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RRLとは? わかりやすく10分で解説

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DNS(Domain Name System)は、インターネット上で「名前(ドメイン名)」と「行き先(IPアドレス)」を結び付ける基盤です。普段は意識されにくい仕組みですが、DNSが狙われるとWebサイトやメール、各種クラウドサービスなどが一斉に不安定になり、被害が広範囲へ波及します。

本記事では、DNSを標的にした代表的な攻撃を整理したうえで、増幅型DDoSの踏み台にされにくくするための対策として「RRL(Response Rate Limiting)」の考え方と導入・運用時の注意点を解説します。

DNSへの攻撃とRRL

近年のインターネット上の脅威の中でも、特に注目されているのがDNSを標的とした攻撃です。DNSは、インターネット上で情報をやり取りするための基盤であり、ここが狙われると「サービスそのものは稼働しているのに、利用者がたどり着けない」といった状態が起こり得ます。

この章では、DNS攻撃の代表例と、増幅攻撃への対抗策として用いられる「RRL」について説明します。DNS攻撃は技術的な問題にとどまらず、業務停止や信用の毀損につながることがあるため、仕組みと対策の要点を押さえておくことが重要です。

DNSの基本

DNSは「Domain Name System」の略称で、ドメイン名(例:example.com)をIPアドレスへ変換する仕組みです。人が覚えやすい名前と、通信に必要な数値(IPアドレス)を結び付けることで、私たちはドメイン名だけでWebサイトや各種サービスへアクセスできます。

DNSは一度問い合わせた結果を一定期間キャッシュ(保存)し、同じ名前解決を繰り返さないようにしています。これにより応答は速くなりますが、キャッシュを悪用されると誤った行き先に誘導される余地が生まれます。

また、DNSはWeb閲覧だけでなく、メール配送(MXレコード)や各種クラウドサービスの接続先解決にも使われます。つまりDNSが不安定になると、表に見えるWeb障害だけでなく「メールが届かない」「業務アプリがつながらない」といった形で被害が表面化することがあります。

DNS攻撃とその種類

DNSを狙った攻撃にはさまざまなものがありますが、代表例として「DNSキャッシュポイズニング(汚染)」と「DNS増幅攻撃」が挙げられます。狙いが異なるため、対策も分けて考える必要があります。

DNSキャッシュポイズニングは、DNSサーバーに誤った応答を信じ込ませ、キャッシュへ不正な情報を保存させる攻撃です。成功すると、正規ドメインへアクセスしたはずの利用者が偽サイトへ誘導され、認証情報の窃取やマルウェア感染などの二次被害につながることがあります。

DNS増幅攻撃は、DNSを使って大きなトラフィックを生み出し、特定の被害者へ集中させる攻撃です。攻撃者は送信元IPアドレスを偽装したDNS問い合わせを大量に送信し、DNSサーバーの「応答」を被害者へ向けて発生させます。一般にDDoS攻撃の一種として扱われ、DNSサーバーが「踏み台」として悪用される点が特徴です。

ここで重要なのは、DNS増幅攻撃は「権威DNSサーバー(そのドメインの正解を持つサーバー)」だけでなく「オープンリゾルバ(外部から再帰問い合わせを受け付けるDNSサーバー)」が悪用されるケースもあることです。どちらに該当するかで有効な対策が変わります。

DNS攻撃の影響

ビジネスにおけるDNS攻撃の影響は、単なるアクセス不能にとどまりません。たとえばWebサイトの停止は売上機会の損失につながり、ログインや決済が絡むサービスであれば顧客体験の悪化が直撃します。

さらに、キャッシュポイズニングのように誤誘導が発生した場合、情報漏洩や不正送金などの重大事故へつながる可能性があります。たとえ自社システムの脆弱性が直接原因でなくても、利用者から見れば「そのサービスで起きた事故」として信頼低下を招きやすい点が現実的なリスクです。

加えて、DNS障害は影響範囲が広く、切り分けに時間がかかる傾向があります。復旧が長引くほど、業務継続(BCP)や対外説明の負荷が増します。

DNS攻撃への防衛策

DNS攻撃に対する防衛は「どの攻撃を想定するか」「自組織のDNSがどの役割を担うか」を軸に整理すると現実的です。代表的な対策を、目的別にまとめます。

(1)増幅・リフレクション型DDoSへの対策としては、後述するRRLが候補になります。RRLは主に権威DNSサーバー側で応答を絞り、踏み台として悪用されにくくする考え方です。また、オープンリゾルバにならないよう再帰問い合わせの公開範囲を制限することも基本です。

(2)改ざん・誤誘導への対策としては、DNSSECの導入が代表例です。DNSSECは応答に署名を付け、改ざんされていないことを検証できるようにする仕組みです。キャッシュポイズニング対策として検討されますが、導入・運用には設計と継続管理が必要です。

(3)運用・監視による対策として、DNSのログ監視、異常クエリの検知、レートや応答サイズの傾向把握、障害時の迂回手順(セカンダリDNSや外部サービス活用)などが挙げられます。攻撃は「起こさない」より「起きたときに短時間で抑える」発想も重要です。

RRLとは?

RRL(Response Rate Limiting)は、DNS増幅攻撃などでDNSサーバーが踏み台として悪用されるリスクを下げるための仕組みです。ここでは、RRLの狙いと動作の考え方、適用範囲を整理します。

RRLとは何か

RRLは、DNSサーバーが返す「応答(レスポンス)」の頻度を制御し、同種の応答が短時間に大量に発生する状況を抑える仕組みです。ポイントは「問い合わせを止める」のではなく、「応答の出し方を調整する」ことで、増幅効果を弱める点にあります。

DNS増幅攻撃では、攻撃者が送信元IPを偽装し、DNSサーバーから被害者へ大量の応答を発生させます。RRLは、この“応答が出続ける状態”を抑え、第三者への被害拡大や回線圧迫を軽減します。

ただし、RRLはDNSの万能薬ではありません。誤誘導(キャッシュポイズニング)を直接防ぐものではなく、また攻撃が極端に大規模な場合はRRLだけで完全に吸収できるとは限りません。どの層(DNS自体/ネットワーク/上流のDDoS対策)で守るかを合わせて設計することが現実的です。

RRLが主に対象とする攻撃

RRLが主に想定するのは、DNS増幅攻撃(リフレクション型DDoS)です。攻撃者が偽装した送信元IPで問い合わせを行い、応答を被害者へ集中させることで帯域やサーバー資源を枯渇させます。

RRLは、同種の問い合わせに対する応答が短時間に過剰に発生している状況で効果を発揮します。言い換えると「DNSサーバーが踏み台として“応答を量産してしまう状態”」を抑えるための仕組みです。

RRLの機能

RRLは、一定時間内に発生する応答の頻度を基準に制御します。実装や製品によって詳細は異なりますが、一般には以下のような要素を組み合わせて動作します。

  • 一定時間内の応答数が閾値を超えた場合に制限をかける
  • 応答の種類(例:同一の名前・同一のレコード種別など)を基準にまとめて扱う
  • 必要に応じて応答を間引く、または簡略化した応答を返す

注意したいのは、RRLの設計意図は「通常利用への影響をゼロにする」ことではなく、「増幅に使われやすい挙動を抑えて被害を広げない」ことにあります。そのため、閾値設計が不適切だと正規トラフィックまで抑制され、結果として可用性に影響が出る可能性があります。

また、RRLは“攻撃に見える振る舞い”を抑えますが、攻撃者が分散させたり、パターンを変えたりすれば効果が落ちることもあります。RRLは単独ではなく、上流対策や監視・遮断と組み合わせて効果を最大化する考え方が重要です。

RRLの効果

RRLを導入することで、DNSサーバーが増幅攻撃の踏み台として利用されるリスクを下げ、回線やサーバー資源の過剰消費を抑制できます。結果として、DNS基盤の安定運用につながり、サービス品質(可用性)を守りやすくなります。

加えて、自組織のDNSが第三者へ被害を拡散しにくくなる点は、運用者としての責任(外部への影響最小化)という観点でも意味があります。インターネットに公開する基盤は、守られる側であると同時に“悪用されない側”として整備しておくことが求められます。

RRLの設定

ここでは、RRLを導入・設定する際に押さえておきたいポイントを説明します。実際の設定方法は利用するDNSサーバー製品やバージョンで異なるため、考え方と注意点を中心に整理します。

RRL対応のDNSサーバー

RRLを利用するには、RRLに対応したDNSサーバーソフトウェア(または製品)を選定する必要があります。オープンソースのDNSサーバーや商用製品の中にはRRL相当の機能を備えるものがありますが、対応状況や設定項目は製品ごとに異なります。

そのため、導入前に「どのロール(権威DNS/リゾルバ)で使うのか」「既存構成に追加するのか」「運用監視とセットで回せるか」を確認し、公式ドキュメントやサポート情報に基づいて設計することが重要です。

RRLの基本設定

RRLは一般に、DNSサーバーの設定で「制限の対象」「閾値」「制限の挙動」を定義します。具体的には、短時間に同種の応答が増えたときに、どの程度のレートで抑制するかを決めます。

設定反映には、再起動または設定の再読み込みが必要になる場合があります。適用後は、想定どおりに制限が機能しているか、また正規通信に影響していないかを、ログや監視指標で確認します。

特に、繁忙時間帯やバッチ処理時間帯など、平常時でも問い合わせが増えるタイミングを把握したうえで閾値を設計すると、誤検知(正規通信の抑制)を避けやすくなります。

RRLのトラブルシューティング

RRL導入後に「特定の利用者だけ名前解決が不安定になる」「監視でNXDOMAINが増える」などの兆候が出た場合、まずDNSサーバーのログや統計情報を確認し、RRLがどの条件で発動しているかを切り分けます。

問題の原因がRRLの閾値・条件設計であることも少なくありません。テストと調整を繰り返し、環境に適した設定値へ近づけていく運用が重要です。必要に応じて、特定の通信(監視・内部システムなど)を例外扱いにする設計も検討対象になります。

まとめ

DNSはインターネット利用の前提となる基盤であり、DNSが狙われるとWeb・メール・業務アプリなど多方面に影響が波及します。特にDNS増幅攻撃は、DNSサーバーが踏み台として悪用され、第三者へ被害を拡散し得る点が厄介です。

RRL(Response Rate Limiting)は、DNSサーバーが返す応答の頻度を制御し、増幅攻撃の効果を弱めるための実装手段の一つです。RRLだけであらゆるDNS攻撃を防げるわけではありませんが、DNSSECや監視・遮断、上流のDDoS対策と組み合わせることで、DNS基盤の安全性と安定性を高められます。

自組織のDNSが「守られるべき資産」であると同時に「悪用されない基盤」であることを意識し、役割に応じた対策を継続的に見直していくことが重要です。

Q.DNS攻撃とは何ですか?

DNSの名前解決や応答を悪用し、サービス妨害や誤誘導を狙う攻撃です。

Q.DNSキャッシュポイズニングは何が危険ですか?

正規ドメインでも偽サイトへ誘導され、情報窃取などの二次被害につながる点です。

Q.DNS増幅攻撃とはどんな攻撃ですか?

偽装した送信元IPでDNS問い合わせを行い、応答を被害者へ集中させるDDoSです。

Q.RRLとは何ですか?

DNSサーバーの応答レートを制御し、増幅攻撃の踏み台になりにくくする仕組みです。

Q.RRLはどの攻撃に特に有効ですか?

DNS増幅攻撃(リフレクション型DDoS)への対策として有効です。

Q.RRLはDNSキャッシュポイズニングを防げますか?

防げません。誤誘導対策はDNSSECなど別の仕組みを検討します。

Q.RRL導入で正規ユーザーに影響は出ますか?

閾値設計が不適切だと影響が出ます。テストと調整を前提に運用します。

Q.RRLを設定するときに重要なポイントは何ですか?

制限対象・閾値・制限時の挙動を、トラフィック特性に合わせて設計することです。

Q.RRLは単体で十分ですか?

十分ではありません。監視・遮断や上流対策と組み合わせて効果を高めます。

Q.RRL導入後に確認すべきことは何ですか?

ログや統計で発動状況を確認し、正規通信の抑制がないかを点検します。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム