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公益通報者保護法とは? 10分でわかりやすく解説

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UnsplashMiguel A Amutioが撮影した写真  

この記事では、公益通報者保護法について解説します。公益通報者保護法を理解することで、安心して不正行為を通報できるでしょう。

公益通報者保護法とは?

公益通報者保護法は、不正行為内部の労働者が通報した場合に、通報者を保護する法律です。

公益通報者保護法の目的

公益通報者保護法の主な目的は以下の通りです。

  1. 不正行為の早期発見と是正を促進すること
  2. 公益通報者を保護し、不利益な取り扱いを防止すること
  3. 企業の自浄作用を高め、コンプライアンス経営を推進すること

公益通報の定義

公益通報者保護法における公益通報とは、以下の3つの要件を満たす通報を指します。

  1. 労働者が、自らの労務提供先である事業者内で生じた、または生じようとしている不正行為を、所定の通報先に通報すること
  2. 不正行為が生じ、またはまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由があること
  3. 通報内容が事実であると信じ、かつ、そう信じたことに相当の理由があること

不正行為の具体例

公益通報者保護法で対象となる不正行為は、以下のような事例が挙げられます。

  • 製品の欠陥や安全性の問題を隠蔽する行為
  • 環境汚染や不適切な廃棄物処理
  • 労働基準法違反
  • インサイダー取引や不正な会計処理
  • 贈収賄や談合などの不正な取引行為

通報対象事実の範囲

公益通報者保護法の通報対象事実は、以下の法律に違反する行為が該当します。

分野関連する主な法律
消費者の生命・身体の保護食品衛生法、製造物責任法など
環境の保護大気汚染防止法、水質汚濁防止法など
公正な競争の確保独占禁止法、下請法など
労働者の保護労働基準法、労働安全衛生法など

これらの法律に違反する行為を通報した場合、公益通報者保護法の対象となり、通報者は保護されます。

公益通報者の保護

公益通報者の保護の必要性

公益通報者の保護が必要とされる理由は、以下のようなものが挙げられます。

  • 不正行為を内部から通報することは、労働者にとって勇気のいる行為であり、通報によって不利益を被る可能性があるため
  • 通報者が保護されることで、不正行為の早期発見と是正が促進され、企業の透明性と信頼性が向上するため
  • 公益通報者の保護は、企業のコンプライアンス経営を推進し、社会的責任を果たすために不可欠であるため

公益通報者の保護の内容

公益通報者保護法では、以下のような保護の内容が定められています。

  1. 公益通報者に対する不利益な取扱いの禁止
  2. 公益通報に関する情報の秘密保持
  3. 公益通報者の権利行使の保障

不利益取扱いの禁止

公益通報者保護法では、公益通報者に対する不利益な取り扱いが禁止されています。不利益な取り扱いとは、以下のようなものが該当します。

  • 解雇、降格、減給などの労働条件の不利益変更
  • 配置転換、出向、自宅待機命令などの人事上の不利益措置
  • 嫌がらせ、いじめ、暴行などの精神的・肉体的な攻撃

事業者は違反した場合、法的責任を問われる可能性があります。

事業者の義務

公益通報者保護法では、事業者に対して以下のような義務が課されています。

  1. 公益通報に関する社内体制の整備
  2. 公益通報者の秘密保持
  3. 公益通報者に対する不利益な取り扱いの防止

公益通報の手順

社内での通報の流れ

公益通報を行う際、まずは社内の通報窓口に連絡することが推奨されます。多くの企業では通報窓口が設置されています。通報窓口は、必要に応じて関係部署と連携して是正措置を講じます。

外部機関への通報

社内での通報で満足な対応が得られない場合には、外部機関への通報を検討することも必要です。主な外部通報先は、以下が挙げられます。

  • 所管官庁(消費者庁、環境省、厚生労働省など)
  • 警察署や検察庁などの捜査機関
  • 弁護士会などの専門家団体
  • マスメディア(新聞社、テレビ局など)

ただし、外部通報を行う際は、通報内容の真実性や証拠の確保に十分留意する必要があります。

通報先の選定

公益通報を行う際、以下の点を考慮することが推奨されます。

  1. 通報内容に関連する法律や所管官庁を確認する
  2. 通報先の対応力や専門性を評価する
  3. 通報者の秘密保持や不利益防止のための体制を確認する
  4. 通報窓口の連絡方法や対応時間を把握する

通報時の注意点

公益通報を行う際は、以下のような点に注意することが大切です。

  • 通報内容の真実性を確認し、証拠を収集する
  • 通報先の信頼性や対応力を見極める
  • 通報の方法や時期を慎重に検討する
  • 通報による不利益リスクを認識し、必要な保護措置を講じる
  • 通報後の経過をフォローし、適切な対応を求める

通報者は、自らの行為の意義と責任を自覚し、適切な手順で通報を行うことが求められます。

企業における公益通報への対応

内部通報制度の整備

公益通報者保護法の趣旨を踏まえ、企業は内部通報制度の整備に取り組む必要があります。実効性のある内部通報制度を確立することで、不正行為の早期発見と是正を促進し、企業の自浄作用を高めることが可能になります。整備にあたっては、以下のような点に留意することが推奨されます。

  • 経営トップのコミットメントを明確にし、内部通報制度の重要性を全社的に周知する
  • 通報窓口を社内外に複数設置し、通報者の利便性と選択肢を確保する
  • 通報の受付から調査、是正措置までの一連のプロセスを明文化し、運用ルールを整備する
  • 内部通報制度の利用を促進するための教育研修や啓発活動を継続的に実施する

通報者の秘密保持

公益通報者保護法では、事業者に対して通報者の秘密保持が義務付けられています。企業は、以下の措置を講じることが推奨されます。

  • 通報者の個人情報を厳重に管理し、必要最小限の関係者のみに共有する
  • 通報内容や調査経過に関する情報の取り扱いルールを明確化し、情報漏洩を防止する
  • 通報者との連絡方法や面談場所にも配慮し、通報者の秘密が損なわれないよう留意する
  • 通報者の秘密保持に関する規程を整備し、違反した場合の懲戒処分等を明示する

調査の実施と是正措置

公益通報があった場合、企業は速やかに事実関係の調査を実施し、不正行為の有無を確認する必要があります。調査の実施にあたっては、以下のような点に留意することが推奨されます。

  1. 調査の客観性と公平性を確保するため、必要に応じて外部専門家の協力を得る
  2. 関係者からの聞き取りや資料の収集など、事実関係の解明に必要な調査手続きを尽くす
  3. 調査の経過や結果について、通報者に適宜フィードバックを行う
  4. 調査の過程で得た情報の管理を徹底し、関係者のプライバシーに配慮する

不正行為が確認された場合、企業は直ちに是正措置を講じる必要があります。調査と是正措置を適切に実施することで、企業は不正行為のリスクを低減し、社会からの信頼を維持することができます。

企業風土の改善

公益通報への適切な対応は、企業風土の改善にもつながります。企業風土を醸成するためには、以下のような取り組みが推奨されます。

  • 経営トップが率先してコンプライアンス経営の重要性を発信し、企業風土の改革をリードする
  • コンプライアンス教育を充実させ、従業員の意識向上を図る
  • 風通しの良い職場環境を整備し、従業員が率直に意見を述べやすい雰囲気をつくる
  • 不正行為を防止するための内部統制システムを強化し、牽制機能を高める

企業風土の改善は、一朝一夕には実現できません。経営層から従業員に至るまで、全社一丸となって継続的に取り組むことが求められます。健全な企業風土を築くことで、不正行為のリスクを未然に防ぐとともに、社会から信頼され、持続的に成長できる企業を目指すことができるでしょう。

まとめ

公益通報者保護法は、企業の自浄作用を促進し、社会の利益を守るための重要な法律です。この法律を適切に運用するためには、企業は内部通報制度を整備し、通報者の秘密保持や不利益防止に取り組む必要があります。また、通報があった際には、速やかに事実関係を調査し、不正行為の是正措置を講じることが求められます。公益通報への真摯な対応は、企業の透明性と信頼性を高め、健全な企業風土の醸成につながるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム