ユニキャスト(unicast)とは、ネットワーク上で特定の1台(1つの宛先)に向けてデータを送る通信方式です。私たちが普段使うWeb閲覧(HTTP/HTTPS)、メール送受信(SMTP/IMAP/POP)、API通信、社内システムへのアクセスなど、インターネット通信の大半はユニキャストで動いています。
ブロードキャストが「同一ネットワーク内の全員あて」、マルチキャストが「特定グループあて」なのに対し、ユニキャストは“この相手にだけ届ける”のが基本です。
ユニキャストは1対1の通信です。送信側は宛先(IPアドレス、またはその先に解決される名前)を指定し、ネットワークはその宛先へ向けてパケットを転送します。
ただし、本文中の「専用の通信路を使って直接送る」という表現は誤解を生みやすいです。一般的なIPネットワークでは、ユニキャストは専用線を“占有”する仕組みではなく、他の通信と同じ回線・機器を共有しながら、宛先が1つに絞られている(=配送先が1つ)という意味での1対1です。
ユニキャスト通信は次の流れで成立します。
本文中の「ルートがダイナミックに変化し最適なルートが選ばれる」は、ネットワーク設計次第です。BGPやOSPFのような動的ルーティングを使う環境では経路が変化し得ますが、家庭や小規模ネットワークでは静的・固定的に見えることも多いです。
また「エラーが起きた箇所だけを再送」という説明は、IPの下層だけでは成り立ちません。再送は主にTCPの機能であり、UDPでは基本的に再送は行われません(アプリ側で補う設計になります)。つまり、ユニキャストの信頼性は「ユニキャストだから」ではなく、TCP/UDPなど上位プロトコルの性質に依存します。
ユニキャストの強みは次の通りです。
一方で「ユニキャスト=セキュリティが高い」は言い切れません。宛先が1つでも盗聴・改ざんのリスクはあり、実際の安全性はTLS(HTTPS)、VPN、認証、アクセス制御などの対策で決まります。
ユニキャストが使われる典型例です。
「誰に送るか」で整理するとスッキリします。
ブロードキャストは、同一ブロードキャストドメイン内の全端末へ一斉送信する方式です。ARPやDHCPの初期通信など「探索・初期問い合わせ」で活躍します。一方、端末数が増えると受信側負荷も増えるため、設計上はVLAN分割などで閉じ込めるのが基本です。
マルチキャストは、特定グループの受信者だけに同時送信できる方式です。配信や会議などで「同じデータを複数へ届けたい」場面で理屈上は効率的ですが、ネットワーク機器側の設定や運用(IGMP/MLD、PIMなど)が必要になり、環境によっては難易度が上がります。
ユニキャストは「必要な相手だけ」に届くので効率的です。ブロードキャストは「全員に届く」ため、探索には便利ですが増えると負荷になります。大量端末へ同じ内容を配る用途では、ユニキャストの単純な繰り返し配信は送信側負荷が増えます(配布方式の工夫が必要です)。
マルチキャストは「グループあて」なので、同じデータを複数へ届けるのに向きます。ユニキャストは個別配送なので制御しやすく、ほとんどの業務通信で採用されています。
遅延は回線混雑、バッファ肥大、無線品質などで起きます。対策は、帯域設計、トラフィックの優先制御(QoS)、経路設計、無線の最適化などです。
ロスは物理層品質、輻輳、無線干渉などで起きます。TCPなら再送で吸収しますが、リアルタイム用途(音声・映像・ゲーム等)では体感劣化につながるため、回線品質改善や輻輳回避が重要です。
ユニキャストでも盗聴・改ざんは起こり得ます。実務上の対策は、TLS、VPN、端末認証、ID管理、アクセス制御、監視(ログ・NDR等)といった多層防御です。
特定の1台(1つの宛先)に向けてデータを送る通信方式です。Web閲覧やメールなど、多くの通信はユニキャストです。
一般的には専用線を占有する意味ではありません。共有ネットワーク上で宛先が1つに限定されている(1対1配送)という意味です。
宛先が限定される点は有利ですが、盗聴・改ざんは起こり得ます。実際の安全性はTLS(HTTPS)やVPN、認証、アクセス制御で決まります。
再送は主にTCPの仕組みです。ユニキャスト自体の性質ではなく、TCP/UDPなど上位プロトコルの違いで挙動が変わります。
ユニキャストは特定の1台あて、マルチキャストは参加している特定グループあてです。同じデータを複数へ配る用途ではマルチキャストが候補になります。
不要な端末に届かないため影響範囲は限定されます。ただし同じデータを多数へ配る場合は送信回数が増え、送信側・回線側の負荷が上がることがあります。
回線混雑、バッファ肥大、無線品質、経路設計などが原因です。帯域設計やQoS、無線最適化などで改善します。
はい。ユニキャストはルーティングにより別ネットワークへ転送されます(インターネット通信の基本形です)。
Web閲覧(HTTPS)、メール送受信、社内アプリへのアクセス、API通信などが代表例です。
同じデータを多数の端末へ同時配信したい場面では、ユニキャストの単純な繰り返し配信は負荷が増えます。マルチキャストや配信方式の工夫が検討対象になります。