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サイバーセキュリティのレッドチームとは

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レッドチーム演習とは?目的・流れ・ペネトレーションテストとの違い・実施時の注意点を解説

レッドチーム演習は、攻撃者の視点で模擬攻撃を行い、組織の検知、封じ込め、対応、意思決定が実際に機能するかを確かめる取り組みです。NISTは、レッドチーム演習を「現実に近い条件で、組織のミッションや業務プロセスの侵害を模擬し、組織と情報システムのセキュリティ能力を包括的に評価する演習」と整理しています。さらにCISAは、レッドチーム評価を、脅威アクターを模倣して組織の検知・対応能力を評価するものとして位置づけています。

自社で実施を検討しやすいのは、対策を導入しているものの、本番に近い条件でどこまで機能するか確かめられていない場合です。逆に、特定システムの脆弱性を技術的に洗い出したい段階であれば、ペネトレーションテストのほうが目的に合うことがあります。選定では、攻撃経路の再現を見たいのか、検知と対応の連携を見たいのか、対象を絞った技術検証をしたいのかを先に分けておくと整理しやすくなります。

向いている場面検知、封じ込め、初動、報告の流れまで含めて、本番に近い条件で確かめたい場合です。
向きにくい場面まずは対象システムの脆弱性を技術的に把握したい、または演習を受け止める体制や停止条件が未整備な場合です。
主な評価対象侵入可否だけでなく、検知、連絡、封じ込め、調査、経営判断まで含めた対応全体です。
事前に決めること目的、対象範囲、許容する手法、停止条件、連絡体制、成果物の粒度です。

サイバーセキュリティにおけるレッドチームとは

レッドチームとは、攻撃者を模倣して組織の防御態勢を評価する役割やチームを指します。NISTの用語整理でも、レッドチームは想定される敵対者の攻撃能力を模倣して、組織のセキュリティ態勢を評価する存在として説明されています。

特徴は、単に弱い設定や既知の脆弱性を列挙するのではなく、侵入から目的達成までの一連の道筋を組み立て、その過程で防御側がどこで気付き、どこで止め、どこで判断を誤るのかを確認しやすい点にあります。技術面だけでなく、運用、連絡、エスカレーション、権限管理の甘さまで可視化しやすくなります。

実施を検討しやすい場面

レッドチーム演習が候補になりやすいのは、次のような状況です。

  • 対策を導入しているが、実戦に近い条件で機能確認できていない
  • 監視やインシデント対応の手順はあるが、実際に動かした経験が乏しい
  • 投資判断に必要なリスクの具体像が不足している
  • クラウド利用やリモートワークで境界が曖昧になり、侵入後の横展開が気になる

このような場面では、「どの経路で、どの資産まで到達でき、どの時点で検知できたか」を具体化しやすくなり、対策の優先順位も付けやすくなります。

レッドチーム演習の目的

レッドチーム演習の主眼は、攻撃を受けること自体ではなく、防御側の態勢を現実に近い条件で確認することです。CISAも、レッドチーム評価を、脅威アクターを模倣して組織の検知・対応能力を評価する取り組みとして説明しています。

そのため、演習結果の読み方も「侵入されたかどうか」だけでは足りません。どこで兆候を拾えたか、封じ込めの判断に時間がかかったか、連絡系統が機能したか、重要資産への到達をどの段階で止められたかまで見て初めて、改善の起点が定まります。

レッドチーム演習の流れ

実施手順は設計によって異なりますが、一般に、事前調整、初期調査、侵入の試行、権限拡大や横展開の試行、目標達成の確認、報告という流れで進みます。ここで重要なのは、攻撃の見栄えではなく、各段階で何を評価するかを明確にしておくことです。

事前調整

最初に固めるのは、目的、対象範囲、許容手法、連絡体制、停止条件です。どこまでを本番環境に含めるのか、どのデータに触れてよいのか、業務影響が出そうな場合に誰が中断判断を行うのかを曖昧にしたまま始めると、演習より調整不足の問題が前面に出ます。

初期調査

初期調査では、公開情報や外部から見える情報を手掛かりに、侵入口や足掛かりになりそうな要素を探ります。公開情報の出し方、組織構造の見え方、担当者の露出、メール運用などが影響しやすい段階です。

侵入の試行

侵入の試行では、想定したシナリオに沿って入口を作れるかを確かめます。設計によっては、メール、Web、端末設定、ソーシャルエンジニアリングなどを含めることがあります。何を含めるかは演習目的と許容範囲で決めます。

横展開と権限拡大の試行

侵入後は、どこまで移動できるか、権限を広げられるか、管理系の経路へ近づけるかを見ます。ここでは、ネットワーク分離、管理経路の制御、特権アカウント管理、端末間通信の制限、ログの可視化が効いてきます。

目標達成の確認

最終段階では、事前に定めた目標へどこまで到達できるかを確認します。目標は、特定データへの到達、検証用データの持ち出し、管理権限の取得確認など、安全性を担保した条件で設計することが一般的です。

報告とレビュー

演習後は、攻撃の流れ、防御側が気付けた点、気付けなかった点、封じ込めや連絡の課題、優先して直すべき事項を整理します。報告が技術論に寄りすぎると、経営判断や運用改善につながりにくくなるため、根本原因と改善優先度まで分けて示したほうが使いやすくなります。

ペネトレーションテストとの違い

両者は似た領域にありますが、確認したい対象が異なります。NISTは、ペネトレーションテストを、定められた制約の中で脆弱性の実証や侵入耐性の確認に使えるものとし、これを補完する形でレッドチーム演習があり、レッドチームは敵対者の行動を再現して、より深い分析を行うと整理しています。

レッドチーム演習攻撃の流れ全体を通じて、検知、封じ込め、連絡、意思決定を含む対応力を確認したい場合に向きます。
ペネトレーションテスト対象範囲を定めたうえで、脆弱性の有無や悪用可能性を技術的に検証したい場合に向きます。
使い分けの軸技術的な弱点を点で見たいのか、組織としての対応を面で見たいのかで切り分けると整理しやすくなります。

どちらが上位という話ではありません。改修直後のシステムを確認するならペネトレーションテストのほうが扱いやすい場合がありますし、複数の対策が連携して機能するかを見たいならレッドチーム演習のほうが適しています。

レッドチーム演習で見えること

レッドチーム演習の価値は、技術的な弱点だけでなく、運用と体制の綻びが見えやすい点にあります。例えば、監視はできていても連絡が遅れる、検知はできても隔離判断が止まる、管理者権限の棚卸はあるが例外運用が放置されている、といった課題は、通常の点検だけでは表面化しにくいことがあります。

また、経営層に対しても、どの経路でどの資産まで到達できたかを示しやすいため、対策投資や優先順位の議論へつなげやすくなります。

実施前に決めておきたい事項

安全に実施するには、何を成功条件とするか、どこまでを対象にするか、どの手法を許容するかを事前に詰めておく必要があります。ここが曖昧だと、演習そのものよりも関係者間の認識ずれが問題になります。

  • 目的と成功条件
  • 対象範囲と除外範囲
  • 許容する手法と禁止する手法
  • 停止条件と中断手順
  • 緊急時の連絡体制
  • 本番データと検証用データの扱い
  • 報告書の粒度と再現手順の扱い

レッドチーム演習の注意点

演習を受け止める体制がないと評価がぶれる

監視担当、情報システム部門、経営層、委託先との役割分担が曖昧な状態で実施すると、演習結果が「たまたま気付けた」「たまたま担当者が不在だった」に左右されやすくなります。演習前に、少なくとも停止判断と緊急連絡の経路は決めておきます。

業務影響のコントロールが欠かせない

本番に近づけるほど、業務影響のリスクは上がります。そのため、検証用データを成功条件にする、特定時間帯を避ける、特定システムを除外するなど、安全側へ寄せた設計が必要になることがあります。

結果を改善計画に変換できないと意味が薄れる

報告書に問題点が並んでも、優先順位、根本原因、担当部門、期限が整理されていなければ改善は進みにくくなります。演習後は、再発防止の観点で何を先に直すかまで決めて初めて効果が出ます。

まとめ

レッドチーム演習は、攻撃者の視点で模擬攻撃を行い、組織の検知、封じ込め、対応、意思決定が本番に近い条件で機能するかを確認するための取り組みです。特定システムの技術的な弱点を洗い出すだけでなく、運用と体制の実効性まで見たい場合に候補になりやすくなります。

一方で、目的、対象範囲、停止条件、連絡体制を決めないまま進めると、評価がぶれたり、業務影響が大きくなったりします。対象を絞った技術検証が先か、組織全体の対応力確認が先かを見極めたうえで、ペネトレーションテストとの使い分けを決めると整理しやすくなります。

よくある質問

Q.レッドチーム演習とは何ですか?

A.攻撃者の視点で模擬攻撃を行い、組織の検知、封じ込め、対応、復旧、意思決定が機能するかを確認する演習です。

Q.ペネトレーションテストとの違いは何ですか?

A.ペネトレーションテストは対象範囲を定めた技術的検証に向き、レッドチーム演習は検知、封じ込め、連絡、意思決定まで含めた対応力の確認に向きます。

Q.レッドチーム演習は不意打ちで実施するものですか?

A.不意打ち型で行う場合もありますが、周知したうえで実施する場合もあります。目的と業務影響の許容範囲で決めます。

Q.演習で業務を止める必要はありますか?

A.必ずしも必要ではありません。検証用データを成功条件にするなど、安全側の設計で進めることが一般的です。

Q.ソーシャルエンジニアリングも演習に含まれますか?

A.含める場合もあれば、技術検証に限定する場合もあります。許容手法は事前に合意しておきます。

Q.レッドチーム演習のゴールはどう決めますか?

A.守るべき資産、想定する脅威、業務影響の許容範囲を踏まえ、どこまで到達したら成功とみなすかを関係者で決めます。

Q.実施前に最低限決めるべきことは何ですか?

A.対象範囲、許容手法、停止条件、緊急連絡体制、データの扱い、成果物の粒度を事前に定めます。

Q.どれくらいの頻度で実施するのがよいですか?

A.一律の正解はありませんが、大きな環境変更の後や、対策の実効性を改めて確かめたい節目で検討しやすくなります。

Q.レッドチーム演習で得られる成果は何ですか?

A.技術面だけでなく、監視、運用、体制、連絡の弱点まで含めた改善ポイントを明確にしやすくなります。

Q.演習結果はどう活かすべきですか?

A.指摘を並べるだけで終えず、優先順位、根本原因、担当部門、期限に分けて改善計画へ落とし込むと使いやすくなります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム