近年、多くの組織でゼロトラストの導入が進んでいます。従来の境界型防御では防ぎきれない巧妙なサイバー攻撃に対し、全てのアクセスを信頼しない新たなセキュリティ対策が求められるためです。この記事では、ゼロトラストを構成する要素や具体的な導入の手順、注意点を詳しく解説します。ゼロトラスト導入を検討している担当者は、ぜひ参考にしてください。
ゼロトラストとは、社内と社外の境界を区別せず、全てのアクセスを信頼しない前提で対策を講じるセキュリティの考え方です。従来の境界型防御では防ぎきれない内部不正や高度なサイバー攻撃に対し、常に認証や認可を繰り返すことで、組織の重要な情報資産を確実に保護します。
背景には、クラウドサービスの普及やテレワークの拡大があります。従業員が社外の多様な環境から業務データへアクセスする機会が増加し、従来のネットワーク境界による防御が困難になりました。巧妙化するランサムウェアなどの脅威に対抗するため、新たなセキュリティ対策が必要とされています。
ゼロトラストの考え方の土台には、米国国立標準技術研究所(NIST)がSP 800-207で示した7つの原則(tenets)があります。これを踏まえ、米国国防総省(DoD)はゼロトラストで防御すべきリソースや制御の対象を、一般的に7つの要素(柱)に分類して整理しています。7つの要素の詳細は以下のとおりです。
全てのアクセスにおいて、ユーザーの身元を正確に認証および認可する要素です。多要素認証(MFA)を導入してなりすましを防ぎます。具体的には、アクセス要求ごとに動的な検証を行い、適切な権限を持つ人物にのみ最小限のアクセス権を付与することで、ID漏洩時の不正利用リスクを最小限に抑制します。
PCやスマートフォンなどのエンドポイントを適切に管理する要素です。社内データへアクセスする端末の状態を常に監視し、OSの更新状況などを確認します。具体的には、ウイルスに感染したデバイスの接続を遮断するほか、端末の紛失時には遠隔操作でデータを消去し、情報漏洩のリスクから組織の資産を守る対策を講じます。
通信経路を暗号化し、悪意のある第三者によるデータの盗聴や改ざんを防ぐ要素です。従来の境界型防御に依存せず、社内外のあらゆるネットワーク環境からのアクセスを同一に扱い、動的に通信を制御します。アクセス元とアクセス先の通信を細かくセグメント化して暗号化することで、安全な経路を常に確保します。
クラウド上で動作するアプリケーションや、仮想サーバーなどの処理環境を保護する要素です。クラウド環境は設定の不備による情報漏洩が発生しやすいため、構成ミスを自動で検知する仕組みを導入します。ワークロードの動作状態を監視し、不審なプログラムの実行や不正なアクセスを遮断します。
最優先で保護すべき機密データを、保管場所や移動経路を問わずに保護する要素です。データを暗号化して管理するだけでなく、アクセス権限を細かく設定してファイルごとに閲覧や編集を制御します。データの重要度に応じて分類を行い、外部への不正な持ち出しや漏洩を未然に防止する仕組みを構築します。
ネットワーク内のあらゆるログを収集し、組織全体のセキュリティ状態を監視する要素です。ユーザーの行動やデバイスの状況をリアルタイムで可視化し、AIなどを活用して普段とは異なる異常な挙動を検知します。不審な動きを早期に把握することで、被害が発生する前に迅速な原因特定と対処を可能にします。
検知した脅威への対応や、定型的なセキュリティ運用を自動で実行する要素です。異常なアクセスやウイルスの感染を検知した際、システムが自動で対象のデバイスをネットワークから隔離します。手動での対処に生じるタイムラグをなくし、被害の拡大を最小限に食い止めるとともに、運用担当者の負担を軽減します。
ゼロトラストの導入は、従来の境界型防御における限界を解消し、組織全体のセキュリティと業務環境の双方に多くの利益をもたらします。
社内外の全てのアクセスを厳格に認証するため、安全性が大幅に向上します。通信を細かく分断して制御しているため、特定のデバイスがマルウェアに感染した場合でも被害の拡散を抑制できます。さらに、詳細なログ分析により、外部からの攻撃だけでなく内部不正による情報漏洩も未然に防ぎます。
クラウドサービスや社内システムへ、場所を問わず安全にアクセスできる環境が整います。暗号化された通信経路と多要素認証により、テレワークやサテライトオフィスからでも社内と同様の業務を行えます。さらに、一度の認証で複数のシステムを利用できる仕組みにより、従業員の利便性も高まります。
多様なセキュリティ製品の情報を一元的に管理・可視化できるため、運用の効率化につながります。従来は個別に確認していたログや端末の状態をひとつのシステムで監視でき、異常検知時の対応も自動化されます。情報システム部門の負担を減らし、少人数でも高度なセキュリティ体制を維持できます。
ゼロトラストセキュリティを構築する際は、明確な手順を踏んで計画的に進めることが求められます。
自社のネットワーク環境や既存のシステムにおける課題を明確にする手順です。現在利用しているクラウドサービスや、デバイスのアクセス状況を正確に把握します。現行の防御体制における脆弱性を特定し、次に定めるべきセキュリティ方針の基盤を構築します。
課題の洗い出し結果を踏まえ、組織が目指すべき具体的なセキュリティ方針を定義する手順です。「テレワーク環境における端末の安全性を確保する」「クラウドデータの漏洩を防ぐ」といった明確な目的を設定します。方針を定めることで、導入に関わる関係者間の認識を統一します。
設定した目的に合わせて、必要な機能を持つセキュリティ製品やサービスを選択する手順です。アイデンティティ管理(IDaaS)やエンドポイントセキュリティ(EDR)など、自社の環境に最適なツールを比較します。既存のシステムとの親和性や、運用にかかるコストを総合的に考慮します。
選定したソリューションを配置し、日々の監視や評価を行う実践の手順です。システム稼働後は、アクセスログやデバイスの状態をリアルタイムで監視し、異常な挙動がないか確認します。定期的に設定を見直し、組織の環境変化や新たな脅威に合わせてセキュリティ強度を維持します。
ゼロトラストは高度なセキュリティを実現する一方で、導入の際には費用面や運用の体制、社内の理解など、あらかじめ留意すべき点が存在します。
複数のセキュリティ製品を導入・連携させるため、初期費用や月額の運用コストが増加する傾向にあります。自社の予算に合わせた計画的な投資が必要です。また、導入後もリアルタイムの監視やログ分析を行うため、専門知識を持つ人材の確保や、社内の運用体制を事前に整備することが求められます。
多要素認証の導入などにより、従来のアクセス手順に比べて業務時の認証回数が増える場合があります。一時的に利便性が低下したと感じる従業員から不満が出ないよう、導入の必要性を事前に詳しく説明します。社内研修などを実施し、組織全体でセキュリティ意識を高める協力体制が不可欠です。
ゼロトラストは、社内外の境界を設けずに全てのアクセスを厳格に認証する現代の重要なセキュリティ概念です。多様な働き方の普及やクラウド移行に伴い、従来の境界型防御では対応しきれない脅威を防ぐために導入が進んでいます。
アイデンティティやデバイスなど7つの要素を把握し、自社の課題を明確にした上で適切なソリューションを選定することが求められます。導入を進めるにあたって押さえるべき注意点を把握しつつ、安全で効率的な業務環境の実現を目指しましょう。
ゼロトラストの実現には、ID認証サービス「Soliton OneGate」をご活用ください。
国産IDaaSである「Soliton OneGate」を利用すれば、ID・パスワードだけに頼らない「デジタル証明書」を用いた多要素認証(MFA)が可能です。正規の端末・ユーザーしか業務システムにアクセスできない環境を容易に構築できます。