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RAID5とは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

RAIDとは?

電子データの保全分野では、RAID(Redundant Array of Independent Disks)は一般的な用語となっています。RAIDとは、複数の物理ディスクドライブを組み合わせて単一の論理的なディスクユニットを作成することで、データの冗長性、パフォーマンス、あるいはその両方を向上させるシステムのことです。

RAIDレベルはスピード・セキュリティ・データ保護の度合いを見積もる指針になります。また、ストレージの複雑さを管理し、データを効率的に格納するための重要なツールとなっています。

RAID5の概要

RAID5は、ストライピングとパリティを活用してデータの冗長性とパフォーマンスをバランス良く確保する方式です。この方式では、データは複数のHDDに分散して格納され、さらにパリティ情報がそれぞれのHDDにも分散して記録されます。

RAID5が一般的にリストライプ(再編成)されるため、HDDが1台故障してもデータは失われることはありません。しかし、リビルドには時間がかかり、その間、他のHDDが故障するとデータを失う可能性があるという弱点も抱えています。

RAID5ではディスク障害に対する高い耐性を確保する一方で、書き込みパフォーマンスには配慮が必要です。これは書き込み操作の成功に対してパリティの計算と更新が必要であるためです。

RAID5の特徴

RAID5は、データとパリティが交互に複数のHDDに書き込まれ、いわゆる「ストライピング」が行われます。これにより、一部のディスクが故障しても、他のHDDに分散して保存されたパリティからデータを再構成することが可能です。

データ保護とパフォーマンスの観点から見ると、RAID5は常にバランスが取れた選択肢と長く認識されてきました。HDDが一台故障したときでもデータ損失を防ぐことができる冗長性を確保しつつ、読み込みパフォーマンスも高いからです。

しかし、書き込みパフォーマンスはRAID1やRAID10に比べて低く、大量の書き込み操作があるストレージシステムでは、パリティの計算と書き込みのためのオーバーヘッドが増大する可能性があります。

RAID5の利用

RAID5は、一般的にデータ保護と読み込みパフォーマンスが重要な場合に向いています。具体的には、ファイルサーバーやウェブサーバーなど、読み出し操作が主体となる使用環境でよく使われています。

また、コスト効果も高く、複数台のディスクを使用して大きなストレージ空間を確保しなければならない大規模なデータベースにも適しています。それは消費するディスク空間が少ないからです。

ただし、より高い障害耐性やパフォーマンスが必要な用途、例えばビデオ編集や大量のトランザクション書き込みが必要なデータベースなどでは、RAID5よりも高レベルのRAID構成が推奨されます。

RAID5と他のRAIDレベルとの比較

RAIDのレベルはそれぞれに独自の特性と利点、欠点を持っています。特に、RAID5はその冗長性とフォールトトレランスに長け、HDDが1台壊れてもデータの保護とシステムの継続性を確保するという強力な機能を持っています。しかし、他のRAIDレベルと比較してその特性や性能を理解することで、適切なRAIDレベルを選択する助けとなります。

そのためには、RAID0、RAID1、RAID6やRAID10といった主要なRAIDレベルとRAID5を対比して理解することが有効です。それぞれのRAIDレベルとの比較を通じて、RAID5の機能や特性、適用シナリオ等を理解してみましょう。

RAID0との比較

RAID0とはストライピング方式で、データを分割して複数のドライブに書き込むことで読み書きのスピードを向上させるテクニックです。しかし、RAID0は冗長性がなく、ドライブが1台でも故障すると全てのデータが失われるリスクがあります。

それに対しRAID5は、データとともにパリティ情報も分散して保存します。これにより、ドライブが1台故障しても他のドライブからデータを再構築することが可能となります。そのため、RAID0よりも高いデータの保護を実現します。

しかし、RAID5の書き込み速度はパリティ計算によりRAID0よりも遅くなる点が欠点となります。そのため、速度が優先される環境ではRAID0、データ保護が優先される環境ではRAID5という具体的な選択が可能となります。

RAID1との比較

RAID1とはミラーリング方式で、同じデータを複数のドライブに書き込むことでデータの保護を実現するレベルです。しかし、RAID1は2台のドライブに同じデータを保存するため、データのコスト効率が良くありません。

それに対するRAID5は、パリティ情報を分散して保存することで1台のドライブが故障してもデータを保護します。このため、同じデータ保護機能を持ちつつ、RAID1よりも高いコスト効率を持つという利点があります。

ただし、RAID5の書き込み速度がパリティ計算の影響でRAID1よりも遅いことと、ドライブ2台故障時のデータロスのリスクがある点が注意点となります。つまり、より強いデータ保護と低コストが必要な場合はRAID5、高速アクセスが必要な場合はRAID1という選択が考えられます。

RAID6との比較

RAID6とはRAID5に似たレベルで、データとは別に2つのパリティ情報を保存する機能が特徴です。つまり、同時に2台のドライブが故障してもデータを保護する能力があり、RAID5よりも冗長性とデータ保護がさらに強化されたレベルです。

しかし、RAID6はパリティ情報が2つ分生成されるため、RAID5よりも書き込み速度が遅く、容量効率が低いというデメリットがあります。また、RAID6のリビルドには大量のCPUリソースが必要で、リビルド時間が長くなります。

したがって、厳密な冗長性とデータ保護が求められる場合にはRAID6、読み書きのパフォーマンスと余剰容量の効率化を重視する場合にはRAID5という選択が可能です。

RAID10との比較

RAID10はミラーリングとストリーピングを組み合わせたレベルで、高速な読み書きスピードと冗長性のバランスが特徴です。しかし、RAID10は半分のディスク容量しか使用できず、ストレージのコスト効率が低いというデメリットがあります。

それに対してRAID5は、少ないディスクで高い冗長性を達成し、ディスクの利用効率が高いという利点があります。しかし、同時に2台以上のドライブが故障するとデータを復元できないというリスクがあります。

そのため、円滑な読み書き速度と冗長性を重視する場合はRAID10、高い冗長性とコスト効率を追求する場合はRAID5という選択が考えられます。

RAID5を活用するためのHDD選定

RAID5を活用するためには、HDD選びが重要となります。ここでは、HDDとRAID5の相性についてや、RAID5の構築に適したHDDの条件、さらにはHDD選びで注意すべきポイント、そしてHDDの取り付け方法までを見ていきましょう。

HDDとRAID5の相性

RAID5はデータの安全性と速度を両立させるためのシステムです。このため選ぶHDDがその性能を大いに左右します。RAID5は複数のHDD間でデータとパリティ情報を分散させることにより、一定の冗長性とともに高速な読み書き速度を求められます。

また、RAID5ではHDDが1台故障してもシステム全体が停止しないようになっています。しかし、故障HDDの交換・再構築を行わなければならないため、短時間で大量の読み書きが生じます。したがって、高耐久性のHDDを選ぶことが推奨されます。

RAID5構築に適したHDDの条件

RAID5の構築に適したHDDの条件として、まずは高い耐久性が挙げられます。HDDの故障はRAID5のシステムを脅かしますので、長寿命であり、高負荷状態に耐えうるHDDが望ましいでしょう。

次に、高速なデータ転送能力も必要不可欠です。RAID5の性能を最大限発揮させるためには、高速でデータを読み書きできるHDDが必須です。

また、同じ製造者、製品、容量、回転速度のHDDを選ぶことで、バランスの良いパフォーマンスを保つことが出来ます。異なるスペックを持つHDD同士でRAIDを構成すると、性能の低いHDDに合わせて動作しますので、全体の性能が下がる可能性があります。

HDD選びで注意すべきポイント

HDD選びで注意すべきポイントとして、先ほども触れましたが、すべてのHDDが同一のスペックであることが重要です。異なるスペックのHDDを混在させると、全体のパフォーマンスが低下する恐れがあるためです。

また、RAID5では最少でも3台のHDDが必要ですが、故障時の交換の余地を考え、同じ種類のHDDを1台は予備として用意することをお勧めします。HDDは製造ロットにより性能にバラつきがあるものです。同じロットから購入したものを使用すると、性能の均一性が保たれます。

RAID5用HDDの取り付け

RAID5用HDDの取り付け方は、HDDケースにHDDを設置し、データケーブルと電源ケーブルを接続する、という一般的な手順で行います。この時、RAID構成ではHDDの認識順が重要となるため、HDDを接続する順番と接続した順序を記録しておくと良いでしょう。。

また、HDDの取り付け後は必ずRAIDカードのBIOSで各HDDが正しく認識されていることを確認してから、RAID5の構築に進みましょう。この手順を踏むことで、後のトラブルを防げます。

RAID5のセットアップと適用

このセクションでは、RAID5のセットアップと適用について詳しく解説します。まずはセットアップ手順から、そしてその利点と欠点を紹介した上で、パフォーマンスを最大限に引き出す方法と運用、メンテナンスの方法をご紹介します。

RAID5セットアップの手順

RAID5のセットアップは以下の手順で行います。まず、使用するHDDディスクの数を確認します。RAID5のセットアップには最低でも3つのHDDが必要です。ディスクを交換または追加する場合は、データのバックアップを取ってから行いましょう。

次にRAIDコントローラの設定を行います。BIOSまたはUEFI設定メニューからRAIDモードに切り替えます。これにより、オペレーティングシステムは複数のHDDを一つの論理ディスクとして認識します。

最後に、RAID5の設定を行い、ディスクのフォーマットを実施します。これによりRAID5が使用可能となります。RAID5をシステムに適用するまでには時間と労力が必要ですが、その結果として得られるデータ保護とパフォーマンス向上はそれだけの価値があります。

RAID5適用時のメリット・デメリット

RAID5適用時のメリットとして挙げられるのは、その耐障害性です。HDDが1台故障しても他のディスクからデータを再生することが可能です。これはビジネスでのデータ保護において非常に重要な要素です。また、データのアクセスが集中することによる不具合も防ぐことができます。

しかし、RAID5の欠点も認識しておくことが重要です。特に読み書きの速度は他のRAIDレベルに比べて遅く、ディスクの容量利用率も高くないという点が挙げられます。

RAID5はバランスの良い選択であり、データ保護を重視する場合や予算を考慮する場合には最適な選択です。しかし、最速のパフォーマンスや最大のデータ容量が必要な場合には、他のRAIDレベルを検討することをお勧めします。

RAID5のパフォーマンス向上

RAID5のパフォーマンスを向上させる方法として一般的に推奨されるのは、ディスクの予備スペースを確保したり、ストライプサイズを調整したりすることです。ストライプサイズは、データがRAIDアレイ上でどのように分散されるかを決定します。

ストライプサイズを適切に調整することで、読み書きのパフォーマンスを向上させることができます。

他にも、ディスクの構成を適切に選択することや、RAIDコントローラのキャッシュ設定を最適化することでパフォーマンスを改善できます。

RAID5の運用とメンテナンス

RAID5の運用とメンテナンスには、定期的な監視と予防的なメンテナンス作業が必要です。ディスクの健康状態を定期的にチェックし、以前のパフォーマンスレベルを維持するために必要なメンテナンスを提案します。

具体的には、ディスクのエラーや予測不能な故障、RAIDコントローラの問題を早期に発見し対処することが必要です。また、データの流動性を保つために、適切なデータバックアップと復元計画を実行することも重要です。

RAID5は信頼性高いデータ保護を提供する優れたストレージソリューションですが、その積極的で定期的なメンテナンスが、最高のパフォーマンスとデータ安全性を続けるために不可欠です。

RAID5で生じる問題とその解決策

RAID5でよく発生する問題とその原因

RAID5では、複数のHDDを用いてデータとパリティを分散保存するため、一部のHDDが故障してもデータを保護することが可能です。しかし、同一生産ロットのHDDが大量に故障するという問題があります。これは内蔵HDDが同時期に製造されるため、一度に複数のHDDの故障が発生する可能性があるからです。

また、RAID5独特の複雑な書き込み方式により、一度データが故障すると市販の復元ソフトでは対応できない問題もあります。さらに、RAIDコントローラの故障によるデータ喪失も発生します。

他の問題としては、リビルドの失敗や管理画面での操作ミスによる障害も報告されています。これらは正しい知識と手順を理解していないと、不具合の原因となります。

RAID5の故障・障害時の対処法

RAID5での障害が発生した場合、以下のような対処が推奨されます。まず、HDDを単体で取り外し、電源を入れることは避けてください。データが分散されていることから、単体でのデータの扱いは困難となります。

また、HDDの順番を入れ替える、リビルドやデータの再構築は専門知識が必要なため、素人判断で行うとさらなるデータ喪失の原因となります。不明な部分はすぐに専門家に相談しましょう。

その他、RAIDカードの交換やファームウェアのアップデートもデータ復旧に影響を及ぼすため、これらの操作もできるだけ避けるようにしてください。

RAID5データリカバリのポイント

RAID5のデータリカバリでは、まず元の環境を復元することが重要です。RAIDの環境設定を変えてしまうと、データを復旧することが困難になる可能性があるからです。

さらに、故障したHDDはすぐに取り替えるのではなく、まず現状を確認してから次のステップを検討することが大切です。前述の通り、RAID5ではデータが複数のHDDに分散して保存されていますので、故障したHDDの取り扱いには注意が必要です。

また、リカバリを試みる前に、全てのHDDの完全なバックアップを取ることをおすすめします。

RAID5対応の故障診断・修理サービス

RAID5の問題は複雑で専門的な知識が必要なため、専門の故障診断・修理サービスの利用を検討してみてください。

これらのサービスは、RAID5システムの複雑さを理解した上で、適切な診断と修理を行ってくれます。また、データの安全性を確保しながら、可能な限り早期の復旧を目指します。

ただし、サービスによっては費用がかかる場合もありますので、受付前に費用や対応範囲を確認することを忘れないでください。

RAID5の今後

RAID5はすでに広く一般的に使用されているテクノロジーですが、それにもかかわらず最適化と適用範囲をもっと広げる事ができるキーポイントが存在します。これから解説する最適化手法、長期運用の視点、新技術の出現とRAID5の役割、そしてデータ保護への新視点をチェックしておきましょう。

RAID5の最適化

RAID5の最適化手法として初めに考えるのが、HDDの物理的な信頼性を高める事です。多数のHDDを組み合わせる事によりそれが更に重要となります。具体的には、HDDの状況を定期的にチェックし、必要なメンテナンスを行う事が重要です。また、冷却システムの効果的な利用や、HDDの振動を防ぐための対策も重要な最適化手法となります。

次に、パリティ計算の効率化やデータ処理の最適化という観点によるパフォーマンス向上が考えられます。具体的には、パリティ計算によるHDDへの負荷を軽減するためのハードウェアレベルへの対応が必要となります。

最後に、RAID5環境の管理面における最適化も重要となります。これには、適切なRAID管理ツールを選択し、自動リードバランシングやチューニングの設定が含まれます。これらを全て行う事により、RAID5システムの全体のパフォーマンスは最大化されます。

RAID5の長期運用

RAID5の長期運用に備えて、適宜な予防メンテナンスと修復作業を計画することが不可欠です。特にハードウェアの劣化による影響やデータの破損は時間と共に避けられないため、定期的なHDDの状態チェックやパリティチェックが重要となります。

また、障害発生時の迅速な対策も長期運用の鍵となります。具体的には、冗長化が確保されていても一部のHDDが故障するとパリティ計算の負荷が高まり、パフォーマンス低下を招きます。従って、故障したHDDの迅速な交換と再構築が求められます。

最後に、HDD容量の増加に対応するため、RAID5システムのスケーラビリティの確保も重要です。具体的には、データが増え続ける状況に対応するために、簡単にHDDを追加できるフレキシブルなRAID構成を採用することを考えるべきです。

新しいRAID技術

新RAID技術の中でも注目すべきは、パリティ計算の高速化と冗長性を確保する新たなアルゴリズムです。これらの技術をRAID5に組み込むことで、既存のシステムをアップグレードすることも可能です。

一方、現状のRAID5でも昨今の帯域幅要求に十分応えられる性能を提供しており、新RAID技術への移行にはコストと時間がかかります。結果的に、新旧の技術を適切に組み合わせ、全体のシステムパフォーマンスを最適化することが求められています。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム