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クラウドサービスの責任共有モデルとは? 10分でわかりやすく解説

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目次

クラウドサービスを使う企業が増える一方で、「どこまでがクラウド事業者の責任で、どこからが利用者の責任か」を曖昧なまま進めてしまい、事故やトラブルにつながるケースもあります。そこで重要になる考え方が責任共有モデルです。これは、クラウドサービスの利用者と提供者がそれぞれの責任範囲を分担し、セキュリティや運用を成り立たせる枠組みです。本記事では、責任共有モデルの基本、利用者と提供者の責任範囲、クラウドで押さえるべきセキュリティ対策、そしてIaaS・PaaS・SaaSで責任分担がどう変わるかを、できるだけ平易に整理します。

クラウドサービスの責任共有モデルとは

クラウドは便利ですが、「全部クラウド側が守ってくれる」と思ってしまうと危険です。クラウドの安全性は、提供者と利用者の役割分担で成り立っています。これを整理するのが責任共有モデルです。

責任共有モデルの概要

責任共有モデルとは、クラウドサービスの利用者と提供者が、それぞれの責任範囲を明確にし、セキュリティや管理の役割を分担するための枠組みです。

よく言われる表現としては、提供者は「クラウドそのものの安全」(基盤側)を、利用者は「クラウドの上で使うものの安全」(設定・運用側)を担う、という考え方です。どの範囲がどちらの責任になるかは、IaaS/PaaS/SaaSなどサービス形態で変わります。

主体責任のイメージ
クラウドサービス利用者データ、ユーザー管理、設定、利用するアプリや運用ルール
クラウドサービス提供者データセンター、物理機器、基盤ネットワーク、基盤ソフトの保守

重要なのは、「提供者が守っている範囲」と「利用者が守るべき範囲」を、契約やサービス仕様で確認し、運用に落とし込むことです。

クラウドサービス利用者の責任範囲

利用者側が責任を持つ領域は、ざっくり言うと「設定と運用でコントロールできる部分」です。代表例を整理すると次の通りです。

  1. データの管理(保存先、共有範囲、保持期間、削除ルール)
  2. アクセス管理(ID発行、権限設計、退職者の無効化、特権IDの扱い)
  3. セキュリティ設定(多要素認証、ログ取得、公開設定、暗号化の適用範囲)
  4. コンプライアンス対応(社内規程、監査、記録、委託先管理)

クラウドでは「設定ミス」がそのまま事故になります。たとえば、ストレージを誤って公開状態にしたり、権限を広く付けすぎたりすると、提供者がどれだけ堅牢でも漏えいは起こり得ます。

クラウドサービス提供者の責任範囲

提供者側が責任を持つ領域は、主に「クラウド基盤の安全と安定」です。一般的には次のような領域が含まれます。

  1. 物理的なセキュリティ(データセンターの入退室管理、監視、設備)
  2. 基盤インフラの運用・保守(サーバー、ストレージ、ネットワーク機器)
  3. 基盤の可用性と耐障害性(冗長化、障害対応、サービス継続)
  4. 基盤レベルの脆弱性対応(一定範囲でのパッチ、監視、保守)

ただし「何を提供者がやってくれるか」はサービスごとに違います。たとえばSaaSは提供者の管理範囲が広い一方で、IaaSは利用者側でやることが増えます。

責任共有モデルを理解することの重要性

責任共有モデルを理解し、利用者と提供者がそれぞれの責任を果たすことが不可欠です。理解が浅いと、次のようなズレが起きます。

  • 事故が起きたときに「どこまで復旧できるか」「どこから自社対応か」が曖昧になる
  • 監査や取引先要件で求められる管理が不足する
  • 必要なログが取れておらず、原因調査ができない
  • 設定ミスが放置され、漏えいや不正アクセスにつながる

クラウド導入の早い段階で、責任分担を前提に設計・運用を組み立てるのが近道です。

クラウドサービスのセキュリティ対策

責任共有モデルは「責任の押し付け合い」ではなく、「役割を分けて穴を作らない」ための考え方です。ここでは、利用者側・提供者側の視点で押さえるポイントを具体化します。

クラウド利用者が行うべきセキュリティ対策

利用者側の対策は、難しい技術を増やすよりも、まず基本を落とさないことが大切です。

  1. アクセス制御を強くする(多要素認証、最小権限、特権IDの分離)
  2. 設定の棚卸しを定期的に行う(公開設定、共有リンク、許可ルール)
  3. ログを取り、見られる状態にする(監査ログ、操作ログ、アラート)
  4. データの扱いを決める(分類、保持、暗号化、持ち出し)
  5. 運用ルールを回す(退職者の即時無効化、申請手順、例外管理)

クラウド上の事故の多くは、設定・権限・運用の穴から起きやすいため、日々の運用で「穴を作らない仕組み」を持つことが効果的です。

クラウド提供者が行うセキュリティ対策

提供者側は、基盤の安全性を維持するために、一般に次のような取り組みを行います。

  1. 物理セキュリティ(施設、監視、入退室管理)
  2. ネットワークの防御(監視、フィルタリング、分離)
  3. 基盤の保守と脆弱性対応(一定範囲のパッチ、点検)
  4. 可用性の確保(冗長化、障害対応、バックボーン設計)
  5. 第三者監査や認証への対応(サービス仕様としての透明性)

ただし、提供者が担う範囲は「全部」ではありません。提供者の守備範囲を過信せず、利用者側で担うべき部分を運用に落とす必要があります。

セキュリティ対策の具体例

分野具体例狙い
アクセス管理多要素認証、最小権限、特権IDの分離不正ログインと権限乱用を減らす
設定管理公開設定の監査、定期棚卸し、構成の自動チェック設定ミスを早期に見つける
データ保護暗号化、分類、共有ルール、バックアップ設計漏えいと消失に備える
監視と検知監査ログ、アラート、異常操作の検知気づくのを早くする
インシデント対応手順書、連絡体制、権限停止の即応被害拡大を止める

セキュリティ対策を進めるコツ

「全部やる」は現実的ではないので、優先順位をつけます。進め方の例は次の通りです。

  1. まず責任共有モデルと契約・仕様で、責任範囲を言葉にする
  2. 次に、守るべき情報(個人情報、営業秘密など)を洗い出す
  3. 事故になりやすいところ(公開設定、特権ID、退職者対応)から固める
  4. ログと監査を整え、継続的に見直す

クラウドのセキュリティは、一度入れて終わりではなく、運用で保つものです。小さく始めて、継続的に整えていくのが現実的です。

責任共有モデルの違い

責任共有モデルは、サービス形態によって「利用者がやること」の量が変わります。ここを取り違えると、必要な対策が抜けます。

IaaSとPaaSとSaaSの違い

大まかなイメージは次の通りです。

  • IaaS:自由度が高いぶん、利用者が管理する範囲も広い
  • PaaS:基盤(OSや実行環境)の多くは提供者側、アプリとデータは利用者側
  • SaaS:アプリ自体は提供者側、利用者は設定と運用、データ管理が中心

サービス別の責任分担の具体例

サービスモデル利用者の主な責任提供者の主な責任
IaaSOS設定、ミドルウェア、アプリ運用、権限設計、データ管理、ネットワーク設定の一部物理設備、物理機器、基盤ネットワーク、仮想化基盤など
PaaSアプリ開発・運用、データ管理、アクセス制御、利用設定OSや実行環境、ミドルウェアの多く、基盤の保守
SaaSユーザー管理、権限設定、利用ルール、データの入力・共有設定アプリ運用、基盤の保守、サービスの可用性確保など

この表はあくまで一般像です。実際はサービスごとに境界線が違うので、サービス仕様(どこまでが提供者管理か)を確認して運用に落とします。

責任共有モデルを踏まえたサービス選定のポイント

  1. 自社のセキュリティポリシーや取引先要件に合うか
  2. 提供者のSLAや監査情報、ログ機能が要件を満たすか
  3. 自社の体制で、必要な設定・運用を回せるか
  4. 障害や事故が起きたときの連携(窓口、手順、通知)が現実的か

「どのサービスが安全か」ではなく、「自社が責任を果たせる形か」という視点で選ぶと、導入後の事故が減りやすくなります。

まとめ

責任共有モデルは、クラウドを安全に使うための前提です。提供者は基盤の安全と安定を担い、利用者はデータ・権限・設定・運用を担います。IaaS・PaaS・SaaSで責任の境界は変わるため、サービス仕様を確認し、自社の役割を具体的な運用に落とすことが大切です。まずはアクセス管理と設定の棚卸し、ログ整備など、事故になりやすいところから固めていくと、クラウドの利点を活かしながら安全性も確保しやすくなります。

Q.責任共有モデルとは何ですか?

クラウドの利用者と提供者が、それぞれの責任範囲を分担してセキュリティと運用を成り立たせる考え方です。提供者は基盤側、利用者は設定やデータなど運用側が中心になります。

Q.クラウドならセキュリティは全部お任せできますか?

できません。基盤の安全は提供者が担いますが、データの扱い、権限設定、公開設定、利用ルールなどは利用者側の責任になります。

Q.利用者の責任で特に事故が起きやすいのは何ですか?

設定ミスと権限の付けすぎです。公開設定の誤り、共有リンクの管理不足、退職者アカウントの放置、特権IDの乱用などが典型例です。

Q.提供者は何を守ってくれますか?

一般に、データセンターや物理機器、基盤ネットワークなど「クラウド基盤の安全と安定」を担います。ただし範囲はサービスにより異なるため、仕様の確認が必要です。

Q.IaaSとSaaSでは責任範囲はどう変わりますか?

IaaSは自由度が高いぶん、OSやミドルウェア、ネットワーク設定など利用者の責任が広くなります。SaaSはアプリ運用は提供者側が担い、利用者は設定・権限・データ運用が中心になります。

Q.責任共有モデルを理解すると何が良いのですか?

やるべき対策が明確になり、設定ミスや運用漏れを減らせます。監査や取引先要件への対応、事故時の切り分けや復旧判断もしやすくなります。

Q.利用者側の対策でまず優先すべきことは何ですか?

多要素認証と最小権限、特権IDの管理、公開設定の棚卸し、ログ取得の整備です。ここが弱いと、クラウドの良し悪しに関係なく事故につながります。

Q.ログはどのくらい重要ですか?

とても重要です。不正アクセスや操作ミスが起きても、ログがなければ原因と影響範囲が追えません。監査ログ・操作ログを取り、アラートまで含めて運用するのが理想です。

Q.クラウド選定で責任共有モデルをどう活かせますか?

自社の体制で「利用者側の責任」を回せるかを見ます。必要なログ機能、権限機能、連携手段、事故時の連絡体制などを確認し、運用可能な形を選ぶのが現実的です。

Q.最後にチェックすべきポイントは何ですか?

サービス仕様で責任境界を確認し、アクセス管理・設定棚卸し・ログ整備・データ運用ルールをセットで用意することです。クラウドは運用で安全性が決まります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム