STP分析は、市場を分析し、製品やサービスを「誰に」「どんな価値として」届けるかを決めるための重要なマーケティング手法です。ただし、概念だけをなぞって「セグメントを分けました」「ターゲットを決めました」で止まってしまい、施策(4P)や営業活動に落ちないケースも少なくありません。本記事では、STP分析の基本的な考え方から、各ステップで何を決め、何を材料に判断するのか、そして実務で成果に結びつけるための進め方までを体系的に解説します。
STP分析とは、マーケティング戦略を立案する上で重要な分析手法の一つです。自社の製品やサービスを効果的に市場に浸透させるために、市場をセグメント化し、ターゲットを絞り込み、競合との差別化を図るポジショニングを設計します。目的は、限られた経営資源(人・予算・開発力・営業力)を、最も勝ち筋のある顧客層と価値提案に集中させることです。
ここで注意したいのは、STP分析は「分析で終わらせるもの」ではない点です。STPで決めた内容が、製品の訴求軸、価格設計、販売チャネル、プロモーション、さらには営業トークやサポート体制にまで一貫して反映されて初めて、戦略として機能します。
STP分析は、以下の3つのステップで構成されています。
STP分析の目的は、“誰にでも刺さる”という幻想を捨て、勝てる市場で勝てる打ち手を作ることにあります。画一的なマーケティングでは、訴求がぼやけ、コストだけが膨らみがちです。ターゲットを絞り込み、顧客の課題・意思決定の条件に合わせて価値提案を組み立てることで、プロモーションと営業の効率が上がります。
STP分析は、市場分析(顧客・競合・環境)の結果を「戦略の形」に翻訳する工程です。つまり、情報を集めるだけの市場分析と、実行施策(4P)をつなぐ“橋渡し”になります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 市場分析 | 市場の動向、顧客課題、意思決定構造、競合状況を把握する |
| 2. STP分析 | セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングで「勝ち筋」を定義する |
| 3. マーケティングミックス(4P) | 製品、価格、流通、プロモーションをSTPに沿って具体化する |
| 4. 実行と評価 | KPIを設計し、検証・学習・改善を回す |
STP分析の結論が曖昧だと、その後の4Pが「全部盛り」になり、結局誰にも刺さらないという状態に陥りがちです。逆に言えば、STPが鮮明であるほど、4Pの意思決定は速くなり、現場も迷いにくくなります。
STP分析を活用することで、次のようなメリットが期待できます。
特にBtoBでは、購買関与者が複数で、意思決定プロセスも長くなりがちです。STPによって「誰に向けた価値か」が定まると、資料・Web・営業トークの一貫性が増し、結果としてリード獲得から商談化までの歩留まり改善につながります。
STP分析を机上の作業で終わらせないためには、次のポイントが重要です。
STP分析は一度作って保管する資料ではなく、意思決定の“基準”として運用し続けるものです。四半期や半期など、現実的なリズムで見直しを設けると、形骸化しにくくなります。
セグメンテーションとは、市場を細分化し、顧客のニーズや条件が似ている集団にグループ分けするプロセスです。重要なのは「違いがあるから分ける」のではなく、分けた結果、打ち手(製品・訴求・価格・チャネル)が変わる単位で分けることです。
例えば同じ「法人向けサービス」でも、業種、規模、IT成熟度、導入目的、購買プロセスが違えば、刺さる価値や導入障壁が変わります。セグメンテーションは、その違いを“戦略上の選択肢”として扱える状態にする作業です。
セグメンテーションの代表的な分類軸は次の通りです。
実務で精度を上げるコツは、複数の軸を組み合わせて「似た集団」を作ることです。例えばBtoBでは、業種×規模×IT体制×課題(監査対応/コスト削減/業務効率など)のように掛け合わせると、施策が具体化しやすくなります。
セグメンテーションは、次の手順で進めるとブレにくくなります。
ここで見落としやすいのは「到達可能性」です。いくら魅力的なセグメントでも、チャネルが弱い、営業が届かない、認知に時間がかかる場合は、短期では成果につながりにくいことがあります。セグメンテーションは、ターゲティングの前段として“現実に戦える選択肢”に整理することが大切です。
セグメンテーションでよくある失敗を避けるために、次の点を確認します。
セグメントは「分けるほど良い」のではなく、「施策が変わるだけ分ける」のが現実的です。運用できない細分化は、戦略の複雑化だけを招きます。
ターゲティングとは、セグメンテーションで分けた選択肢の中から、自社が重点的に狙う顧客層を決めるプロセスです。ターゲットを明確にする目的は、資源配分の優先順位を決め、戦略を“選択と集中”できる状態にすることです。
ここで重要なのは、ターゲットは「好きな顧客」ではなく、「勝てる条件が揃っている顧客」であるべき、という点です。例えば、課題の緊急度が高い、予算が確保されやすい、導入障壁が比較的低い、競合優位がある、といった要素が揃うほど、成功確率が上がります。
ターゲット選定では、次の観点をセットで評価します。
特にBtoBの場合、受注だけでなく「導入後の運用負荷」も収益性に直結します。ターゲットが“理想的”でも、運用・サポートの負担が過大なら、長期的に利益が残りにくくなります。
ターゲティングの代表的な方法は次の通りです。
方法の選択は、自社の規模や体制で現実に回るかが鍵です。小さな組織が市場全体を狙うと、訴求も施策も薄まりやすくなります。まずは集中・特化で勝ちパターンを作り、その後に横展開する方が、再現性を作りやすいケースが多いです。
「ターゲットを決めたつもり」にならないために、次の項目まで具体化することを推奨します。
この粒度まで落とせると、マーケ施策(コンテンツ、広告、セミナー)と、営業のアプローチが揃いやすくなります。
ポジショニングとは、ターゲット顧客の心の中で、自社の製品・サービスが「どういう存在か」を明確にし、競合と比較されても選ばれる理由を作ることです。言い換えると、比較検討の場で“迷わせない基準”を提示する作業です。
ここで注意したいのは、「良いところを並べる=差別化」ではない点です。顧客が比較するときの評価軸(価格・品質・導入しやすさ・運用負荷・サポートなど)に対して、どこで勝つのかを決め、その勝ち方を一貫して伝える必要があります。
ポジショニング設計の基本は、マップで“相対関係”を可視化することです。
軸は「社内で語りたい軸」ではなく「ターゲットが選ぶときに使う軸」を選ぶのが重要です。顧客が重視しない軸で勝っても、選定理由になりにくいためです。
差別化の材料は多岐にわたりますが、実務では次のカテゴリに整理すると設計しやすくなります。
差別化要因は、ターゲットが抱える課題と一致して初めて価値になります。自社の強みを語る前に、「ターゲットが何に困り、何を基準に選ぶのか」を定義してから、勝てる要因を選ぶことが重要です。
市場は変化します。競合の参入・価格改定・技術革新・顧客の価値観変化が起きれば、ポジショニングは簡単にズレます。例えば次のような場合は再設計のサインです。
ポジショニングは固定ではなく、検証しながら更新する設計図です。定点観測のKPI(商談化率、受注率、競合勝率、継続率など)とセットで運用すると、見直しの判断がしやすくなります。
STP分析は、マーケティング戦略立案に欠かせない手法です。市場を細分化し(S)、勝ち筋のある顧客層を選び(T)、競合比較で選ばれる理由を設計する(P)ことで、限られた経営資源を有効活用しながら成果につなげられます。重要なのは、STPを分析で終わらせず、4Pや営業活動まで一貫して落とし込むことです。市場動向や顧客ニーズは変化するため、定期的に見直し、学習と改善を回す運用設計まで含めて取り組むことが成功の鍵になります。
STPで「誰に何を届けるか」を決め、4Pで「具体的にどう届けるか」を設計します。
良いとは限りません。施策が変わるだけ分け、運用できる粒度に整えることが重要です。
不十分です。到達可能性や導入障壁、収益性まで含めて勝てる条件で判断します。
同じではありません。競合比較で選ばれる理由を、顧客の評価軸に沿って設計することです。
自社都合ではなく、ターゲットが比較検討で重視する評価軸を選びます。
意思決定構造、導入障壁、運用負荷まで含めてターゲットと価値提案を設計することです。
市場規模、成長性、競合状況、自社適合、収益性、到達可能性で総合判断します。
STPの結論が4Pや営業活動に反映されず、意思決定基準として運用されないことが主因です。
市場変化の大きさに応じますが、四半期や半期単位での定点見直しが現実的です。
ターゲット、価値提案、競合比較の前提を言語化し、KPIと合わせて共有することです。