を強く重視する「請負契約」とは、責任の範囲やリスクの分担が大きく異なります。

準委任契約と請負契約の違い

準委任契約と請負契約は、ITシステム開発などで特に比較されることの多い契約形態です。主な違いは、以下の表の通りです。


準委任契約請負契約
契約の目的業務の遂行(役務の提供)成果物・仕事の完成
受任者/請負人の義務善管注意義務(業務を適切に行う義務)完成義務(契約で定めた成果物を完成させる義務)
報酬の支払い業務の遂行に対して(時間・工数・役務)成果物の完成・引き渡しに対して
契約の柔軟性一定の条件のもと、双方から解除がしやすい仕事の完成を前提とするため、原則として途中解除に制約がある

このように、準委任契約と請負契約では、契約の目的や当事者の義務、報酬の考え方などが大きく異なります。特にシステム開発を発注する際には、どちらの契約形態がプロジェクトの性質やリスク分担に適しているかを慎重に検討する必要があります。

準委任契約の適用範囲

準委任契約は、様々な業務において広く適用されています。ここでは、特にITシステム開発やコンサルティングサービスにおける準委任契約の適用について詳しく見ていきます。

ITシステム開発における準委任契約

ITシステム開発では、プロジェクトのフェーズごとに業務の性質が異なります。そのため、要件が変動しやすく、成果物を事前に細かく定義しにくい工程では、準委任契約が選ばれることが多くなっています。

例えば、次のような工程は準委任契約の対象とされることがあります。

  • 要件定義・業務整理・現状分析
  • 上流工程におけるアーキテクチャ検討・PoC(概念実証)
  • PMO/プロジェクトマネジメント支援
  • 運用・監視・問合せ対応などの継続的な役務提供

一方で、画面・帳票・機能など、成果物を明確に定義しやすい実装・テスト工程は、請負契約で締結されることも少なくありません。実務では、

  • 要件定義・PM支援は準委任契約
  • 詳細設計以降の実装・テストは請負契約

といった形で、業務の性質に応じて契約形態を組み合わせるケースがよく見られます。

コンサルティングサービスと準委任契約

コンサルティングサービスは、多くの場合、準委任契約で行われます。コンサルタントは、クライアントの抱える課題を整理・分析し、解決に向けた助言や提案を行うことが役割です。

このような業務では、「売上を◯%向上させる」「コストを◯円削減する」といった結果を直接保証することは現実的ではありません。そのため、

  • 決められた期間・稼働時間内で調査・分析・提案を行う
  • 定例会議やワークショップを通じ、状況に応じて助言内容を更新する

といった形で、役務の提供内容と範囲を定めることが一般的です。

コンサルティングサービスにおける準委任契約では、業務の範囲・期待されるアウトプット(報告書・提案書など)・報酬の支払い方法を文書で明確に定めておくことが重要です。また、クライアントとコンサルタントの間で密接なコミュニケーションを取り、業務の進捗状況や方向性を共有しながら柔軟に対応していくことが求められます。

その他の準委任契約の適用例

準委任契約は、ITシステム開発やコンサルティングサービス以外にも、様々な業務において適用されています。例えば、以下のような業務が準委任契約の対象となることがあります。

  • 市場調査・技術調査・リサーチ業務
  • Webサイトやアプリのデザイン・UX改善支援
  • イベントやセミナーの企画・運営支援
  • 広告・宣伝施策の設計や運用サポート
  • システム運用・ヘルプデスクなどのアウトソーシング業務

これらの業務では、受任者が自らの専門的な知識やスキルを活用して業務を遂行することが求められます。発注者は、受任者の能力や体制を見極めたうえで、適切な報酬を支払うことで、効果的な業務遂行を期待することができます。

準委任契約を適用する際には、業務の性質や目的、発注者と受任者の関係性、現場での指揮命令系統などを十分に考慮し、契約書の中で具体的なルールとして整理しておくことが重要です。

準委任契約のメリットとデメリット

準委任契約を選択する際には、そのメリットとデメリットを理解し、自社のニーズやプロジェクトの特性に合った契約形態を選ぶ必要があります。ここでは、準委任契約の主な利点と注意点、選択時のポイントについて整理します。

準委任契約のメリット

  1. 受任者の専門的な知識やスキルを柔軟に活用できる:準委任契約では、受任者が自らの専門性を発揮して業務を遂行します。要件が定まっていない初期フェーズや、新しい技術・サービスの検証など、不確実性の高い領域で専門家の知見を取り入れやすいのが特徴です。

  2. 状況変化に応じた柔軟な対応がしやすい:準委任契約は「業務の遂行」を目的としているため、発注者と受任者がコミュニケーションを取りながら、業務の内容や優先順位を見直していくことが比較的容易です。要件変更や追加調査などにも対応しやすく、変化の多いプロジェクトとの相性が良い契約形態と言えます。

  3. 契約・報酬の設計次第でリスクを平準化しやすい:準委任契約では、時間単価や月額固定など、業務の性質に応じた報酬設計が可能です。成果物の完成に依存しないため、長期にわたる運用・保守や改善活動などを安定的に継続しやすいという利点があります。

準委任契約のデメリット

  1. 成果物の完成や具体的な結果が保証されない:準委任契約では、受任者は善管注意義務を負うものの、特定の成果物の完成そのものを約束するわけではありません。そのため、「いつまでにどのレベルの成果が出るのか」が見えにくくなり、発注者が不安を抱く要因になることがあります。

  2. 報酬の算定や費用対効果の評価が難しい場合がある:報酬が時間・工数ベースで支払われるケースが多いため、「どこまで進んだのか」「どの程度の価値が生まれているのか」を定量的に把握しづらい場合があります。成果が見えにくいまま費用だけがかさむと感じられてしまうリスクもあります。

  3. 受任者の業務管理が難しくなりやすい:準委任契約では、受任者側の裁量も一定程度認められます。発注者が細かく作業指示を出しすぎると、実態が労働者派遣に近くなってしまうおそれもあり、「任せ方」と「チェックの仕方」のバランスが重要になります。

準委任契約を選択する際の留意点

準委任契約を選択する際には、次のポイントを事前に整理しておくと、後々のトラブルを減らすことができます。

  1. 業務の性質や目的を明確にする:何をしてほしいのか(調査・分析・運用・助言など)、どの範囲までを任せるのか、どのような状態になれば「契約の目的が達成された」と言えるのかを、できるだけ具体的に言語化しておきます。

  2. 報酬の支払い方法とその根拠を明確にする:時間単価・月額固定・成果報酬の組み合わせなど、報酬の算定方法と支払時期を契約書に明記します。そのうえで、どのような成果・アウトプットを想定しているのかも、可能な範囲で文書に落とし込んでおくとよいでしょう。

  3. コミュニケーションと報告ルールを設計する:定例会議の頻度、報告フォーマット(週次レポート・月次レポートなど)、エスカレーションルートなどをあらかじめ取り決めておくことで、「任せきり」「丸投げ」の状態を防ぎやすくなります。

以上のように、準委任契約にはメリットとデメリットがあります。自社のニーズや業務の性質を踏まえ、請負契約など他の契約形態との違いも意識しながら選択することが重要です。

準委任契約の締結と運用

準委任契約を適切に締結し、運用していくためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、準委任契約の締結プロセスや重要条項、運用管理、よくあるトラブル事例と対策について解説します。

準委任契約の締結プロセス

準委任契約を締結する際には、一般的に次のようなプロセスを踏みます。

  1. 委託する業務内容や範囲の整理・明文化
  2. 受任者候補の選定(専門性・実績・体制の確認)
  3. 契約条件の検討(業務範囲、報酬、期間、責任範囲など)
  4. 契約書の作成と交渉
  5. 契約の締結とキックオフ

まず、発注者は、委託する業務の内容・目的・期待するアウトプットをできるだけ具体的に整理する必要があります。この整理が曖昧なままだと、契約締結後に認識のズレが顕在化し、トラブルの原因となりがちです。

契約書の作成では、業務内容や報酬、契約期間、守秘義務、知的財産権の帰属、再委託の可否、契約解除の条件など、準委任契約に必要な事項を漏れなく盛り込みます。発注者と受任者の間で十分に交渉を行い、双方が納得できるバランスを探ることが重要です。

準委任契約の重要条項

準委任契約の契約書には、特に次のような条項を重視して盛り込む必要があります。

  • 業務内容と範囲(何を・どこまで任せるのか)
  • 報酬の金額・算定方法・支払い条件
  • 契約期間・更新や終了のルール
  • 受任者の善管注意義務と、求めるスキル・体制の水準
  • 発注者の協力義務(情報提供・決裁・環境提供など)
  • 成果物やアウトプットがある場合の取り扱いと権利帰属
  • 守秘義務・情報管理の方法
  • 再委託・再委任の可否と条件
  • 契約の解除条件・損害賠償の取り扱い

特に、業務内容と範囲、報酬の考え方、善管注意義務の水準は、準委任契約の中核となる部分です。これらを曖昧にしたまま契約してしまうと、「ここまでやってくれると思っていた」「そこまでは契約に含まれていない」といった齟齬が生じやすくなります。

準委任契約の運用管理

準委任契約は、締結したあと「任せっぱなし」にしてしまうと、期待していた成果が得られないリスクが高まります。適切な運用管理のためには、次のようなポイントに留意するとよいでしょう。

  1. 業務の進捗状況の可視化(週次・月次レポートなど)
  2. 定例ミーティングによる課題共有と優先順位の調整
  3. 報酬に見合った成果・アウトプットの確認
  4. 業務内容や体制変更が必要になった場合の調整手順

発注者は、定期的に業務の進捗と成果を確認し、課題があれば早期に共有・調整することが重要です。一方、受任者側も、専門家としての視点からリスクや懸念点を率直に発信し、必要に応じて契約内容の見直しを提案する姿勢が求められます。

準委任契約のトラブル事例と対策

準委任契約の運用では、様々なトラブルが発生する可能性があります。代表的な事例と対策を、簡単に整理しておきます。

トラブル事例対策
業務の進捗が遅れる定期的な進捗確認ルールの設定と、遅延が見えた段階での計画見直し・体制強化
成果物やアウトプットの品質が期待と異なる業務内容と品質基準の明確化、レビューのタイミングと観点を契約書や運用ルールで事前に合意
報酬の支払いをめぐる認識のズレ時間単価・固定費・成果報酬などの考え方と、請求・支払のタイミングを契約書に具体的に記載
守秘義務違反や情報管理の不備守秘義務条項の明確化、アクセス権限や持ち出しルールの整備、違反時の対応方針の事前共有
現場での指揮命令系統が曖昧になる指揮命令を行うのは誰か(どの組織か)を契約と運用の両面で明示し、発注者側は過度な直接指揮を避ける

これらのトラブルを防ぐためには、契約書の段階で期待値とルールをできるだけ具体的に言語化しておくこと、そして契約締結後も、定期的なコミュニケーションを通じて状況をアップデートし続けることが重要です。

準委任契約をうまく活用できれば、専門家の力を柔軟に取り入れながら、変化の大きいビジネス環境に対応しやすくなります。一方で、期待や役割分担が曖昧なままスタートしてしまうと、発注者・受任者の双方にとって不満の残る結果になりかねません。

まとめ

準委任契約は、ITシステム開発やコンサルティングサービスなどで広く採用されている契約形態です。受任者が専門的な知識やスキルを活かして業務を遂行し、発注者はその役務提供に対して報酬を支払います。成果物の完成を直接の目的とする請負契約とは異なり、「業務の遂行そのもの」を目的とする契約である点が大きな特徴です。

一方で、成果物の完成が保証されないことや、費用対効果の評価が難しくなりがちなことなど、準委任契約ならではの注意点も存在します。業務の性質や目的、期待するアウトプットを丁寧に整理し、契約書の中で業務範囲・報酬・責任分担・コミュニケーションルールを具体的に定めておくことが、トラブルを防ぐうえで重要です。

自社のニーズやプロジェクトの特性に照らして、「どこを準委任契約とし、どこを請負契約とするのか」を意識的に設計できるようになると、ベンダーやコンサルタントとの関係性もより建設的なものになります。準委任契約の基本を押さえたうえで、必要に応じて専門家の助言も得ながら、自社にとって最適な契約スキームを検討してみてください。

Q.準委任契約とはどのような契約形態ですか?

準委任契約は、法律行為ではない事務や業務の遂行を依頼し、その役務提供に対して報酬を支払う契約形態です。成果物の完成ではなく、業務を適切に行うこと自体に責任の重心が置かれます。

Q.準委任契約と請負契約の一番大きな違いは何ですか?

準委任契約は「業務の遂行」が目的であるのに対し、請負契約は「成果物・仕事の完成」が目的です。請負では成果物の完成義務を負う一方、準委任では善管注意義務をもって業務を行うことが主な責任になります。

Q.ITシステム開発ではどのような工程を準委任契約にすることが多いですか?

要件定義や現状分析、アーキテクチャ検討、PMO支援、運用・保守など、要件が変動しやすく成果物を細かく定義しにくい工程で準委任契約が選ばれることが多いです。

Q.準委任契約では成果物が完成しなかった場合でも報酬を支払う必要がありますか?

契約で定めた業務を善管注意義務に従って遂行している限り、成果物の完成にかかわらず、合意した条件に従って報酬を支払うのが原則です。支払い条件は契約書で明確に定めておくことが重要です。

Q.準委任契約で必ず押さえておくべき契約条項は何ですか?

業務内容と範囲、報酬の算定方法と支払い条件、契約期間、善管注意義務の水準、守秘義務、知的財産権の帰属、再委託の可否、解除条件と損害賠償などは必ず明文化しておきましょう。

Q.準委任契約の報酬はどのように決めるのが一般的ですか?

時間単価や日額・月額などの工数ベース、一定範囲の業務をカバーする月額固定、成果に連動する成果報酬型など、業務の性質に応じて決めるのが一般的です。どの方式でも算定根拠を契約書に明記することが大切です。

Q.準委任契約はいつでも解除できますか?

民法上、準委任契約は当事者双方が解除できるとされていますが、相手方に不利な時期の解除などの場合は損害賠償義務が生じることがあります。実務では契約書で解除条件と手続を具体的に定めておくことが重要です。

Q.準委任契約を選ばないほうがよいのはどのような場合ですか?

納期と仕様が明確で、特定の成果物の完成を強く求めるプロジェクトでは請負契約のほうが適している場合があります。完成責任や品質保証を重視する場合は、準委任か請負かを慎重に比較検討する必要があります。

Q.準委任契約と業務委託契約は何が違いますか?

「業務委託契約」は法律上の用語ではなく、請負契約や準委任契約などを総称する実務上の表現です。契約書のタイトルだけで判断せず、内容が請負型なのか準委任型なのかを条文ベースで確認する必要があります。

Q.準委任契約を検討するときは弁護士に相談すべきですか?

契約金額が大きい場合やリスクが高いプロジェクトの場合、あるいは自社だけでは判断が難しい条項が多い場合には、弁護士などの専門家に事前相談することをおすすめします。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム