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テーラリングとは? 10分でわかりやすく解説

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目次

システムのテーラリングとは、ユーザーや組織の業務に合わせてソフトウェアを「設定・修正・拡張」し、現場で使える形に最適化することです。ただし、闇雲に手を入れると、コスト増や保守性の低下、バージョンアップ停滞といった副作用も起こりえます。本記事では、テーラリングの定義と目的、進め方の基本プロセス、コストや保守性などの留意点、さらに「ユーザー要件」と「業務標準化」のバランスを取るための実践ポイントまで解説します。

テーラリングとは何か?

テーラリングとは、 システム開発や導入において、特定の組織・業務・利用者に合わせてソフトウェアを最適化すること です。画面や項目、業務フロー、権限、帳票、連携などを調整し、「その会社の業務が回る状態」に近づけることが狙いになります。

テーラリングの定義

テーラリングは、 既存のソフトウェアやシステムを、特定の組織やユーザーの要件に適合するように修正、設定、拡張すること を指します。実務上は、次のような要素が対象になりやすいです。

  • 設定で変えられる範囲(権限、承認フロー、入力必須項目、通知、画面レイアウト、マスタ項目など)
  • 追加開発・拡張(帳票追加、画面追加、独自ロジック、外部連携API、アドオン機能など)
  • 運用設計の調整(入力ルール、例外処理、問い合わせ窓口、運用手順の整備など)

ポイントは「見た目の調整」だけではなく、業務手順・データの持ち方・権限・例外処理まで含めて、実運用に耐える形へ整える点にあります。

テーラリングとカスタマイズの違い

現場では「テーラリング」と「カスタマイズ」が混同されがちです。厳密な定義は組織やベンダーによって異なりますが、判断の目安としては次のイメージが役立ちます。

  • テーラリング:標準機能を理解したうえで、設定変更や最小限の拡張で業務に合わせる(標準との距離をなるべく保つ)
  • カスタマイズ:標準外の仕様を実現するために、追加開発や改修を広く行う(標準からの乖離が大きくなりやすい)

どちらが正しいという話ではありませんが、一般に「標準からの乖離」が大きいほど、将来の保守・バージョンアップで負担が増える傾向があります。そのため、まずは設定で吸収できるか、次に拡張が必要なら影響範囲を最小化できるか、という順で検討すると失敗しにくくなります。

テーラリングの目的

テーラリングの主な目的は、次の通りです。

  1. ユーザーの生産性向上(入力・確認・承認の手戻りを減らす)
  2. 業務プロセスの効率化(ムダな待ち・二重入力・例外対応を減らす)
  3. 使いやすさの改善(迷いにくい画面、必要な情報が見える導線)
  4. 組織の統制要件への適合(権限設計、監査証跡、承認ルール)
  5. ユーザー満足度の向上(「結局Excelに戻る」を防ぐ)

テーラリングにより、 ソフトウェアが組織やユーザーの実情に近づき、業務効率と定着率の向上が期待できる 状態を目指します。

テーラリングの必要性

テーラリングが必要となる理由は、単に「会社ごとに業務が違う」からだけではありません。実務では、次のギャップが導入失敗の原因になりやすいからです。

  • 標準機能の前提自社の運用がズレている(承認段数、責任分界、例外処理など)
  • 入力粒度が合わない(必要な項目が足りない/逆に多すぎる)
  • 連携が不足する(会計、在庫、認証、ワークフロー、帳票など)
  • 統制要件を満たせない(アクセス制御、ログ、監査対応、セキュリティ基準)
  • 現場の利用体験が悪く定着しない(操作が複雑、導線が長い、検索が難しい)

テーラリングを通じて、 ソフトウェアを「使える形」に調整し、業務効率と競争力を底上げする ことが可能になります。

テーラリングのメリット

メリット説明
生産性の向上入力・承認・検索・出力が業務に合うため、手戻りや確認工数が減りやすくなります。
ユーザー満足度の向上迷いにくい画面や必要な情報が揃うことで、現場での定着が進みやすくなります。
業務プロセスの最適化業務フローとシステムのズレを減らし、例外処理や二重管理を減らせます。
運用・統制の強化権限設計、承認ルール、ログ取得などを整えやすくなり、内部統制や監査対応にも効きます。
全体コストの最適化導入後の混乱や再改修を減らせれば、結果として手戻りコストの抑制につながります。

 「自社に合う状態」を作ることが、導入効果を現場で回収するための前提 になる点が、テーラリングの大きな価値です。

テーラリングの進め方

テーラリングを効果的に進めるには、「要望を全部入れる」ではなく、目的と制約を明確にしたうえで、段階的に最適化する進め方が重要です。ここでは、基本プロセスと各フェーズの要点を整理します。

テーラリングの基本的なプロセス

テーラリングのプロセスは、概ね次の4フェーズで整理できます。

  1. 要件定義
  2. 設計
  3. 実装・テスト
  4. 導入・定着

導入後も改善は続きますが、少なくとも初期導入時点で「最低限回る状態」と「改善余地の扱い」を線引きできると、スケジュールも品質も安定します。

要件定義とテーラリング

要件定義では、単に「欲しい機能」を集めるのではなく、業務上の目的・困りごと・制約条件まで落とし込みます。特に、パッケージ導入やSaaS導入ではFit&Gap(標準に合う点/合わない点の整理)が要になります。

  • As-Isの把握:現状の業務フロー、例外処理、帳票、承認、責任分界を可視化する
  • To-Beの合意:理想像だけでなく「移行期に許容する運用」も決める
  • 優先順位付け:必須・重要・できれば、のように段階を作り、初期範囲を固定する
  • 非機能要件:権限、ログ、可用性、性能、セキュリティ、監査要件を先に確認する

要件が曖昧なまま設計へ進むと、後工程で「結局どっちだったか」が増えます。要件定義の段階で、判断基準(何を満たせばOKか)まで言語化しておくことが効果的です。

設計とテーラリング

設計フェーズでは、「どの手段で合わせるか」を現実的に決めます。手段は大きく分けて、設定拡張連携運用です。

  • 設定で吸収:項目、権限、承認、通知、画面レイアウトなど(将来影響が小さい)
  • 拡張で実現:追加画面、帳票、独自ルール、アドオン(影響範囲の限定が重要)
  • 連携で補う:外部システムとAPI/ETLでつなぐ、SSO・認証連携を整える
  • 運用で解決:例外処理、入力ルール、承認代行、問い合わせフローを整備する

設計の成果物としては、画面・帳票・権限・データ項目・業務フロー・例外処理の「判断に必要な情報」が揃っていることが重要です。見た目の資料だけ整っていても、運用判断が抜けていると導入後に崩れます。

実装・テストとテーラリング

テーラリング後の品質は、テストの設計で決まる部分が大きいです。開発者視点だけでなく、利用者視点で「業務が最後まで通るか」を確認します。

  • 観点別テスト:機能テスト、権限テスト、データ整合性、性能、セキュリティを分けて確認する
  • 業務シナリオテスト:申請→承認→確定→出力、のように一連の流れで検証する
  • UAT:代表ユーザーが実運用に近い条件で触り、違和感を洗い出す
  • 変更管理:要件変更や追加要望は、影響と費用を見える化して判断する

「動くかどうか」だけでなく、「迷わず使えるか」「例外時に止まらないか」を意識すると、導入後の問い合わせや手戻りを抑えやすくなります。

導入・定着とテーラリング

導入フェーズは、システムの切り替えではなく、運用の切り替えです。トレーニングと運用設計を軽視すると、テーラリングの効果が出ません。

  • 利用ルールの明文化:入力基準、例外処理、権限申請、問い合わせ窓口
  • 移行計画:データ移行、並行稼働、旧運用の停止条件
  • 教育:代表者教育→現場展開、よくある操作ミスの事前共有
  • 改善サイクル:導入後に改善枠を確保し、優先順位で継続的に直す

テーラリングは一度で完成しません。初期導入で「回る状態」を作り、運用の声を取り込みながら改善するほうが、結果として全体の品質が上がりやすくなります。

テーラリングの留意点

テーラリングは効果が大きい一方で、設計と意思決定を誤ると負債にもなります。ここでは、特にトラブルになりやすい論点を整理します。

テーラリングのコスト

テーラリングのコストは「追加開発費」だけではありません。見落とされやすいのは、設計・合意形成・テスト・教育・運用のコストです。

  • 初期コスト:要件整理、設計、開発、テスト、移行、教育
  • 運用コスト:問い合わせ対応、運用変更、改善、ドキュメント更新
  • 将来コスト:バージョンアップ対応、改修の再実装、脆弱性対応の手戻り

 効果とコストのバランスを見て、「やらないこと」を決める のが、結果的に成功しやすい進め方です。

テーラリングと保守性

カスタマイズが増えるほど、保守性が下がるリスクがあります。特に「独自ロジック」「独自画面」「標準改修」は、将来の変更に影響しやすい領域です。

  • 標準機能からの乖離が大きいと、不具合修正やセキュリティ修正の適用が難しくなることがあります。
  • 担当者が変わると、改修意図が不明になり、触れない領域が増えることがあります。

保守性を守るには、後述するドキュメント化と、変更のガバナンスが欠かせません。

テーラリングとバージョンアップ

ソフトウェアのバージョンアップ(新機能・性能改善・セキュリティ強化)は避けられません。テーラリング範囲が広いほど、バージョンアップ時に次の作業が発生しやすくなります。

  • 標準仕様変更との整合性確認
  • カスタマイズ部分の再テスト、再調整
  • 連携先(API、帳票、認証など)の互換性確認

そのため、テーラリングは「必要最小限」だけでなく、影響範囲を限定する設計(拡張点の活用、標準改修の回避、疎結合な連携)を意識すると、将来の負担を抑えやすくなります。

テーラリングの管理体制

テーラリングを成功させるには、技術だけでなく意思決定の仕組みが重要です。次のような体制・ルールがあると、品質が安定します。

  • 責任者の明確化:要件の最終判断者、運用の責任者、セキュリティ責任者
  • 変更管理:追加要望は、効果・コスト・影響を比較して採否を決める
  • トレーサビリティ:要件→設計→実装→テストの紐付けを保つ
  • ベンダー管理:契約範囲、受入条件、SLA、障害時対応の整理

「誰が決めるか」「何をもって完了とするか」が曖昧なままだと、テーラリングは際限なく膨らみ、納期も品質も崩れがちです。

セキュリティと権限設計の見落とし

テーラリングでは、画面や機能の追加だけでなく、権限とデータ取り扱いが必ず論点になります。権限が過剰だと情報漏えいや内部不正のリスクが上がり、厳しすぎると現場が回りません。

  • 最小権限:業務上必要な範囲に権限を絞る
  • 監査証跡:誰がいつ何をしたかを追えるログ設計
  • データ分類:個人情報・機密情報の扱い、持ち出し制御の方針

特にクラウドやSaaSの場合は、ベンダー側の標準仕様に依存する部分もあるため、早い段階で適用範囲を確認しておくと安全です。

テーラリングの効果的な活用法

テーラリングで成果を出すには、「要望に全部応える」よりも、「価値が出る部分に絞って確実に効かせる」ことが重要です。ここでは実践上のポイントを整理します。

ユーザー要件に合わせたテーラリング

ユーザー要件は、ヒアリングだけだと抽象的になりがちです。次のように、困りごとを具体化して要件に落とすと、設計がぶれにくくなります。

  • 「どの作業で」「何に時間がかかり」「どんなミスが起きるか」を確認する
  • 例外パターン(差し戻し、代理、緊急処理)を先に洗い出す
  • 入力・承認・検索・出力のボトルネックに優先的に手を入れる

結果として、現場で「戻らない」仕組みが作りやすくなります。

業務の標準化とテーラリングのバランス

テーラリングは、業務をシステムに寄せるのか、システムを業務に寄せるのか、の判断が常に付きまといます。目安としては、次の考え方が有効です。

  • 標準化を優先:業界標準に近い業務、例外が少ない業務、監査要件が強い領域
  • テーラリングを優先:差別化に直結する業務、現場負荷が大きい業務、顧客体験に効く領域

 「差別化領域は合わせる」「共通領域は標準に寄せる」 という整理ができると、テーラリングの投資判断がしやすくなります。

パッケージの機能を理解した上でのテーラリング

パッケージやSaaSを前提にする場合、標準機能を十分に理解しないまま要件を固めると、不要な追加開発が増えます。まずは次の順で確認するのが現実的です。

  • 標準機能でできること、できないことを整理する
  • 拡張点(アドオン、設定、API)で吸収できるか検討する
  • どうしても不足する場合のみ追加開発を検討する

 標準機能の理解は、コスト削減だけでなく保守性確保にも直結 します。

テーラリングのドキュメント化

テーラリングの内容は、必ず文書化しておくことが重要です。最低限、次が追える状態を作ると、引き継ぎや改修が安定します。

  • 変更点(何をどう変えたか)
  • 目的(なぜ必要だったか)
  • 影響範囲(どの業務・どの権限・どの連携に影響するか)
  • テスト観点(何を確認すれば正しいと言えるか)

ドキュメント化は手間がかかりますが、長期運用で確実に回収できる投資です。

テーラリングをやり過ぎないための判断基準

最後に、過度なテーラリングを避けるための判断基準を置いておくと、プロジェクトが膨らみにくくなります。

  • 頻度:月に1回しか起きない例外のために大改修しない
  • 代替:運用で吸収できるなら、まずは運用で回して改善タイミングを計る
  • 影響:バージョンアップやセキュリティ対応に影響する改修は慎重に扱う
  • 価値:その変更が、業務のボトルネックや統制上の課題を本当に解消するかを見る

これらを満たす変更だけを優先できれば、テーラリングは「負債」ではなく「資産」になっていきます。

まとめ

テーラリングとは、既存のソフトウェアを特定の組織やユーザーのニーズに適合させるために、設定・修正・拡張・運用整備を行い、現場で使える状態へ最適化する取り組みです。要件定義から設計、実装・テスト、導入・定着までを体系的に進めることで、業務効率と定着率の向上が期待できます。一方で、コスト、保守性、バージョンアップ、権限やセキュリティなどの論点を見落とすと、長期的な負担が増える可能性があります。標準機能の理解を前提に、差別化領域へ絞ってテーラリングを効かせ、変更内容を文書化しながら継続的に改善することが、テーラリングを成功に導く鍵です。

Q.テーラリングとは何ですか?

既存のソフトウェアを、組織やユーザーの業務に合うように設定・修正・拡張して最適化することです。

Q.テーラリングとカスタマイズはどう違いますか?

一般にテーラリングは標準機能を活かした最適化、カスタマイズは標準外を追加開発で実現する色合いが強いです。

Q.テーラリングはなぜ必要になるのですか?

標準仕様と自社の業務手順や統制要件が合わない場合に、運用を成立させるためです。

Q.テーラリングはどの段階で検討すべきですか?

要件定義の段階でFit&Gapを整理し、設計で設定・拡張・連携・運用のどれで吸収するかを決めます。

Q.テーラリングのコストは何で決まりますか?

追加開発だけでなく、合意形成、テスト、教育、運用、将来のバージョンアップ対応まで含めた総コストで決まります。

Q.テーラリングで保守性が落ちるのはなぜですか?

標準から乖離すると、修正や機能追加の影響範囲が増え、修正適用や改修判断が難しくなるためです。

Q.バージョンアップ時に問題になりやすい点は?

標準仕様変更とカスタマイズ部分の整合性確認が必要になり、再調整や再テストの負担が増えやすい点です。

Q.標準化とテーラリングのバランスはどう取ればよいですか?

差別化に直結する領域は合わせ、共通領域は標準に寄せる方針にすると判断が安定します。

Q.テーラリング内容はどこまで文書化すべきですか?

変更点、目的、影響範囲、テスト観点が追えるレベルまで文書化すべきです。

Q.テーラリングをやり過ぎないコツはありますか?

頻度の低い例外は運用で吸収し、価値と影響が大きい変更に絞って実施することです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム