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リバースブルートフォース攻撃とは? 10分でわかりやすく解説

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パスワードの安全性が脅かされる事態に、あなたも遭遇したことはありませんか。 近年は「総当たり」のような分かりやすい攻撃だけでなく、監視をすり抜けやすい形で認証突破を狙う手口も増えています。 この記事では、代表的な手口であるリバースブルートフォース攻撃について、仕組み・危険性・対策を整理し、読み終えたときに「自社(自分)はどこから直すべきか」を判断できる状態を目指します。

リバースブルートフォース攻撃とは

リバースブルートフォース攻撃の概要

リバースブルートフォース攻撃とは、少数のパスワード候補を固定し、多数のアカウント(ID)に対して広く試す攻撃です。 「1つのアカウントに対してパスワード候補を大量に試す」従来型のブルートフォースとは逆の発想で、アカウントごとの試行回数を少なく見せやすい点が特徴です。

現場では、リバースブルートフォースはパスワードスプレー攻撃(Password Spraying)として説明されることもあります。 狙いは単純で、「よく使われがちなパスワード(例:Company2025! のような規則性のあるもの、季節ワード、短い数字列など)」を起点に、当たり(認証成功)が出るアカウントを見つけにいきます。

なお、原稿で触れられていた「ハッシュ値から元のパスワードを推測する(レインボーテーブルなど)」は、一般にパスワードクラッキング(オフライン攻撃)と呼ばれる別の手口です。 名称が混同されやすいため、本記事ではログイン突破を狙う“リバースブルートフォース”を主題として扱い、ハッシュの話は「補足」で整理します。

従来のブルートフォース攻撃との違い

違いは「どこに試行が集中するか」です。運用上の見え方も含めて整理します。

攻撃手法アプローチ運用上の見え方
従来のブルートフォース攻撃特定のIDに対し、パスワード候補を大量に総当たり同一アカウントへの失敗が連続し、ロックや検知に引っかかりやすい
リバースブルートフォース攻撃少数のパスワードを、多数のIDに対して分散して試す1アカウントあたりの失敗が少なく、単純な失敗回数監視では気づきにくいことがある

この違いのせいで、リバースブルートフォースは「大量の失敗ログが出ないのに、いつの間にか突破されていた」という形になりがちです。

リバースブルートフォース攻撃の仕組み

典型的な流れは次のとおりです。

  1. 攻撃者が、少数のパスワード候補を用意する(よくある文字列・規則性のあるもの・漏えいパスワードなど)
  2. 標的となるID(メールアドレス、社員番号、ユーザー名)を収集する(公開情報、推測、漏えい名簿など)
  3. IDを変えながら、同じパスワード候補を少数回ずつ試す(時間や送信元IPを分散することも多い)
  4. 当たりが出たアカウントでログインし、情報窃取や設定変更、権限昇格、横展開を狙う

ポイントは、攻撃者が「全部当てる」必要はないことです。 当たりが1件でも出れば、そこから被害が広がる可能性があります。

リバースブルートフォース攻撃の目的

目的は、ログイン成功そのものではなく、その先にあります。

  • アカウント乗っ取りによる情報漏洩(メール、クラウドストレージ、業務SaaSなど)
  • なりすましによる不正操作(設定変更、権限付与、請求先の差し替えなど)
  • 侵入後の横展開(別システムへのアクセス、追加アカウントの奪取)
  • 「突破できる入口があるか」を探る足がかり

だからこそ、対策も「パスワードを強くする」だけで終わりません。 突破されても被害化しにくい設計(MFA、権限、監視)まで含めて考える必要があります。

リバースブルートフォース攻撃の脅威

リバースブルートフォース攻撃による被害例

分かりやすい例は、メールやクラウドのアカウントが突破されるケースです。 攻撃者がログインに成功すると、まず転送設定の追加多要素認証の無効化回復用情報の変更といった「居座りやすい設定変更」を行うことがあります。

また、パスワードが別サービスでも使い回されていると、同じID・パスワードの組み合わせが他でも通ってしまい、被害が横に広がります。 この段階になると、原因が「どのサービスで最初に突破されたか」を追いにくくなり、復旧が長引くことがあります。

リバースブルートフォース攻撃の危険性

危険性は、主に次の点にあります。

  • アカウントごとの試行回数が少なく、単純なロックや失敗回数監視をすり抜けやすい
  • 「よくあるパスワード」が残っている環境ほど、短時間で当たりが出やすい
  • 認証成功後の被害が、メール・SaaS・クラウドなどに連鎖しやすい
  • 攻撃が自動化されやすく、対象IDが増えるほど成功確率も上がりやすい

「失敗が大量に出ないなら安全」という発想は危険です。 リバースブルートフォースは、“静かに当たりを引く”ことを狙った攻撃だからです。

リバースブルートフォース攻撃の実行難易度

攻撃そのものは難しくありません。成功しやすさは、防御側の条件で大きく変わります。

要因難易度への影響
IDの推測しやすさメール形式や命名規則が固定だと、対象IDが作られやすい
パスワードの品質短い・規則的・使い回しがあるほど、当たりが出やすい
MFAの有無MFAがあれば、当たりが出ても被害化しにくい
レート制限と監視の設計分散試行を捉えられると、早い段階で止めやすい

リバースブルートフォース攻撃の検知の難しさ

リバースブルートフォースが検知しづらい理由は、「1アカウントあたりの失敗」が目立たない点です。 攻撃者は、時間を空けたり、送信元を分散したりして、通常の失敗と紛れさせます。

そのため、監視では「単体アカウント」だけでなく、次のような横断的な見方が重要です。

  • 短い時間に、多数アカウントで失敗が散発していないか
  • 同じ送信元や同じ国・地域から、多数アカウントへ同様の失敗が出ていないか
  • 成功直後に、転送設定・権限変更・MFA設定変更などが連続していないか

「失敗の多さ」ではなく「失敗の分布」と「成功後の挙動」を見るイメージです。

リバースブルートフォース攻撃への対策

リバースブルートフォースに対しては、1つの対策だけでは不十分になりがちです。 パスワード運用・認証(MFA)・制限設計・監視を組み合わせ、攻撃が成立しにくい形に寄せます。

強力なパスワードポリシーの導入

第一に、「当たりやすいパスワード」を組織から減らします。 リバースブルートフォースは少数パスワードを使うため、ここが弱いと一気に突破されます。

  • 長さを確保する(短いパスワードを許容しない)
  • 社名・季節・年度・連番など、規則性のあるものを避ける
  • 使い回しを前提にしない(パスワードマネージャーの活用も含めて定着させる)
  • 漏えい済みパスワード(既知の弱いパスワード)の利用を拒否する

「複雑さを増やす」よりも、「ありがちな候補に寄せない」ことが、リバースブルートフォースには効きます。

多要素認証(MFA)の導入

MFAは非常に効果があります。攻撃者がパスワードを当てても、追加の認証要素が必要になり、被害化しにくくなります。

優先度としては、メールクラウド管理者重要SaaSなど「1つ突破されると連鎖しやすい入口」から導入するのが現実的です。

レート制限・ロック・段階的制御の見直し

単純な「同一アカウントでの連続失敗 → ロック」だけだと、分散試行を取りこぼすことがあります。 一方で、ロックを強くしすぎると正規ユーザーを巻き込みます。段階的な制御が有効です。

  • IPや端末情報など、複数の観点でレート制限をかける
  • 短時間に多数アカウントへ失敗が出た場合、追加認証を要求する
  • ロックは最終手段にし、まずは遅延・チャレンジ追加・MFA要求で吸収する

監視・検知の設計を「分散試行」前提にする

監視は「連続失敗」よりも、「多アカウントにまたがる失敗の増え方」を意識すると効果が出ます。

  • 一定時間内の失敗を、アカウント横断で集計する
  • 普段と違う国・地域・時間帯の認証を、リスクとして扱う
  • 成功直後の重要操作(転送設定・権限変更・MFA変更)を、強くアラートする

「止める」だけでなく、「早く気づく」設計が、被害の最小化につながります。

補足:ハッシュ値からの推測(パスワードクラッキング)への対策

原稿にあった「レインボーテーブルでハッシュからパスワードを推測する」タイプは、リバースブルートフォースとは別の攻撃です。 ただし、こちらも重要なので、要点だけ補足します。

  • ソルトを適切に使い、同じパスワードでもハッシュが同一にならないようにする
  • 計算コストの高い方式(専用のパスワードハッシュ)を選び、総当たりの効率を下げる
  • ハッシュが漏えいしない前提を置かず、権限・暗号化・監査で保護する

ここは「保存の安全性」の話であり、ログイン突破を狙うリバースブルートフォースとは、守る層が少し違います。 両方を分けて考えると、対策の漏れが減ります。

まとめ

リバースブルートフォース攻撃は、少数のパスワード候補を固定し、多数のアカウントへ分散して試すことで突破を狙う攻撃です。 連続失敗が目立ちにくく、単純なロックや監視では気づきにくいことがあります。

対策の中心は、当たりやすいパスワードを残さない運用と、MFAでパスワード単独突破の価値を下げることです。 あわせて、分散試行を前提にした制限設計と監視を整えることで、被害化しにくい状態に近づけます。

Q.リバースブルートフォース攻撃とは何ですか?

少数のパスワード候補を固定し、多数のアカウントに分散して試す攻撃です。

Q.通常のブルートフォース攻撃との違いは何ですか?

1アカウントに大量試行するのではなく、少数パスワードを多数IDへ広く試します。

Q.パスワードスプレー攻撃と同じですか?

同じ文脈で説明されることが多く、少数のパスワードを多数IDへ試す点が共通します。

Q.なぜ検知が難しいのですか?

1アカウントあたりの失敗回数が少なく見え、連続失敗監視だけでは拾いにくいからです。

Q.どんな環境が狙われやすいですか?

弱いパスワードや規則的なパスワードが残り、IDが推測しやすい環境です。

Q.MFAは効果がありますか?

効果があります。パスワードが当たってもログインを成立させにくくできます。

Q.アカウントロックだけで防げますか?

不十分です。分散試行を前提に、レート制限や段階的制御と併用が必要です。

Q.監視では何を重視すべきですか?

短時間に多数アカウントで失敗が散発する動きと、成功直後の重要操作を重視します。

Q.ハッシュ値から推測する攻撃と同じですか?

同じではありません。ハッシュからの推測はオフラインのパスワードクラッキングです。

Q.最優先の対策は何ですか?

MFAの導入と、当たりやすいパスワードを残さない運用の徹底です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム