UnsplashのMarvin Meyerが撮影した写真
ゼロクリック攻撃は、ユーザーがリンクを踏んだり、添付ファイルを開いたりしなくても、気づかないうちに不正なコードが実行される可能性がある攻撃です。操作が不要なので「防ぎにくい」「気づきにくい」という点が、いちばん厄介です。
この記事では、ゼロクリック攻撃の仕組み、よくある入口(どこが狙われやすいか)、そして現実的な対策を、10分で読める形で整理します。脅威を正しく理解し、守り方の優先順位を決めることで、大切な情報資産を守りやすくなります。
近年のサイバー攻撃は、メールのリンクや添付ファイルだけでなく、アプリやOSの“見えない処理”まで狙うようになっています。その代表例がゼロクリック攻撃です。
ゼロクリック攻撃とは、ユーザーが「クリックする」などの明確な操作をしなくても、ソフトウェアの脆弱性を突かれて不正な処理が走ってしまう攻撃を指します。
「何気ない操作で感染する」というより、より正確には操作が不要でも起き得る、というのがポイントです。
危険視される理由は、主に次の3つです。
ゼロクリックは、ユーザーの判断に頼れない場面が増えます。だからこそ、端末側の更新(パッチ)や、権限設計、監視の比重が上がります。
ゼロクリック攻撃は、「何かを勝手にダウンロードさせる」だけではありません。多くは、アプリやOSが内部で行う処理(例:プレビュー表示、画像・動画・文書の解析、メッセージの自動処理など)にある脆弱性を突きます。
攻撃者は、脆弱性を突く入力(特定の形式のデータ)を送り込み、端末側の処理の中で不正コードを実行させようとします。成功すると、情報の窃取、権限の奪取、別マルウェアの導入などにつながる可能性があります。
ゼロクリック攻撃は「入口(狙う処理)」で見ると理解しやすいです。代表的なパターンを整理します。
チャットや通話アプリは、受信したデータを自動で整形・解析します。その部分に脆弱性があると、ユーザーが何もしなくても攻撃が成立する可能性があります。“受信=処理が走る”タイプは、特にゼロクリックになりやすい入口です。
「メールを開かないようにしましょう」は有効ですが、それでもメールソフトの機能によってはプレビューや自動解析が走ります。そこに脆弱性があると、閲覧に近い動作だけで影響が出る場合があります。
ただし重要なのは、添付を開かせる・リンクを踏ませるタイプは基本的に“クリックが必要”で、厳密にはゼロクリックとは区別されます。
Webページの表示は、HTMLだけでなく画像・動画・スクリプトなど複数の解析が絡みます。表示処理の脆弱性が悪用されると、表示しただけで不正な処理が走る可能性があります。端末やブラウザの更新が止まっている環境ほどリスクが高まります。
ウォーターホール攻撃は「標的がよく見るサイトに罠を置く」手法です。ここで使われる“罠”が、表示処理の脆弱性を突く形だと、結果としてゼロクリック的に成立することがあります。つまり、ウォーターホールは配布・誘導の作戦、ゼロクリックは成立の条件(クリック不要)、という整理が分かりやすいです。
ゼロクリックは「気をつける」だけで止めにくいので、優先順位は次の順が現実的です。①更新、②権限、③監視、④入口の制御です。
ゼロクリック対策の土台は、パッチ適用です。脆弱性を突かれる以上、直っていない環境は狙われやすくなります。
「脆弱性診断」は重要ですが、端末系のゼロクリックは“まず更新”が最優先です。診断だけして更新が遅れると、効果が出ません。
ゼロクリックは“入り口”を完全に塞げない場合があります。そこで、入られたときの被害を小さくします。
「侵入しない」だけでなく「侵入されても横展開しない」を前提にする考え方が効きます。
単一の製品でゼロクリックを万能に止めるのは難しいため、多層で組みます。
ゼロクリックは「感染=即終わり」ではありません。侵入後の通信や認証の段階で止められる余地が残ることが多いです。
ゼロクリックを完全に防ぐのは難しくても、入口のリスクは下げられます。
「禁止」だけだと回らないので、現場の運用に落ちる形で決めるのがコツです。
ゼロクリックは気づきにくいので、検知と初動が重要です。「怪しいメールを見たら連絡」よりも、端末やネットワークの挙動で拾えるようにします。
大事なのは「単発のアラート」より、「いつもと違う流れ」を拾うことです。ログを集めるだけでなく、見て判断できる運用が必要です。
疑いが出たときに慌てないように、最低限の手順を決めておくと強いです。
ゼロクリック攻撃は、ユーザーのクリックを前提にしないぶん、気づきにくく、防ぎにくい攻撃です。だからこそ、対策の中心は「注意喚起」ではなく、更新(パッチ)・権限の最小化・多層防御・監視と初動に置くのが現実的です。
まずは、OS/アプリの更新が確実に回る状態を作り、端末とIDの守りを固め、ログと運用で早期発見できる体制を整えましょう。これだけでも、ゼロクリック攻撃のリスクは大きく下げられます。
ユーザーがリンクを踏むなどの明確な操作をしなくても、脆弱性を突かれて不正な処理が実行される可能性がある攻撃です。
ゼロクリックは、より正確には「操作が不要でも起き得る」という点が特徴です。注意だけでは防ぎきれない場面が増えます。
メッセージ受信処理、メールのプレビュー、自動解析、ブラウザやWebViewの表示処理、画像・動画などの解析部品が狙われやすい入口です。
添付ファイルを開かせたりリンクを踏ませたりするタイプは、基本的にクリックが必要なので、厳密にはゼロクリックとは分けて考えます。
OS・ブラウザ・アプリを最新に保つことです。脆弱性を突く攻撃なので、更新が遅れるほどリスクが上がります。
適用期限と例外手順を決め、代替策(権限の最小化、ネットワーク分離、監視強化など)をセットで運用します。
端末の検知(EDR等)、通信の制御・監視(DNS/プロキシ等)、IDの保護(MFAや条件付きアクセス)を組み合わせる考え方が現実的です。
難しい場合もありますが、端末の不審挙動、普段と違う通信、認証や設定変更のログなどを組み合わせることで兆候を捉えやすくなります。
端末の切り離し、ログ・証跡の確保、アカウント保護(セッション無効化やMFA確認)、横展開確認、必要に応じた専門家連携が基本です。
OSとアプリの自動更新を切らない、不要なアプリを減らす、権限を与えすぎない、二要素認証を有効にする、といった基本が効果的です。